さて、証券会社をリストラされてから色々あって数年後、私は別の仕事に就いた。今回は私の回りで起きた同僚の死についてお話したい。

この職場はとにかく出張が多かった。同僚はみな出張ばかりしていて、本社で顔を合わす同僚などいなかった。出張先の現場では、現場の状況に合わせて時間はまちまち。残業は一日四時間までという規則になっていたが、残業が一日四時間で済む日などほとんどなかった。

ある現場監督は朝4時くらいから出勤して午後10時くらいまで帰らなかった。そういう人が居ると、私なども上司が働いているのに「時間だから帰ります」とは言えない雰囲気があり(アメリカなのに!)結局4時間以上の残業はサービス残業となっていた。(無論いくらなんでも彼には付き合いきれないので適当に引き上げたが)

ほとんど毎日がそうだったというわけではないが、集中的に二週間くらい職場に缶詰になって合宿生活を強いられることがあり、そういう時は一日18時間の就労なんて普通だった。一度夜10時に始めて翌日の午後10時までぶっ続けで仕事をしていたことがあり、現場の上司に「もう24時間一睡もしていません。」と言ったら「俺は36時間寝ていない。」と言われた。だから寝なくていいって話じゃないだろうが!

出張が次から次と続くと、土日は移動に使われてしまい、ほとんど休みなし。有給休暇も使う暇がなく、一定期間に使わないと失くなってしまうというUse or loseというシステムだったので、無駄にしてしまう人も多くいた。

キャロル54歳女性:

そんな中で私の先輩が54歳の若さで肺がんで亡くなった。彼女は亡くなる前に私に「今年、私が家に帰ったのはほんの一週間。しかもまとめてじゃない。」と語っていたのを覚えてる。彼女は大酒のみでチェーンスモーカーだったから、これが過労死と言えるかどうかは議論の余地があるかもしれないが、常に家族から離れる出張続きの上に長時間労働。ストレスが溜まってお酒やたばこに憩いを求めていたとしても不思議ではない。

ニール59歳男性:

同じく一緒に働いていたやはり50代の男性は、仕事が忙しく風邪気味なのに医者に行かなかった。あまりにも咳き込んでいたので、周りの人間が「休んで医者に行きな」といっていたが、「これが終わったら行く」と言って働いていた。この男性は数日後、出張先のホテルの部屋で同僚と日程の打ち合わせをしている時に倒れ、そのまま息を引き取った。肺炎だった。

ボブ65歳男性:

この会社は特に定年はないので、働いていたければ働ける。それでも彼はそろそろ引退しようと考えていた。それで最後に一年がかりの企画が終わったら辞めると決めていたが、彼の就労時間も朝早くから夜遅くまでで、スタッフに送ってくるメールの時間などから見て、いったいこの人は何時寝てるんだろうと思うようなことが多かった。ある日彼は心臓発作を起こし入院した。これを期に辞めるのかと思ったら、退院してすぐ復帰。企画は終了して引退したが、その数週間後に亡くなった。引退したので世界旅行でもしようと計画中だったと未亡人は語っていた。

その他にも二人、引退を間際に控えた50代後半の男性が亡くなった。彼らの状況は私はよく知らない。彼らの死は出張先でオフィスから送られてきたメールで知った。

私の出張も多い時は一年に8か月というのがあった。こうした状況が5~6年続いたある日、私は上司に出張の数を減らしてもらいたいと直談判した。上司からは「出張出来ないなら他で仕事を探すんだね。」と言われた。私は腹が立ったのでその場で立ち去った。

アメリカでこんな状況があるというのは信じがたいことかもしれない。だが私はこういう企業があるということを責めるというより、働く側にも問題があると考える。

犠牲者を責めるのはおかしい。だが、過労死をしてしまうまで自分を痛めつけた労働者にも責任がある。こういう劣悪な労働条件を改善するためには、労働者ひとりひとりの考え方も変えていかなくてはならない。それについては次回お話しよう。


2 responses to アメリカにも過労死はある、、私が見た長時間就労の実態その2

Shima55555 years ago

苺畑さん
アメリカの労働者も大変なんですね。
アメリカだとこういう労働の仕方はすぐ裁判になるのだと思っていたので意外です。

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    苺畑カカシ5 years ago

    Shimaさん、お久しぶりです。後で書こうと思っていたのですが、アメリカで働きすぎる人たちというのは、割合自分で選んでやってることが多いので、そういう人は裁判を起こさないと思います。強制されていたら別ですけどね。でも、選ぶといってもそうせざる負えない状況にあるということも事実なので、難しいところです。

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