July 2, 2007

人手不足のアルカエダ、イギリスの連続テロ失敗事件に思うこと

ロンドンとグラスゴーで起きた自動車を使った爆弾テロ未遂事件だが、寸前のところでテロが未然に防げたことでほっと胸をなで下ろすと同時にテロ計画そのものにも何か信じられないほどずさんな部分があると感じる。

以前に私は爆発物は点火が一番難かしいと聞いたことがある。最初にナイトクラブの前に駐まっていたメルセデスからは煙が立っていたとあるが、これは携帯電話を使ったリモコンの点火が失敗したことを意味する。

二台目においては自動車を駐車違反していて牽引された後に爆弾が発見されている。もしこのメルセデスが点火に成功して爆発したとしても、牽引された先の人間のいない駐車場で駐車違反の車を数台ふっとばしてみても意味がない。交通安全のお巡りさんの目にとまるような場所に車を駐めるなどプロのテロリストとしては考えられない失敗だ。

グラスゴー空港で起きた事件にしても、きちんと下調べをしておけば空港のドアの前には車の出入りを阻止する柱がいくつも立っていることに気が付くはずだし、送り迎えの車線は建物とは平行に走っているわけだから直角の角度でドアに全速力で突っ込むことが不可能なことくらい子供でもわかる。

このようにどの件をみてもプロのテロリストが計画したにしてはあまりにも素人的間違いが多すぎる。まるで三馬鹿トリオがテロをやってるみたいだ。いったいプロのテロリストは何をやっていたのだろう?

昨日紹介したニューヨークタイムスの記事でも、イギリスの対テロ当局が監視していたテロリスト達が最近一斉に姿を消したとあった。その多くが国外へ逃走したと思われるともあった。アルカエダのリーダーたちは下っ端に実行は任せて警備体制がかわらないうちにとんずらしたらしい。つまりイギリス内に残ったテロリスト達は下っ端の素人だけで自分らが何をやってるかちゃんとわかってないチンピラだけだったのかもしれない、などと考えを巡らせていたらストラテジーページのこんな記事に出くわした。

アルカエダの活躍はメンバーが減りリーダーたちが殺されたり捕まったりする数が増えるにつれ、その威力は衰えつつある。アルカエダのプロパガンダ活動もそうだ。ほんの昨年の秋までは93パーセントのインターネット活動はビデオだった。それが今では音声だけになり、その声すらも日に日に弱気になっている。彼等が自信を失うのには理由がある。過去二年に渡るアフガニスタン国境沿いのアメリカやパキスタン軍の主にミサイルやスマート爆弾による攻撃によって殺される外国人戦闘員の数は増える一方だ。...しかしアルカエダが心配しているのはそのことよりも、対テロ勢力による諜報の正確性がどんどん高まっていることにある。あまり取り沙汰されていないが、アルカエダはアメリカの諜報技術が信じられないほど高まったのか、もしくはアメ公の金に目がくらんだアルカエダのメンバーたちが情報提供をしているのかのどちらかだろうと主張している。

アルカエダは中東の事情をよく知らない欧米のメディアや西洋に住むイスラム教徒らをだますことには成功しているが、それでも欧米の警察は内部通告を受けメンバーの逮捕を続けているためアルカエダのメンバー勧誘は殺されたり逮捕されたメンバーを補うのに追い付くかない状況にある。必死のアルカエダに必要のなのはここで衝撃的な911並の自爆テロを派手にドカーンとやって成功させることだろう。そのためにこの間のニューヨークのケネディ空港爆破未遂事件だのイギリスの連続テロ行為などが計画されたわけだ。

しかしその失態を見れば西洋におけるこうしたテロ計画の多くがアマチュアによってされていることは明らかである。欧米諸国でテロ計画をたてている連中はテロリストといっても雑魚ばかりで、中東の本部にいるプロのアルカエダテロリストの指導を受けているとは思えない。エキスパートたちはすでに世界各国の対テロ政策により殺されたり逮捕されたりしていて手下の指導に当たれる人員が大幅に不足しているからなのだろう。

ところで敗北を感じているのはアルカエダだけでなく、アルカエダを受け入れたアフガニスタンのタリバンたちも同じである。ストラテジーページに載ったタリバンが敗北を認めたというこの記事は興味深い。

2007年6月25日、タリバンは彼等特有のやり方で自分達の負けを認めた。最近行われたメディアのインタビューで、タリバンの報道官は(タリバンの攻撃が)自爆テロ作戦に重点をおくようになったことをを発表した。タリバンはまたアメリカ人がタリバンの上昇部に潜入したと認めタリバンの上層部が何人も殺されるか逮捕されるかしており、下層部のメンバーもまた逮捕されていると語った。また最近はかなりのタリバン実力者による寝返りが続いているがタリバンの報道官はこれについては語りたがらなかった。

タリバンはもともとテロリスト組織ではない。彼等は最初はパキスタンの難民キャンプで組織された武装勢力だったのだが、パキスタンの諜報部員にそそのかされアフガニスタンに戻って帰ってアフガニスタンで起きていた内乱を利用して政権を乗っ取った。しかしテロリストではないとはいえただの暴力団だったタリバンに統治などできるはずもない。

そこでタリバンは当時スダーンから避難してきたアルカエダを受け入れ1990年代にはアフガニスタンの他の部族を弾圧するための用心棒としてアルカエダ戦闘員を使うようになっていたのだが、アルカエダのようなテロリストと手を結んだのが運の付き。2001年の911事件に反応したアメリカ軍のほんの一握りの特別部隊にあっという間に政権を倒され、パキスタンへ逃げ帰る始末となった。以後6年間タリバンは必死に勢力の復興をめざしてきたが、資金集めもうまくいかず、時々行ったNATO軍への攻撃ではさんざんな惨敗が相次ぎ、去年だけで3000人の戦闘員が戦死するという大打撃を受けた。

タリバンは今や自爆テロ以外に何の戦略のないただのテロリストにまで落ちぶれてしまったのである。タリバンがテロ行為作戦を宣言したということは自分達の敗北を認めたようなものだ。しかし、自爆テロはタリバンにとって二重の自殺行為だ。戦闘員が自爆するだけでなく、自爆の犠牲者が地元民であることから地元民からも見放され組織としても自爆してしまうからだ。

こうしてみてみると私は我々の対テロ戦争は勝ちつつあるという希望が湧いてくる。時間はかかるかもしれないが辛抱強く戦い続ければテロリストなど滅ぼせる。そのためには無論イラクで勝たなければならないが、イラクでの勝ち負けに将来の存続がかかっているのはむしろアルカエダのほうなのである。

July 2, 2007, 現時間 10:42 PM

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