先日来年の2月にニューヨークフィルハーモニックが北朝鮮でコンサートを開くことになったというニュースを読んだばかりだが、それについて、ウォールストリートジャーナルのコラムを書いている演劇評論家のテリー・ティーチアウト(Terry Teachout)の批判が的を射ていると思う。
ニューヨークフィルといえば、アメリカでもっとも古い由緒ある交響楽団である。そのNYフィルの会長が北朝鮮の国連大使パク・ギル・ヨンと肩を並べてピョンヤンでの公演の予定を発表したのを聞いてティーチアウトは恐ろしくて背筋がぞっとしたという。150万人という市民が奴隷労働を強いられている国の金正日という独裁者の前で、自由の国アメリカの交響楽団が公演するなど言語道断だ。しかもこの公演はブッシュ政権の国務庁がNYフィルにかなりの圧力をかけて実現したというのだから信じられない。いったいブッシュ大統領の「悪の枢軸」云々はどうなったのだ?
ティーチアウトは、このような公演は北朝鮮の政府を正当化する猿芝居だという。私はブッシュ大統領が北朝鮮に迎合しているとは思いたくないが、何故米国国務庁が北朝鮮のご機嫌取りをしなければならないのかさっぱり理解できない。
先日私は北朝鮮が日本へミサイル攻撃する可能性について書いたが、北朝鮮が直接日本を攻めてこないまでも、北朝鮮の核技術がイランやシリアに渡り、それがヒズボラなどのテロリストの手に渡れば、世界がどういう状態になるか想像がつくというもの。イスラエルがたたいたシリアの核兵器開発施設は北朝鮮の技術を使ったものだったという噂もあるし、この間もレバノンのヒズボラを北朝鮮が武装しているかもしれないという話がでたばかり。

マコーマック米国務省報道官は13日の記者会見で、北朝鮮がレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなどに武器支援を行っていたとの情報を米議会調査局が指摘したことについて、「情報を確認する立場にはない」としたうえで、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除にあたっては、「すべての入手可能な情報が考慮に入れられる」と述べ、この疑惑が解除の際の検討項目となる可能性も示唆した。

北朝鮮はテロリストに武器を売る条件として日本をせめて欲しいとほのめかすかもしれないし、テロリストも手っ取り早いところで東洋で一番経済力のある日本を叩いておこうと考えるかもしれない。
そういう危険な国にたいして、アメリカが北朝鮮のテロ支援国家指定解除をするかもしれないという話は非常に困惑する。
私は日本にはアメリカとの安保があるから日本が武装しなくてもいいという人に常々いうのだが、アメリカが日本を守るのはアメリカの都合でやっているだけであって、アメリカの国益に直接結びつかなければ日本など簡単に見捨てられる。アメリカがいまのところ北朝鮮のご機嫌取りをすることでアメリカは安泰だと考えれば、アメリカは日本の拉致問題になど親身になってくれないだろうし、それが日本を危険に及ぼすことになったからといって積極的にアメリカが守ってくれるという保証など全くない。安全保障条約なんて紙に方餅同様意味のないものだ。
だから私は日本は自国の防衛をアメリカに頼っていてはいけないと口を酸っぱくして言っているのである。
何にしてもNYフィルが国務庁のプロパガンダに加担する必要はないはず。それが北朝鮮の独裁政権を正当化するというならなおさらだ。


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