April 24, 2007

「イラク戦争は負けた」米民主党首の失言に波紋

さっき私は今滞在中のホテルのジムでちょっと運動をしていたのだが途中で帰ってきてしまった。それというのも私の運動は非常に不愉快な形で邪魔されたからだ。ジムで30分ほどウエイトトレーニングをしていたところで一人の男性が入ってきてテレビをつけた。番組はCNNニュースでイラクで自爆テロがあったというニュースだった。それはいいのだが、CNNは昨日9人のアメリカ兵が自爆テロで殺されたという話からこれまでに何人のアメリカ兵が自爆テロに殺されてきたかという話を延々とし始めたのである。私はそういう話を聞きながら運動したくなかったのだが、男性は自分の使っているマシンが煩かったのか音量を大幅に上げたので嫌でも聞こえてくる。いくら私がMP-3の音量を上げても無駄だった。私は我慢できずに中途半端でジムを出た。

昨日も一日中ホテルはネットアクセス不能だったため仕方なくテレビでCNNニュースを観たときも、CNNバグダッド支部長のマイケル・ウエアというオーストラリア人がアメリカ兵の戦死を喜びを隠し切れない顔で語っていた。前のCNN局長のイーソン・ジョーダンもいやらしいやつだったが、こいつはもっとえげつない。

それにしても、いったい何時から味方の犠牲者の数を数え上げることが戦争のニュースだということになったのだろうか? こんなものがニュースとして成り立つならCNNはわざわざ高いお金を出して支局を設ける必要などないではないか。イラク内政省とアメリカ中央司令部の公式発表だけで充分だ。

第二次世界大戦のニュースが味方側の戦死者の数を数え上げるだけで戦況がどうなっているのか全く説明をしなかったなら、どれだけのアメリカ人が戦争を支持しただろうか?D-デイのノルマンディ上陸も膨大な数の戦死者についてだけ報道し、同盟軍がドイツに上陸したことを報道しなかったならどうなっていただろうか? 私ははっきり言って当時CNNが存在していたらアメリカ人は今頃ドイツ語を話していただろうと思うね、全く。こんなニュースばかりを毎日聴かされていては戦意を奮い立たせるのは困難である。ただでさえ苦しい戦争をしているときに、わざわざ国民の戦意を喪失させるような報道をするアメリカの主流メディアには腹がたってならない。

しかしもっと腹がたつのは現場の戦況とは無関係に自分たちの政治力を強めるためどうしてもイラク戦争に負けたいアメリカ民主党の政治家たちである。彼らはなにかにつけてブッシュ大統領のイラク政策を邪魔してかかっているが、先日の民主党ハリー・リード党首の発言はそのなかでもきわめて無責任なものだった。以下ミスター苺曰く。

本日(4・19)臆病者の上院議会多数派代表の臆病者ハリー・リードはイラク戦争について「この戦争には負けた」と断言した。この発言で奴は「指導者」としての地位失格だ。 奴は指導するどころか脱走しようってんだから。

リードはブッシュ大統領との会見の後ホワイトハウスを出る際に記者たちの前で勝ち誇ったように敗北宣言をした。リードは特に対ゲリラ作戦を「増派」とさげすんだ後、昨日の大規模な自爆テロを指して、この作戦は客観的に失敗だと語った。

「私はこの戦争は負けたと信じます。イラクでの昨日の激しい暴力沙汰でもわかるように、増派は何の効果もあげていません。 」とネバダ代表のリード議員...

すばらしい理屈だよ。それをいうなら昨日はちょっと寒かったから地球温暖化なんて起きてないっていうのと同じじゃないか。

このリード議員の降伏運動はこの発言にとどまらない。同議員は数日中に民主党が多数派を占める議会において米軍のイラク撤退を10月1日から6ヶ月かけておこなう議決案を通すと宣言した。

無論このような議案は上院でも下院でも通るはずはない。だが大事なのは議案が通るかどうかではなく、アメリカ国内及び国外へアメリカ議会はイラク撤退を考えていると提唱することに意義があるとリード議員は考えているわけだ。(イラク及び中東を混乱に陥れようというならこれはいい考えと言える。)

「問題は、、、」とリード議員、「ジョージ・W・ブッシュはまだアメリカ軍の総司令官です。これは彼の戦争です。」

本当の問題はここだ。最初からリード及び民主党はこのイラク戦争を党派間争いとして(利用できる)機会だと思ってきた。

民主党は世界に、そして特にアメリカの敵に対して、統一した姿勢を見せることを拒否してきた。なぜなら彼らの歪んだ考えでは(統一した姿勢を見せる)ことは2008年に民主党が大統領選挙に勝つ可能性を低めると判断したからだ。

このようなリード党首に鬱憤を隠しきれないチェイニー副大統領は、いくら地元で票につながるからといって敗者的な発言は不適切だと厳しく批判。リード議員も負けじと「ブッシュの番犬」のいうことなど気にならないなどといって反論した。

ところで民主党が「単なる増派」といって全く成果を挙げていないと馬鹿にしているこの作戦は成果を挙げていないもなにも、まだ本格的な作戦体制に入っていないのである。アメリカの主流メディアがアメリカ兵の戦死者の数をうれしそうに数えていないで、デイビッド・ペトラエウス将軍の作戦がいったいどういうもので、今どのくらいのところまで進んでいるのか、何時ごろその攻撃は全面体制に入るのか、ということをもっと詳しく庶民に説明してくれれば、リード議員の「イラク戦争は負けた」発言がどれほど無責任で事実に反したものであるかが解るはずなのである。

ウィークリースタンダードのよればここ2~3ヶ月のアメリカ軍の行動はクリア&ホールド作戦(掃蕩制覇)の基盤つくりなのだという。アメリカ軍がすでに実行している基盤つくりとは:


  • バグダッドや、付近のアンバーやサラハディンやダイヤラ地区にあるアルカエダやスンニ反乱分子のアジトをたたく。

  • バグダッド中に拠点を配置し初段階の掃蕩を行う。

  • 地区ごとにコンクリートの防御壁を儲け市民や交通の出入りを厳しく規制し、今後の作戦の準備態勢を整える。

  • サドルの遁走ですでに弱まっているシーア民兵の重要なリーダーたちを取り除くことによってサドル組織の力をさらに弱める。

このアメリカ軍の新作戦に対応すべく、敵側も作戦を変更。攻撃の焦点をバグダッド南部へと移行した。ペトラエウス将軍らは南部へ援軍を送りこみまたディヤラ地域にもさらに援軍を送った。戦略とはこのように臨機応変に状況に機敏に対応していくことにあるのだ。アメリカ軍の作戦は古いアジトを捨て去った敵に別の場所で新たな温床を持たせないよう先手先手を打って行くことにある。

この掃蕩制覇作戦が本格的に行われるのは5月の終わりから6月の初旬に予定されている。そして作戦が完成するまでにはさらに数週間がかかるとされている。そして作戦が成功か失敗かを判断できるのはそれからさらに何週間も後のことになるだろう。イラクではまだ増派のための援軍出動すら完成していないのである。

今アメリカに帰国して議会の前で戦況を説明しているペトラエウス将軍は、常日頃から作戦の成果はこの秋ごろにならなければわからないと語っている。

にもかかわらず非国民のリード議員は現場の専門家であるペトラエウス将軍の意見を無視して現実はイラクは負けていると言い張るのである。CNNでのインタビューで司会者の、ペトラエウス将軍はいわゆる「増派」は成果を挙げていると語っているがどう思うかという質問に対してリード議員は「信じませんね。なぜならそれは起きていないからです。現実を見つめさえすればそれが解るはずです。」と答えた。

イラク戦争に勝てる可能性があるという現実が自分の再選に結びつかなければ是が非でもイラク敗北を現実にし、それを口実に2008年の総選挙で民主党の議席を大幅に増やし大統領選挙にも勝とうというのがリード議員並びに民主党の狙いだ。そのためにどれだけ多くのアメリカ兵やイラク人が奮起だったアルカエダの自爆テロの犠牲になろうと一向にお構いなしというわけである。

これが非国民でなくてなんだろう?

April 24, 2007, 現時間 7:17 PM

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下記は他のサイトからのリンクです 「イラク戦争は負けた」米民主党首の失言に波紋:

» 嘘だらけリード米上院議員「イラク戦争は負けた」発言 from In the Strawberry Field
米上院議会の多数党リーダーである民主党のリード上院議員の「イラク戦争は負けた」宣言は引き続き色々な波紋を呼んでいる。 この間もディック・チェイニー副大統領がリード議員を強く批判した話をちょっとしたが、私が読んだAPの記事ではその内容まではあまり触れていなかったので、ここでもう少し詳しくご説明しよう。普通副大統領は議会には出席していても自分から意見を述べるということはしない。議案の投票にも賛成と反対が五分五分の時だけ投票して同点を防ぐくらいだ。その副大統領がリード議員の発言について記者たちの前で抗議す... [Read More]

トラックバック日付け April 26, 2007 3:51 PM

» イラク戦争新作戦が花を見た2007年を振り返る。裏目に出た米民主党の反戦政策 from In the Strawberry Field
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トラックバック日付け December 30, 2007 3:32 PM

コメント

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下記投稿者名: popper

私は、管理人氏の見方とは少し違うね。CNNの人間が、いやらしいのは事実でしょう。民主党の人間が、自分の党しか考えてないのも事実でしょう。しかし、最初から私はアメリカは、この戦争で負けるかも?と思いましたぜ。どうしてかって?戦争というのは、長期的なプロジェクトです。四半期のレポートで株を売ったり買ったり、それに合わせて経営者が経営している国で、戦争という長期的なプロジェクトは困難です。むしろ、よくここまで我慢したなあと感心してるぐらいです。つい最近、トヨタがGMを抜いたそうですね。モノになるか分からない技術に惜しみなく金を注いだトヨタ。そういうことはしなかったGM。じゃあ、アメリカの強みは何か?頻繁に売ったり買ったりする金融業ですな。だから民主党はイラク戦争もショート・ポジション。「アメリカがイラク戦争を続けられるなら、GMがトヨタに負けるなんてことはなかっただろうよ」といっておきましょう。

上記投稿者名: popper Author Profile Page 日付 April 25, 2007 9:14 AM

下記投稿者名: scarecrowstrawberryfield

Popperさん、

確かにビジネスの面では近視眼的なやり方をしているアメリカですが、こと戦争にかけては案外粘り強さも持っているんですよ。ベトナム、レバノン、ソマリアで仕事を中途で放り出して帰ってきてしまった過去があるので、アメリカ人は戦争を最後までやらないという印象を受けます。

しかし南北戦争でも途中で北側では大統領選挙が行われリンカーンは危うく大統領の座を奪われるところでした。あの時も議会がリンカーンの総指揮にいちいち口を出し、この戦争には勝てない南部の連中は独立させてやれっていう意見がかなりあったのです。

南北戦争の犠牲者は今のイラク戦争などとは比べ物になりません。しかも同一民族同士の戦争です。アメリカ人にはそういう根性もあるんですよ。

だから私はイラク戦争も諦めていません。それに、イラクで負けたらそれはイラク戦争だけでなく対テロ戦争の第一段階に負けたことになり、今後もっと恐ろしい戦争と取り組まねばならなくなるでしょう。アメリカは負けている余裕は全くないのです。

カカシ

上記投稿者名: scarecrowstrawberryfield Author Profile Page 日付 April 25, 2007 11:24 PM

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