読者諸氏はイギリスのLGBT市民団体ストーンウォールのことはご存じだろう。拙ブログでも何回かお話したことがある。もともと彼らは同性愛者保護という趣旨で始まった団体だったのだが、近年はほぼトランスジェンダー政策一筋になっていた。さて、最近BBCのラジオDJスティーブン・ノーランがストーンウォールの多大なる影響力について、その本質を暴くポッドキャストを何回かのシリーズに分けて放送した。ちょっと中身がぐちゃぐちゃしすぎているため私は三話まで聞いて諦めた。しかしそれに関連する記事を見つけたので先ずそちらから読んでみよう。

ストーンウォールはダイバーシティー(多様性)専門家を自称する慈善事業ということになっているが、実は彼らは無益団体などではなく、諸企業に「ダイバーシティーチャンピオンズ」という多様性アドバイスを有料で提供している。要するに企業は自分らのやっていることがストーンウォールの言うLGBT多様性に従っているかどうかお金を払ってお伺いを立てているというわけである。そしてイギリスの公共放送であるBBCもストーンウォールに多額の金を払って指図を仰いでいた。

ところが最近になって風向きが変わってきた。イギリスには Ofcom と呼ばれる電気通信を管理する政府機関があるが、ここもストーンウォールの指図にずっと従って来た。ところが、最近になってOfcomおよび人権擁護委員会などが次々にストーンウォールとの契約更新を止めた。

そして最近BBCもストーンウォールと関わりすぎて中立性が失われていると考え、ストーンウォールとの契約を継続しない方向に向かっている。

何故このような傾向がみられるようになったのだろうか?きっかけとなったスティーブン・ノーランのポッドキャストに関するBBCの記事から読んでみよう。

先ほども書いた通り、ストーンウォールは英国全土で多大なる影響力を持つロビー団体だ。それが、この度のBBCの捜査により、この団体の怪しげなスキーム(企て)が暴露された。そのせいで多くの著名な組織が次々とストーンウォールと距離を置くようになったのだ。

最近問題になっているのはストーンウォールの二つのスキーム(企て)である。一つが先ほど紹介した有料の「ダイバーシティーチャンピオンズ」そしてもう一つが無料の Workplace Equality Index (WEI 職場平等指標)。

この指標はようするに職場がどれだけLGBTQに迎合しているかを採点する通知表のようなもの。ノーランの得た情報によれば、ストーンウォールは各組織にこの点数を挙げるように要請していた。その内容についてノーランは Freedom of Information (FOI) という法律に基づいて多々の組織から情報を取り寄せたが、BBCはじめいくつかの組織はストーンウォールの経営に悪影響を及ぼすという理由で情報提供を拒否した。

Ofcomはテレビやラジオの局に関する情報をWEIに提供していた。8月にチャンピオンズからは脱退したものの、WEIへの情報提供は未だ続けている。ストーンウォールはOfcomに対して、どのようにLGBTQに迎合した方針を取ってきたかを質問、Ofcomはその例として、ある局のラジオ放送内でDJがはなったトランス差別の発言を罰したと答えている。

トランス差別の発言というのは、とあるDJが自分の6歳の娘が性別で分けられていない更衣室で着替えるのは気が引けるとし、トランスジェンダーのことを「彼、彼女、それ」と表現したというもの。このDJは自分の番組で謝罪を強制された。他にも「妊娠した男」という題名の他所の局のドキュメンタリー番組をおちょくった番組を罰したなどの例がある。

Ofcomは放送基準はOfcom独自の方針であり、ストーンウォールの影響は受けていないと主張するが、もし影響がないなら何故金を払ってチャンピオンズに参加していたのか不思議だ。

BBCにおいては人事に関してもストーンウォールと密接なつながりがある。BBCはスタッフについて多様性や許容性に関してストーンウォールのアドバイスを仰いでいる。ということは、スタッフのなかに行き過ぎたLGBT方針に反対する人が居れば、解雇されたり左遷される可能性は大いにあったということだ。

問題なのは、BBCはストーンウォールのみがLGBTQの専門家であるとし、他にも色々と異論があるにもかかわらず、すべてストーンウォールの言いなりになっていたということだ。BBC内部でのLGBTトレーニングではストーンウォールのメンバーが講師としてやってきてストーンウォールの教材を使っていた。

BBCで25年勤め、最近退社したサム・スミス記者はBBC内ではストーンウォールに批判的なことを言うのを恐れている人が結構いたと証言している。そしてストーンウォールの方針はBBCの番組作りにも大きな影響を及ぼしていると語る。The Nolan Investigates podcast is available on BBC Sounds

私は昔からBBCの番組には良いものが多いので観ているのだが、確かに最近はあまりにもポリコレが行き過ぎで観られなくなったものもある。例えば超長寿番組のドクターWHOなどがいい例。この番組は1960年代から続いており、90年代に一旦中断したが、また2000年代から再開された。主役は何年かごとに入れ替わるが、ドクターは常に男性で、そのパートナーは若く美しい女性というのが定番だった。ところが最新のドクターは女性となり、彼女のアシスタントに黒人男性、パキスタン女性、白人男性、と三人。それだけならまだしも、筋があまりにもポリコレ過ぎてつまらないったらない。私は最初のシーズンだけ観てみるのを止めてしまった。そう思ったのは私だけではなく、視聴率がドクターシリーズ始まって以来の低さとなり、主人公の女優が自ら降板するという事態にまで発展。

また私たち夫婦が良く見ている警察シリーズでも、片田舎の保守的な村の設定なのに、やたらとゲイやレズビアンやトランスジェンダーが出てくる。人種も多種多様。それでも話の筋に必要性があるならいいが、まるで無関係にLGBTの人が出てくると話がややこしくなってしまう。このシリーズもいつまで観続けられるかわからない。

BBCは国営放送だ。イギリスにもニュースはテレビやラジオから得るという人も多いだろう。それがこうもLGBTにべったりの政策を取っているとしたら、いったいどんな偏向報道がされているのかわかったのものではない。しかし内部告発があって、それをちゃんとポッドキャストで放送したということは、BBCにも肝の据わった人が居る証拠だ。

イギリスやアメリカで父母たちが行き過ぎたLGBT教育に抗議するようになったことも含めて、もしかすると西側諸国はやっとこのLGBT狂気から目覚めつつあるのかもしれない。

その点日本は周期遅れで欧米の間違いを繰り返そうとしているのが歯がゆい。