本日、中国の「日本企業いじめ」はここまでひどい! チャイナハラスメントの恐ろしすぎる実態という記事を見つけた。これは中国に進出している日本企業がどのように理不尽な扱いを受けているかまとめた「スズキの元中国代表だった松原邦久氏が著した『チャイナハラスメント 中国にむしられる日本企業』(新潮新書)」から抜粋されたものだ。
ユーチューブブロガーの妙法さんがよくおっしゃっているが、中国に進出した外国企業は決して中国国内企業と同じ扱いは受けない。中国への進出の第一条件として地元企業とのベンチャー企業が強制される。進出当初は色々よい待遇を受けるが、それは地元企業が外資企業のノウハウを全て盗み取るまでの間で、一旦知識や技術を習得してしまうと、あっという間に同じことをする中国企業が立ち上がり、元の外資企業はすべてを乗っ取られて味の無くなったチューインガムのように捨てられるのだ。
外資企業が特許を盗まれて訴えてみたところで、中国法廷において外国企業が勝つ見込みはゼロであり訴えるだけ無駄だ。そんなふうなので、日本企業が理不尽な扱いを受けたとしても驚きもしないが、興味深いのは日本企業が他の外国企業よりも特に冷遇されているらしいということだ。
例えば自動車業界を見てみると、世界シェアトップのトヨタが中国ではGMの3分の1のシェアしかとれていない。これはなぜか。実は日本の自動車メーカーにだけ、「車台をつくる合弁会社とエンジンをつくる合弁会社は別の資本とすること」という規制がかけられてきたからだ。
車台をつくる会社とエンジンをつくる会社が別々の資本になっていたら、車をつくるたびにいちいち煩雑な交渉をしなければならない。日本のメーカーがそうやって時間をとられているうちに、GMやフォルクスワーゲンなど、中国に一足早く進出した欧米のメーカーに先を越されてしまったのである。
日本車各メーカーの中国進出は、欧米メーカーよりもワンテンポ遅れた。中国経済にバラ色の幻想が満ちていた当時、進出の遅れた日本企業への事実上の「懲罰」として採用されたのが、この合弁会社への資本規制だった。
こうした他の外資企業にはかせられていない規制をかけるのは中央政府のみならず地方政府も同じだった。例えば、
上海市は2001年、排気量1000cc以下の自動車は「黄浦江をくぐる海底トンネルの通行禁止」「ラッシュ時の高架道路乗り入れ禁止」という決定をした。事実上、「軽自動車は上海に入るな」ということである。(略)広州(市)ではなんと、2001年8月から1000cc以下の自動車の販売が禁止され、その後、主要幹線道路への乗り入れまで禁止になってしまったのである。理由は「中国の南の玄関口である広州に小さな車が走るのは似合わないから」という、役人の勝手な理屈以外に全く根拠のないもの。
これによってもろに被害を受けたのが軽自動車専門に作っていたスズキであることは言うまでもない。
さて、合併する中国の企業だが、互いに資金を出し合う際、中国側は土地使用権を出資してくることがあるが、これが曲者なのだと記事にはある。
現物出資として合弁会社に提供される土地は、合弁相手が地方政府から使用権を購入したもの。地方政府は、土地使用権価格に自分たちの取り分を上乗せして、中国側の出資者に渡す。中国側出資者は、その価格にさらに自分たちの取り分を上乗せして、外国側出資者に提示する。(略)
外国企業が進出するような工業団地は、元々は二束三文の荒れ地だったところである。そこに道路を引き、インフラを整備すれば一丁上がりだ。
そんな土地の使用権を提供するだけでカネががっぽり転がり込んでくるのだから、中国の地方政府が外国企業の誘致に熱心だったのは当然である。地方政府から中国側企業への上乗せ分、中国側企業から合弁企業への上乗せ分は、事実上の賄賂となって中国側の懐を潤すという構図なのだ。
そして日本企業には何が正当な値段だったのかなど知る由もないので、相手の言われるままの出資を認めるしかない。
最近アメリカ政府に押されて、日本政府も日本企業の中国撤退を推薦するようになったが、一旦中国に進出してしまうと、そう簡単には撤退できないからくりがある。
松原邦久氏によると、外国企業の中国からの撤退がスムースにいかないのには4つほど理由があるという。
- 企業が撤退するのには認可機関の承認が必要。共産党が認めなければ、事業が赤字でも撤退することすらできない。
- 合弁会社を解散する場合には、「董事会の全会一致の決議」が必要。合弁会社の中国側出資者は、技術やノウハウやブランド名などを手放したくないため、あらゆる手立てを尽くしてくる。
- 2008年に制定された「中華人民共和国労働契約法」によって、労働者の権利が強化された。この法律によって、会社の解散にも労働者の賛成を得なければならなくなった。
- 企業所得税の追納要求が発生する。中国政府は、外国企業が中国に設立した会社を解散する時には、それまでに受けた企業所得税の二免三減(利益が出た年から二年間は企業所得税免除、その後三年間は半額)の優遇を返還せよ、と要求する。しかし、企業が撤退を検討するのは経営がうまくいっていないからであって、資金に余裕がないケースが普通だ。「優遇してやったカネは返せ」と言われても、無い袖は振れない。こうしてますます撤退が困難になる
松原氏は、「もし中国からの撤退を本気で検討するなら、すべてを置いていく覚悟が必要。そうなった時のためにも、儲けが出た時には早めに本社への配当などで利益を回収し、中国への出先企業は身軽にしておいた方がよい」と言う。
確か中国からは利益や資産や器具に至るまで、簡単には中国から持ち出せないという話を聞いたことがある。
こうしたことを知ってしまうと、それでも中国に進出したいという外資企業の気がしれない。目の前にある近視眼的な利益だけを考えて、長期にわたる計画がないと、結局中国に食い物にされてしまうのだが、日本企業はそれがわかっているのだろうか?