読者のみなさんはリンディホップという踊りをご存じだろうか。これは1920年代にアメリカはニューヨーク、黒人街のハーレムで発明されたジャズダンスだ。一応スイングの一種ということになっていて、ジャイブやジルバと似てはいるが、イーストコーストスイングとリンディホップでは月とスッポン。能と阿波踊りくらいの差がある。さすがに黒人の間で人気を呼んだ踊りだけあって、動きは激しく凄まじく早く、ラフで危険な動きが多数取り入れられている。
もともとは男女のペアは双方とも足を床につけたまま踊っていたが、1930年代になると相手の頭の上を飛び越えたり、男性が女性を持ち上げて放り投げたりするような動きがフランキー・マッスルヘッド・マニングというダンサーによって発明された。
リンディホップという名前の踊りの創設者であるショーティ・ジョージとビッグベンがリポーターからこの踊りはなんというものかと聞かれた時、丁度リンドバーグが大西洋横断に成功したニュースの見出しに「リンドバーグ(リンディ)大西洋を飛び越える(ホップス)!」と書かれていたのをみたショーティが「リンディホップさ!」と答えたが最初だと言われている。
口で説明するより見てもらったほうが早いので、1941年のHellzapoppin’という映画の一部に出てきたこのシーンをまず見ていただこう。振り付けはフランキー・マニングで、踊りはフランキーが結成したハーレム・コンガルーンズで、フランキー自身も踊っている。



これだけすばらしい踊りなのに、なぜか1950年代にはロックにおされてリンディホップはダンスフロアから消えてしまった。ロックの踊りはツイストとかマッシュポテトとかでパートナーを要しない一人でリズムにあわせて適当に踊るスタイル。誰でも踊れるせいなのか技術を要するリンディよりも人気が出てしまった。
もちろん1970年代になるとディスコの時代。ジョン・トラボルタがサタデーナイトフィーバーで一躍有名になった時代。ディスコはペアを組んでリフト(男性が女性を持ち上げる)のある面白い振り付けもあったにはあったが、リンディホップのようにパートナーを振り回したり放り投げたりするエネルギッシュな踊りとはかなりかけ離れたスタイルだった。
とろこが1980年代に不思議なことが起きた。ビデオ録画技術VCRの到来である。VCRによって古い映画を若い人たちが観ることが出来るようになると、誰かが埋もれていた昔の映画を掘り起こしてきてこの幻の踊りに出くわしたのである。そしてその古いビデオの映像だけをたよりに今まで見たこともない踊りを再現させようとしたわけだ。
幸運なことに、20年代から30年代にリンディの振りを多く振り付けしたエキスパート、フランキーはまだ生きていた!そこでリンディファンたちはフランキーの教えを受けリンディホップの再現に成功したのである!実はフランキーは今現在も93歳の若さで健在。やっぱり一生踊ってきたせいかな?
先週の木曜日、ミスター苺とカカシは近くのお寺で開かれた全国リンディホップ選手権の地区予選を見てきた。コンテストが開かれる前や審査中は一般人がダンスフロアに出て自分達で踊りを楽しめたので、我々苺畑夫婦もリンディに挑戦。しかしどう見ても周りで踊っているひとたちと同じスタイルの踊りには見えない。ダンス会場は満員で、私たち夫婦がえっちらこっちら習ったばかりのステップを踏んでいると、周りで回転しまくってる若い男女に蹴られるはふっ飛ばされるはで大変だった。さて、それではここで全国選手権の決勝戦の模様をお届けしよう。振り付けがほぼ昔のままであることに注目。



最初はハーレムの黒人街で生まれたリンディホップだが、新世代のファンはなぜか白人や東洋人ばっかり。ここ数年ヨーロッパでもリンディは人気があるという話だ。しかしよく見てみると黒人の間で始まったブレークダンシングのなかにもリンディの動きがかなり取り入れられていることが分かる。
最近はアメリカの人気テレビ番組でリンディホップが紹介されるなど、リンディは若いひとたちの間でもわずかながら知られはじめている。この間地区予選が行われたうちの近所のお寺では、毎週木曜日にリンディホップのパーティがある。入場料たった7ドルで8時から午前二時過ぎまで踊り放題。早くいけば無料レッスンも受けられる。
売ってるものはペットボトルの飲料水のみ。アルコールも食事も出ないのに会場はいつも満員。もっともこんな踊りを酔っぱらってやっていては危なくてしょうがない。
踊りが激しいので若い人たちばかりかと思うとそうでもなく、中年の苺畑夫婦より年上のカップルをいくらも見かける。先週の木曜日には60歳過ぎの男性が20代の女性を振り回していたのを見たが、あまりの激しい踊りに若い女性のほうがついていけないほどだった。
当然のことながら苺畑夫婦はここで紹介したような動きは何一つできないが、基礎ステップだけでも覚えて、自分なりに楽しめるようになりたいと思っている。それにしても若い人たちの間で失われた芸能が生まれ変われるというのは喜ばしいことだ。これからもリンディホップの人気があがることを願う。
追記:日本でもリンディホップファンはいるはずだと思って検索してみたら、東京スイングダンスソサエティーとかスイフルなんていうスタジオがあるみたいなので、興味のある人は覗いてみてはいかがかな?


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