先日歌手のマーシー・グレイがピアース・モーガンのインタビュー番組の中で、男がいくら自分が女だと自認したり整形手術したりしても、男は女にはなれないと断言したことで、非常なバックラッシュを受け謝罪に追い込まれるという事件がおきた。きっかけとなった発言はこちら。

「みんなから嫌われるかもしれないけどいうわ。女として、人が生きる道を変えたからと言って、女性になれるというわけじゃないわ。悪いけど」

彼女は自分の代名詞を決めるのは支持すると言いながら、代名詞を変えたからといって自動的に自分が自認する性別のメンバーになれるわけではないと語った。

「彼女と呼んでほしなら呼ぶわ。それをあなたが望むのならね。でも私があなたを彼女と呼んだり、手術を受けたからって、あなたは女にはなれない、」と続けた。

彼女はさらに、女性として若い女性として育ったことは「完全に独特な体験であり」手術からは得られないものだとも語った。

「手術や自分がそう感じるということで変えることはできないわ。小さい女の子であることはひとつの大作本みたいなものよ。わかる?女性になりたいっていうだけでなれるものじゃないのよ。」

グレイは批判されることを予測してか「意見が合わないというだけでトランスフォビックなんてレッテルをはられるべきじゃないと思うわ。」と付け加えた。

その前日にも歌手で女優のベット・ミドラーが女性と言う言葉が消されているという内容のツイートをして叩かれて、釈明に追い込まれたたばかりだった。

“WOMEN OF THE WORLD! We are being stripped of our rights over our bodies, our lives and even of our name!” “They don’t call us “women” anymore; they call us “birthing people” or “menstruators”, and even “people with vaginas”! Don’t let them erase you! Every human on earth owes you!” — Bet Midler

世界の女たちよ!我々の身体の権利が剥奪されようとしている、我々の命がそして我々の名前すらが!「かられは我々を『女性』と呼ばない。彼らは我々を『出産する人』または『生理のある人』もしくは『膣のある人』などという!彼らに我々を消去させるな!地球上のすべての人間があなたがたに借りがあるのだ!ベット・ミドラー*

そんなことがあったので、グレイはよっぽど勇気があるのか、よっぽどクルーレス(空気が読めない)なのかのどちらかなんだろうと思っていたら案の定、二日後には朝のテレビ番組で緊張しながら「いろいろ学ばせてもらった」と平謝りをした。

同じくトランス活動家から何年も責め立てられているJ.K.ローリング女史は、すぐにグレイの擁護に回り、グレイのこれまで出したアルバムをすべて購入したと発表して擁護したが無駄だった。7月発売予定の新アルバムが8月まで延期されたと知るとグレイはすぐに折れてしまったのだ。

モーガンの時にとった椅子に深く腰かけて自信たっぷりな態度と違って、座り心地の悪そうな高椅子に座って背を丸め、始終両手を足の間に挟んで揉むような仕草での謝罪は、あたかも独裁政権下でカメラの横にいる看守の機嫌をうかがいながら「とても良い扱いを受けています」と質問に答える囚人のようであった。

これを通じて色々学ばせてもらいました。(略)これは私にとって非常な学習をする体験でした。誰でも自分がそうだと信じる呼び方をすべきであり、誰もそれを制御したり取り上げたりできないのです。(略)女であることはヴァイブです。それは私は誇りに思っていますし大切にしています。あなたが心で感じることが出来るなら、誰が何と言おうと何と思おうと、それがあなたなのです。私は多くを学びました。そしてそれが出来たことを喜んでいます。なぜなら私にはそれが解ったからです。

グレイが学んだのは、トランスジェンダリズムに逆らったらひどい目に遭うぞということだ。このインタビューを聞いたすべての人々に、グレイが見せしめにされたことは明白だ。

Macy Gray performs at Mighty Hoopla at Brockwell Park on June 04, 2022 in London, England.

若い読者諸氏はご存じないかもしれないが、このミドラーもグレイも歌手として昔は結構人気があった。特にミドラーはヒット映画にも数々出演しており、歌手としてでなく女優としても名の知れた大物芸能人である。しかし多くの芸能人がそうであるように、彼女たちもまた左翼リベラルであり、トランプ政権のこともかなり口汚く罵ってきたひとたちなので、彼女達がどんな目に合おうと私は特に同情はしていない。なぜなら彼女たちもまた、左翼のキャンセルカルチャーに十分貢献してきた人たちだからだ。

ベット・ミドラーはフェミニストを気取り、妊娠中絶に関してはトランプ大統領の娘イバンカが過去に中絶をしたことがあることをツイッターで暴露して蔑んでいたし、マーシー・グレイは2020年のBLM暴動を全面的に支持しており、今回発売予定の新しいアルバムのテーマもBLM活動についてだ。

興味深いのは、そんなバリバリ左翼の彼女達ですら、トランスジェンダリズムの逆鱗に触れたらひとたまりもないということだ。

ほんの2~3年前なら、女性から選ぶ権利を奪うな!とか、黒人の人権を守れ!とか言っていさえすれば左翼社会正義戦士として十分だったはずで、左翼から叩かれるなんてことはなかったはずだ。だから彼女たちは、多少のバックラッシュがあったとしても、ここまで叩かれるとは思っていなかったのだろう。特にベット・ミドラーはデビュー当時ゲイバーを中心に巡業したりして人気を得、今でもLGBTからの支持は厚い。そんな彼女がまさかLGBT界隈から叩かれるなんて予想外だったのだろう。しかしここで私が一応ミドラーの勇気を認めるのは、グレイと違って彼女は釈明はしたものの謝罪はせず、元のツイートも消していない点だ。

私は覚えている限り常に被差別者の人々のために戦って来た。私が60年に及んで証明してきた愛を一回のツイートが偶然誰かを怒らせたということだけで取り消されるっていうならそれでもいいわ。私はずっと彼らを支持し愛してきた(略)でも真実は民主主義が指の間からすり抜けようとしているよ!私はすべての人のために民主主義を救おうとしているの。だから私たちは団結しなきゃいけないのよ。そうでなきゃ、注意を払ってないのかもしれないけど、分断していては絶対に負けるのよ!」

Midler insisted she has always fought for "marginalized people."

ミドラーは正しい。いまやトランスジェンダリズムはフェミニストを分断し、ひいては左翼を分断するカルトと化している。同性愛者や女性や黒人の人権を守ることには同意できた左翼リベラルの間からも、これらの人権よりも自分を異性だと思い込んでいるT=トランスジェンダーや小児性愛を誇ってはばからないQ=クィア連中の横暴にいい加減嫌気がさしてる人々も出て来ているだろう。

JKRをはじめミドラーにしてもグレイにしても、およそ右翼保守とは言えない人たちが、「これはおかしい」と思うようになってきていること、そしてそれを口にすると容赦なく叩かれることで、左翼リベラル達はどんどん分断の憂き目を見ている。

ミドラーの言う通り、左翼がこの問題で分断すれば、彼らに勝ち目はないのだ。左翼中の左翼であるヒラリー・クリントンですら、トランスジェンダリズムを民主党の主題にしてはいけないと警告している。

元民主党大統領候補であるヒラリー・クリントンは民主党は次の選挙に勝つことに集中すべきであり、トランスジェンダリズムを議論の最優先にすべきではないと語った。クリントンはザ・ファイナンシャルタイムスのインタビューにおいて、記者が民主党はほとんどのアメリカ人に不人気な問題に焦点をあてているように思えるがどう思うかと質問すると、、

民主党は活動家の目的を強調することで選挙に故意に負けようとしてるかのようです。特にトランスジェンダー討論ですが、これはごく一部の少数派にとって大事なだけです。JKローリングをファシストに仕立てるあげることになんの意義があるのでしょう?

私たちは今にも民主主義を失おうという境目に立たされているのです。誰もが気にかけていることが窓から投げ出されようとしているのです。(略)一番大事なことは次の選挙に勝つことなのです。負けることの選択肢を考えたら、勝つことの役に立たない問題を最優先させるべきではありません。

トランスジェンダリズムはマスコミやソーシャルメディア(SNS)には力があるかもしれない。多くの大企業に影響を及ぼすことが出来るかもしれない。だがほとんどのアメリカ人はそんな思想に犯されていない。しかも年端もいかない子供たちに子供の前で憚られるような話題を平気で教え、小児性愛思想まで持ち込んで子供を洗脳しようとするやり方には、多くの左翼リベラル父母たちも危険を感じている。そしてそれを口にするだけでここまで叩かれる風潮を好ましくなど思っていない。

左翼リベラルの一般人にしてみたら、大人気の著者であるJKRや往年の歌手で女優のベット・ミドラーやマーシー・グレイらですが軽々しくものを言えない社会を民主党が奨励していることに不安を感じているのではないだろうか。


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