三月は就活だったこともあり、今まで学生生活でパンプスや革靴を履いたことのなかった若者が、突然固い靴を履いて歩きまわる機会が増えた。そこで突然気が付いたのがパンプスや革靴は慣れてないと靴擦れしたり、ひどい時は足首捻挫なんてことになる。そこで突如起きたのが職場からハイヒールや革靴を排除しようじゃないかという運動。題してハッシュタグKuToo。これは「靴」+「苦痛」+MeTooから来てる。うまくかけたものだ。

ハイヒールは現代の纏足だという人まで現れ、パンプスはミソジニーだとか、なぜか靴の話題がフェミニストの政治論争にまで展開しているというのが日本らしい。興味深いのは、この運動が日本のメディアではあまり取り上げられて居ないのに、海外メディアからは結構注目されているということだ。未だにハイヒールを女子職員に要求する職場なんて日本くらいしかないということなのだろうか?

在米生活30余年の私は、最初にこの話をツイッターで見た時に、何故女性たちがハイヒールにこだわるのか不思議だった。今日びパンプスでもローヒールやフラットでおしゃれでプロフェッショナルなものがいくらもある。別に履き心地の悪いハイヒールなど履かなくてもそういうものを履けばいいじゃないかと思ったからだ。私と同じように「嫌なら履かなきゃいいじゃない」と述べているのはほぼ皆海外在住の女性たちだった。つまり我々外国住まいは日本のオフィスレイディースたちに課せられる厳しい掟を理解できていないということらしい。

日本のことは解らないが、アメリカについてのみ言わせてもらうならば、アメリカの職場からハイヒール強制がなくなったのは1980年代のことだと思う。無論職場にもよるが、アメリカでも1970年代くらいまでは服装規制をしていたところは結構ある。以前に私が勤めていた証券会社で1970年年代のドレスコードを誰かが発見し、それを女子社員たちで回し読みして呆れたことがある。記憶にあるのだけ羅列してみると、、、

  1. 濡れた髪で出勤しないこと。
  2. 化粧をしてくること。
  3. ストッキングをはいてくること。
  4. ヒールのあるパンプスもしくはストラップ付のサンダルを着用すること。
  5. パンツスーツは厳禁。

70年代の頃はミニスカートはすでに普通だったのでミニスカートはよくてもズボンは駄目だったというのも男性が作ったらしい規則に思える。言うまでもないが、私が勤めていた1990年代にはこんな規則はすでになかった。とはいうものの、別に強制力はなかったとはいえ、証券会社という職場上、ドレスコードについては暗黙の了解があり、上記の規則はごく自然に守られていた。唯一の例外はパンツスーツが普通に受け入れられるようになったことくらいだ。

90年代当時のことを色々思い出していたのだが、当時私はダンタウンロサンゼルスのビジネス街で大手証券会社に勤めていた。オフィスのあった高層ビルの一階はコーヒースタンドや新聞雑誌などのキオスクと並んで靴修理の店や靴磨きのイスが並んでいた。ヒールのかかとはすぐに減るので、私の靴は常に修理屋に預けてあり、4~5足あったパンプスを回し履きしていた覚えがある。需要も多かったので修理代もすごく安かった。確か一ヒール$3.00くらいだった。

その風潮が変わったのは、徒歩が多いニューヨークのマンハッタンで勤める女性たちの間で、スニーカーを履いて出勤しオフィスについてからパンプスに履き替えるという人が増えた1980年代後半頃からだろう。その後は男性のスニーカー出勤も見られるようになった。

最近パンプスや革靴を履く人がめっきり減ったなと実感するのは、靴修理の店や靴磨きがめっきり減ったことだ。昨日久しぶりにパンプスのかかとを直しに修理屋に行ったら、二足で$34.00と言われてびっくりした。安い靴なら一足買える値段。安くて履き心地のいい靴が結構売ってる昨今、わざわざ直して履くなんて人は減ったのだろうな。

カジュアルな恰好で出勤する人が増えたのはいいと言えばいいのだが、昔かたぎの人間にとってはちょっと気になることもある。例えば、職場にタンクトップにミニスカートにつっかけサンダルという女子社員が現れた場合、先輩の女子社員がやたらに「あなたその恰好なんとかならない?」と注意するとパワハラだと言われかねないし、男性上司が何か言ったらセクハラだとか言われそうだ。

さて、日本の話に戻すと、私はこの#KuToo運動は成功すると思う。なぜかというと、昨今の日本企業はポリコレ迎合が甚だしいからだ。LGBT許容とかでやたら気を使っている企業のイメージからして、女性の人権を守るためだとか、男女平等だとか言って訴えれば意外に簡単にひっくり返る規制だと思う。

ただし、ここで忘れてはいけないのは、女性のなかにもハイヒールを好む人が結構いるということ。実は日本にはハイヒール協会なるものがあり、ハイヒールをいかに美しく履きこなすかに人生をかけてる人たちが結構いる。ハイヒールは必ずしも男性から女性に押し付けられたものではないのだ。格言う私も、別に強制などされていないが気が向いたらパンプスを履いている。

職場でハイヒールが強制された時代から、突如ハイヒール禁止の時代にならないようにくれぐれも気を付けていただきたいものだ。


4 responses to #KuToo女性の職場からハイヒール強制を排除できるか?

Shima55553 months ago

苺畑さん
私はパンプスに見える低い靴を自宅でも職場でも愛用していますが、
周囲から何故ヒールの高い靴を履かないのかと言われたことは一度もないです。
2011年の東日本大震災で帰宅困難者が大量に出て以来、靴は歩くためにあるのだと
いう意識が日本全体に浸透しているような気がします。
ハッシュタグを作るまでもなくヒールの高い靴は嗜好品だとみなさん
考えていると思うのですが。

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苺畑カカシ3 months ago

若い、特に就活中の学生たちは世間のことを知らないので、リクルート社や洋服会社の宣伝文句を鵜呑みにしてるのではないでしょうか。就活は黒のスーツに黒のヒールのあるパンプスのみ、みたいな。私が日本で就活したのは1980年代ですが、リクルートカットという男性の髪型はありましたが、服装までうるさくは言われた覚えはないですね。

だいたい中年男性の面接官が女性の靴にまで注意を向けているとは思えないです。男性が女性の靴に気が付くなんてことは先ずないですからね。

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    Shima55553 months ago

    苺畑さん
    少なくとも近頃の日本では、外資に打ち勝つために日本政府が音頭を取って働き方改革や採用方法の多様化を進めていますし、中途採用もどんどん増えています。(実をいうと私も中途採用で働いている身です)
    エンジニア等接客をしない業種だと書類だけで選考する企業もあるようです。

    >リクルート社や洋服会社の宣伝文句
    確かにそれはあると思います。一方でそうでもない場面も多いのが怖いです。
    パンプスやネクタイの問題は「強制する誰か」がほとんどいない為に難しくなっていると思います。着ている本人らが「なんとなく無難そうな服」を選んだ結果が同調圧力のようになっているような。

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ひで1 month ago

国民民主党が支持率0.7%だから「国民民主党がパンプス強制禁止をマニフェストにあげてくれたら、今まで自民党に投票していたけど、これからは国民民主党に投票します」って運動すれば、ホイホイ食いつくと思う。まじで党が消滅しそうだから。

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