イラクでの新作戦が始まって、半年近くたつが、今年9月のイラク米兵の戦死者数がここ最近で最小の数となったという話は以前にもした通りである。しかしこのニュースはアメリカの主流メディアはほとんど報道していない。
ニュースバスターが紹介しているCNNのハワード・カーツ司会のトークショーにおいても、このことが取り上げられた。

ハワード・カーツ司会: イラクからのニュースはここ数年死と破壊の連続で気の滅入るものばかりでした。しかし政権が今週イラク犠牲者の数について向上的な数字を発表するとメディアはほとんど注意を払いませんでした。。CBSの「 イブニングニュース」でもNBCの「ナイトリーニュース」 でもほんの数行、ニューヨークタイムスは10面に、ワシントンポストは14面、USA トゥデイでは16面、ロサンゼルスタイムスではほんの2-3行が第4面の下のほうに載っただけでした。

例外はABCのワールドニュースで、これでは司会者のチャールズ・ギブソンがトップニュースとして報道した。
これについてカーツは、ワシントンポストのロビン・ライト記者と、CNNのバーバラ・スター記者をスタジオに招いて、メディアがイラクからのいいニュースを報道しない傾向について質問した。

カーツ: ロビン・ライトさん、イラクでの犠牲者数減少についてもっとメディアは注目すべきなのではないですか?

ライト:いえ、そうともいえません。これはまだ傾向の始まりですし、いや、まだ傾向といえるかどうかも怪しいのです。それにどうやって数えたかということについてもかなり意見が割れています。イラクには色々な死があるのです。戦闘による死、宗派間争いによる死、犯罪による死などです。アメリカ側が数に入れていないものがかなりあるのです。たとえばイラク南部ではシーア対シーアの暴力が起きてますがこれは宗派間争いの数には入っていません。それにアメリカは南部ではあまり勢力がないのです。ですから数そのものはやっかいなのです。長い目でみて、オディアーノ将軍が今週ワシントンで言っていたのですが、逆行しない勢いを探しているということです。それはまだこの二ヶ月くらいではそこまで達していないのです。

米軍隊志願兵の数など、一年中目標を満たしていても、一ヶ月でも目標に満たない月があると、「米軍志願兵、目標に見たず!志願兵不足に四苦八苦する米軍」などと大々的な見出しで第一面で報道するくせに、イラクで犠牲者が二ヶ月続いて激減しているという数は「やっかいだ」「あやしい」と言って報道しないというわけか。こんなの理屈にあってるだろうか?ニュースバスターのノエル・シェパードも、株市場などでは傾向の最初から今後どうなると予測をたてるジャーナリストはいくらでもいるという。ところがことイラクとなるとジャーナリストは慎重になるというのはどうも納得がいかない。これについてもうひとりのゲスト、バーバラ・スターはこう説明する。

バーバラ・スター:それが問題なんですよ。私たちはイラクでアメリカ兵が殺されている数が減少の傾向にあるのかどうかわからない。これは継続した進歩とは言えません。確実な進歩への可能性としては非常に良い第一歩ですが。

「非常に良い第一歩」ならそう注釈をつけて報道すればいいではないか。良い傾向かどうかわからないから報道を控えるというのは、ジャーナリストが一般市民の判断能力を信用していない証拠だ。これが良い傾向かどうか市民の判断に任せればいいではないか。さすがにカーツもこの答えには偽善があると察知したらしく、もしニュースが逆にイラク市民の犠牲者が増えたとかいうものだったら、新聞の第一面を飾るのではないかという質問に対して、スターは、、

スター:もちろんそうでしょう。それならどう考えてもニュースですから。いいですか、ペンタゴンの記者ほど死者の数を報道をしたり、悲しむ家族や手足を失った兵士にインタビューするのを止めたいものはいないのです。でもこれは本当に長続きする進歩なのでしょうか?

ペンタゴンはこれまで5年間も進歩はあった、進歩派あったといい続けてきました。疑い深くて申し訳ないですが、私としてはたかが一ヶ月ちょっとの結果をみても手放しで喜べないのです。

死者が増えているという話はニュースになるが、減っているという話はニュースではない、ときたか。もうジャーナリストとして偏向のない報道をしようなどという気持ちはさらさらないと白状したようなものだ。


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