イラク駐留米軍の「半減構想」で右往左往の保守派とリベラル

数日前、ニューヨークタイムスはブッシュ政権がイラク駐留米軍を来年あたり半減させることを考えているという情報を報道すると、アメリカでは右も左もブッシュがついに民主党の圧力に負けて妥協したと歓喜したり激怒したりと大騒ぎになっている。

構想をめぐる調整は今後数カ月間続くともし、具体的な内容は現在、固まっていないとも伝えた。

シナリオの一つは、来年の米大統領選を考慮し、兵力を約10万人規模に削減することを想定。現在の兵力は約14万5000人となっている。
また、ブッシュ大統領が今年1月に発表した首都バグダッドと武装勢力の活動が活発なアンバル州の治安回復に米軍を投入する方針を修正し、主要任務をイラク軍の訓練、国際テロ組織アルカイダ系勢力の掃討に集約させることも考えられていると伝えた。
米軍の戦闘旅団の数では、現在の20を約10に減らし、来年春から年末までの間に実現させたいとしている。
政権内で駐留米軍の削減論が浮上したのは、米大統領選を踏まえ、イラク政策に関する論議の焦点を撤退期限の明示問題から米軍の長期配備に移したいとの思惑があるという。野党・民主党は撤収期限の提示を予算案などに絡めて強硬に要求、ブッシュ政権と対立している。
また、駐留米軍の現在の規模が、イラク、中東や米国内の情勢を踏まえ、今後も維持することは不可能との認識が議論の背景にあるとている。
タイムズ紙によると、来年中の部隊削減を提案しているのはゲーツ国防長官とライス国務長官で、イラクの政治改革の進展を疑問視する一部将官も加わっている。イラク駐留米軍の司令官は議論に関与していないという。

なんでもかんでもイラク敗戦に結び付ける左翼連中が誤解するのはしょうがないとしても、左翼メディアを信じるなと常々いってる保守派連中までブッシュが妥協したなどと頓珍漢なことを言ってるのをきくと苛立ちを通りこして腹が立ってくる。
ブッシュ大統領は戦争が始まる前からフセイン政権を倒し民主主義国家を創立し、治安が落ち着いたら一部のアドバイザーだけを残してイラク人に自治を任せて撤退すると言っていた。イラクに半永久的に十数万の隊を駐留させるなどと言ったことは一度もない。
総司令官たるものあらゆる戦況に対してあらゆる対応策をあらかじめ考えておくのは当たり前だ。今の作戦がうまくいって治安が安定した場合を想定して、来年兵数を半分に減らす可能性を考えるのは軍隊の総司令官として当然の義務である。
どうして4年間もイラク戦争を見つめてきた人たちがこんな基礎的な戦略も理解できないのだ?最初から戦争に反対なリベラルや左翼連中がブッシュ政権の主張を都合良く忘れてわい曲して話をするのは仕方ないとしても、イラク戦争を支持してきたひとたちがブッシュ大統領の当初からの作戦を理解できていないというのはどういうことなのだ?いったい何を基盤にしてこの戦争を支持していたのだ?
アメリカの保守派を自負するカカシとしてはこういうことはいいたくないのだが、アメリカの保守派のなかには左翼メディアは信用できないと常々いっているくせに、左翼メディアがイラク戦争は負ける、来期の大統領選挙と一般選挙は民主党が圧勝すると報道すると、「もうだめだ〜」」とすぐ弱腰になる連中が多すぎる。どうして信用できない左翼メディアの報道を鵜呑みにするのだ!
イラクは対テロ戦争の一貫であるが、これが最初でも最後でもない。対テロ戦争は東共産圏との長年に渡る冷戦のように何十年も続く戦争になるだろう。だがイラク戦争で敵の力を弱体化しておけば、それだけ今後の戦争に我々は有利になる。だからイラク戦争はイラク人が自立できるまで見届ける必要がある。だがそれは我々が永久にイラクを面倒みるということではない。今後長丁場になる対テロ戦争を考えたら、いつまでもイラクにだけ手間どっているわけにはいかないのである。


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目覚めるヨーロッパ

さて、今日はマーク・スタイン著のアメリカ・アローン感想文の最終回として、なぜ私がヨーロッパがイスラム教の侵略によって滅びるなどということはないと希望を持っているのかその話をしたいと思う。これまでのお話は下記参照。
滅び行く欧州、栄えるイスラムの脅威 その1
滅び行く欧州、栄えるイスラムの脅威 その2
滅び行く欧州、栄えるイスラムの脅威 その3
復活するキリスト教
マーク・スタインのほぼ絶望的ヨーロッパ論の最大の間違いはヨーロッパが今のまま全く変化なくイスラム教による侵略に滅ぼされてしまうと結論付けていることだ。なぜヨーロッパが変わらないと断言できるのだろうか?事実ヨーロッパは少しづつではあるが変わりつつある。
スタインはヨーロッパの世俗主義が現在の欧州の堕落を招いたのだと書いている。私はこれには全く同意見。イスラム教という宗教に対抗できるのはヨーロッパの基盤となっているジュデオ・クリスチャンの価値観しかない。それを考えるとまだまだ規模は小さいが歓迎すべき現象がヨーロッパ各地で起きている。
まずフランス。2000年現在の資料を集めたこのサイトによると、1994年の世論調査では自分がカトリック教徒だと答えた人の数は67%で、58%が子供に洗礼を受けさせ50%が協会で結婚式を挙げたと答えている。これはその15年前の数にくらべて40%近い減り方をしていた。しかしその後フランスではじょじょにカトリックが巻き返しを見せており、毎年恒例の聖地Chartresへの巡礼では年とともに数が増し、二万から三万の参詣者が集まるようになっているという、その他の聖地や協会での会合でも年々若い人たちの参加者が増えている。またカトリックでは一番聖なる協会といわれるLourdes or Lisieuxなどでは100万人の参詣者があるという。
また大人になって洗礼を受けるひとの数も年々増えており、1993年では8000人だったのに比べ、1997年では12000人に増えている。1997年8月にジョン・ポール二世法王が来仏した際には一目法王を見ようと100万人がパリに集まったという。
CIAのファクトブックによると2007年現在のフランスではカトリック教徒は83〜88%だという。この数は自分がカトリックだと考えているひとの数ではないため、先の資料とは比較にならないが、次に多いイスラム教徒の5〜10%に比べて圧倒的な多数派を占めていることでもあり、フランス市民が再び宗教に目覚めればイスラムなど恐くない。ちなみに多少ながらユダヤ教徒も増えつつある。
ドイツでも、増えるイスラム教徒への脅威感に対抗すべく過去15年間にわたりキリスト教が再び人気を盛りかえしている。この2006年9月のウィークリースタンダードの記事によると、去年の9月にドイツを訪れたベネディクト法王のヨーロッパは経済発展と世俗主義の関係を考え直すべきだという演説が、ドイツ人の間で広く受け入れられたという。
減り続けていた協会への参詣者の数は、最近は減るどころか若いひとたちのあいだで増えている。今や8200万人いるドイツ市民の三分の二が常時協会へ行くという。カトリック教徒とプロテスタントの数はほぼ同じ。
カトリック教が圧倒的多数を示すイタリアどうかというと、1990年代には人口の90%を占めるカトリック教徒のうち常時協会に通う人の数はバチカンのあるイタリアでお粗末なほど少ないたったの30%だった。それがクリスチャンモニターのこの記事によるとイタリアでもカトリックを見直す傾向が出てきており、2006年現在では大人の人口の約半分が常時協会へ通うようになった。
第二次世界大戦後着々と世俗主義のデカダンスの道を歩んできたヨーロッパはじょじょにではあるが、再び宗教心をとりもどしているように見える。ヨーロッパの文明の基盤はキリスト教なのであり、これを忘れて文明を保つことはできない。そのことにヨーロッパが気が付きはじめているならこれは非常に喜ばしいことだ。
またカトリックへの信仰心が深くなれば産児制限を禁じる教えに従う夫婦も増えてくるだろう。そして宗教によって悲観的な将来像を描いていたヨーロッパ人が救いを見いだすことができればおのずとヨーロッパの出生率も増えてくるはずである。
宗教心が深くなると人々が保守的になってくるのも事実だ。ドイツやフランスで立て続けに保守派の政治家が政権を握ったのも偶然ではないと思う。
こうしてみるとヨーロッパもまだまだ捨てたもんではないと私は思う。希望を捨てるのは早すぎる。私はヨーロッパは目覚めつつあると信じる。


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恐ろしい中国産の食物

最近中国から輸入された食物に毒物が含まれているというニュースを多く聞くようになった。この間もアメリカに輸出されたペットフードに毒物が含まれていて何百匹という犬猫が死んだというニュースを聞いたばかりだ。
実際私が中国産のものには気をつけるべきだと考えはじめたのはほんの一年ほど前のことで、特に陳さんのところで色々な記事が紹介される度に、中国産のものは絶対に食べないぞと思うようになった。中国では企業用の油が食用油に使われている話がずいぶん出たため、レストランに自分で食用油を持っていく人が増えているというくらい信用されていない。
今日も「中国産アンコウにフグ混入」という記事を見て、もっと詳しく読もうとヤフーのサイトに行ってみたら関連記事がたくさん載っていて驚いてしまった。まずこの記事から。

中国産アンコウにフグ混入=入院者発生で自主回収−米

5月26日8時2分配信 時事通信
 【ワシントン25日時事】中国産アンコウとして出荷された魚の箱に猛毒を持つフグが混入していたとして、米カリフォルニア州の魚輸入業者は25日までに自主回収に乗り出した。シカゴでは入院者も出ており、事態を重視した米食品医薬品局(FDA)は調査に乗り出すとともに、注意を呼び掛けている。
 米国では最近、中国の原材料を使ったペットフードの大量回収に加え、中国産練り歯磨きについてもFDAが検査を開始。フグ混入で中国産の食品や医薬品への懸念がさらに広がりそうだ。 

関連記事として載っていた中国からの食物に関する記事の見出しを見ていただきたい。

有毒物質を入れても合法?中国産練り歯磨きに致死量の毒物 – Record China(25日)

中国産ナマズの販売停止=抗生物質残留で−米アラバマ州など – 時事通信(24日)
米食品安全性基準、中国の違反が最多 – 米国 – AFP BB News(23日)
中国産毒性物質、風邪薬として売られていた – 朝鮮日報(7日)
米ペットフード禍 中国ずさん管理 食品への影響懸念 – 産経新聞(5日)
中国産飼料に化学物質 米、食べた豚の流通禁止 – 産経新聞(4月27日)

まったくこんな国でオリンピックなんかできるのかね。私が選手なら絶対に自分が食べる分の食料は持っていくね。オリンピック村での食事はまだしもだが競技の前には地方の食べ物など絶対に食べない。水もペットボトルで大量に持っていく。
私が疑問に思うのは狂牛病の恐れがあるとして、アメリカからの牛肉を一年以上も輸入禁止にしていた日本では中国産の食物に関する規制はどのくらい厳しく行っているのだろうかということだ。アメリカでは日本が輸入禁止にしている間一件も狂牛病発生は起きていない。だが中国では上記の通り次から次へと恐ろしい話が出てきている。
日本在住の友達がスーパーなどでは国産の野菜を買うように気をつけることはできるが、コンビニのお弁当などに使われている野菜はかなり安価なものが多いため、実際どこからきたものなのか全くわからないと言っていた。
これは中国だけに限らないが、共産主義国家の公害は自由主義国家のそれよりもずっとひどい。日本でもアメリカでも1960年代の公害は今に比べたらひどいものだった。昔のアメリカのテレビ番組でロサンゼルスを舞台にした「弁護士ペリー・メイソン」の再放送を見ていると、市役所や警察署のある当たりの風景でスモッグがひどいのが目立つ。現在同じ場所で撮影したらスモッグなど目では見えないほど空気はきれいだ。
どうして自由主義社会では公害が減っていくのだろうか? それは政府による規制というよりも個々の企業の利益が原因だ。資本主義は金儲け主義でなんでも金になりさえすればどんな危険な品物を売ってもかまわないように思う。だが実際はそうではない。危険な製品を売れば消費者は次からその製品を買わなくなる。企業が垂れ流す汚水で近所で被害が出れば訴訟が起きて膨大な損害賠償を払わされ企業はつぶれる。市民からの規制を要求する声が大きく聞かれるようになり、お役人たちもそれに応えざる終えなくなる。
ところが共産主義やファシズムでは政府が企業をコントロールしているわけだから、企業内部で重役が個々の判断をしてその責任をとらされるということはない。政府が気に入った企業なら公害を起こしていようが危険な製品を作っていようが保護される。だから個々の労働者が個人的に企業のために安全で能率良い仕事をしようなどという意欲は湧かない。
以前に中国で豆腐工場をはじめた日本人の話をテレビのドキュメンタリーで見たことがある。豆腐工場のなかでスチームを通すパイプがつながっているのだが、パイプのつなぎ目がきちんと封鎖されていないためあちこちからスチームが漏れて最終的な圧力が保てていない。工場につとめる従業員の誰もあちこちからもれるスチームをはた目に何もしようとしないのである。日本人の工場長が従業員に漏れを封鎖するように命令するまで誰も自分から動こうとしなかった。一生懸命働こうとどうしようとお給料は同じなのだから無理をすることはないという長年にわたる共産主義の態度がここに出ている。
中国そのものは資本主義社会ではない。だが、中国がグローバリゼーションのなかで生き残るためには安全な食物を生産する必要がある。今後このような危険な食物ばかりを輸出するならば、先進国はどこも中国からの食物輸入をしなくなるだろう。もしかしてそうなってはじめて中国は資本主義国家として生まれ変わることができるのかもしれない。


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戦没者追悼の日、文学から学ぶ英雄の勇気

月曜日はアメリカはメモリアルデーといって戦没者を追悼する日である。そこで英霊の勇気を讃えるため、最近読んだエリザベス・カンター文学教授著のThe Politically Incorrect Guide to English and American Literature(政治的に正しくない英米文学へのガイド)を参考に英雄とその自己犠牲について書いてみたい。
911事件の直後、アリゾナカーディナルスというフットボールチームで活躍していたパット・ティルマン選手は年俸360万ドルの契約を蹴って持ち前の天才的運動神経を活用し陸軍特別部隊に志願した。2004年5月22日、ティルマン氏はアフガニスタンの戦闘でフレンドリーファイアー(味方の弾)に当たって戦死した。
五か月後、ティルマン氏の母校アリゾナ州立大学の助教授はティルマンの死は恥だという内容の詩を発表した。「フレンドリーファイアー」という題名の詩はあたかもティルマン氏の声でもあるかのように、こういう感じで始まる。

私の死は悲劇だ

私の栄光は短命だった

我が身と、我が国と、対テロ戦争という

誤った見解がもたらした

悲劇的な最後を遂げた我が人生

ティルマン本人が聞いたらさぞかし怒るような侮辱的な詩だ。しかし兵士が見方の弾に当たって死んだら、兵士の死は無駄死にだったのだろうか?英雄の勇気は無意味なものになってしまうのだろうか?カンター教授はそうではないと主張する。
10世紀の終わり頃バイキングの船がイギリスのサセックス沿岸を攻撃した時のマルドンの戦いの模様を描いた著者不明の詩がある。この詩のさびの部分と終わりは紛失しており真ん中の部分しか残っていないが詩は明かに敗北したイギリス側の悲劇的な最後を描いたものだ。
戦いは若い兵士が自分の愛馬を放つところから始まる。イギリス軍は徒歩で戦かったため馬は邪魔になったからだが、戦いのために愛馬を放つ犠牲を払うこの青年の心意気は疑う余地はない。
バイキングはイギリスが貢ぎ物を支払いさえすれば戦わずに見逃してやると提案するが、イギリス側の司令官はこれを拒絶。戦争の体制に入る。しかしこの司令官は突撃のタイミングを逃し、しかもバイキングが狭い水路を通り過ぎるのを待ってイギリス本土に上陸するのを待つという決定的な間違いをおかしてしまう。水路での攻撃は紳士としてのプライドが許さないというつまらない動機が災いした。
戦いは圧倒的にバイキングに有利となり、味方からも脱走兵がでるなどひどい状態になった。当時のイギリス王は「不準備のエセルレッド」と呼ばれるほど不能な王として悪名高い。このような不能な指揮官をもって戦わされた騎士らはいい迷惑である。その事実を認めながら、いにしえの詩人は王とそして祖国に忠誠を尽くして果てた英霊を蔑まない。それどころか騎士らの勇敢さと彼等が払った犠牲に大いなる敬意を評している。詩人は決して盲目的な忠誠心をたたえているのではない。詩人は苦境に立たされたときこそ英雄の勇気が試されるのだということを承知の上で、その勇気を讃えているのである。英雄の勇気は司令官の不能さや仲間の臆病な行為によって過小評価されるべきではない。たとえ回りの環境がどのようなものであったとしても、英雄が払った犠牲もその勇気が価値あるものであることに変わりはないのだ。
ティルマン兵長は自分のプロフットボール選手としてのキャリアを犠牲にして、愛する祖国のために戦った。例えその死が味方による誤射によるものだったとしても、彼の勇気と忠誠と愛国心に変わりはない。彼の死は無意味ではない。千年前のアングロサクソンの詩人には現在の英文学大学教授が分からないことがきちんと理解できていたのである。
歴代の戦争で尊い命を亡くした英霊に追悼の意を表します。安らかに眠りたまえ!


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責任感だよシュレック3!

本日は一週間ぶりに丘にあがってきたこともあり、コンピューターアニメの傑作コメディ、シュレック3を観てきた。日本語公式サイトはこちら。
1も2も面白かったので今回も期待していたのだが、その期待を裏切らず非常に面白かった。あらすじは予告編を見てもらえば分かるが、遠い遠い国の王様であるカエルのハロルド王は臨終の床でシュレックに後を継いで欲しいと言う。だが王様としての責任など果たせないと感じるシュレックは次の継承の立場にある王の甥、ティーンエージャーのアーサーを探しに旅にでる。長い船旅に出る寸前、妻のフィオラが子供を宿っていることを知らされフィオラと二人きりの静かな生活を今しばらく楽しみたいと思っていたシュレックは愕然とする。
一方今は落ちぶれて安宿で臭い芝居をしているチャーミング王子は王の死去を利用しておとぎ話の悪者連中を集めて今度こそは遠い遠い国の王として返り咲こうと企むのであった。
はっきり言って話の筋はどうでもいい。シュレックの魅力は個性ある登場人物と彼等の交友関係にあると言っていい。第一作目ではしゃべり過ぎでうるさかったロバは二作目、三作目と回を追うにつけ落ち着いてきた。特に二作目で恋におちた竜と結婚して何頭もドラゴン+ドンキーのかわいい子供たちが飛び回る。この親子のじゃれあいはとっても自然で微笑ましい。
シュレックの親友のロバ以外は皆おとぎ話の登場人物ばかり。長靴をはいた猫は窮地に陥ると大きな目を潤わせて訴えかけるし、両腕をひろげる度に小鳥がとまる白雪姫、プレッシャーがかかるとすぐ床みがきをしたくなるシンデレラ、大事な時に居眠りする眠り姫。
チャーミング王にシュレックの行方を問いつめられてなんとか嘘を言わないように何をいってるのかわからないような屁理屈でごまかすピノキオ。それを見ていてたえられなくなって泣き崩れる三匹の子豚たち。とまあ、個性豊な面々である。
シュレックの音楽担当は1960年代後半から70年代くらいの音楽が好きらしい。サウンドトラックに使われる音楽がかなり場違いで面白い。ハロルド王の葬式で流れる曲はボール・マッカートニーのリブオアレットダイだったり、白雪姫が突如レッドツェッペリンを歌い出すシーンなどは傑作だ。
日本語の公式サイトを見る限りでは予告編は日本語の吹き替えになっているが、ポスターには英語版の声優の名前が出ていることから、多分英語日本語字幕と日本語吹き替えの両方で公開されるのだろう。
吹き替えだと失われてしまうのが、キャラクターたちのお国訛りである。
シュレックを演じるマイク・マイヤーはカナダ人だが何故かシュレックはスコットランド訛り。ハロルド王のジョン・クリースもジュディ・アンドリュースもチャーミング王子のルーパート・エベレットも新しく登場する魔術師マーリンのエリック・アイドルも皆イギリス人。特にチャーミング王子のイギリス訛りはハンサムな容貌と家柄の良さを常に意識している上流階級の鼻持ちならない嫌らしさ溢れる声である。
猫の声はスペイン出身のアントニオ・バンデラスが演じているため彼のちょっとハスキーなスペイン語訛りの声はラテンラバーとしてメスにもてもての猫にぴったり。
それでも予告編をちょっと見た感じではロバのエディ・マーフィーの黒人訛りの声と日本の声優は声もイメージもぴったりで驚いてしまった。王子と猫の声は訛りはないがそれなりに演技力で雰囲気がよく出ている。日本の声優の方が元の声よりきれいな印象を受ける。
映画の中ではハリウッドの地元にいると解る内輪ジョークが結構たくさん出てくる。まず遠い遠い国のサインは完全にハリウッドのサインだし、お城に向かうパムツリー並木の道はうちの近所の景色そっくり。お城の門はパラマウントスタジオの門そのもの。城内の町並みはビバリーヒルズのロデオドライブあたりかな?
最後になったが今回の映画の主題は「責任感」シュレックは自分が王様になるのが嫌でアーサーに押し付けようとするし、同時に父親になることへの不安感でいっぱい。アーサーはアーサーで子供の頃から育った全寮制の学校でつねにいじめられてきた自分に王の座が勤まる自信はまるでない。この二人がいろいろな冒険を経て成長していく姿が描かれるわけだが、このあたりはちょっとお説教っぽいかな。
しかし愉快なキャラクター満載のドタバタコメディーで十分楽しめるのでこれは是非お勧め。週末にお子さんを連れてどうぞ。日本では6月30日ロードショー開始。


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人殺しカルト、イスラム過激派の派閥争い

ここ数日起きているレバノンでの抗争はファタ・イスラムというアルカエダ系のテロリストたちによって始められた。テロリストたちはレバノンのパレスチナ難民キャンプに外国から入り込み、武器を堂々と持ち歩きキャンプのなかを我が物顔で歩きはじめたと難民キャンプから避難してきた地元民は語っている。
非戦闘員の間に入り込んでそこを拠点にテロ行為をするのがイスラム過激派の常套手段なので、今回も応戦するレバノン軍が非戦闘員を巻き込まないよう苦労しているようだ。
イラクで思うように行動できなくなったアルカエダは最近パレスチナ人を勧誘し新しくテロ活動の範囲を広めていきたいと見える。そこでガザやウエストバンクの過激派パレスチナ人(なんか重複だな)を利用してレバノンに進出を決め込んだというわけだ。無論攻撃の対象が反シリア派の民族に限られていることからシリアの息がかかったテロリストであることも間違いないだろう。
しかしレバノンのヒズボラの親玉であるナスララは「レバノン軍を全面的に支持する」といいながら、どうしていいのか心が決まらない様子。

一方、レバノンのシーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師は同日のテレビ演説で「国家の統一を守るレバノン軍を全面的に支持する」と明言。一方で「レバノンが米国とアルカイダとの戦場になる」と述べ、レバノン軍による攻撃には反対し、交渉による解決を求める考えを示した。

またパレスチナ解放機構はキャンプ内の難民を避難させるのに当たっているという話だ。

地元紙ナハール(電子版)によると、パレスチナ解放機構(PLO)直属のパレスチナ治安部隊約100人が同キャンプに入り、住民をキャンプ内の比較的安全な地域に誘導して武装組織を孤立させる作戦を始めたという。同キャンプでは22日午後から休戦状態となり、多くの住民が外部に避難したが、まだ1万5000人以上が残っているとみられる。

イスラムの過激派テロリストの派閥は色々あって何がなんだかわからなくなる。シリアは確かスンニだからスンニ派のアルカエダと組んでも不思議ではないが、ヒズボラはもともとイランで構成されたシーア派テロリスト。しかしシリアはイランの飼い犬同然でヒズボラを手先にレバノン侵略を常に企てている。一方パレスチナ人はスンニ派でシーアは嫌いなはずだがヒズボラと組んではイスラエルに攻撃を仕掛けるなどしている。
さて、ガザのパレスチナ難民キャンプでは何が起きているかといえば、イスラエルからの局部的な空爆にも関わらずファタとハマスは協力してイスラエルと戦うということさえできずに殺しあいを続けている。
人殺しカルトはそれなりに都合のいい時には手を結び、気に入らない時には仲間同士殺し合う。まるで魂のないゴブリンやオークのようだ。(注:指輪物語に出てくる怪物たち)


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FOXニュース主催米共和党のテレビ討論会

アップデートそしてバンプ:共和党討論会について詳細を記したブログを見つけたので、アップデートしてバンプします。最後参照
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昨日に引き続き、アメリカ大統領候補の討論会の話題を紹介しよう。今回は共和党。
共和党の討論会はこれで二回目だが、前回に比べてフォックスニュース主催の今回はかなり活気があったようだ。フォックスニュースは他のメディアと違って左翼一色ではないため、民主党候補者たちは怖がってフォックス主催の討論会をこぞって拒否した。極左翼の市民団体ムーブオンからの圧力が物を言わせているようだ。
しかし共和党員の場合は自分らに敵意を示すメディアをいちいち敬遠していたのでは共和党員はやってられない。なにせ主流メディアはみんな反共和党。そういう面では共和党の方が民主党より面の皮が厚いと言えなくもない。
例によって私はこういう討論会は見ない主義なので、下記はミスター苺の感想
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前回MSNBCが主催してレーガン図書館で行われたクリス・マシュー司会の討論会が退屈この上なかったのに対して、今回のフォックスニュース主催のブリット・ヒューム司会他三人の質問者による討論会は非常に興奮した。特に最後の方で台本抜きのジョン・マケインによる「拷問には反対だが、止む終えない場合もある」っていう卵を割ってオムレツまで食べちゃおうって言うご都合主義の発言は面白かったね。
俺はルーディ・ジュリアーニとミット・ラムニーが正直に、次の爆弾がどこで爆発するかとかいった情報をテロリストから聞き出すためには、必要な手段は遠慮なく使うべきだと断言したのにはすっとした。それにひきかえ俺と同胞のカリフォルニア人のダンカン・ハンターの発言は恥かしくて歯軋りしそうになったよ。彼は核兵器が爆発するシナリオだと勘違いしたらしい。
だがこの夜のなかで一番の傑作発言といえば、ジュリアーニが、惨めなアラシのロン・ポールへ突っ込んだのより、第三レベルで名前も忘れちゃった候補者が「今の議会はジョン・エドワードがビューティサロンで使うより多額の金をつかってる」と言ったことだな。…
さてそれでは各受賞者発表!

  • G.ゴードン・リディ賞(G. Gordon Liddy)、質問に対して一番直接的な答えをしたラムニーに授与。もし司会者が「今何時かご存知ですか」と質問したらラムニーなら腕時計をみて「はい」と答えるだろう。
  • ジョージW.ブッシュ賞は、一番ハチャメチャな文法と言葉使いをしたジュリアーニに授与。これで何故か意味が通じちゃうんだからすごい。
  • ジョン・ケリー賞は、一番矛盾だらけの発言をしたマケインに授与。ひとつの文章で頭と尻尾が完全に矛盾しているというすばらしさを讃える。
  • C.オウベリー・スミス(C. Aubrey Smith)賞は一番大統領らしく振舞ったフレッド・トンプソンに授与。特にトンプソンは討論会に参加しないでこれをやってんだから大したもんだ。
  • サム・ブラウンベックはクロード・レインズ賞、、、ってえっと、、居たのかあいつ?
  • 共同司会者のワラスとゴーラーは結託してもう一人の司会者クリス・マシューをハワード・ディーンなみのアホに見せたことを讃えてにチャールトン・ヘストン賞を授与。
  • フォックスニュースは何ヶ月も前から計画されていた討論会をきちんとケーブルテレビのガイドに載せていないで、録画取りを計画していた視聴者に大迷惑をかけたことから、うっかり教授賞を授与。
  • 最後に靴底賞を一番場違いな候補、ロン・ポールに授与。奴さんときたら911がわが国の政策の最優先を完全に書き換えたということさえ認めようとしないで、孤立主義への執拗な固執をしている。こういうのはベンジャミン・ハリソン政権の頃には人気を呼んだだろうけど、時代遅れもはなはだしいよ。

    ポールがどうしても次の討論会に参加するっていうなら、中継かなにかにしてほしいもんだね。彼の自宅のあるテキサス南部の鉄橋の下とかさ、、、

俺は次の討論会が楽しみだね。ってアメリカ右翼ブロガーたちによるどの低レベル候補者が最初に落ちこぼれるかっていう討論の話だけど、、
*******
G.ゴードン・リディ: ニクソン政権時代民主党の選挙事務所に潜入して民主党の選挙作戦を盗み取ろうとした、いわゆるウォーターゲート事件の首謀者。誰の命令で動いたか最後まで白状せずに刑務所送りになった人。元弁護士で今は作家及びラジオのトークショーのDJ。歯に衣を着せないタフな発言をすることで有名。
C.オーベリー・スミス: 1880年代に活躍した有名なイギリスのクリケット選手で、後に1930年代には俳優となり、ハリウッドでは貫禄ある政治家タイプの役を専門にこなすキャラクターアクターとして有名。1944年に生涯の功績が讃えられ騎士の位を授与された。
ハワード・ディーン: 2004年民主党大統領候補にイラク戦争大反対を唱えて立候補した。前評判はよかったのに第一予選で完全自爆。敗者宣言の代わりにこれからも頑張ると雄叫びを上げたことから、以来どっか抜けてると思われている政治家。
アップデート:暗いニュースが共和党討論会について詳細を紹介してくれているのでリンクしておこう。このブログはかなり左翼よりだと私は思うが、それでもよくある単なる反米サイトのようにアメリカを完全に誤解しての脊髄反射的な批判ではなく、結構的を射た批判があると思うので読む価値はあると思う。


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米議会:民主党が完全に折れたブッシュの戦費予算案

まったく半年近くもグチャグチャ言って時間稼ぎをしていた米民主党議会だが、結局ブッシュ大統領の提案どおりのイラク戦費予算案が通りブッシュ大統領の署名となった。先ずは5月26日付けのCNNのニュースから。

ブッシュ大統領が署名、今秋までのイラク戦費法案

ワシントン——ブッシュ米大統領は25日、上下両院が24日夜に可決していた今秋までのイラク戦費支出を含む補正予算案に署名した。大統領と議会の攻防の焦点となっていた米軍撤退期限は明示されず、イラク政府が復興に向けて達成すべき目標を設定するにとどまっている。
ただ、撤退期限の問題は今秋に蒸し返されることは確実。法案では、野党・民主党が期限の明示を主張していたが、最終的に折れる形となった。同党は2008会計年度(07年10月─08年9月)の予算案審議で改めて要求する方針。

結局今のアメリカの議会は戦争を止める度胸など全くないということだ。口先だけで批判はしてもアメリカの敗北を招くことになる責任をとるだけの政治力はない。ヒラリー・クリントンとバラク・オバマがわずかに抗議の反対票を投じたが最初から可決されると分かっている議案に対しての反対票など、反戦派の極左翼に迎合するための形式上の抗議に過ぎない。
反対票を投じたバラク・オバマは下記のような公式発表をした。括弧内はカカシの注釈。(パワーラインより

わが国は軍隊を支持することで一気団結しています。しかし我々は他国の内線を警備するという重荷から彼等を解放してやる計画をたてる義務があるのです。ロムニー知事もマケイン上院議員も(二人とも共和党から大統領候補として出ている)明らかにイラクでの方針がうまくいっていると信じています。しかし私はそうは思いません。数週間前にマケイン議員が(防弾用の)フラックジャケット(flack jacket)を着て装甲ハンビーに乗り、アパッチヘリコプター2機とライフルを持った100人の兵士らに守られながらバグダッドの市場を歩かなければならなかったことがそれを証明しています。

これに対してマケイン議員はすかさず反撃した。

確かに上院議員(わずか)二年目のオバマ議員は我が軍への予算割り当てに反対票を入れる権利はあります。私の(長年に渡る議員として、ベトナム戦争に参戦して7年間にわたって捕虜になった豊かな)経験と現場の司令官たちとの会話とを合わせて考えた結果、私は新しい作戦が成功する機会を与えなければならないと信じます。なぜなら失敗はわが国の防衛に悲劇的な結果を招くからです。

ところでオバマ議員、フラックジャケットはflak jacketと綴ります。flackではありません。

マケイン議員は一本気で融通が効かないところがあり、すぐカッとなる質でブッシュ大統領ともいろいろぶつかりあってきた人だが、他人からの突っ込みにはもっと鋭い突っ込みを返せる頭の回転のいい人だ。たかだか上院議員二年生のオバマごときが相手にして勝てる相手ではない。
共和党の他の大統領候補たちもマケイン議員を見習って、今後一年半選挙に向けてどれだけヒラリーやオバマが自国の軍隊の活動を阻止しようとしたか、軍隊の総司令官になろうという人間がどれだけ軍隊をおざなりにしたか、投票者に何度も思い出させる必要がある。
アメリカの左翼連中はなんとかイラクを第二のベトナムに仕立て上げて勝てる戦争に負けようと必死だが、今の状況はベトナム時代とは違うのだということが今回の予算案可決ではっきりした。それにしてもアメリカって国は大統領の権限が強い。これはクリントン政権時代にも感じたことだが、議会全体を敵に回しても大統領には独裁的といっていいほどの権限がある。特に戦争に関しては大統領が断固戦うと言い切れば議会はそう簡単に阻止することはできないのだ。はっきりいってアメリカがそういう国で本当に良かったと思う。なぜなら対テロ戦争に負けることは絶対に許されないからだ。
イラクに巣食うテロリストやシーア民兵らにも分かっただろう。アメリカ議会はなんだかんだいっても実際に力を握っているのはブッシュ大統領なのだということが。だから抵抗は無駄なのだ、そろそろあきらめようというふうになってくれればいいのだが、ま、それは無理か。


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アメリカ軍の防弾チョッキは兵士を守っているのか?

現在アメリカ陸軍が使っている防弾チョッキは技術の最先端をいくものではなく、もっと性能のいい防弾チョッキがあるにもかかわらず、陸軍は他メーカーの製品の使用を全面的に禁止して、兵士の身をむざむざ危険にさらしているという話が最近で回っている。このNBCの番組などその典型だ。このニュースは司会者リサ・マイヤーズによる下記のようなナレーションで始まる。

陸軍の防弾チョッキの監督をしているマーク・ブラウン准将はNBCに「現在兵士らに至急されている防弾チョッキは世界最高のものです。実弾テストでも実戦でもそれは証明されています。」と語った。

だが本当に最高なのだろうか?
NBCが独自に行った弾道テストも含む調査によると、もっと性能のいいドラゴンスキンというものが存在する可能性が出てきた。軍人の家族や兵士らはドラゴンスキンのほうが防衛力があると信じて購入しようとした。しかし陸軍は去年正式なテストをする前にその使用を全面禁止した。

現在陸軍が使っている防弾チョッキはインターセプターというが、このデザインに関与した技術師のジム・マギー氏も、現在一番性能のいい防弾チョッキはインターセプターよりもドラゴンスキンと呼ばれるものだと語っている。防御面積も阻止能力も一段も二段も上だとマギー氏は語る。

ドラゴンスキンとは利害関係が全くないマギー氏は「もし今日、ジム、明日からイラクへいってもらうからどっちを着る?と聞かれたら私はドラゴンスキンを買って着ますよ。」と語った。

現にCIAは去年からドラゴンスキンの使用をはじめている。しかし、陸軍のマーク・ブラウン准将はドラゴンスキンは陸軍のテストに完全に失格したと語っている。

准将: 48発のうち13発うった玉がドラゴンスキンを突き抜けたのです。
リサ: じゃあ、悲劇的な失敗ですね。
准将:そうです。
リサ: ドラゴンスキンは失格したのですね。
准将: ドラゴンスキンはみじめに失敗しました。

番組ではここで司会者のマイヤーズが鬼の首でもとったかのように鼻にかけたナレーションが入る。

ナレーション:ここで問題が一つある。陸軍はドラゴンスキンを3月に使用禁止にした。それは5月のテストの二か月も前のことだった。

リサ: 准将、陸軍がドラゴンスキンを使用禁止にしたのはテストの前ですよ。
准将: リサ、私は、私はそのことは知りません、私はテストがその時行われていなかったことはしりません。私はその場にいなかったので、、

准将はインタビュー番組は慣れていないとみえて、適切な反論をしなかった。それで、ばれた嘘を言い訳しているような印象を与えてしまった。准将が返すべきだった反論は『リサ、当然ですよ。試験もしていない防弾チョッキを兵士らに使わせる訳にはいきませんからね!』である。テストもしてない装具を兵士らが勝手に着はじめたらそれこそ危険ではないか。先ずその安全性が分かるまでひとまず使用禁止にするのは当たり前だと言えば良かったのである。
実のところ私はドラゴンスキンがインターセプターよりも性能がいいのかどうかということは知らない。以前に「フューチャーウエポン」(未来の武器)というテレビ番組でドラゴンスキンの特集をしているのをみたことがあるが、この番組では既存のチョッキよりも性能はいいという結論をつけていた。またNBCの番組で上記の専門家以外のエンジニアーたちがが口々にドラゴンスキンの性能の良さを語り、独立して行った比較試験ではドラゴンスキンのほうが性能が高いという結論付けもしている。
もし本当にドラゴンスキンが既存のインターセプターより性能がいいのであれば、どうして陸軍はこれを使いたがらないのだろうか?NBCはドラゴンスキンが陸軍の企画でないことが原因していると示唆する。

ナレーション:機械工学士で弾道学の専門家であるネビン・ルーパート氏は7年間にわたり陸軍のドラゴンスキン専門家だった。今は内部告発者となった氏は陸軍のタイミングは偶然ではないと語る。

ルーパート: 私は陸軍の低位の人たちが故意に阻止しようとしてるんだと思います。
リサ:陸軍の人たちがどんな動機があって命を救う技術を邪魔する必要があるのですか?
ルーパート:彼等の組織に対する忠誠心と予算維持です。
ナレーション:氏によるとドラゴンスキンは陸軍によって開発されたものではないため、陸軍のなかにはインターセプターやその他の企画の予算が削られるのを恐れている人たちがいるという。(略)ルーパート氏はドラゴンスキンのテストには立ち会わないように命令されたという。
リサ:7年もドラゴンスキンの分析に当たっていたのに、陸軍がテストする時に出席するなといわれたんですか?
ルーパート: そうです。

もっともこのルーパートというひと、今年の2月に33年勤めた陸軍を首になっていて、明らかに陸軍には個人的な恨みがある。どういう理由で解雇されたのか明らかではないが、陸軍は法律上コメントできない。そのをいいことにNBCはそうと知っていながら陸軍がコメントを避けているかのように語っている。
また軍上層部の将軍らがドラゴンスキンを購入した事実を指摘し、一介の兵士らの身の安全は考えないくせに上層部だけが性能のいいものをきているとでもいいたげだ。しかし上層分の将軍らは多分陸軍の防弾チョッキの規則を知らなかったのだろうし、お偉方は鉄砲担いで戦闘に赴くわけではないから、多少重たいチョッキをきて歩いたからといってどうってことはない。こういう報道の仕方を「あら探し」というのだ。
しかしここでNBCが語らないのは、ドラゴンスキンの使いやすさである。性能のいい防弾チョキが必ずしも一番使いやすいとは限らない。例えばマイヤーズの「陸軍の人たちがどんな動機があって命を救う技術を邪魔する必要があるのですか?」という質問だが、忠誠心や予算維持以外に、軍隊にはもっと基本的な理由がある。それは、
軍隊は兵士の命を守るのが仕事ではない。軍隊は敵を殺し物を壊すのが仕事である。であるからその仕事に邪魔になるものは使わない。
軍隊が兵士の命を守ることを最優先にしたならば、戦争など最初からやれないではないか。戦争をやれば必ず戦死者や負傷者が出ることは最初から分かっているのだから。
つまり、ドラゴンスキンがどれほど既存のチョッキよりも性能がよかったとしても、(陸軍は異存を唱えているが)それが兵士の戦う行動の邪魔になるようであれば使用しないという決断が下されても不思議ではない。現に私は現場の兵士らがある種のチョッキは重たすぎて着てられないと文句をいっているのをミルブログなどで読んだことがある。
事実、インターセプターの12.7kgに比べてドラゴンスキンは21.5kgと二倍近い重量なのである。重たい荷物をしょってハイキングをしたことのある人なら分かるが一人の人間が担いで機能できる重量には限りがある。それ以上になった場合はたとえどれだけ便利なものでも置いていくしか仕方がないのだ。一般の兵士が担げる重量はスパルタの時代からほぼかわらず36.2kgがせいぜい。防弾チョッキだけでその三分の二をとられてしまっては、その分持てる補充用の銃弾の数などが減るし兵士の動きにも弊害がでる。いくら弾に当たった場合は生き残る可能性が高くても動きが鈍って弾に当たる可能性が高まっては元も子もないだろう。
また、陸軍のテストによるとドラゴンスキンは耐えられる温度にも限りがあり、下はカ氏マイナス20度まで、上は120度までで、それ以上になると鱗をとめている糊が弱まって鱗がはがれてしまうという。
強まる批判に答えるため、陸軍はこのほかにもドラゴンスキンのテストの調査結果を公表した。
この問題はこのままではおさまらず、きっと民主党の議員らが公聴会でも開いてまたまた税金の無駄使いをするに違いない。だいたい戦費を削って軍隊の行動を大幅に邪魔し、兵士をより危険な目にあわせようとしている奴らが、この時とばかりまるで兵士らの身を慮っているかのうように騒ぎ立てる偽善には反吐がでる。軍隊の動き同様、軍隊が使用する武器なども専門家でもない議院などに決めてもらいたくない。これは現地で実際に武器を使用する軍人や専門家の工学博士などが決めることであり、素人が口出しすべきことではないのである。


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