時代劇や史実番組で行われる人種挿げ替えがもたらす危険

先日ご紹介したネットフリックスのクレオパトラシリーズの放映が遂に始まったが、RottenTomatoesという批評家と視聴者の反響を示す指標では、批評家11%、視聴者2%というRT史上最低の結果が出た。これはつまり、観た人ほぼ全員がこの番組に悪評価を下したということになる。この番組は放映前からクレオパトラをアフリカ系黒人が演じているということでかなりの批判があり、特に現エジプト人からなぜエジプト系やギリシャ系の女優を使わなかったのだと不満の声が上がっていた。

Netflix’s ‘Queen Cleopatra’ docuseries slammed by both critics and audience for being historically incoherent

Netflixのアデラ・ジェイムス演じるクレオパトラ

ローマやエジプトの古代歴史に詳しいユーチューバー(多分ギリシャ系)の話を聞くと、北アフリカ系黒人は主役のアデラ・ジェイムスだけでなく、エジプト人とされる人々の役は全てアフロ黒人が演じているという。当時のエジプトの支配階級はマセドニア人(現在のギリシャ)であり、アフロ黒人ではない。なぜエジプト王家の話なのにエジプト系俳優が一人も起用されていないのか、とそのユーチューバーは怒っていた。

Elizabeth Taylor as Cleopatra in the 1963 epic drama film directed by Joseph L. Mankiewicz.

Elizabeth Taylor as Cleopatra in the 1963 epic drama film directed by Joseph L. Mankiewicz.

しかしエリザベス・テーラーがクレオパトラを演じた時は人種が違うなどという批判はなかったではないかという問いに対して、エジプト人芸人Bassem Youssefはハリウッドは昔からそういうことには無頓着であり、当時のエジプト人もそれがいいと思っていたわけではないと語っていた。しかし、そういう彼の顔立ちは、中東系とはいえイタリア人やギリシャ人と言っても通用するヨーロッパ系に見えるし、肌はどちらかと言うと白人に近く目は青い。今のエジプト人でもこうなのだ。古代エジプトのマセドニア人であったクレオパトラがエリザベス・テーラーとアデラ・ジェイムスのどちらに似ていたかと言えば、明らかにテーラーの方に似ていたはずだ。

Bassem Youssef

Photo courtesy of Mustapha Azab Bassem Youssef

拙ブログでも何度かお話しているように、昨今のハリウッドやイギリスのドラマにおける人種挿げ替えの勢いは凄まじい。リトルマーメイドやティンカーベルのような架空のファンタジーキャラクターなら人種などどうでもいいという理屈も通るかもしれないが(通らないと私は思うが)、時代劇など史実を元に実在した歴史上の人物で肖像画などからその容貌が広く知れ渡っているような人たちですら黒人が演じるという本当におかしな状況になっている。

つい先日も、ウィリアム・F・バックリーJr.(1925ー2008)という1955年にナショナル・レビューを設立した保守派作家の役を黒人が演じているお芝居のコマーシャルを観た。彼は1950年代から2008年に亡くなる寸前までテレビなも多く出演しており、その教養あふれる上流階級人らしい彼独特の話方に関しては、まだまだ記憶に新しい人々が多く居る。彼の友人だった保守派の人びとも未だに作家や評論家として活躍しているわけで、全くイメージの違う人を配役することの意味がわからない。私の今は亡き我が友人はバックリーと面識もあり、彼の物真似が非常にうまかった。

しかし問題なのはイメージが違うなどという表面的なことだけではない。ほぼ単一民族だけの社会ではよそ者を忌み嫌うのはごく普通である。だいたいつい数十年前までどんな社会でもよそ者差別は普通だった。海岸沿いで貿易港などがあり諸外国の人びとが入り混じる都市ならともかく、小さいコミュニティーでは誰もが何世代も前からの知り合いだ。だからよそ者を警戒するのは当然の’話だ。

それと昔の社会はどこの社会でも階級制度というものがあった。自分らが付き合う相手は同じ階級のものだけであり、ましてや結婚などということになれば位が高ければ高いほど相手の家柄を選ばなければならない。位の違うひとたちとの付き合いは同じ階級の人びととのそれとはまるで違う。身分の違うもの同士の対等なつきあいなどというものは存在しなかったのである。

そういう社会を背景にした物語で、全く違う人種や階級の人間が、あたかも対等であるかのように自然な付き合いをする描写があった場合、歴史を良く知らない観客は昔の欧米社会についてどんな印象をもつだろうか?何も知らない観客は中世のイギリスやフランスの宮廷には普通にアフリカ系黒人の貴族が出入りし、貴族も商人も農民もみな同じようにふるまい、諸外国からの移民で街は溢れかえっていたと思ってしまうのではないか?だがそうだとしたら、当時全く文化の違う諸外国からの移民がヨーロッパの宮廷でヨーロッパ人と同じようにふるまうだけの教養を持っていたということになってしまい、当時の中東アラブの奴隷商人やアフリカ大陸からの黒人奴隷らの存在はかき消されてしまう。

つまり史実上の人物や当時の社会を無視した人種挿げ替えは当時の社会構成や文化全体を否定することになり、欧州及びアフリカや中東の歴史まで書き換えてしまうことになるのだ。

今の世の中でも人種差別が消えたわけではない。いや、それどころか人権屋が常に現社会の人種差別について声高に訴えている。しかし、ドラマの世界を信じるならば、中世や近代歴史の欧米で多人種が仲良く全く問題なく共存していたのに、昨今の人種差別は何時頃から始まったのであろうか、何故昔は人種差別がなかったのに突然現代になって人種差別が始まったのだ、そしてその原因は何なのだ?というおかしな疑問が生まれてしまう。よしんば昔から人種差別はあったと考えたとしても、ドラマの世界を見る限り、いまとそんなに違わない程度のものだったと判断せざる負えなくなり、欧米の人種問題は昔から全く変わっていないという印象を持ってしまう。実際はまるで違うにもかかわらずである。

それともうひとつ、昨今の人種挿げ替えはほぼ元の役が何人であろうと黒人が配役される。そして白人役を黒人が演じるのは構わないのに黒人役を白人が演じたら大問題になる。この間も書いた通り、現代のハワイ諸島民の役を実際のハワイ島民が配役されたにもかかわらず、役者の肌の色が白すぎると言って大騒ぎする黒人活動家たち。ハワイ諸島民はアフロ黒人ではなくヨーロッパの植民地時代が長く続いたせいで肌の色もまちまちであることなど完全無視。それでいて、非白人の有色人種(エジプト人)をあり得ない人種のアフロ黒人が演じることは全く問題がないと言い張り、当のエジプト人からの非難を「黒人差別だ」だとしてエジプト人ファン全般を侮辱するという傲慢さ。このままでいくと、そのうち「ショーグン」や「ラストサムライ」のリメイクが行われたら日本人役は全員黒人がやるのではないかとさえ思われるほどだ。

黒人俳優を多く起用したいというなら、黒人独自の歴史を語ればよい。近代の黒人英雄の遺伝はいくらもある。奴隷から政治家になったフレドリック・ダグラスやジム・クロー時代に育ちながら最高裁判事にまでなったクレアランス・トーマス判事の話など探せばいくらでもあるはず。なぜ他民族の歴史を乗っ取らなければならないのだ?何故他人の創造物を破壊しなければならないのだ?

今回のクレオパトラシリーズの大不評が良い例であるなら、今後このような人種挿げ替えはどんどん拒絶されていくだろう。そうなって反感を買うのは単に与えられた仕事をしていた黒人俳優たちのほうである。

追記:これを書いてからクレオパトラのプロデューサー、ジェダ・ピンケット・スミス(ウィル・スミスの悪妻)は、クレオパトラの失敗は白人至上主義のせいだと言っているという記事を見つけた。Jada Pinkett Smith claims her Cleopatra documentary FAILED due to WHITE SUPREMACISM (msn.com)。苦情の多くは非白人のエジプト人からなのに、なんでもかんでも白人至上主義の性にするな!歴史的にも間違いだらけの駄作を作った責任をちゃんと取るべきである。

ネット仲間のBlahさんがおもしろい動画を紹介してくれてるので張っておく。(5) 🇺🇸 🇯🇵Blah on Twitter: “ポリコレ改変が大好きなNetflix、今度はシャーロット王妃を黒人にして炎上。 シャーロット王妃黒人説は一部で根強く、原作者も賛同も、歴史家はこの説を強く否定。奴隷制廃止前に黒人系王族は無理があると批判の声。 ↓リプ欄で恒例のポリコレ映画ミーム集 https://t.co/PAqdaduhUg” / Twitter


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ニューヨーク、違法移民が高級ホテルに泊まらせろと座り込みデモ

先日からマンハッタンの高級ホテル、ワトソンホテルの前で50人以上の違法移民と警察官による小競り合いがはじまった。ニューヨーク市は自らを違法移民の聖域と名乗り、カリフォルニアやアリゾナやテキサスの国境を越えてやってきた違法移民の人気の行先となっている。それというのも、ニューヨークへ行けば違法移民は高級ホテルに泊まり三度の食事も無料でルームサービスを受けられ、ホテル内部の室内プールや子供の遊技場なども無料で使い放題だという噂が広まったからである。

実はこれ、単なる噂ではなく、実際にNY市は大量にやってくる移民たちを収容する臨時施設の建設が間に合わず、応急措置として一時的に移民たちを市内のホテルに住まわせていたのである。しかし先日やっと移民収容所が完成したため、ホテル住まいをしていた移民たちがそちらに移されることになった。ワトソンホテル前での小競り合いは収容所移転を拒否する移民たちと、それを煽る反警察の活動家らによって起こされたものだった。

市によれば、ホテル前の小競り合いを扇動しているのはカリフォルニアとニューヨークのコミュニティーオーガナイザーと呼ばれる活動家たちである。少なくともこのグループの一人がスペイン語で書かれた反警察のビラを違法移民たちに配っているのが確認されている。

エリック・アダムス市長は外部からの先導者はかえって移民の立場を悪くしていると批判。市の移民担当のマヌエル・カストロ局長は運動家たちは移民避難所が国外追放のための収容所であるかのように嘘をついていると語る。

ところでこのデモに参加してる移民たちは皆20代の若者ばかりで、およそ難民などではない。彼らはニューヨークの一等地にある高級ホテルからブルックリンにあるシェルターへの移動を拒否しているのである。そして、なんとシェルターにいくくらいなら野宿をしてやるといって、ホテルの前でテントを張って数日間寝泊まりデモをやっているのだ。

まったく違法移民の分際で何を勝手なことを!

この違法移民たちの態度に腹を立てているのは地元に長年住んでいるメキシコ人移民たち。彼らは何十年も前に正規のルートで移住し、賢明に働いてアメリカ市民として真面目に暮らしている人たちである。

「糞ったれだ!」とボンフィロ・ソリスさん43歳。「この違法移民たちは政府からのお恵みを求めていてすでに受け取っているものに感謝すらしない。こいつらは恩知らずだ。」

ソリスさんはモーニングサイドハイツで奥さんと四人の子どもと暮らす。家の改築業を営み二人の従業員を持つ。彼はNYに住んで30年。一生懸命働いて一度たりとも政府のお世話になどなったことはないと語る。しかし彼がワトソンホテル前の様子を見にやってきて、携帯で動画を撮ろうとすると、違法移民たちから邪魔をされ怒鳴られたという。傍にいた記者たちも同じように傘で邪魔をされたという。傘を使った記者への暴力はANTIFAの常套手段である。

私のアメリカでの最初の仕事はレストランの皿洗いでした。そしてウエイターに昇進し、その後建築現場で平の労働者から現場監督に出世したのです。

それなのに、何もしないですべて貰えると期待している奴らを見ると、頑張って仕事して良い未来を築こうとしている移民たちに失礼だ。

違法移民を一番嫌うのは正規のルートで入国して長年一生懸命に働いてアメリカ人としての生活を築いた我々合法移民たちである。

私も最初はレストランのウエイトレス、小企業の受付嬢、銀行の新規口座担当、重役秘書、エンジニア、と40年に渡り色々な苦労をして今に至る。リストラされて新しい仕事が見つかるまでの三週間失業保険をもらった以外は、政府のお世話になったことは一度もない。(失業保険も自分の給料から差し引かれていたのだから政府からのお恵みではないし)

それなのに、南米からやってきたばかりで五体満足の若者が、なにもしないでアメリカはニューヨークの一等地マンハッタンの高級ホテルにただで永久に泊まらせろと要求しているのだ。

確かにこれらの違法移民たちの図々しい態度には腹が立つが、こんなことになったのももとはと言えばニューヨーク市が自分らの市は違法移民の聖域であり、ニューヨークに繰れば移民たちは大歓迎されると宣言したのが原因だ。

大量にやってくる違法移民を受け入れる用意もないのに、国境沿いの州が移民受け入れを拒否しているのを批判して自分らこそが人権派だ、移民さんいっらっしゃい、とやったからこんなことになったんじゃないか。自業自得だ。

とはいうものの、ただでさえ治安悪化がひどいニューヨークで、さらに違法移民が溢れたら、いったいどういうことになるのか。NY市民はお気の毒なことである。


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フロリダ州ディサンティス知事が違法移民たちをリベラル高級地マーサズビンヤードに搬送、焦る民主党住民

ここしばらく、メキシコとの国境を共有するテキサスのアボット知事が自州に入り込んだ違法移民たちを首都のワシントンDCやニューヨークやシカゴに搬送して、これらの都市の市長たちが悲鳴を上げているというニュースが連日流れている。昨日など、アボット知事は2台のバスをDCにあるカマラ・ハリス副大統領の自宅前に送りつけるというパフォーマンスをやってのけた。

そして同日、今度はフロリダ州のディサンティス知事が違法移民をオバマ元大統領の邸宅や民主党政治家たちが住む高級住宅マーサズビンヤードに搬送したことが大ニュースとなっている。同知事はマサチューセッツやニューヨークやカリフォルニアは違法移民の聖域だと公言してバイデン政権の違法移民受け入れ政策を支持している以上、違法移民の面倒をみるのは当然の義務だと主張。チャーター便二便をつかってフロリダからマーサズビンヤードに違法移民を送り付けた。

実はバイデン政権は国境を越えてやってきた違法移民を隠密のうちに共和党が権限を握る州へどんどん送り込んでいた。2021年の11月、何機もの航空機に乗せられた違法移民たちがフロリダに送られてきた。同知事はバイデンの移民政策に反対のフロリダ市民が違法移民の面倒をみる義理はないとして、違法移民をバイデン政権の政策に同意している民主党の州に送り届けるつもりだと宣言している。

マーサズビンヤードにつれていかれた違法移民たちは「話が違う」と文句を言ってるが、他人の国に密入国しておいて、いったいどんな待遇を期待していたのだろうか?

それはともかく、サンシャインステート(日照の州=フロリダ)とゴールデンステート(黄金の州=カリフォルニア)知事のちょっとし口論が起きている。私が住むカリフォルニアのニューサム知事はバリバリの左翼リベラル。自州が違法移民で大変なことになっているのに全く無頓着で、犯罪を全く取り締まらず、それでいてコロナ禍での一般州民への取り締まりは異常なまでに厳しかった。

この11月それぞれ再選挙を控えているディサントスとニューサム知事なのだが、先日ディサントス知事は記者会見でニューサム知事を州民を平民のように扱っていると厳しく批判した。それというのもニューサム知事は自分の選挙運動広告でフロリダ知事を批判し、フロリダ州民はカリフォルニアに移ってくるべきだと宣言したからである。

それでディサントス知事は、「フロリダでは最近カリフォルニアのライセンスプレートが増えてるが、カリフォルニアではフロリダプレートはそう見かけないねえ」といい、コロナ禍で州民に多大なる犠牲を強いておきながら、ニューサム知事は高級レストランで密な宴会を開いていたことを指摘。知事は州民をあたかも平民のように扱っていると批判したわけだ。

またディサントスはカリフォルニアはこれまで人口が減ったことがないのに、ニューサム知事になってからカリフォルニアを脱出しフロリダに移住する人が増えていることも指摘。そしてニューサム知事のつねにポマードできれいに塗りつけられている髪型をおちょくるなどした。

ニューサムはこれをうけて、いつでもディサンティスと討論してやる、その時はポマードを沢山持って行ってやるなどと反論している。

なぜ西海岸と東海岸の知事同士がこんな戦いをしているのかというと、ディサンティス2024年の大統領選挙に共和党から出馬を真剣に考えているのと同様、ニューサムも民主党代表として大統領選に出馬するのではないかという話があるからなのである。

私はトランプ前大統領の大ファンではあるが、彼の高齢や彼自身のパーソナリティーなども考慮にいれると、ディサンティスのほうが共和党候補としてふさわしいと思う。できればトランプには引退してもらって、ディサンティス候補で行ってほしい。彼のコロナ禍の対策や移民対策を見ていると、彼はあきらかに共和党を代表してしかるべき人だとおもえる。


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10歳の強姦被害者がオハイオで中絶を拒まれインディアナに越境したという事件の実情はいかに?

数日前にバイデン大統領が「10歳の少女が強姦されたのに、中絶を拒まれた。10歳だぞ!」と演技たっぷりに演説をした。多くの保守派は「10歳児が妊娠なんかするのか?」と半信半疑。実際これは真実なのだろうか、単なる捏造ではないのかと話題になった。特にこの話を最初に告発した医師(Dr. Caitlin Bernard)が有名な中絶推進派だったこともあり、医師によるでっちあげではないかとその真偽が疑われたのだ。

私は大昔に日本で9歳の少女が妊娠したという例をきいたことがあったので、10歳でも生理があれば妊娠の可能性はあるだろうと考えていた。事実、保守派議員たちがこの事件の真実性に疑念を持っている間にも、インディアナで中絶手術を受けた少女の身元がわかり、この少女を強姦したとされる27歳の違法移民が逮捕された。

それで中絶推進派は、ほれみろ、実際にこんな悲劇が起きているではないかと鬼の首でもとったようにはしゃいでいるが、どうもこの話はおかしい。

先ず10歳の少女がオハイオで中絶手術を受けられなかったというのは本当なのだろうか?

当初、この少女は妊娠6週間と数日だったため中絶を拒まれたと言われていた。が、オハイオの新しい中絶規制によると胎児独自の心拍音が聞こえた後の中絶は違法ということにはなっているが、それがだいたい妊娠6週間目くらいから起きるというだけであって確たる時間制限があるわけではない。また、心拍音が確認された場合でも例外があり、母体の命にかかわる場合、母体の健康に著しく危害を与える可能性のある場合、子宮外妊娠の場合、はその例外となる。

オハイオの法律家たちの間では、10歳という幼年児の妊娠出産は母体に著しい負担をかけるため、この例外に当てはまる、よって、オハイオでの手術が拒絶されることはなかったはずだと語る。では少女は何故インディアナまで越境したのか。実はこの少女の家族は最初からオハイオの病院へ行かずにインディアナの専門家を頼った。つまり、少女はオハイオで拒絶されたのではなく、自らインディアナへ行ったという話だった。

オハイオ州の司法長官は10歳児が強姦されたという記録はないと主張していたが、被害者の母親は6月22日の段階で児童保護局に通報しており、局のほうから警察にも通報があった。

思うにオハイオの児童保護局の職員はオハイオの法律で10歳児が中絶を受けられるかどうかわからなかったため、大事をとってインディアナの医者を紹介したのではないかと思う。なにせ法律家の間でも実際10歳児の出産が母体に著しい危害を加えるという例外に当てはまるのかどうかという議論がされている状態なので、そんな決断を待っている間にどんどん妊娠は進んでしまう。中絶するなら早い方がいいと判断したとしても責めることは出来ない。

しかしそれとは別に、この事件がおきたのはバイデンにも多大なる責任があると言える。

実際に10歳児がオハイオで中絶出来たかどうかということよりも、もっと重大な問題だ。それは犯人が違法移民だったということだ!

Gershon Fuentes, 27, has been charged with one count of rape. He was given a $2 million bond.
Gerson Fuentes, 27, has been charged with one count of rape. He was given a $2 million bond.

バイデン政権になってからというもの、アメリカの国境警備はまるでざる。トランプ政権の時の何十倍の違法移民がアメリカに乱入している。もしバイデンが10歳の少女が強姦されて妊娠したということを本気で憂いているなら、そんな悪い奴をこの国に招き入れた自分の政策を反省すべきだ。中絶規制法云々なんて話をしている場合ではない!

共和党議員たちも、これを中絶規制の問題にせずに、違法移民の問題だとして議論を薦めるべきだ。


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崩壊するアメリカ国境、テキサス州アボット知事の逆襲

本日(2022年4月14日)早朝、アメリカの首都ワシントンDCにテキサスから違法移民を乗せた二台目のバスが到着した。これはテキサスのグレッグ・アボット州知事がバイデン政権の悲劇的な移民政策に対しておこなった反撃のひとつである。

アボット知事は先週、連邦政府がテキサス州内部に解放した違法移民は連邦政府に引き取ってもらうと宣言し、緊急対策テキサス支部the Texas Division of Emergency Management (TDEM)に違法移民の移動を命令した。

バイデン政権になって以来、トランプ政権中に厳重に取り締まりが行われていた国境の防御が破壊状態になっており、2021年は97年間で移民の多さが第三位とまでになった。わずかに武漢ウイルス対策の一貫として病気を理由に追い返していた違法移民も、CDCの方針変更で追い出せなくなるという散々たる状況と化している。

CDCのタイトル42という規制は、感染病などの蔓延を防ぐために、難民申請の手続きを行わないまま国境から追い返してもよいというもので、この規制の元、170万人の移民が追い返されていた。しかし、武漢ウイルスはもう終息したということで、CDCはこの規制を解除する意図を発表したのだ。

ただでさえがばがばな国境は、このタイトル42解除でさらにがばがばになってしまう。それで国境沿いの州であるテキサスでは、知事が連邦政府のこの無責任な移民対策に反発して、テキサス州に放たれた違法移民たちを首都に送り込むという作戦にでたのである。

バイデン爺さん、あんたが招き入れたんだから、あんたがなんとかしてよね、と言う具合だ。

TDEMによれば、この政策はすでに効果を上げているという。アボット知事に助けを求めたリオグランデバレーからテレル郡の住民は連邦政府による違法移民の解放が止まったと報告している。TDEMは違法移民が解放された国境付近の地域にバスを送り込み違法移民と確認された人々がバスに乗せられた。これらのバスは一台40人を収容することができるという。

しかし移民問題は連邦政府の管轄であるため、国境州の知事といえども違法移民を買ってに輸送することは憲法違反である。2012年のオバマ政権の頃アリゾナ州でも同じことをやろうとして法廷で負けた例がある。

しかしアボット知事は、連邦政府が責任ある政策を取っていないことがこの現状を招いているのだと主張。

「テキサスは、バイデン大統領の無頓着なリーダーシップではなく、もっと国境警備に関する積極的で計画性のある政策を要求する。「連邦政府がかつて地元の安全を保っていた常識ある方針から後退するにつれ、我々の地元警察が乗り出して危険な犯罪者や麻薬密売人や違法麻薬などの流入から一つ星州(テキサス州の愛称)を守っているのだ。」

テキサス州が行っている国境警備はこれだけではない。連邦政府がメキシコから入ってくる違法移民や麻薬流入の検査を全く行っていないため、テキサス州は独自にメキシコから入国するトラック内部を事細かに検査し始めた。おかげで国境につづくメキシコの道路で何十キロにも及ぶ大渋滞が起きている。

これに関してホワイトハウスのジェン・サキ報道官はアボット知事を痛烈に批判し次のように語った。

テキサスとメキシコの国境でアボット知事が行っている不必要で重複した検査により、食品や自動車の部品などの供給が著しく滞っており、産業や仕事に多大なる悪影響を及ぼして、それがテキサスや国中の家計に大きな負担をかけている。

あ~、まるで効果ないワクチンパスポートをトラック運転手たちに課して、カナダとアメリカの流通を停滞させた政権が何を言ってんでしょうかねえ。

だいたいテキサスが厳しい検査をしなければならないのは、連邦政府がメキシコからの多々の違法薬物や密輸製品の規制を行っていないことが原因ではないか。連邦政府がやらないことを国境州のテキサスがやらざる負えない状況になっているのだ。自分らの職務怠慢を棚にあげてよくもまあテキサスを責めたりできるものだ。


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アメリカ史上最悪な外交、アフガニスタンの惨劇に完全にクルーレスな耄碌バイデン爺

先日のバイデン爺の演説は何もかも他人に責任を擦り付けるひどいものだった。今までトランプ大統領の成功していた政策をすべて覆して台無しにしてきたくせに、今回の作戦はトランプ政権のものを引き継いだものだった、あんなに早くアフガニスタン軍隊が崩壊すると思わなかったなどと見苦しい言い訳の数々。しかも記者からの質問には一切答えなかった。昨日になってやっとバイデンに同情的と思われるABCのジョージ・ステファノポウラスの一対一インタビューを受けたが、このインタビューにおいて、バイデンが如何に大統領として、そして米軍総司令官として失格であるかということが明らかになった。ステファノポウラスの名前は長すぎるのでジョージと呼ばせてもらう。

ジョージは先ず、去る7月にバイデンがタリバンによる制覇は先ずあり得ないと断言したことに言及。「諜報が間違っていたのですか、それとも単に過小評価していたのですか」という質問に対しバイデンは、諜報部でもそれに関しては同一の見方はなかった。そういうことがあったとしても年末までには起きないだろうと予測していたと回答。だがジョージはバイデンが期限について何も述べず、そういうことは先ずあり得ないと断言したではないかと追及。

そこでまたバイデンはアフガニスタンの30万の兵が戦わずに崩壊するとは予測していなかったと言い訳。しかしこれも、マコーネル上院議員(共和党)が多いに予測できることだと言っていたと問い詰めると、、

爺:なんじゃ?誰が予測できると言ったって?

ジョージ:マコーネル議員がタリバンによる制覇は予測できたことだと言ってました。

爺:あ~、年末くらいにはそいうこともあるかもと言ったのじゃ。だが誰もあの質問の時にそんなことはいっておらんかった。

ジョージ:ではこの一週間で起きたことを見て、諜報と計画と実行もしくは判断に失敗があったと考えますか?

爺:よいか、、わしはそのだな、これは単純な選択じゃったのじゃ。ジョージ、タリバンが、、ああちょっと言い方をかえるとじゃな、、

と、ここでもアフガニスタン首相がさっさと逃げ出したり30万のアフガン兵が戦わずして降参するなど考えられないことだったと繰り返す。そしてトランプの計画通り5月で引き揚げるのは無理だったので9月まで延長したと説明。

ジョージ:軍事アドバイザーの誰も「2500兵は残すべきだ。ここ数年安定しているから、それが出来る」と言わなかったのですか。

バイデン:いいや、誰からもそんなことを聞いた覚えはない。安定していたのは先の大統領が「五月までには出ていくからそれまでおとなしくしていろ」と交渉したからじゃ。

この後バイデンは、アフガニスタンからは何時か撤退しなければならなかった、それが10年前でも今でも混乱は避けられなかったのだと主張。

昨日私が聞いたトランプのフォックスでのインタビューによれば、トランプ政権は5月までに撤退するとは言ったが、それはタリバンがトランプの出した数々の条件を守るという前提で行われており、もしタリバンがその約束のひとつでも破ったら容赦なく攻撃するということになっていた。だからトランプが2万から居た兵を2500兵に減らしても、タリバンは手を出さなかったのである。

ジョージ:しかし最善の時がないとしても、いずれ撤退しなければならないとわかっていたのなら、アメリカ人の避難やアフガンの味方や同盟国の人の安全を確保するべきだったのでは、今カブールで起きているような混乱が起きないように。

バイデン:第一にじゃな、君もしってのとおり、諜報部は去年の6月や7月頃に、アフガン政府が崩壊するなどとはいっておらんかったのじゃ。それがまず第一。

ジョージ:タリバン制覇はあるが、こんなに早くに起きるとは思っていなかったということですか?

バイデン:こんなに早くとは思いもよらんかったのじゃ。もうすでに何千というパスポートをじゃな、ほれ、なんじゃあ、あの、あ~、あ~、通訳の人とかにじゃな、、わしが就任した時に、、8月末と交渉するまえに、、

この言い訳も本当に見苦しい。タリバンによるアフガニスタン全土制覇はたった数週間で起きたのではない。明らかにアメリカ軍が撤退した後のことを考えて、タリバンは色々根回しをしていたのだ。そのことをアメリカの諜報部が知らなかったのなら完全に彼らの失態だが、こんなことは子供でも予期できたはずで、それを軍諜報部が知らなかったなど信じられない。バイデンはこうなってしまった以上アメリカ人や関係者救出のために6000兵を動員すると語った。

ジョージ:それにしても空港の外では大騒ぎですよ。

バイデン:たしかにそうじゃが、いいか、まだ誰も殺されておらん。(略)すでに1000人、いや1200人じゃったか、昨日すでに去った。今日も2千人くらいじゃ。その数は増えておる。

ジョージ:でも私たちはみんな観ましたよ。何百二ンという人たちがC-17に詰め込まれ、乗れない人が飛行機から振り落とされるのを、、

バイデン:そりゃ4日か5日前のことじゃ!

これは二日前のことで4~5日前のことではない。だがそれがなんだというのだ?二日前でも4~5日前でもパニックが起きてることは同じではないか。

ジョージ:ではこの撤退はもう少しうまくやることは出来なかったとお考えですか?間違いはなかったと?

バイデン:そうじゃ。後から考えてより良い方法はあったかもしれんが、全く問題なくやるなどということは、どうやったらそんなことが出来るのかわからん。

どうやったら問題なく撤退できたか解らないって?それが米軍総司令官の言うことなのか?そして爺の周りにいる軍事アドバイザーの将軍どももどうしていいか解らんのか?だったらわかる人に代わってもらえ。きっとペトラエウス将軍ならもっと良い方法を知っているはずだ。

先ず第一に、民間人の避難が終わらないうちに軍隊を撤退させるなど、どういう頭をしていれば考えられるのだ?一般市民の避難に適している空港を、アメリカ軍の武器弾薬やハンビーやロケット弾などで詰まったまま、地元政府やアフガン軍隊に連絡もせずに一晩で捨てて撤退した理由を教えてくれ。どうやったらそれがいい考えだと思えたのか教えてくれ。他の司令官でも同じことをしたと言えるのか?

これでは混乱したアフガン兵が逃げ出すのも当然だ。アメリカ兵が慌てて真っ先に逃げ出してしまったのだから。

元軍人や元CIA諜報部員らが口を揃えて、これ以上の愚策は考えられないと言っている。こんな奴がホワイトハウスを占拠してると思うと情けないったらない!アフガニスタンにまだとり残されているCNNの女性リポーターは、「これが失敗ではないというなら、何が失敗と言えるのか教えてほしい」と憤りを隠しきれなかった。

中国共産党とタリバンの関係

私は知らなかったのだが、タリバンと中国共産党とは2001年の911テロより昔から関係があった。中国はだだっぴろく色々な国と国境があるが、アフガニスタンとも国境がある。ウイグル人の居住区もこの国境沿いだ。中共はタリバンが国教を超えてウイグル人の独立運動を扇動することをずっと恐れている。だから実はアメリカがアフガニスタンに侵攻しタリバンを制圧していてくれたのは都合が良かった。しかし中国もアメリカが永遠にアフガニスタンに駐留するとは考えていなかったのだろう。それでアメリカが撤退した後に、タリバンの目が中国に向かないように、中国は一帯一路の一貫としてタリバン支援を始めたのだ。カブールには中華料理店まであるというからすごいもんだ。

アフガニスタンにはレアアースがあるらしく、中国にとってはおいしい国。しかし中共もタリバンの恐ろしさは知っているので、中共がタリバンを支援する代わりに中国には手を出さないという約束を取り付けたわけだ。もちろんタリバンが中共との約束を守るという保証は全くないので、中共としても不安なところだ。


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『日本人が知らないイスラエル・パレスチナ紛争の「実相」』飯山陽博士の記事から読んでみる

よもぎねこさんがコメントで紹介してくれたイスラム教学専門家の飯山陽博士によるハマスは本当に「か弱きパレスチナ人を守る正義の味方」なのか2021.5.18(火)飯山 陽」という記事を読んでいて、ああ、飯山せんせ、よくぞ言ってくれましたとうなずきながら読んでしまった。

コメンターのアクアリウム好きさんが日本人はイスラエルとパレスチナ紛争について非常に無知であることを指摘してくれているが、遠方の外国の話なので特にきちんと知ろうという興味もないし、偏見に満ちた歴史観念がメディアの報道でさらに偏見が増していき、強靭なテロ国家イスラエルがか弱い可哀そうなパレスチナをいじめているというイメージがどんどん膨らんでいく。

前回私は情報戦では常にイスラエルが不利になっているという話をしたが、飯山女史もその点を指摘している。

例えば17日の夕刻の出稿の見出しは、NHK「イスラエル 米を後ろ盾に空爆を継続」、毎日新聞「イスラエル軍、ガザを集中空爆 住宅多数倒壊」、産経新聞「空爆下のガザ地区『住民標的、遺体が増え続けている』」となっている。これらの見出しを読むだけで、「イスラエルはガザで民間人を無差別に空爆する残虐非道な存在だ」と印象付けられる。

実はイスラエルの空爆はピンポイント攻撃で、その性能の良さから無関係なすぐ隣のビルなどにはなんの支障も来していないことや、攻撃1~3時間前に避難警告まで発し、一般市民の犠牲を極力避けようとしていることなどはあまり報道されていない。

イスラエルの攻撃によりパレスチナの女子供を含む犠牲者が増えているという印象操作に余念のないメディアだが、実は飛行距離が短すぎてイスラエルに辿りつかないハマスのロケット弾がガザ市内に落下してパレスチナ人を数十名殺害しているという事実はほとんど報道されない。

アイアンドームのおかげでイスラエルの被害は比較的すくないとはいうものの、それでもイスラエル内での犠牲者はゼロではない。先日も子供を含む数人がアイアンドームから抜けて入ってきたロケット弾によって殺害されているが、メディアはイスラエルの被害については過小評価してほとんど報道しない。

しかし最も問題なのはメディアがハマスという組織がどんなものであるかを全く報道しない点にあると飯山女史は指摘する。

メディアはハマスが日本やアメリカ、EUなど主要国でテロ組織指定されていることにも言及せず、「イスラム組織」などと説明してはぐらかす。ハマスに資金や武器を提供しているのは、世界最大のテロ支援国家であるイランやトルコ、カタールであることも伝えない。ハマスがメンバーをUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)に送り込んで実質的に支配し、国際的な援助物資や資金を収奪していること、そのせいで一般のパレスチナ人に支援が全く行き届かないことも報道しない。

私から言わせれば、全世界から送られてくるパレスチナへの救済金がハマスの資金源になっていることくらいは常識のような気がするが、そんなことを知っている人は非常に少ない。先日私がアメリカ在住のパレスチナ人と話をした時も、救援物資の運搬がイスラエルによって阻まれパレスチナ人の手に届かないのだと本気で信じているようで呆れてしまった。ハマスがいかにパレスチナ人への援助物資や資金を収奪しているか、当のパレスチナ人たちですら知らないのである。

拙ブログでもイスラムテロリストが女子供を人間の盾にするのは常套手段だという話は何度もしてきた。ハマスにとってイスラエルによる迎撃で一般のパレスチナ人たちが犠牲になることは、いかにイスラエルが非常な国であるかを示すために都合がいいことなのだ。

ハマスは「弱きパレスチナ人を守る正義の味方」などでは全くない。パレスチナ人から搾取し、「正義」のためにはパレスチナの子供や女性を平然と利用する残虐なテロ組織だ。ハマスがイスラエルの殲滅を目標に掲げ、イスラエルの一般民衆を無差別攻撃し、今回の攻撃でもイスラエルの子供や女性を殺していることも忘れてはならない。

本当にパレスチナ人をかわいそうだと思うならば、怒りを向けるべきはハマスである。

飯山女史の記事はさほど長くなく、非常に端的で読みやすいので、是非全文読むことをお勧めする。紹介してくれたよもぎねこさんに感謝である。

イスラエルが予告したハマスアジトへの攻撃。


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抽選で永住権を得た日本人、とあるツイッタラーさんの体験談

先日ツイッターで自分の身の上話をしている日本人(今は帰化してアメリカ市民)を見つけた。私のフィードになぜか上がってきたからつい読んでしまったのだが、彼の半生は波乱万丈でドラマにでもなりそうだった。しかしここでちょっとひっかかったのが彼がアメリカに移住したきっかけがアメリカ永住権をたまたま抽選で獲得してしまったという点。著者はツネヒサ・ナカジマさん(Tsunehisa Nakajima / AAPI@carlostsune)自己紹介に「サンフランシスコ在住の移民一世のベーシスト兼経営者。」とある。ま、音楽関係の仕事でもしているのだろう。

ナカジマに言わせると、アメリカには特に目的もなく「なんとなくアメリカに来て何となく居着いてしまった」という人が結構いるという。そして今と比べて永住権が比較的に容易に得られた1980年代初期に、取り立てて目的もなく何となくやってきた移民のことをナカジマは「モラトリウム移民」と呼ぶ。

1981年に移住した私は、さしずめナカジマの言うモラトリウム移民かな?彼は時期を多少間違えているが、彼のいうように「なし崩し的にグリーンカード」が取れた時代は1970年代の話で、80年代に入ってからは色々うるさくなっていたので、彼が思っているほど容易にグリーンカードなど取れなかった。ただ80年代はアメリカで寿司ブームが始まり、寿司の板前だと言えば結構すぐに就労ビザは発行してもらえた。経験や技術なくしても片言英語でなんとかなることでもあり、日本食レストランでウエイトレスをやる女性は結構いた。

話を戻すと、ナカジマが移住したのは2004年の話で、彼は永住権抽選に応募して幸か不幸か一度で当選してしまったという。

僕が渡米したのは2004年。モラトリアムな先輩達から遅れること20年。ビザ要件が厳しくなってからというもの、留学でもなく、就職でもなく、結婚でもなく、なにも決まっていない状態で永住権だけもってフラフラしている若い日本人なんて超レアな存在で、80年代からタイムスリップしてきた若者の様だった

ナカジマは英語も話せず、これといって手に職があったわけでもないのに永住権だけぶら下げてアメリカにやってきた。しかも所持金は二か月間どうにか食べられる程度。バイト位すぐ見つかるだろうと楽観的に思っていたが、英語が出来ないのでやれる仕事はレストランのサラ洗いくらい。メキシカン皿洗いの見習いというレストラン内では下の下の仕事。

この話を聞いて私は非常に面白いなと思った。実は私は1980年代に趣味で物語を書いていた。誰に見せるでもなく今や原稿をどうしたのかさえ覚えていないが、彼の最初の頃の話が私が書いた架空の登場人物の境遇とよく似ていたのだ。

題名は「サンタモニカの青い空」。当時、桜田淳子ちゃんが謡ってた「来て、来て、来て、さんたもーにか~」というイメージでつけた題名。主人公は18~9の青年。なんとなくあこがれだけでアメリカに来たはいいが、英語も話せず才能もないため日本食レストランで下働き。嫌な日本人の経営者にこき使われて自暴自棄になってる。せめて英語でもできればウエイターになってチップが稼げるのに、そんな努力をする暇もなし。アメリカ生活に失望しながらも帰るに帰れないでいた。そのうちアダルトスクールで出会った日本人の女の子と仲良くなるが、その子には変なヒモがついていて、結局おかしな犯罪に巻き込まれて日本へ強制送還されるって話。

そんな話を書こうと思ったくらいだから、私のそばには誰かそんな日本人が居たんだろう。時代は20年もずれているが、まさしく当時のナカジマは私の話の主人公そのものだった。

ヒッピーあがりや、遊び人が多かった寿司シェフ達。彼らは80年代にアメリカに渡ってきて生きるために寿司を握った。その店は人気店だったからシェフ達は成功者だった。結構いい車に乗り、皆家も買っていた。皆が寿司シェフになりたがっていた。「ツネも寿司を覚えればちゃんとした暮らしが出来るぞ」

ウェイトレスやウェイターは週末の夜は一晩で100ドルから200ドルのチップももらっていた。それを羨望の眼差しで見ていた僕の月給は1000ドルいかなかった。彼女達は言った「キッチンをやめて良い店のウェイターになった方が良いんじゃない?」

毎日ひたすら野菜と肉を刻み続けていた。店のヒエラルキーの一番下っ端だったから、ウェイトレス達からの扱いも軽かったし雑用は全部回ってきた。こんなことをやるためにアメリカに来たのか?と考え続ける日々だった。こんなはずじゃないと思いながら、どうすれば何が変わるかわからなかった

興味深いのはナカジマはそんな暮らしを一年もしたということだ。私なら絶対諦めて帰国してると思う。実は私はアメリカに移住したばかりの頃、普通預金に必ず1000ドルだけ入れておいて、何があっても手を付けなかった。それは最悪の場合、そのお金で日本に逃げ帰るつもりだったからだ。私も最初は日本食レストランに勤めたが、英語はなんとか出来たのでウエイトレスをやった。だがウエイトレスは全く性に合っていなかったので三か月がまんしたが、求人広告にあった日系企業での秘書の仕事に応募したところ、すんなり受かって収まった。日本の英語専門学校で貿易英語を学んだことが非常に役に立った。

ナカジマはその後、企業したが失敗。ラスベガスに渡ってミュージシャンまがいのこともしたが、うだつが上がらずほぼホームレス状態に。当時の様子をナカジマはこう振り返る。

このアメリカ生活の最初の3年間に就労ビザを取ってアメリカ企業で働いている様な優秀な日本人には会ったことが無かった。僕の周りにいる日本人達は皆どこかなし崩し的に生きてきてしまった人達ばかりだった様に思えた。程度の差はあれ所謂「成功」からは遠い場所にいる人達だった(略)

「底辺」とはその社会において経済的にも社会的にも最下層に近いところに属しているということなんだと思う。そして、アメリカにおいてはマジョリティの経済圏で暮らせず、マイノリティのコミュニティの小さい経済圏でしか暮らせない人達は限りなく「底辺」に近いところにいると言って良いと思う。

小さい経済圏には良い仕事は回ってこない。騙し合い、足の引っ張り合いで小さなパイを奪い合う。マジョリティの世界に比べるとスタンダードがもの凄く低いのだけど、そもそもそんな事を知らないから比べることも出来ない。身近な誰かを妬み嫉む。精神が暗黒面に落ちたら底辺へのカウントダウンが始まる。

ナカジマがいう「マジョリティの経済圏で暮らせず、マイノリティのコミュニティの小さい経済圏でしか暮らせない人達」というのは、要するにアメリカ社会に融和していない人たちのことを指すのだろう。確かにアメリカという物理的な空間に住んではいるが、アメリカ社会の一員として生きていないのだ。ちゃんと英語を覚えてアメリカ社会で融通の利く技術を身に付けていれば、合法な就労資格のある彼らが底辺での生活に甘んじる必要などないからだ。

ナカジマの偉いところは、こんな状況にあっても薬物に身を落としたり犯罪行為に走らなかったことだろう。ラスベガスのようなところでは、道を見失った若者が陥る落とし穴はいくらもあったはずだが、彼はその誘惑に負けなかった。なんだかんだいいながら、芯はしっかりした男だからだろう。彼は海賊版DVD製造の会社に誘われたが、違法行為に手を染めたくなく断ったという。

日本がバブルだった1980年代の終わりごろ、私は日系大手企業で秘書をやっていたが、お給料は大したことはなかった。特に生活に困るほどではなかったが、それでも貯金が出来るような金額ではなく、なんとかワンベッドルームのアパート暮らしが出来ると言った程度のものだった。その頃、ロサンゼルスでは進出している日系企業のビジネスマンでにぎわっていた日系のキャバクラは大変なホステス不足に悩んでいた。それである程度の年齢の女性なら、見かけなど贅沢なことは言わずに雇ってもらえたものだった。

私の知り合いの女性は、はっきり言ってさほどの美人でもなかったが、日系キャバクラで当時の私の給料の三倍も稼いでいた。時々お客として彼女のお店のバーで飲んだことがあるが、行く度に仕事に誘われた。高額のお給料は魅力的ではあったが、もしあの時、そこで働いてしまっていたら、多分もう普通の事務職には戻れなかったろう。水商売が悪いとは言わない。だが、自分で店を構えようとでもしない限り、将来性は全くない職業だからだ。

ナカジマはその後、尊敬できるちゃんとした人との出会いもあり、サンフランシスコに戻って就職。その後も色々あったが今では自分で企業して従業員も雇えるほどになった。きちんと帰化もしてアメリカ人にもなった。つまり、アメリカ社会に参加しようという気になったということだ。

ここまで来るのにずいぶんと回り道をしたものだ。やはり安易に抽選で永住権など取るものではない。抽選に当たって取ってしまったものにはありがたみと言うものがないからだ。それでもナカジマの場合は十分にその代償は払ったし、今や社会に貢献する一市民となったので、それはそれでよかったのだろう。

ところで私の物語を一度ミスター苺に見せたことがある。ミスター苺は「なんだ、強制送還になっちゃうのか?まるで希望がないじゃないか、せっかくの苦労が水の泡だよ」と言った。それで考え直した結末は、

主人公はその後面倒見のいいアメリカ人のレストラン経営者の元で働くようになり、その人の手ほどきで腕のいいシェフになる。めでたし、めでたし。やっぱり人生には希望が必要だ。


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欧米で激増する東洋人へのヘイトクライム、犯人像を隠す欧米メディア

先月フランスのパリで、日本人男性が何者かに塩酸をかけられ負傷するという事件が起きた。犯人は明らかに東洋人である被害者を狙ったものと思われる。被害者が日本人だったこともあり、日本の皆さまはこれが特異な事件と思われたかもしれないが、フランスでは東洋系移民が何者かに狙われる事件は何も今始まったことではない。それをいうなら、東洋人が犯罪者に狙われるのは何もフランスに限ったことではないのだ。

アメリカでのウイスコンシン州で去る一月東洋人の若い女性が10数人のティーンエージャーに強姦されたうえ殴り殺されるという恐ろしい事件が起きた。つい先日も恋人の白人男性と歩いていた日系人女性が顔を殴られて鼻の骨を折ると言う事件がおきた。

この他にもサンフランシスコでは中華系やフィリピン系のお年寄りが通りすがりの若者に押し倒されて大けがを負ったり死亡したるする事件が続出している。そしてこれらは必ずしも金目当てではなく、あたかも東洋人への暴力を面白がっているようにすら見える。

読者の方々は、激増する東洋人への暴力が中国から発生した武漢ウイルスに怒った欧米の白人たちによるヘイトクライムではないかと思われるかもしれないが、実はそうではない。欧米における東洋人への偏見は昔から根強くあり、もともと存在した差別意識が武漢ウイルスによってさらに増えたというに過ぎない。しかも、東洋人を狙った暴力事件の犯人は白人至上主義者などではなく、他の有色人種、とくに黒人やアラブ人であることが大半なのだ。

サンフランシスコクロニクルで2010年に書かれ、最近アップデートされたこの記事によれば、2008年で起きた300件の凶悪強盗事件のうち85%が、黒人が加害者で東洋人が被害者だったという。85%の割で東洋人が狙われたというのであれば、これは単なる偶然ではない。黒人犯罪者は明らかに東洋人を狙っているのである。

問題なのは、地元警察も政治家もメディアも黒人が犯人だとその素性を隠すきらいがある。白人が被害者ならいちおう報道もするが、被害者が東洋人の場合は、よっぽど悪質な場合を除いてほぼ無視である。そして黒人が加害者の場合はその罪さえ問われない。先日道を歩いていた東洋人男性を押し倒して殺した黒人男性は不起訴処分になった。ブラックライブスマターとか言うが、東洋人の命なんかどうでもいいかのようである。

アメリカの人権屋がピープルオブカラー(有色人種)とかマイノリティー(少数民族)とか言う場合にさすのは黒人が主であり、若干ラテン系が含まれることはあっても、東洋人は含まれていない。大学入試や就職の際に少数派として有利なのは黒人やラテン系だけで、東洋人はかえって不利。

どうして東洋人は無視されるのかといえば、東洋人は白人と同じで特権階級だからというのが人権屋らの屁理屈。東洋人は教養も収入も高い人が多いが、それは別に東洋系が特権階級だからではなく、東洋人は勤勉で法と秩序を守る真面目な人が多いだけだ。

私は別に東洋人が黒人のように特別扱いされるべきだなどとは思っていない。いや、その逆で、東洋人であろうが白人であろうが黒人であろうが、法と秩序がすべての人々に平等に施行されるべきだと考えている。

ブラックライブスマター運動で一番腹が立つのは、黒人が白人警官に殺された時だけ大騒ぎするということだ。去年激しくなったBLM運動のせいで、アメリカの暴力犯罪は激増している。そしてその犯罪の大半が黒人による黒人への暴力なのである。

BLM運動や左翼人権屋が始めた「反人種差別」運動は、アメリカをこれまでにない人種差別国家にしつつある。大手企業がBLMに迎合して黒人ばっかりを特別扱いし、白人や東洋人を足蹴にしている。そんな行為が黒人への同情や尊敬心をはぐくむことにつながるだろうか?

人種差別など考えたこともない我が白人夫は、最近テレビのコマーシャルに出てくる俳優に黒人が多いことに腹を立てている。別にこれまではそんなこと全くきにしていなかったが、人口の13%にも満たない人種がテレビコマーシャルの80%を占め出すと、いったいここはどこの国なんだと感じ始める。

昔、黒人強盗にコンビニ経営者だった父親を殺された韓国人女性が言っていた。「テレビで黒人が出てくるとチャンネルをかえる」と。私も彼女の気持ちが解るようになってきた。そしてそれは決していいこととは思えない。


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ワーキングホリデーはお薦めできない説に言及

この間、イギリスで自営業をしている邦人女性のツイッターを読んでいたら、日本でも海外でもワーキングホリデーは就職時に不利になるのでやめた方がいい、というツイートがあってちょっとびっくりした。そして何気なくワーホリについての動画をYouTubeで観ていたら、アメリカで社長をしているという邦人男性が「ワーホリ経験者は書類審査で落とす」と断言していて、へえ~本当にそうなんだあ~と驚いてしまった。いったいどうしてワーホリ経験者は敬遠されてしまうのだろうか?

実はワーホリには失敗する人が成功する人より圧倒的に多い。無論成功だの失敗だのと言ってみても、それはワーホリをするにあたり、何を目的に出かけたのかで話は違ってくる。もしも日本で何年か働いて一年の長期休暇を海外で過ごそうということが目的であれば、そのまま英語を習得せず手に職も覚えずに帰国したとしても、一年間たっぷり休んで楽しかったというのであればそれはそれで成功と言えるだろう。だがもし目的が英語を習得することであったり海外に出て視野を広げる、といった漠然としたものだけだと、ワーホリ期間中かなり無駄な時間を過ごしてしまう可能性がある。

何度も書いたように、私のアメリカにおける最初の一年は、まあ言ってみればワーホリのようなものだった。ただアメリカにはワーホリというシステムはないので、私はホームステイをしながらアメリカの日常生活を体験した。私はその体験は失敗だったとは思っていない。一応日常会話に困らないくらいの英語力はつけて帰ってきたし、その後の英語の勉強の土台としては、かなり飛躍できたと思うからだ。

で、話を戻して、何故ワーホリ経験者は経営者から敬遠されるのかに関して、問題点を三つあげてみよう。

英語力がない。以前にも拙ブログでワーホリ経験者の90%以上が英語を身に付けずに帰国するという話をした。それというのも地元で日本人とばかり仲良くなり、ほとんど英語を話す機会がない人が多いからだ。特に語学学校とかビギナークラスは日本人が多いので、ついそういう人たちと友達になってしまい、気が付いたら日本人とばかり遊んで一年が過ぎていたなんてことになる。

役に立つ仕事の経験がない。ワーホリで就ける仕事というのは非常に限られており、カフェの売り子とか牧場で力仕事とか、一番ダメなのは日本食レストランのウエイトレスといったもので、日本でニートの人が就くアルバイトと大した変わりはない。こんな仕事を2~3年やってみても仕事の経験として履歴書に書けるような意味のあるものではない。

人生に確たる目標がない。なんといってもワーホリ経験者を雇わない一番の理由はこれだろう。

ワーホリをする理由が英語を習得したいから、というものであるならば、ワーホリよりも良い方法はいくらでもある。例えばフィリピン留学のように短期で集中的に英語を学べる場所もあるので、英語習得という点ではワーホリよりも能率的である。アメリカであればコミュニティーカレッジに二年間通って日本でいう短大卒業資格を得るという方法もある。こうした方法を選ばずにワーホリを選んだとなると、この人は英語の勉強に口で言うほど真剣ではなかったのではないかと思われるのかもしれない。

また、海外で仕事がしたいと本気で思っているなら、海外に出てから仕事を探すより、海外で出来る仕事を日本で決めてから海外に行った方がビザの面でも安定性がある。カナダなどは看護学校に生きながら働けるというプログラムもあるそうなので、どうせならそうした仕事を選んだ方が後々の役にたつ。

つまり、こうして選択肢があったにも関わらず、漠然とワーホリを選んでしまった人というのは、人生に確たる目標がなく、行き当たりばったりで計画性がないと思われるようだ。

もう一つ付け足しておくと、ワーホリビザを取得した人は後に永住権を得ようとするときに弊害となる可能性があるので要注意とのことだ。

ではワーホリはすべきではないのか?

ワーホリ体験者の話を色々ネットで観たり聞いたりしていると、決して失敗した人の話ばかりではない。人によってはワーホリ中に大儲けをしたり、そのまま良い仕事に就いて永住出来たという人もいる。だからワーホリはやめた方がいいとは言えない。

ただ、ワーホリで成功した人、つまり後々の生活の糧となった人というのは、ワーホリはあくまでも手段であり、その後何かしようという目標に沿ってワーホリを活用したという人が多い。

ある人はもともと日本で自動車の整備工で、オーストラリアにワーホリで出かけて整備工の仕事に就き、腕が良かったためお給料はものすごく良かったそうだ。それであれよあれよという間に支配人になり大成功。ま、こういう人は最初から手に職があるからね。

ワーホリで英語力をつけ学生として大学へ行った人もいた。この人は先ず英語力をつけてから進学しようという目標があったから成功したのだろう。

アフリカでボランティア活動をするために英語力が必要だったため、ワーホリで英語力を身に付けてからアフリカに渡ったという人。彼もまたワーホリ後の目標がきちんとしていたことが成功の鍵だったようだ。

ワーホリを成功さえるためには目標が必要。結局ワーホリを成功させるためには、その後に何をするのか、きちんとした目標を目指し、ワーホリは単なる手段であると考えることだろう。ワーホリが単なるホリデーで終わっても海外生活を満喫できればいいと思っているならそれもよし。だがワーホリを将来のキャリアのために役立てようと思っているのなら、将来の目標はしっかり立て、それに沿ったワーホリ体験をすることが大事だ。ただ漠然と外国で暮らしてみたい、、なんて考えではだめ。

世の中そんなに甘くないってことだ。


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