July 8, 2007

空想歴史:もし原爆が落ちなかったら、、、

昨晩友達のリー・ポーターが彼が1998年に書いたエッセーをもってきてくれた。このエッセーは空想科学小説のなかでもアルタネートヒストリーというジャンルに属する架空の歴史を背景にしたフィクションだ。アルタネートヒストリーの例としては、カカシの友人ブラッド・ライナウィーバー著の「もしナチスドイツが第二次世界大戦に勝っていたら、世界はどうなっていたか」というテーマのムーンオブアイスなどがある。

リーのエッセーはアメリカが広島・長崎に原爆を落とさなかったならどんな世界になっていたかという話を、すでに原爆が落ちなかった世界に生きた歴史家が何年か後に歴史を振り返るという形で書かれている。

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第二次世界大戦の数々のシナリオを模擬するコンピューターモデルの結果はちょっとした話題を呼んでいる。盛んに議論されている模擬シナリオのひとつに、ハリー・S・トゥルーマンが日本にたいして原爆を使う決断を下すというものがある。このシナリオでは戦争に疲れきっていた世界はこれによって日本の降伏が早まったことに胸をなで下ろした。しかし安堵の気持ちはすぐにそのような恐ろしい武器を使ったことが正しかったのだろうか、アメリカの核兵器独占の時代が終わった時、アメリカは自ら作り出した道具に滅ぼされるのではないかというような疑心と恐れに変ぼうした。しかしシュミレーションは驚くべき結果を描いている。多々の都市が破壊される暗いイメージと共に核兵器の備蓄が戦争阻止の戦略となり、核兵器を持つ国々の指導者たちは未来の世界危機の際に最後の線は絶対に超えないことを保証した。

まず1945年を覚えておられるだろう。ルーズベルト大統領は重病だったがまだ死んでいなかった。ヤルタ会見で衰弱したルーズベルトはとてもスターリンの比ではなく病状は悪化の一途をたどった。トゥルーマン大統領は種々の難かしい決断に迫られたが、原爆を使うかどうかという選択は含まれていなかった。ルーズベルトの病状は大統領のスタッフによって隠されていたため、軍隊はトゥルーマンに原爆開発成功のニュースを伝えていなかったからだ。その結果、日本への原爆投下は承認されなかった。

日本侵略によって失われた250万人以上のアメリカ、ロシア、そして日本人の命が、失われなくても済んだのだという議論が最近歴史家たちの間で交わされている。歴史専門家たちの架空歴史シナリオでは没落作戦(日本侵略計画)は単なる備考にすぎない。

歴史的事実と架空シナリオの溝は深まる。(実際の歴史では)日本は連合軍の勝利によって分割された。ソビエトは千島列島、樺太、北海道、そして本州の北部三分の一を占領し、残りはアメリカが占領することを要求した。ルーズベルトの死直前の1946年、重病の大統領はロシアと中国の圧力に負けヒロヒトを戦犯として裁判にかけることに同意した。天皇の絞首刑が言い渡されると、マッカーサーは戦争裁判の決断を公に批判したため、新任のトゥルーマン大統領はマッカーサーを任務から外した。

ここにどの歴史家の脳裏にも焼き付いている一つの写真がある。裁判が行われていた建物の前に怒り狂った群衆が集まった。そのなかに政治パンフレットをふりかざしていた一人の若者がいた。多くの人々がそのパンフレットに手をのばしていた。若者の顔は間違いなく三島由紀夫のそれであった。

しかし架空シナリオでは三島は20世紀の文学の世界では顕著な存在だが国粋主義ではない経済の発展した戦後の日本では政治的にはたいした存在ではない。実際の歴史では三島の天皇崇拝、過激なロシア憎悪、そして失われた領土への核攻撃もいとわないという思想は南日本の政治を独占した。永久に悪魔化された三島のイメージは全てが変わってしまった30年前のあの日と深くつながっている。あの日北海道で起きた危機は日本、ロシア、中国、アメリカ、イギリスそしてフランスを巻き込む核兵器戦争へと発展し、20億人の死者を出すにいたった。専門家の論説者たちが唱えるシナリオでは二つの都市が破壊されることで全世界は救われたはずだというものである。

人々が架空歴史に執着するのはそれが現実の歴史の恐ろしさには到底およばないからである。

July 8, 2007, 現時間 1:47 PM

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