ことしのはじめ頃、今度の中間選挙への共和党の作戦は、ブッシュ大統領から独立した個人の議員としての特性を出すことを強調しようというものだった。それというのも、ブッシュ大統領の支持率が35%とかいう低さだったこともありブッシュと近い関係にあるとされることが不利に働くと考えたからである。
民主党もあまりブッシュ大統領のこだわって、ブッシュ政権のテロ対策などに注目すると、民主党はテロに甘いというイメージをさらに強めてしまうため、民主党リーダーのナンシー·ペロシ女史は共和党リーダーのトム·ディレイが収賄罪に問われて辞任したのを利用して、共和党の「腐敗の文化」を選挙運動にもってくる作戦をとっていた。しかし民主党員による収賄罪が次から次へと明るみに出たため、民主党はこの作戦を捨てざる終えなかった。
テロ問題やイラク問題からは話をそれせたいペロシ女史の思いとはうらはらに、民主党内部ではイラク戦争絶対反対を唱える極左翼の台頭がめだつ。この間のコネチカット州の上院議員民主党候補を選ぶ選挙の時も2000年には民主党の副大統領候補として出馬したこともあるベテラン議員、ジョー·リーバーマン議員がまったくの無名の新人ネッド·ラモントに負けるという一幕があった。リーバーマン議員はリベラルで民主党の本筋からは全く離れない生粋の民主党員である。だがイラク戦争に関しては一環してブッシュ政策を支持してきた。民主党候補の座が危ぶまれるという時でさえイラク戦争は正しいという姿勢を崩していない。民主党の極左翼は激しいキャンペーンをして反戦派のラモントを応援した。
このことで震え上がったのはイラク戦争を支持した民主党議員たちである。極左翼として圧倒的人気を誇るブログ、デイリーコスが主体となって、賛戦派の民主党議員たちへの激しい攻撃が始まったからだ。民主党内で次期大統領候補ともいわれているヒラリー·クリントン女史ですら、自分のイラク戦争支持の記録を説明しなければならない立場に追い込まれている。
民主党リーダー、ペロシ女史がどう思おうと、民主党の選挙運動は反戦一直線となったのである。だが果たしてこの作戦はいい考えなのだろうか?
アレックスさんのブログの記事「中間選挙でのテロとイラク問題」で、アメリカ人のブッシュ政権による対テロ戦争に関する意識調査が紹介されている。

ギャラップ/USAトゥデーが今年の8月に行なった調査では…アメリカ国民は現政権が自分達の国を安全にしてくれていると信じているものの、大統領の政策への支持率は下がっている。9・11直後から、市民の自由への侵害を懸念する意見も強まっている。このような動向の原因として考えられるのは、恐怖感の鎮静化、アメリカ国民が伝統的に抱いている連邦政府の強大化への懸念、そして現政権の政策が挙げられる…

国民の76%が世界はより危険になったと答えている。これはすさまじい数字である。さらにブッシュ政権の政策
全般とテロ対策への支持率も急激に下がっている。政策全般での支持率は2002年1月の83%から2006年8月には40%に急落している。他方で対テロ戦争での支持率は2002年1月の88%から2006年8月には47%に落ち込んでいる。
しかし今年の8月にCBSニュースが行なった調査ではブッシュ政権がアメリカをテロ攻撃からより安全にしたと答えた割合は51%なのに対し、より危険になったと答えたものは29%にとどまった。実際に9・11以降はアメリカ本土に大規模なテロ攻撃は起こっていない。この点から、現政権のテロ対策にはある程度の成果を収めている。

これだけ読んでいるとアメリカ国民の間では、ブッシュ政権や共和党のテロ対策への不信感が強まっているように思われ、またテロ対策を口実に国民の人権が侵害されているのではないかという懸念も伺われる。イラク戦争への支持もへっているかのようである。しかし、この世論調査にはこの間のロンドンテロ未遂事件の影響がまだあらわれていないのではないだろうか?
政治評論家のマイケル·バローン氏(Michael Barone)はロンドンテロ未遂事件はアメリカ市民にテロの脅威を改めて思い出させたと語る。

今月の出来事で意見を固める一番の原因となったのは8月9日のロンドンにおいて、23人のイスラム教徒が大西洋空路のアメリカの航空機を爆破する計画をたてていた容疑で逮捕されたことにあると思う。
この逮捕によって、まだ世界には、(多分この国にも)我々を殺し我々の生活を破壊しようとしている人々がたくさんいるということを国民に思い出させた。

またバローン氏はこのほかにも「ユナイテッド航空93便」や、オリバーストーンの「世界貿易センター」の映画が公開されたり、911の記念日にはテレビでいくつも911の原因について特別番組などが放映される予定があることなどをあげ、これらも国民にテロの脅威を思い出させる一因になると語る。
NSAによる海外のテロリストから国内にかけてくる電話の盗聴なども、民主党はアメリカ国民を盗聴の対象にしていると批判てきだったが、今回のイギリスのテロが未然に防げたのも、イギリス政府の積極的な盗聴作戦などが貢献しているとされ、対テロ政策の重要性が明るみに出た。
もし「恐怖感の鎮静化」がテロに強いといわれる共和党の支持率低下に結びついていたのだとしたら、今回の事件によってアメリカ人が積極的な対テロ政策の必要性をあらためて考えるようになったばあい、対テロ政策に消極的な民主党の支持率にも影響が出る可能性はある。
また、イラク戦争においても、イラク戦争に負けることがアメリカを危険な状態にするとアメリカ人が解釈した場合、なにがなんでも戦争反対、いますぐ撤退を求む、という民主党の強硬姿勢がかならずしもアメリカ市民の支持を得るとは限らない。現に、コネチカットで民主党の候補に選ばれなかったリーバーマン議員は無所属として立候補することにしたが、イラク戦争で戦った元兵士らを出演させた「リーバーマン議員の応援が力強かった。」「我々を背後から支援してくれるリーバーマン議員のおかげで勇気づけられた。」と証言するコマーシャルが影響したのか、リーバーマン議員の支持率はラモント候補よりも上昇している。イラクでは宗派間でも争いの犠牲者は先月よりも今月は3割がた減っている。もしこのままイラクの状態が好転すればイラク戦争への捉え方もかわってくる。
この間カカシもブッシュ大統領の支持率がじわじわあがってきていることを書いたばかりだが、イギリスのテロ未遂事件の後に行われたRassmusenの世論調査でも大統領の支持率上昇が現れている。これによると、41%のアメリカの大人がブッシュ大統領の仕事ぶりを評価すると答え、56%が評価しないと答えた。41%ではまだまだ低いように思えるが、去年の一時期35%まで落ちていた支持率を考えるとかなり挽回したといえるのである。
共和党も、民主党も、テロ脅威やイラク戦争を選挙の主題にしたくないというのが本心だろう。だが、彼等が好むと好まざるとにかかわらず、アメリカは戦争中なのであり、この話題を避けることはできない。だったらここは双方とも対テロ政策を全面的に押し出して、弁護するなり攻撃するなりして、二つの党の違いをはっきり国民にアピールすべきであろう。
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1 response to テロ脅威が米中間選挙に与える影響

舎 亜歴16 years ago

記事内にリンクが張られているのでトラックバックの必要がなくなってしまいました。Ha ha ha.
カカシさんの引用部分にもあるように、ブッシュ政権の支持率低下と言いながら、一方でアメリカをより安全にしてくれたという評価もあるんですね。
イラクでテロリストが宗派・民族間の対立を煽っている以上、中途半端な撤退はアメリカの「敗北」と宣伝されてしまいます。それどころか、即時撤退派はその後のイラクをどうするのかという初歩的な問いに答えてくれていません。

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