アメリカは宗教心の強い国だという話は以前からしているが、政治家となるとふだんはさほど信心深くない人でも、選挙が近付くとやたらと協会へ足を運んでみたり、演説のなかに「神」だの「信仰」だのいう言葉が不自然に出てくるようになるのはよくあることだ。しかし民主党の有力候補者バラク・オバマが信心深いキリスト教徒であるという話は自他共に認めるところ。ライバルのヒラリー・クリントン陣営やジョン・マケインの支持者からオバマの父親がイスラム教徒だったことや、オバマのミドルネームが「フセイン」であることから、オバマはイスラム教徒なのではないかなどと取りざたされたが、その度にオバマは、自分は敬虔なクリスチャンであり、同じキリスト教協会に20年も通っていると誇らしげに語っていたものである。
ところが最近になって、オバマが二十年来通い続け、オバマが信仰上の恩師として仰いでいる協会の牧師による過激な発言が問題となっている。
この牧師はトリニティユナイテッドチャーチのジェラマイヤ・ライト牧師(Rev. Jeremiah Wright)といい、牧師が自分の協会の教徒たちのために収録したDVDの内容が非常に反米でしかも白人やユダヤ人への人種差別むき出しのとんでもない陰謀説まで含まれていることが最近明るみに出てきた。
オバマはこれまでライト牧師について、誰にでも一風変わった伯父さんがいるように、ライト牧師はかれにとって風変わりな伯父さんみたいなものだとか、牧師を30年もやっていれば何万と行ったお説教のなかには、たまにおかしなものもあるだろう。そんなたまの失言だけを選りすぐって批判するのは不公平だ、などと語っていた。しかし風変わりなおじさんとか、たまの失言では言い逃れできないような内容が注目されはじめたのである。ロナルド・ケスラーはニュースマックスで牧師の演説の一部を下記のように紹介している。

ライト牧師はお説教やインタビューにおいて、シオニズムと人種差別を同等に扱い、イスラエルと南アフリカの旧アパルタイト制度は同じだとしている。また911同時多発テロの次の日曜日、ライト牧師は(911テロは)アメリカの暴力的政策がもたらした結果だと語った。4年後、ライト牧師は(911は)アメリカの人種差別への罰だとさえ示唆した。
「21世紀に、白人アメリカは2001年9月11日というモーニングコールで目を覚まさせられた。」とライト牧師は協会関係の雑誌に書いている。「白人アメリカと西洋社会は有色人種が木工場のなかへ去っていないことを、偉大なる白い西洋世界が自分の道を行き黒人のことなど無視してきた中で消えてしまってはいなかったことに気が付いたのだ。」
ライト牧師はある説教で、「人種差別によってこの国は創立され今でも運営されているのだ!わが国は白人至上黒人劣等主義を神よりも信じている。」

ライト牧師はイスラエルについては、「イスラエルは違法にパレスチナ領土を40年以上も占領している。」とかたり、アメリカ社会や世界のビジネス界にイスラエルへの投資をやめさせ、シオニズムの統治下で行われている人種差別による不正からアメリカを目覚めさせるべきだと呼びかけている。これらのスピーチはこちらで観ることができる。カカシがテレビでみたビデオの一部では、ライト牧師は世界で広まったエイズは白人が黒人を殺すために作り出した陰謀だなどと、とんでもないことまで語っている。
ライト牧師のこうした暴言は、牧師の若かりし日の過ちですまされるようなものではなく、昔から今日にいたるまで何度も繰り返されてきた発言なのである。それをオバマはたまにおきるごく一部の失言であるかのように語っていたが、アメリカのあちこちのテレビ局がライト牧師のお説教を流しはじめたので、オバマの言い訳がかなり白々しいものとなってしまった。
恥かしい親戚の伯父さんを持ってることは自分の責任ではないが、こんな暴言を吐く牧師のいる協会へ20年も通い、子供も日曜教室に通わせているとなるとオバマ議員自身もライト牧師の考えに同意しているのではないかという疑問が生まれるのは当然のことだ。オバマはアメリカをひとつにまとめたいと強調しているのに、このような差別主義を持つ牧師を恩師とあおぐとなるとオバマ氏自身の考えが問題になってくる。
ライト牧師の暴言はもう去年からぼちぼちと話題にのぼっていたのだが、どういうわけか先週になって突然あちこちのテレビ局が特集をし始めた。それでいままでいい加減な弁明しかしてこなかったオバマもついに、昨日ハッフィントンポストにおいて公式な説明声明を出すこととなった。

まず最初にいわせていただきますが、問題となっている提言にはわたくしは完全に反対意見であり、強く非難いたします。わたくしはわが偉大なる国を侮辱するような、また我々を同盟国から隔離するような発言は断固非難いたします。またわたくしは個人を侮蔑するような言葉は公の会話において、それが選挙運動の演説であろうと説教壇であろうと、決して使われるべきではないと信じます。つまり、わたくしは問題のライト牧師の発言を完全に拒絶します。

問題なのは、ライト牧師のこの発言はいまに始まったことではなく、オバマがせっせと通っていた20年間一貫して行われてきたのである。オバマは自分の恩師のこうした思想を全くしらなかったはずはない。だとしたら、どうしてこのような人間が説教をしている協会へずっと通ってきたのだ?いまさらこの発言を断固拒絶するという声明文を出すくらいなら、なぜもっと前にこの協会をやめてもっと穏健なキリスト教協会へ籍を移さなかったのだ?牧師の発言が明るみに出てそれを糾弾されて、はじめてその内容を非難するというのもなにか変ではないか?
この声明文はどうもしっくりいかないと感じるのは私だけだろうか?


1 response to バラク・オバマ危機、恩師と仰ぐ牧師の反米過激発言に困惑

In the Strawberry Field16 years ago

スキャンダル続きの民主党に共和党マケインが優勢に!

日本のメディアは次期大統領選挙は民主党のオバマとヒラリーの間だけで選ばれるかのような報道をしているようだが、実は先週たて続けに起きた民主党のスキャンダルで、共和党候補のマケインの支持率があがっている。 バラク・オバマ関係のスキャンダルといえば、先日お話したジェラマイア・ライト牧師の過激発言だけでなく、現在贈賄容疑などで裁判にかけられているアントワン・トニー・レズコ(Antoin “Tony” Rezko)というビジネスマンとオバマの関係が以前にオバマが認めていたよりももっと深い関係であることが明らか…

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