日付け → →June 29, 2014

ジャージーボーイズ、イーストウッド監督、舞台俳優を起用して大成功

1960年代後半から70年代前半にティーンポップの大人気歌手だったフランキー・バリとそのボーカルグループ、フォーシーンズのメンバー四人の若者たちの伝記映画。ジャージーボーイズというタイトルは、四人ともニュージャージー州出身だからということだけでなく、四人が育った環境が、貧しいイタリア移民子孫の集まる地元で、マフィアがらみの伝統文化が深く浸透しているという意味からくる。言ってみれば東京下町の江戸っ子気質みたいなものかな。マフィアは除くとして、、(日本語字幕予告編はこちら

アクションスターで一世を風靡したクリント・イーストウッド監督は、ハリウッド映画では珍しく映画ファンには知名度の低いミュージカル舞台俳優を起用。2005年ブロードウェイのオリジナルキャストで主役のフランキー・バリを演じてトニー賞受賞経験もあるジョン・ロイド・ヤングをはじめ、作詞作曲及びキーボードのボビー・コーディオ(エリック・バーガン)、ベースのニック・マシ(マイケル・ラマんダ)など四人のうち三人までもがオーストラリアやラスベガスの舞台でそれぞれの役をこなしてきたベテランミュージカル俳優たち。わずかにトミー・デビートだけが多少知名度のあるテレビ俳優で映画経験もあるビンセント・ピアッツアが演じている。

脇にはフランキーの守護神でマフィアの親分を演じるベテラン俳優のクリストファー・ウォーキン、作曲家としてのボビーの才能を発見するジョー・ペシ(そ、あのジョー・ペシ!)を演じるジョーイ・ルソが映える。

イーストウッド監督は、歌える俳優を起用したことをフル活用し、バックミュージシャンを使ってシーンで歌われる歌は生で録音したんだそうだ。フォーシーズンズの四人のハーモニーは抜群で主役のロイドヤングの声はフランキーそっくり!高音のフォルセットが凄く冴えてる。

映画全面を通じてヒットに次ぐヒットを飛ばしたフランキー・バリとフォーシ−ズンと後にバリがソロとなってからのヒット作が映画の進行とともに流されるが、それぞれの曲がその時のムードにぴったりはまっていていい。

今の若い世代はフランキー・バリなんて聞いた事がないかもしれないが、シェリー,ビッグガールズドンクライ、ウォークライクアマン、キャントテイクマイアイズオフオブユーなど、彼の歌は今でも歌い続けられているので、バリが歌ったとは知らずに耳には馴染みのある曲が多いはず。

映画のテーマは四人の音楽活動だけでなく、最年長でフランキーを実の弟のようにかわいがっていたトミーとその幼なじみのニックの三人の深い友情が根底にある。若い頃から指導力があり行動的なトミーは自然とグループのリーダー及びマネージャーのような役割を果たしグループの金銭の取り扱いもしていた。だが、トミーは若い頃からチンピラで常に怪しげな商売をしては刑務所を出たり入ったりしてきた前科者。フランキーやニックが契約書など交わさず何でもジャージーのやり方だと言って握手だけして、何もかもトミーに任せっきりにしてきたことが後になって大きな問題を引き起こすことになる。

幸いにしてトミーの友達のジョーイの紹介で最後に加わったボビーは、同じニュージャージー出身でもちょっと毛色の違う人種。他の三人と違ってマフィア文化とは無縁だし教養もあり作曲の才能だけでなくビジネスの才能もあった。ボビーはグループとは別にフランキーと作曲家とソロ歌手としてのパートナー契約を結ぶ。この契約が後にトミーが引き起こす膨大な大借金からグループを救うこととなる。

私はフォーシーズンズ及びフランキー・バリの歌のほとんどをボビー・コーディオが書いていたとは全く知らなかった。トミーとニックは幼なじみだし、それぞれ多少の才能はあったとはいえ、グループのメインはフランキーとボビー。トミーの借金問題でトミーとニックが抜けてグループが解散した後も、この二人がずっとパートナーとして継続できたことは音楽ファンにとっては非常に幸運なことだった。

主役四人の歌唱力は申し分ないが、トミーのビンセント・ピアツアの演技はさすがである。多少音楽才能はあるとはいえ、所詮チンピラなやくざとしての域を抜けきれない哀れな男。この役だけは映画経験のあるピアツアを起用したクリントン監督の意図は理解できる。

ところで元が戯曲だから映画でも舞台の雰囲気があちこちに漂っている。例えば四人がそれぞれカメラに向って本音を話かけるシーンなどはシェークスピア風。最後に登場人物が集まって踊ったり歌ったりするのも舞台のカーテンコール風で思わず「ブラボー」と歓声を上げたくなった。この映画には絶対にアカデミー賞を取ってもらいたい。これでロイド・ヤングがアカデミー主演男優賞を取ったら、彼はトニーとアカデミー両方で同じ役で主演男優賞を取ることになる。非常に興味深いことだ。

では最後に本家フランキー・バリーの"I can't take my eyes off of you"アイキャントテイクマイアイズオフオブユー(君から目をそらせない)のオーディオを楽しんでもらおう。

June 29, 2014, 現時間 9:51 AM | コメント (0) | トラックバック (0)

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