警告それとも脅迫? 英国のイスラム教徒からブレア首相に宛てた手紙

昨日もアメリカのイスラム教徒テロリスト、、おっと市民団体のCAIRがブッシュ大統領の「イスラマファシスト」という言葉使いに抗議をした話をしたが、今度は英国のイスラム教グループと数人の議員がブレア首相に宛てた手紙を公開した。
その内容は、ブレア首相のイラクやイスラエル政策を批判したもので、このままその政策が続けばかえてイスラムテロリストを怒らせ、市民へのテロは増えるだろうというものだ。一見イスラム教徒からの親切な警告のようではあるが、実際には自分らのいう通りにしなければ英国人へのテロを増やすぞというあからさまな脅迫ともとれる。(訳:カカシ)

英国のトニーブレア首相に宛てた公開手紙において、英国イスラム教徒の代表的団体らや政治家などがブレア首相の外交政策、特にイラクやイスラエル/ヒズボラ戦争などの対策が英国内外での攻撃をうける危険性を増加させたと抗議した。

「イラクにおける大失態や中東において市民への攻撃を即座に終わらせることができなかったことは、現地における一般市民への危険を増加させただけでなく、我々を威嚇する過激派に攻撃の口実を与えてしまった。」と、タイムス誌に載った手紙には書かれている。
イスラム教徒の多くがブレア首相が2003年の米国の指揮したイラク侵略に軍を派遣したことに批判的であり、イスラエルとヒズボラゲリラとの戦いを即座にやめさせることを訴えていた。(カカシ注:国連も認めるテロリスト団体、ヒズボラをゲリラとしか呼べないロイターに注目)
「我々は首相にテロと過激派への対策にさらに力を入れることを訴えるとともに、わが国の外交政策を変更することを訴える」とある手紙にはブレア首相の党である労働党の議員6人の署名も含まれている。
この手紙の返答として、交通局のダグラスアレキサンダー局長は、英国の4チャンネルテレビで、「テロリストが行うどのような行為も正当化されない」と語った。

私は今日、あるネット掲示板において、イスラエルの行動を批判する人と話をしていたのだが、「もとはといえばイスラエルがアラブ人を追い出して建国したのが悪い」という話になった。それで私は「あなたはイスラエルが存在する権利を認めるのか? 認めないならあなたはイスラエルの滅亡を望んでいるのか? そのためならテロも支持するのか?」と質問をした。この人は正直にも最初の二つにはイエスと答えた。テロについては支持しないとはいったものの、自分の親や恋人が殺されたら自分がテロリストになる可能性は100%あると言った。
こういう人がイスラエルにする「助言」がイスラエルのためになるはずはない。もし彼女がイスラエルに謝罪しろとか兵を撤退しろとかいえば、それは決して中東の平和を望むからでも、今後イスラエルへの攻撃を減らすためでもない。なぜなら彼女の目的はイスラエル撲滅だからである。
イギリスでブレア首相に抗議の手紙を出したイスラム教徒たちは自分らの間だけでは常にイギリス滅亡を語り合っているに違いない。かれらが本気でイギリスの平和を望んでいるなどと考えるのは大間違いである。彼等の最終目的はイスラム過激派による世界制覇なのであり、彼等の忠誠はイスラム過激派テロリストと同じジハーディストの思想なのだ。
ブレア首相がそれを知らないはずはないが、ブレア首相の政治家としての寿命はもうそう長くない。次の首相がブレア氏ほど根性の座ったひとかどうかは分からない。ブレア首相はイラク戦争でブッシュ大統領を支持したことでずいぶんと自分の勢力を犠牲にした。次の首相は世界平和のために、イギリスの未来のために、自分のキャリアを犠牲にしてまで対テロ戦争にとりくめるだろうか?
イスラムジハーディストの警告に化けた脅迫にイギリス市民は怖じ気づいてはいけない。


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うさん臭いアメリカのイスラム教市民団体

いつものことではあるが、イスラム教諸国はアメリカのことを鬼だ畜生だといっても、アメリカに住むイスラエル教徒たちが、アメリカへの偏見だなどとイスラム諸国に抗議などしない。そのくせアメリカ大統領がテロリストのことを「イスラムのファシスト」と呼んだらすぐさま「人種差別だ、宗教弾圧だ」と大騒ぎ。

「イスラムのファシスト」 米大統領発言に反発の声
– CNN/REUTERS

英国で発覚した航空機爆破テロ計画について、ブッシュ米大統領が「イスラムのファシストとの戦い」と発言したことに対し、米国内のイスラム教徒らが強い反発を示している。
ブッシュ大統領は10日、訪問先のウィスコンシン州で、テロ未遂についての短い声明を発表。その中で、「イスラムのファシスト」が「あらゆる手段を使って自由を愛するわれわれを倒し、わが国を傷つけようとしている」と述べ、その相手と「戦争状態にあることをはっきりと再認識させられる出来事だ」と語った。
これに対し、イスラム教市民団体「米イスラム関係評議会(CAIR)」のニハド・アワド事務局長は、ワシントンでの記者会見で「無分別な言葉遣いだ。イスラム教や同教徒をファシズムと結びつける考え方は非生産的だ」と、強い不快感を表明。「ブッシュ大統領や政府当局者に自制を求める」と述べた。
大統領や当局者らはこれまでにも何度か、国際テロ組織アルカイダやイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラなどを指して「イスラムのファシスト」という言葉を使っている。イスラム教徒の間からは、「信仰を独裁や抑圧、人種差別などのイメージと結びつける不当な表現」とする反発の声が上がっていた。

テロリストと一緒にされたくなかったら、イスラム系テロリストがイスラムの名のもとにテロを行う度にテロリストを非難すればいいではないか。テロリストのメッセージはイスラム教を代表しないと声明を発表すればいいではないか。911直後にアメリカの大通りにくり出してお祝い騒ぎをしていては、テロリストと同類だと思われても仕方ないはず。
ところで、このCAIR(ケアと発音する)という団体がどうもうさん臭い団体なのである。表向きは市民団体だが、実際はイスラム教テロリストと深い関係がある団体。幹部がテロ団体への資金集めをして何人も逮捕されたりしている。以下は2005年4月14日ワールドネットデイリーの記事より。(訳:カカシ)

非常に影響力のある米国イスラムロビーグループのテキサス支部創設者がテロリズムを援助したとして有罪となった。

兄弟二人と共に昨日ダラスで有罪となったガサーム·エラシ氏はパレスチナのテロリストグループ、ハマスの高官、ムサ·アブ·マーズークに資金を横流ししていた罪に問われていた。
エラシ氏はワシントンDCに本部のある米イスラム関係評議会(CAIR)のテキサス支部の委員で、911以後テロリズムの罪で有罪となったCAIR関係者では3人目となった。

CAIRはアメリカ国内でイスラム教徒に都合の悪い発言をする人間にはすぐに食い付く節があり、その影響力は非常に大きい。ハリウッドの映画界ではイスラム系テロリストを描写するとCAIRからクレームがつくので原作ではイスラムテロリストが悪役なのに映画の悪役をニオナチに書き換えるなどCAIRに迎合したりしている。(The Some Of All Fears) 最近のアメリカ映画でイスラムテロリストが全く登場しないのも、この団体の影響がすくなからずあるのである。
幹部が三人以上もテロリストとして有罪になっている団体なら、テロ団体といわれてもしょうがないはず。こんな奴らのいうことをいちいち気にとめるアメリカメディアにも腹がたつ。CAIRの抗議を取り上げるなら、この団体の正体もついでに書き加えるべきだ。そうでなければ読者はただの市民団体の抗議だと誤解してしまうだろう。無論アメリカメディアの狙いはそこにあるのだが。


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イギリスのテロ摘発で、テロ監視プログラムの大切さを考える

本日のAPニュースによれば、今回のテロが未然に防げたのも、数日前にパキスタンで逮捕されたパキスタン系イギリス国籍の男二人が重要な鍵を握っていたからだとある。(訳:カカシ)

パキスタンはパキスタン、英国そして米国の諜報部による積極的な協力によって陰謀は阻止され、英国における24人の逮捕につながったとかたった。

「事実、パキスタンは今回の国際テロネットワークの陰謀を暴露し破壊するのに重要な役割を果たしました」と(パキスタン)外務省のタスニム·アスラム報道官は語った。

興味深いのはここに米国諜報部による協力があったということである。米国諜報部はどのような方法でテロリストたちの動きを察知したのだろうか? アメリカの民主党が人権無視だとかプライバシーの侵害だとかいってさわいでいる国家安全保証局の盗聴プログラムなのではないかな? 下記は2005年12月26日つけのCNETJapan、「市民を監視する米国–波紋を広げる国家安全保障局のスパイ活動」より:

先ごろ、NSA(National Security Agency:米国家安全保障局)が米国内でスパイ活動を行っていたことが明らかになったが、その詳細はまだ謎に包まれたままだ。
Bush大統領は米国時間19日の記者会見で、NSAの活動を強い調子で擁護したが、実際の活動内容に関する情報はほとんど明かさなかった…
しかし、一部の技術者や自由擁護論者らは、記者説明会やニュース記事から得たヒントを手がかりにしながら、このスパイ活動で監視された米国外との電子メールや電話によるやりとりは数百万件に上ると結論づけている。
Electronic Frontier Foundationの共同設立者であるJohn Gilmoreは22日、「強力な捜査網が争点になっていることを示唆する情報が集まっている。おそらく、米国受発信の国際通信すべてがNSAに傍受されている」とメーリングリストへの投稿のなかで述べている。
NSAは長年「通信情報収集」と呼ぶ活動を行ってきた。これは、電波中継装置や衛星通信信号、海底ケーブルの傍受によるデータ収集を意味する。NSAの関係者はこれまで、神経過敏な政治家や一般大衆に対し、大規模で機密性の高い電子傍受活動は米国市民をターゲットにしたものではない、と述べていた。
ところが現在では、Bushが秘密裏に指令を出し、NSAによる米国市民と国外居住者との通信傍受を認めるたのではないかとの疑問が出始めている。

この見出しの「市民を監視する」という表現が正しくないことは後になってずいぶんとブッシュ政権から説明があったが、簡単にいえば、盗聴される電話や電子メールは外国でテロリストと認識された人間がアメリカ国内に連絡をした場合、受け取り人がアメリカ在住の人間であればそれなりの監視がされるということであり、アメリカ国内でアメリカ市民の電話や電子メールが礼状もなく盗聴されるというプログラムではない。
ブッシュ大統領いわく、外国のテロリストから電話がかかってきたら、我々はそれを知りたい、ということだ。
私は以前にカナダでのテロが未然に防がれた時にもこのように書いた

この犯人たちは先にアメリカで逮捕されたテロリストともつながりがあった。アメリカの諜報がカナダに提供されたことが、カナダのテロリスト逮捕にも役に立っていただろうことは容易に推測できる。もし、アメリカのテロリストが米民主党が批判的なNSAのテロリスト盗聴作戦によって捕まっていたとしたら面白いことになる。カナダ政府はなにかとアメリカの対テロ戦争に批判的だが、今回のことで多少は目をさましてくれただろうか。

アメリカだけではないが、ヨーロッパ諸国なども、テロ防止のための手段をことごとく人権無視だ、人種差別だ、プライバシーの侵害だといって効果のないものにしようとする傾向がある。我々が人権や自由を謳歌できるのも、国が安全であってこそではないか。テロリストにおびえて空も飛べないような状況が自由といえるのか?
私が先にあげたプロファイリングもさることながら、NSAの盗聴プログラムなどで、どんどんテロリストの陰謀を暴きテロリストたちを摘発してもらいたいものだ。
ところで、株式投資のための注目情報によれば、テロリストたちは8月11日と16日のユナイテッド航空の航空券をすでに購入していたのだという。予行演習のためだったのか、本番だったのか分からないが、テロが本当にすんでのところで防がれたのだということがよくわかる。


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英米間の旅客機多発テロ計画すんでのところで未然に阻止

レバノン戦争もイラク戦争も対岸の火事と油断をしていると、どうして私たちが常に対テロ戦争に厳しく取り組まなければならないのか、今回のこのような事件で思い知らされる。まずは毎日新聞の記事より。

米国行き9機同時爆破? 21人逮捕 [ 08月10日 21時14分 ]

 【ロンドン小松浩、ワシントン和田浩明】英警察当局は10日、英国発米国主要都市行きの複数の旅客機の同時爆破を狙った大規模テロを未然に阻止し、容疑者21人を逮捕したと発表した。米国を狙い、旅客機を使った手口から国際テロ組織アルカイダの関与が疑われている。英政府は5段階のテロ警戒度を最高度の「危機的」に引き上げ、厳重な警戒態勢を敷いている。英国の各空港は安全確認のため離着陸が一時禁止されるなど大混乱し、欧米を中心に世界各国に影響が広がった。
 AP通信は米当局者の話として米国のユナイテッド、アメリカン、コンチネンタルの3社のワシントン、ニューヨーク、カリフォルニアなど行きの便が標的になったと伝えた。英BBC放送は容疑者が週明けに3機ずつ3回に分けて計9機を爆破する計画だった可能性を報じている。爆発物に転用できる液体を使って飛行中に旅客機を爆破しようとしたとみられる。
…米CNNテレビは米政府高官の話として「実行段階に極めて近かった」と伝えた…
 容疑者グループの主犯格は英国生まれで、多くはパキスタン系英国人だという。警察当局は数カ月前から捜査を進め、10日未明にロンドン、バーミンガムなど3カ所を捜索して逮捕に踏み切った。動機などはまだ明らかでないが、米英の中東政策に対する怒りが背景にあるとの見方が強い。
 ロンドンのヒースロー空港をはじめ英国内の空港では離着陸や手荷物の持ち込みの一時禁止措置がとられ、欧州各国などからの英国行き便もしばらく運航を見合わせた…
 ロンドンでは昨年7月にパキスタン系英国人らが地下鉄・バスを同時爆破する自爆テロが発生、52人が犠牲になった…

 (強調カカシ)
毎日新聞の記事には書かれていないが、この「実行段階にきわめて近かった」というのがどれほど近かったかといえば、APのニュースでは2〜3日の間だったとある。また液体爆発物を使っての計画だったことで、機内持ち込みの荷物は全面的に一時さしとめ。子供の哺乳瓶などはその場で試食など厳しい中身の検査がおこなわれた。このセキュリティーチェックの列が4時間にもなったという。
私はこの間のニューヨーク旅行でコンティネンタルでかえってきたばかり。ハワイ出張ではいつもユナイテッドだし、本当に他人事ではない。
しかし、今後の警備を考えた時、いったいどういう方法が一番能率的で安全なのか、ここでしっかり吟味する必要がある。まさか機内持ち込みの荷物を全面的に禁止するわけにもいかないだろうし、水やお茶を持ち込んではいけないなどということになったら、私は長時間に渡る渡航にたえられない。
まず、最近の渡航において、スーツケースに鍵をかけることはほとんど不可能になった。目の前でスーツケースをあけて中身を調べてくれる空港もあるが、たいていの空港では人手不足なためひとつひとつのチェックはしない。それで無作為抽出で選ばれたスーツケースだけ荷物を預けた乗客がすでにいないところで開けるから、鍵がかかっていたらその鍵はきられてしまう。私はこれでもうすでに三つも鍵を壊されてしまった。
それで最近ではもうスーツケースに鍵などかけない。(規定の鍵をかけてあれば壊されないという話だが、航空会社の係員があけられるなら鍵などかけていてもあまり意味はない。)そういう事情だから私はスーツケースに大事なものなどいっさい入れていない。だが、これでもし機内持ち込みの手荷物を禁止されたらどうなるのか。
我々が大切なものを預けたくない理由はいろいろあるが空港係員による窃盗、移動中の破損、紛失、遅れなどがあげられるだろう。そう考えるとラップトップやCDプレーヤーなどの貴重品や、常備薬などスーツケースに入れて預けるのは気が引ける。つまり、手荷物持ち込み禁止は非現実的な対策だ。
ではいったいどうすればいいのか。政治的に正しい言い方ではないが、この際乗客のプロファイリングが必要になってくると思う。先の記事で私が強調した部分をもう一度読んでいただきたい。これまでイギリスでテロ容疑で逮捕された犯人たちはイギリス国籍はもっているものの皆外国、特にパキスタン出身の若者がほとんどである。そしてその名前も、モハメッド、アクメッド、オマー、アリなどといった明かなイスラム教徒ばかりだ。ヨーロッパ系のピーター·スミスだのケビン·ブッシュなんて名前のテロリストは先ずいない。どうやらテロリストによる非イスラム教徒の地元若者リクルートはあまりうまくいってないようだ。
こういうことをいうと人権擁護市民団体などが、人種差別だの人権侵害だの騒ぎだすだろうが、この際そんなことをいっている場合ではない。誰が考えてもオクラホマ出身の70歳になるセルマおばあちゃんと、パキスタン出身の19歳のオマー君とでは、どちらがテロリストの可能性が高いかなど明白なはず。それを人権云々を心配してセルマおばあちゃんのおこしの中身までいちいち調べるのは時間の無駄というものだ。
決して人種でプロファイルしろというのではない。だが乗客の元の国籍、名前、年齢、性別など十分にヒントとなる項目はあるはずだ。警備が厳しくなればそれにかかる人件費も時間もかかる。それでなくても空の旅は難かしくなっているのだ。今後飛行機での渡航が安全かつ能率的に行われるためには、プロファイリングは必要不可欠になってくるだろう。
関連ブログ記事:
アメリカ行き航空機10機の同時爆破
英でテロ計画、摘発


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クルーレス! アメリカメディアの実態

昨日アメリカのブログで読んだ記事なのだが、暗いニュースリンクが丁寧に翻訳してくれているので、下記の驚くべき記事を紹介しよう。強調はカカシ。

米CNN放送で8月6日に放送されたニュース番組『CNN RELIABLE SOURCES』で、現在進行中のイスラエルによるレバノン侵攻軍事作戦について驚くべき談話が飛び出したので以下に引用する

ハワード・カーツ(CNN番組ホスト):
「本日ここワシントンのスタジオにはABCニュースのホワイトハウス詰め記者アン・コントンとワシントンポスト紙ペンタゴン担当記者で新刊書『Fiasco: The American Military Adventure in Iraq』の著者であるトーマス・リックスを迎えています。
トム・リックス、あなたはイラクを含めて軍事紛争をたくさん取材してらっしゃいますが、軍隊同士が互いに撃ち合っているような類の紛争ではない状況の中で、市民の犠牲者の増加がいよいよ大きな問題になりつつあるんでしょうか?」
トーマス・リックス記者:
「そのとおりだと思います。ただ、現在では、市民の犠牲者に関しては、両軍にとって戦場の一部になっていると思います。その一例を挙げますと、一部の米軍アナリスト達の話によれば、イスラエルはレバノンから発射されるヒズボラのロケットを意図的に放置していて、その理由としては、ロケットが発射されていればイスラエル側もレバノン侵攻に関する道徳上の均衡を保つことができるということです。」
カーツ:
「ちょっと待って下さい、イスラエル側が、基本的にはPR目的のために、イスラエル市民の犠牲が出ればPR戦争上有利になるという理由で、意図的にヒズボラ側の火力を維持させていると言うんですか?」
リックス:
「ええ、軍事アナリスト達はそう言ってました。」
カーツ:
「それは意外なことですね。自国の市民を殺させることが自国の利益に繋がるという発想が、誰も自国の市民が殺されるのを見たくはないが、この戦争への認識という観点では自国の利益に働くということですか。」
リックス:
「そのとおりです。道徳上の優位性という問題に関して役に立つんです。なにしろ、レバノン侵攻作戦では市民が同様に殺されていくでしょうからね。」(以下略)

イスラエルが自国の民をプロパガンダのために見殺しにしてるって? いったいなにを根拠にこんな馬鹿なことがいえるのだろう。これじゃ911はアメリカ政府とイスラエルのモサードの陰謀だったなんていうとんでも説と同類ではないか。まともなジャーナリストのいうことじゃない。で、その軍事アナリスト達って誰なんですか、リックスさん。
そのくせCNNはヒズボラがレバノンの民間人を人間の盾に使ってわざとイスラエルに民間人を殺させ、その写真を撮ってはメディアに売り込んでいる事実を完全無視している。
イスラエルが民間人の犠牲を利用していることの証明として、暗いニュースは私が先にあげたカナ攻撃の事件を例にあげている。

例えば、イスラエルの爆撃により多数のレバノン市民が殺されたレバノン南部のカナ村には、ヒズボラのロケット発射拠点はなかったといわれている。ここをあえてイスラエルが爆撃した理由は、ヒズボラ及びアルカイダ側への挑発という意図があるかもしれない。

レバノンの赤十字救援隊がカナで爆破された建物のがれきのなかから、破損されたロケット発射台を発見しているという事実があるにも関わらず、このようないい加減なことを書く暗いニュースリンクも反イスラエルプロパガンダに侵されているとしか思えない。


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ニューヨークタイムスやらせ写真がばれて、苦しい言い逃れ

昨日ロイターのやらせ写真について書いたばかりだが、コメンターのマイク·ロスさんが紹介してくれたこの写真について、今日になってニューヨークタイムスが訂正記事を発表した。(無料登録必要)

死体を装う男

ニューヨークタイムスに載った、瓦礫の埋もれた「死体」の写真


この写真につけられていたニューヨークタイムスの最初の説明は:

タイヤー市の市長によれば、一番ひどい被害のあった場所ではまだがれきの下に埋まっている遺体があるということだった。市長は政府の役員が遺体を引き出す間だけでも攻撃を休めることを訴えた。(撮影:テイラーヒックス、ニューヨークタイムス)

この写真で「死体」として現れる半裸の男性は、ほこりひとつついていない裸の胸もあらわに、ミケランジェロが描いたシスティンチャペルの壁画かカルベン·クラインの下着宣伝ポスターよろしく、モデルのようなポーズで寝転んでいる。はっきり言ってこの写真をみただけで、これがやらせポーズであることくらい明白だが、ニューヨークタイムスが同時に発表した一連の写真に同一人物が救援員としてぴんぴんと走り回っている姿が写っていたのである。

SistineChapel

システィンチャペルの壁画


それを指摘されたニューヨークタイムスは苦し紛れに言い逃れをしているのだが、そのいい方が面白い。(訳:カカシ)

7月27日付けのタイヤー地区にてイスラエルの攻撃で破壊された建物に関する一連の音声付きスライドショーにおいて、一つの写真についていた説明書きが状況にたいして不適切でした。写真にみられる男性は先の写真で救援にあたっているようにみられ、その救援の途中に怪我をおったもので、攻撃によるものではなく、また死亡もしていません。
正しくは印刷版のタイムスに載ったように、昨日イスラエル空爆で破壊されたレバノンはタイヤー地区の建物にて、転んで怪我をした仲間を助ける男性、でした。

「転んで怪我をした」って? どうして転んだ人間が目をつむってねそべっているのだろうか? しかもかぶっていた野球帽を腕の間にはさんだりして。転んだ衝撃が大きくて失神したとするには、あきらかに緊張している腹筋やふくらはぎがそれを裏切っている。第一そばに立っている男性が、転んだ仲間を抱き起こそうというのなら、なぜ片方の腕だけをにぎっているのか、どうみても不自然な姿勢である。
やらせ写真やねつ造記事はテロリストの専売特許だが、それに完全に共謀している西側の主流メディアには恥も外聞もないのだろうか? よくイスラエルの武力がヒズボラに比べて不均衡い強大だと語る人がいるが、こと情報戦争に関してはヒズボラのほうが圧倒的に優勢である。この不均衡な力関係について誰も批判しないのか? するわけないか、、、


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イスラエル戦闘拡大

セオドン王『開戦の危険を冒すのは好まない。』

アラゴルン『開戦はすでに貴殿のうえにもたらされたのだ。貴殿が好むと好まざるとにかかわらず。』

この会話はJRRトールキン原作の指輪物語を原作にしたピーター·ジャクソン監督の映画、ロード·オブ·ザ·リングスの一場面である。ローハン国の王セオドンは国境ぞいの村がすでに敵に攻撃され、自分の息子が指揮する偵察軍が敵に待ち伏せされ息子を失うまでの打撃を受けていながら、まだ開戦への決心がつかないでいた。なんとか全面戦争になることを避けたいと考えていたのである。だが敵はついそこまで迫っていた。セオドン王には全面戦争以外の道は開かれていなかったのである。
イスラエルのオルメルト首相がおかれている立場はまったくこのセオドン王と同じだ。イスラエル兵が拉致されたのをきっかけにイスラエルはレバノンに迅速な攻撃を仕掛けはしたものの、オルメルト首相はレバノン南部のヒズボラ基地を破壊し、イスラエル軍が占拠することで、さっさと戦闘を終わらせるつもりだったのだろう。初めの一週間ぐらい空爆でたたき、陸上部隊を一個隊くらい出動させる程度で十分だと考えていたようだ。
しかし、ヒズボラはおもったよりも強靭で手強い相手だった。武器をシリアを通じてイランから手に入れるなど、ちょっとやそっとの攻撃ではその能力を極端に弱体化させることは困難だ。また自分らの勢力さえ弱まらなければ、レバノン人や同族のシーア民間人がどれだけ死のうが無頓着なヒズボラは、米仏の提案した停戦条件を飲みそうもない。だから私は昨日イスラエルによる戦争拡大は避けられないのではないかと書いた。
案の定今朝になって、北海道新聞のこのニュースがはいった。

イスラエルが地上戦拡大へ 閣議承認、3万人規模に  2006/08/10 03:01

 【エルサレム9日共同】イスラエル政府は9日、治安閣議を開催、レバノン侵攻で地上戦を拡大する作戦を承認した。レバノン南部に展開中の約1万人の部隊を増員し、国境から最大で約30キロ北方のリタニ川周辺まで北進させ、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラのロケット弾発射基地をすべて破壊する計画。イスラエル放送などが伝えた。地元紙によると、総兵力は3万人規模となる。
 閣僚の1人は、国連安全保障理事会に戦闘停止決議案の協議時間を与えるため、新たな作戦の開始を2、3日留保すると述べた。安保理が決議案の調整に手間取れば、戦闘がさらに激化、犠牲者も増える恐れがある。

戦闘が激化すれば民間人の犠牲が双方に増えるのは必然的だが、レバノン内部では必要以上の民間犠牲者がでている。私は何度かそれはヒズボラが同胞の民間人を人間の盾として利用しているからだと指摘してきた。8月5日付けのナショナルポストにそのヒズボラの人間の盾作戦が詳しく書かれている。(訳:カカシ)

レバノン、タイヤー地区、ファウードファタ医師は涙ぐみながら崩壊された病院のなかから出てきた。果てしなく続くと思われたイスラエル空爆がはじめて一旦休止したからである。
レバノン南部で最後に残った、たった5部屋の医院で彼自身最後の生き残りとなった。生き延びた患者たちはすでに避難してしまっていた。
ファタ医師は記者団の数人をひしゃげたがれき、引き裂かれた壁、イスラエルの砲弾で穴のあいた屋根など、その残骸の中を案内した。
「みてください、やつらのやったことを」ファタ医師は首をふりながら言う。「なんだってイスラエルは病院を標的にしたりするんです?」
その答えは数時間後にその付近で発見された。背の高い雑草のなかに焼けただれたロケット発射台が隠されていた。
この証拠をみせつけられたファタ医師は、病院がロケット発砲に使われていたことを認めた。
「しょうがないでしょうが、どこからか反撃しなきゃならないんですから。」彼は足で地面をならしながらいう。「ここはヘズボラの本拠地なんですから。」

病院をロケット弾発射に使っているヒズボラを批判するどころか、「しょうがない」といって弁護するのであれば、イスラエルの攻撃にあっても文句はいえないだろう。第一ここまでヒズボラに同調する人間が無関係な非戦闘員といえるのだろうか? ただの無実な民間人といえるのだろうか?
相反してヒズボラの作戦で家を追われ、ヒズボラのやり方は迷惑このうえないというレバノン住民も多くいる。レバノンで歯科医を営んでいたキリスト教の住民ナサー·カリーム(48)さんはビントジベイル村にある自宅の庭にヒズボラがロケット発射台を引きずり込んだのを目撃した。

数分後、彼は4連発の発射音を聞いた。カリームさんはかろうじて4歳の息子の耳をロケット発射音からまもるため塞ぐ余裕があったのみ。自分の耳はいまだに鳴っているという。
「ロケット弾が発射された5分後にイスラエルが空爆をはじめました。」ベイルートの避難所で安全となった彼は思い出して語る。「やつらは私たちをイスラエルの磁石にしてるんです。」とカリームさん。

この間29人の犠牲者をだしたカナでの「誤爆」にしても、最初は戦闘員など全くいないと主張していた地元市民だが、翌日赤十字ががれきに埋まった人々の救助に当たっていた時、破壊されたロケット発射台の一部を発見している。そして近所の村からも大量にロケット発射台の破片が発見されているのである。ひとつなどは二つの家の真んなかにある植木の間深くにうまっていたという。
イスラエルはあきらかにロケット弾が発射された場所を狙って攻撃してきているのであり、およそ非戦闘員の犠牲を顧みない無差別攻撃などではないことがこれではっきりする。
無論、こんな事実にはアメリカを初め世界のメディアには興味がないのだろうが。


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ヒズボラの情報操作作戦! ロイターのやらせ写真を斬る

アップデートアンドバンプ 下記参照:
百聞は一見にしかりとはいうものの、写真というものは得てして信用ならないものである。特に合成技術が発達している今日この頃、写真に手を加えるなどということは朝飯前だ。今回の戦争において、イスラエルの空爆による被害の写真が毎日毎日発表されるが、そのなかでアメリカのワイヤーサービスでも指折りのロイター社が、レバノン市民提供のやらせ写真やねつ造写真を発表しており、920枚の写真を取り下げたことがあきらかになった。
パワーラインのA Bridge Too Weirdにおいてやらせ写真の分析が詳細に行われているのでそこからちょっと紹介したい。
下記の4枚に渡る一連の写真はフリーの記者アドナン·ハッジ氏がロイターに提供したものである。これは7月12日の朝7時付けの記事から始まるのだが、最初の写真の説明は「南レバノン、イスラエルの戦闘機によって空爆直後のタイヤー地域にあるカサミヤ橋付近にて、走っているレバノン市民」この写真が空爆のどのくらい後に撮れれたものなのか、またなぜ市民が走っているのかは不明だ。 ハッジの役者以外には人気(ひとけ)はない。

July 12, 7:00AM

7月12日午前7時付け


次の写真は同日午前11時10分付けだが、背後にある木や右側にある建物、そして停まっている車に注目されたし。最初の写真で市民と呼ばれた男性はここで突然「民間警備役員」と変ぼうする。この男性はなぜか今度は反対側に向かって走っている。説明は「イスラエル戦闘機による空爆直後、走るレバノンの民間警備役員、南レバノンのタイヤー地域カサミヤ橋付近にて」とある。この写真の左側に写っている逆さまにひっくりかえっている車に注目されたし。

July 12, 11:10AM

7月12日午前11時10分付け


12日午前8時43分付けの記事ではなんと前出の同じ車が全く別の場所で登場する。この写真の説明は「南レバノン、タイヤー地域にて、イスラエル戦闘機によって爆破され崩壊したカサミヤ橋付近にて、レバノン市民」とある。しかしこの写真の場所は先のカサミヤ橋付近とはまったく景色が違っている。共通しているのは逆さに転がってる乗用車だけだ。

July 12, 8:43AM

7月12日午前8時43分付け


そして最後のこの写真。ここでもやはり崩壊されたの橋が写されているが、その説明が前の写真と同じ「南レバノン、タイヤー地域にて、イスラエル戦闘機によって爆破され崩壊したカサミヤ橋付近にて、レバノン市民」なのである。いったいどっちが本当のカサミヤ橋なのだ????

July 13, 12:44AM

7月13日午前零時4分付け


ロイターが先日リコールした合成写真に加え、同じ現地記者によるこのあきらかなやらせ写真。これでは現地から送られてくるヒズボラの被害だのレバノンの損害だのどこまでが本当なのか全く疑問だ。ロイターといえば泣く子も黙る由緒あるワイヤーサービス。多くのメディアがロイターの記事を本当のニュースとして再掲載し、世界中にそのイメージや記事が広まるのである。そのようなメディアがヒズボラのプロパガンダを平気で流しているとしたら、これは由々しき問題なのではないだろうか?
ま、なんでもかんでもヒズボラの肩をもつ主流メディアに今さらカカシは驚かないけどね。ところがアメリカのメディアはイスラエルが情報操作をしてると主張するんだからおかしい。
アップデート:
コメンターのマイク·ロスさんが、ヒズボラによるやらせ写真がほかにもたくさんあると紹介してくれたので、ここにそのひとつミッシェル·モルキンのサイトのリンクを貼っておく。ここではなんと連続の写真でピンピンしている救助員のひとりが、別の写真でがれきの下敷きになった死体として登場。ひどいもんだわ。


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イランが攻める時、8月22日の意味するもの

冷戦の頃、東側の共産圏と西側の自由主義圏が互いに核兵器を保持していながら核戦争をしなかった理由は、互いの核兵器が互いの抑止力として働いていたからだ。どちらかが核兵器を使用すれば相手からの報復は免れない。そうなればお互いの国家が滅びることを双方が承知していたのである。パキスタンとインドの核兵器が互いの抑止力として働いているのも同じ理屈だ。文明社会は戦争をやってもその結果として生き残りたいという欲望がある。その存続への願望が核戦争による自滅をこれまで防いできたのである。
ところがイランにはそのような抑止力は全く効果がない。なぜならばイラン政府が代表するイスラマジハーディストにとって死ぬことは単なる昇進であり、殉教者として天国での地位を保証される名誉なのである。だからイスラム過激派が同胞の犠牲を顧みずに我々文明人からすれば野蛮で卑劣な非戦闘員を巻き添えにする攻撃を奨励するのは、イスラム教徒がインファデル(非信仰者)を殺す過程で殉職することはイスラム教徒にとって誇り高い運命であると本気で考えるからなのである。
イランのリーダーたちは、その最高地位にあたるアヤトラ·アリ·コメーニから統治者のムラーたち、そしてアクマデイネジャド大統領にいたるまで、善対悪の天地を分ける最終戦争が必ず来ると信じている。ここでいう善とは無論イスラムジハーディストであり、悪とはアメリカやイスラエルが代表するインファデル=非信仰者のことである。この戦争によってジハーディストたちはインファデルに追いつめられるが、その存続が危うくなったその時こそアラーの神が世界から隠してきた、12番目のイマムがこの世についにその姿をあらわし、このモハメッド·アル·マフディが自ら軍を率いて非信仰者を滅ぼす。そしてこの世はイスラム教徒だけのパラダイスとなると信じているのだ。
このような黙示禄論は別に他の宗教のそれと比べて特にばかばかしいものでもない。だがひとつだけ違うのはこの黙示禄信者たちには陸軍があり、空軍がり、ミサイルがあり、核兵器すらも持とうとしている点である。そして我々にとって心配なのはイランの統治者たちがこの最終戦争が差しせまっていると考えていることなのである。
イスラム教の研究学者として世界で一番知識のあるとされるバーナード·ルイス教授がウォールストリートジャーナルにおいて、その運命の日は来る8月22日であると書いている。(カカシ注:WSJの記事や有料なので、ここでは一部を抜粋して訳すことにする。)

8月22日にどのような特別な意味があるのだろうか? 今年の8月22日はイスラムカレンダーにおいて1427年、ラジャブの月は27日にあたる。この日は予言者モハメッドが羽のついた馬バラクに乗って「いちばい遠くのモスク」というイスラエルにあるとする聖廟へ飛び、そこから天国へいってかえってきたとされる日で、多くにイスラム教徒が伝統的に記念日として祝う。
この日がイスラエルの終わり、必要ならば世界の終わりを告げる最終戦争の期日として適切であると判断されるかもしれない。アクマヂネジャド氏がそのような大変動を起こす事件を8月22日ぴったりに計画しているのかは不明だが、この可能性を考慮にいれておくことは懸命である…
この文脈において冷戦時代に機能した相互破壊の論は意味がない。どっちにしても最終的には全面的破壊は避けられない。大事なのは死後におけるインファデルには地獄、信者には天国という最終到着地だけなのだ。このような信仰を持つ人々にとって相互破壊は抑止力になるどころか促進力となるのだ。

ではいったい8月22日に、イランはなにをするつもりなのだろうか? イランが核兵器開発に力をいれていることは確かだが、まだイランに核兵器があると考えるひとはいない。だがイランには性能の高い長距離ミサイルは存在するわけで、弾頭につめこめる武器は核兵器だけとは限らない。だとしたら、イランは8月22日にイスラエルへの攻撃をはじめるつもりであろうか? もしイランがイスラエルを攻めたら、アメリカはどうするのだろう? 世界はどうするのだろう?
黙示禄は本当になるのだろうか? そうならないことを神に祈ろう、信者の死を奨励する神ではなく生を重んじる神に。


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ツアーデフランス、優勝したランディスのドーピング疑惑

アメリカの選手、フロイド·ランディスがこの間のツアーデフランスで優勝した直後、彼にはドーピングの嫌疑がかけられた。やっぱりフランスはなんとかしてアメリカ選手から勝利を奪い取りたいようだ。二度に渡る尿検査で陽性と判断されたランディス。二度めの検査が最初の結果を確認したため、ランディスはツアーの優勝者の座をおわれる可能性が高まった。またランディスは所属していたフォナックチームからも解雇された。ランディス選手は今後チームの一員としてレースに出場することができないだけでなく、サイン会などのイベントにも出場できなくなる。

UCIルールに則れば、ランディスのタイトルは剥奪されることになり、ツール・ド・フランスの総合優勝はオスカル・ペレイロ(スペイン、ケスデパーニュ)の手に渡る。さらに2年間のレース出場禁止と、その後の2年間のプロツアー出場禁止も免れない。

本人は当初、前夜にアルコールを飲んだことや、常用している甲状腺の薬の影響ではないかとはなしていたが、いまではこの説明は苦し紛れの当てずっぽうだったとし、原因は自分にもわからないと語っている。
私はどうもこの事件はうさん臭いと思う。フランスのサイクリング協会はずっとアメリカ選手の優勝を快くおもっていない。7回連続優勝をしたアームストロングについても、ずいぶんドーピングの疑惑をかけて彼の栄光を汚そうとしたし、今回も優勝候補だったヨーロッパ選手数人をほとんど根拠といえないようなドーピング疑惑で失格にした前科もある。
そして今度の優勝者ランディスのドーピング疑惑。検査をしている研究所がどれだけ尿サンプルの管理をきちんとしていたのかどうかさえ疑わしい。ランディス自身はサンプルに薬が注入されたのではないかという陰謀説を唱えるつもりはないとしているが、これだけドーピングでやっきになっているツアーデフランスで、検査してすぐわかるような男性ホルモンを接種するほどランディスが間抜けだとはどうしても信じられない。
それに発見された男性ホルモンは常用していないと効果がないものなのだという。以下サイクリングタイムスより:

ランディスは今大会で合計4回の検査を受けている。もし本人の主張通りもともとT/E値が高いのだとしたら、第17ステージ以外の3回の検査でも高い数値が出ていなければならない。人のT/E値は大きくは変化しないからだ。
また、仮にランディスが筋力増強効果を狙ってテストステロンを摂取したのだとすれば、数週間にわたって摂取していたはずで、やはり3回の検査で異常値が出るはずである。
では、ランディスはテストステロンを常用しておらず、第17ステージの起死回生の大挽回のために、その時だけテストステロンを摂取したのだろうか?。これはスポーツ医学的にはナンセンスである。テストステロンに持久力を増強する効果があるという医学的知見は今のところ皆無だからだ。
仮にランディスがドーピングを故意にかつ計画的に実行したのだとしたら、これではどうもお粗末であるとしか言いようがない。果たして、自身の破滅につながるかもしれない危険な賭けに踏み出すときに、そのようなずさんな行動を取るものであろうか。
「あの日はタイム差を挽回することが目的でなく、ステージ優勝するつもりだった」と語るランディス。優勝すればレース後にドーピング検査を受けなければならないことは分かりきったことだった。

尿のサンプルが汚染されていないとしても、ランディスの食事に薬が加えられた可能性も考えるべきなのではないだろうか。どうもしっくりいかない事件である。


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