日本の衆院が参院で否決された法案を再可決するという57年ぶりのまれにみる動きにより、新テロ対策特別措置法が再可決されたというニュースを読み、非常に喜んでいるカカシである。
海上自衛隊によるインド洋での給油活動を再開させるための新テロ対策特別措置法(給油新法)は十一日午後の衆院本会議で、憲法五九条に基づいて自民、公明両党など三分の二以上の賛成多数で再可決、成立した。これにより焦点は、十八日召集の通常国会での二〇〇八年度予算案と関連法案審議をめぐる与野党攻防に移る。政府・与党は政権運営にかかわる重要法案成立のためには、衆院での再可決を辞さない構え。民主党は福田康夫首相問責決議案の参院提出の時期を探っており、衆院解散含みの展開となるのは必至だ。…
給油新法成立を受け、石破茂防衛相は斎藤隆統合幕僚長、吉川栄治海上幕僚長らに給油活動再開に向けた準備を指示した。
政府は十六日にも派遣実施計画を閣議決定。今月中に補給艦などを出航させ、二月中旬にも活動を再開する。
日本の給油活動はいずれ再開されるであろうと考えていたので、この結果は特に驚くべきことではないが、三か月という間をあけてしまったのは日本の国際的立場を考えるとあまり好ましい出来事ではなかった。この問題に関して産經新聞の「主張」が興味深いのでちょっと拝借。
…石破茂防衛相が「(給油活動中断で)パキスタン艦船は活動時間が4割減った。監視活動が密から疎になっている」と語ったように、海自の撤収は多国籍海軍の海上パトロールなどにダメージを与えた。喜んだのは、麻薬を積んで武器を買って戻るテロリストたちなのである。
ペルシャ湾からインド洋にいたる多国籍海軍が守る海域は、中東に原油の9割を依存する日本にとって海上交通路(シーレーン)と重なる。
ところが反テロ国際行動から脱落したことで、海自は海上テロなどの情報を共有できなくなってしまった。日本のタンカーは危うさの中に放置されていたといえる。多国籍海軍への給油支援は日本の死活問題でもある。
国際社会は給油再開を歓迎しているが、それにとどまってはならない。日本は反テロ国際共同行動を担う能力と責務を担っている。日本が信頼できる国かどうかが試されてもいよう。
これは私の主観だが、どうも日本の方々は海上交通路の重要さを十分に理解していないのではないかという気がしてならない。直接輸出入に関与していない市民は海を使ってどれだけの物資が我々のもとに届けられているか実感が湧かないのかもしれない。空路や道路がいくら発達しているとはいっても、輸送の主体はいまでも海路なのである。
海路を使って輸送されているのは原油だけでなく、食料、科学薬品の原料、乗用車など数え上げたらきりがない。海路の安全が保たれなければ日本のような海に囲まれた国はお陀仏である。
ここでも何度か書いているように、私は仕事柄一年のうち半年以上は船に乗っている身であり、アメリカの海域を出ることも多々あるので、海上保全は他人事ではない。天候の関係で補給が切れて三日三晩コーンドッグ(ホットドッグに衣をつけて揚げたもの)とチキンナゲットを食べさせられた経験もあるので補給の大事さは身にしみているつもり。(ちょっとせこいかしら?)
ただ心配なのはこ特別阻止法は一年ごとに見直しが必要だという点。
新テロ法の問題点は期限を1年間にしたことだ。海自の活動を給油・給水に限定してもいる。これでは国際社会の期待に応える活動はできない。期限切れが近づけば、また政争を繰り返そうというのだろうか。
恒久法制定は待ったなしだ。海外で新たな事態が起きるたびに特別措置法を定めて自衛隊を派遣する現状を改め、国際平和協力をより迅速に行わねばならない。
やはり問題の根源には日本の憲法に限界があるという点ではないだろうか。産経新聞が指摘しているように、何かある毎に特別措置法などを定めていては時間的に間に合わないし、その時の政治状況で日本が迅速な反応を示せるかどうか解らない。いつまでも臨時に憲法を回り道するようなやり方をやっていては日本は本当に国際社会で信用を失うし、第一日本の国防のためにも良くない。
日本ではそろそろ憲法改正をするという前提で真剣な討論がされるべき時ではないかと思う。もっともイラクへの自衛隊派遣やインド洋への補給活動などは、自衛隊が正規軍として活動するという既成事実を作ってしまうという意味では良いことなのかもしれない。私は法治国家の日本が憲法をわい曲した形でバンドエイド型の措置法をとるやり方は好まない。だが、日本の現状を考えると、こういうふうにじょじょに既成事実を作ってしまって、憲法では違法だが事実自衛隊はすでに正規軍的な活動をしているのだから、という理由で改正がやりやすくなるという考えもあるのかもしれない。