笹井博士の自殺に見た非常時に明らかになる人間の本性、臆病者、裏切り者、そして正義

「STAP細胞論文の共同執筆者で、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB=神戸市)の笹井芳樹副センター長(52)が5日、同センターの施設が入る先端医療センター研究棟内で首をつっているのが発見された。」というニュースはアメリカのメディアでも報道されたが、こういうことで自殺をするというのがやはり日本的だなと思いつつ、しかし何か失態があると、回りが少数の人間の非を責め立てて生け贄にしてしまう傾向は何も日本だけに限らないのだなとつくづく思う。
それにしても有能な科学者をこのように死に追い込んでしまったということは非常に残念だ。
日本にとっても世界の医学にとっても非常に損失である。
笹井氏のご冥福を祈るものである。
科学というものは常に試行錯誤であり、最初から絶対に正しい説などは存在しない。何百年も真実と思われていたことが後の科学の発展で覆されることはしょっちゅうであり、常に変化していくのが科学の性質だ。だから小保方氏の論説がまだ不完全であったとしても、間違いがあったからとか、完璧でないからという理由で研究を続行させないという態度はおかしい。そんなことでは科学の発展はあり得ない。
本日の話はこの事件とは直接関係ないのだが、カカシの職場でも去年の暮れに非常事態が発生し、それに伴って津波のように多々の事件が起き数々の首が飛んだ。うちの企業の体質で実際に即解雇になった人は居ないが、上層部では、降格、減給、昇格とは名ばかりの左遷などがあり、中下層部では多数が無給自宅謹慎処分などになった。
その騒動のまっただ中に居て私は非常に色々なことを学ばせてもらった。こういう事件が起きると内部での事件を利用して自分が権力を握ろうとする嫌らしい輩が必ず表れる。また、積極的に他人を陥れようとはしないまでも、自分が責任を負わされると感じると、すべて他人や部下のせいにして責任逃れをしようとする臆病者や裏切り者も現れる。
だが、そんななかで意外な勇気を見せる人も居る。
去年の暮れに私が携わっていた工事現場で爆発事故が起きた。幸いにして消化にあたった作業員が二人手に軽い火傷を負った程度で、人身への被害は最小限で済んだ。
だが、完成間近だった建設物は完全破壊されてしまい、企画は六ヶ月ほど先延ばしになった。
これは我々が現場でシュミレーションテストを行っている最中の出来事だったため、テストチームの行動が色々と取り沙汰され調査の対象となった。我々のテストはすべてシュミレーションで部品は何も動かないため、爆発事故になど関係があるはずはなかったのだが、その場に居たということが災いして、それまでなら問題にならないような些細なことまでもが取り上げられ痛くもない腹を探られた。
この調査の段階で、現場には色々問題があるということがわかった。それで現場監督は上部からかなり色々と詰問されたらしい。その際監督は「私は何も知らない、すべてカカシが一存でやったことだ、日頃から彼女の仕事ぶりには不満足だった」と言い訳した。運の悪い事に私は事故の直前に監督に無断で設定変更をしていた。普段ならどうということのない変更で監督にいちいちお伺いを立てるようなことではなかったのだが、このことが監督が私に責任をおしつける都合のいい口実となった。
この監督とは仕事以外でも結構一緒に飲みに行ったりして友達付き合いもしていたのに、いざとなると自分の責任をすべて部下に押し付けて責任逃れをしたわけである。なんという卑怯な男!
そうかと思えば、監督の言い訳を鵜呑みにした経営側からカカシを懲戒免職にしようという話が上がっ際,私を現場に派遣した私の直属の上司とその上司は大激怒。二人は私を首にするなら自分らも辞めると啖呵を切った。ま、くだらない理由で部下を首にされるとなると自分らの威厳にも拘るから、私を守るためという奇麗ごとだけではないが、それでも何もかも他人に責任を押し付けた監督の態度とは大違い。こういうひとたちの下で働かせてもらっているということを知って頼もしかった。
そうこうしているうちに何ヶ月にも渡る調査の結果、事故の原因は安全装置の配線ミスだったことが判明。私のテスト器具設定変更とも現場の多々の問題とも無関係であることがはっきりした。
しかし一旦表沙汰になった種々の問題は、事故とは無関係と解っても無視することが出来なくなった。弱体化した経営陣を見て、今こそ自分らが権力を握るチャンス、とばかりに会社内では派閥争いがはじまり、波紋が波紋を呼び上層部の大幅な人事異動へと発展してしまった。
はあ、まったく恐ろしいもんである。
お察しの通り、私がこんな暢気なことを言っていられるのも、結局懲戒免職なんてことにはならなかったからである。最低限の罰は受けたが、他の人たちの身に起きたことを考えたら軽くて済んだ。ま、やたら偉くなかったのが幸いしたのかもしれない。
職場の精神カウンセラーをしている神父様から、「カカシさん、自殺とか考えてますか?」と聞かれて思わず笑ってしまった。「仕事を首になったくらいで死のうなんて思いませんよ」と答えたが、笹井博士のことを思うと、これは決して場違いな質問ではなかったのだなと痛感した。
博士にもそういうふうにカウンセリングしてくれる人がいたらよかったのに。本当にお気の毒なことである。


View comments (2)

日本とアメリカで空港職員による窃盗相次いで摘発される

以前にもアメリカの空港警備員(TSA職員)が乗客の荷物や現金などを窃盗していたと言う話を書いた事があるが、今回は偶然、日本とアメリカで空港職員やスチュワーデスによる窃盗集団が摘発されたという事件があったので紹介しよう。
先ずは日本の話から。

ベトナム窃盗団:空港への運び役CA、万引き役ら逮捕 毎日新聞 2014年03月26日 12時10分(最終更新 03月26日 13時16分)

 国内で万引きされた衣料品をベトナムに持ち出す目的で空港まで運んだとして、警視庁組織犯罪対策1課は26日、いずれもベトナム国籍で、ベトナム航空客室乗務員(CA)のグエン・ビッチ・ゴック容疑者(25)と、万引きの実行役などとみられる男女5人の計6人を盗品等運搬と窃盗容疑などで逮捕したと発表し、東京都千代田区のベトナム航空日本支社を家宅捜索した。
 グエン容疑者の逮捕容疑は昨年9月、仲間のベトナム人らが川崎市の衣料品販売店で万引きしたジャケットなど21点(約13万円相当)を盗品と知りながら大阪府内のホテルから関西国際空港まで運んだとしている。同課の調べに対し、グエン容疑者は「盗品とは知らなかった」と否認している。
 同課によると、グエン容疑者は昨年6月以降、仲間が盗んだ商品を1点当たり250〜300円の手数料で空港まで運搬し、総額約300万円を得ていた。手荷物としてスーツケースに入れて機内に持ち込んでいたとみられる。

どうでもいいが、ビッチ・ゴックなんて名前は英語にするとかなり下品に聞こえる。英語圏で働くなら名前は変えた方がいい。ま、それは余談だが、浜村淳さんのラジオ番組できいたのだが、盗まれた品物はベトナムで「持ち込み荷物」という商標で明らかに盗品と解るような売られ方をしていたという。盗品の多くはユニクロ商品が人気があったとかで、中にはおむつなんてのも含まれていたというから、やはり日本製の商品は質がいいのかななどと感心してしまった。それにしても日本人から盗んだ事を隠しもせず悪びれずにベトナム国内で売りさばくとは盗人猛々しいというか、恥知らずというか、民度の低さが現れている。
さて、恥知らずなのはベトナムの窃盗集団だけではない。アメリカはロサンゼルス空港でも先日、空港の預けに荷物取り扱い職員ら数人が乗客の預け荷物をあさって貴重品を盗みまくっていたとして逮捕された。集団は盗品をクレーグリストというインターネットオークションで売リ裁いていたという。

捜査官によると職員らは何ヶ月にも渡って乗客の預け荷物から貴重品を盗みまくっていたという。

「ともかく貴重品はすべて、電気機器や宝石など、どれも数分の間に鞄から抜き取られていたのです。」とロサンゼルス空港警察パット・ギャノン長官は語る。「(彼らは)スーツケースを開けて貴重品を片っ端からあさりまくっていたのです。」

今回の逮捕はロサンゼルス警視庁とロサンゼルス空港警察共同で容疑者達の家宅捜査などが行われ、14人から証拠物品が収集された。これにより6人が逮捕されたが、仲間の数はもっと多く、その数は25人にも及ぶとされる。
ロサンゼルスでは昔から空港職員による窃盗が絶えない。ま、空港職員の悪さは何もロサンゼルスに限った事ではないのだが、2013年になって空港内での窃盗は37%も増えたという。
空港側は従業員の身元調査は念入りに行っているというが、以前にもTSA職員には前科者や違法移民が含まれていたケースが結構あるので、どこまで調べているのか全くあてにならない。
当局が注目しているのはメンズィーズアビエーションという派遣会社からの派遣職員たち。彼らが担当しているトムブラドベリー国際ターミナルと4番ターミナルでの窃盗が最近急増しているからだ。メンズィーアビエーションは窃盗は限られた人員によるもので、同社は職員の身元調査は念入りにしており、必要な訓練も受けていると主張。だったらどうしてこの会社の派遣職員担当のターミナルが他のターミナルより極端に多くの盗みが発生するのだ?
だから私は前々から言っているのだ。セキュリティーでいくらTSAが乗客の荷物の中身を念入りにしらべて、封も切っていないホットソースを没収したり、お年寄りや子供までパットダウンしたりしてみても、警備に当たっている職員や荷物扱い職員などが窃盗や盗品の密輸など行っているのでは何の意味もない。空港や航空機内職員たちが簡単にこういう犯罪を犯せるならば、私がテロリストなら乗客に爆弾及び危険物を運ばせたりせず、内部の職員を利用するだろう。
空港の警備は外部だけでなく内部にもっと目を向けるべきだ!


Comment

『何処系アジア人?』と聞かれたら、、、

ちょっと面白いユートゥーブビデオを見つけたので紹介。田中健(漢字は想像)という日本の役者みたいなアメリカ人監督が作ったミニビデオはアジア系のアメリカ人が日常であう不思議な体験のパロディ。
ジョギング中の女性ステラ・チョーに通りがかりの白人男性が親しげに声をかけてくる。
男性:「やあ」
女性:「こんちは」
男性:「いい天気だね。」
女性:「そう、やっとね。」
男性:「どっから来たの?君の英語完璧だね。」
女性:「サンディエゴ。あそこでは英語話すのよ。」
男性:「あ、そうじゃなくて、どーこー出身?」
女性:「オレンジ群で生まれたけど、あそこには住んだことないわ。」
男性:「、、その前だよ。」
女性:「私が生まれる前?」
男性:「君の人々はどっから来たの?」
女性:「えっと〜ひいおばあちゃんはソウル出身だけど、、、」
男性;「韓国人!やっぱりね。日本人か韓国人だと思ってたんだ。どっちかいうと韓国人だと思ったんだけど、、、」
というと男性は自分のアパート付近においしい照り焼き焼肉店があるとか、片言韓国語をしゃべったりキムチが好きだと言ったりする。そこで女性は反対に男性に出身地を聞くと、
男性:「サンフランシスコ」
女性:「どーこー出身?」
男性:「あ、ただのアメリカ人さ。」
女性:「へえ〜アメリカ先住民(インディアン)?」
男性:「いや、普通のアメリカ人、、あ、僕の祖父母はイギリスから来たけど。」
と聞いた女性の反応はというと、、

女性の言ってる事は解らなくても、やってることはご想像が着くと思う。彼女はイギリス人のステレオタイプをかなり下級のイギリス英語訛りで大げさに表現している。そして、最後に

女性:「あなたがたのフィッシュアンドチップス(魚とポテトのフライ)はすごいと思う。」

と締めくくる。
確かにこういう体験はアジア系アメリカ人なら誰でもあるだろうが、私は特にどうってことないと思う。ただ、アメリカ生活30年以上のカカシに向って「あなたの英語完璧ね。」なんて言われるともの凄く腹が立つ。普通にアメリカ人にそんなことは言わないだろうから、そういわれるということは反対に完璧ではない証拠だと思うからだ。
しかし〜、白人でない少数民族系のアメリカ人がこういう体験をするのは、白人による人種差別からくるものとは限らない。というよりも長年にわたってリベラルから少数民族に対して敏感な反応を示さなければならないと洗脳されてきた白人たちが、自分が人種差別者でないことを示そうとするあまり、こういう不器用な表現に出てしまうだけなのかもしれない。本人達は少数民族をばかにしているなんて微塵も感じていない事だろう。
だが、こういうことをやるのは自分が人種差別者ではないと自負しているリベラル白人であることが多い。よくリベラルの少数民族者たちが白人は表面でなんといおうと本心は皆人種差別者なのだと感じるのは、彼らがリベラル白人としかつきあっていないからだ。少数民族者なら誰でも多様主義を唱えるリベラル白人らの偽善的な人種差別意識を感じずにはいられない。リベラル男性が本心は男尊女卑なのと全くおなじ。
リベラルが多様主義を強調して常に人種を神経質になっている以上、我々がこういう体験をするのは仕方ない、とカカシは思うね。


Comment

スマホで台無しになった三日連休

この間、ハワイのデゥークスという有名なレストランで主人と食事をしていた時、はす向かいに若いカップルが座っていた。見た感じ、明らかにデート中ではあったが、まだつき合い始めといったふうに見えた。女性のほうは長い黒髪に豊満な体型。黒いミニドレスが非常に似合っている美人だった。男性のほうはごく普通で、こんな美人にはもったいない感じ。だがカカシが気になったのは、彼女がテーブルに肘を付き、彼氏に甘い眼差しを送っているのに、彼氏の方はテーブルに置いたスマホに夢中で彼女の方に全く目を向けていないことだった。座ってから食事の注文をして食べている最中ですら、彼はスマホに指をすべらせ、たまに彼女が彼の手に自分の手を伸ばして来ても完全無視。デザートが出て来る頃には彼女のほうが完全に白けて腕を組んで椅子に深く座り込んでいた。あ〜あ、あれがお見合いだったら縁談は無理だな、、なんてカカシは馬鹿なことを考えてしまった。
デート中でも話せないスマホ。いったい彼は何にそんなに夢中になっているんだろう?最新技術についていけないおばさんとしては非常に不思議。もっともこの現象、特異なことではないようで、最近はスマホを使って週末でも働く人が結構増えているそうだ
スマホ使用者は平均一日に150回スマホをチェックするとか。これって6分間に一回の割合。政府の統計によると2011年現在、35%の人が週末でも平均五時間の仕事をしており、だいたいが残業手当どころか感謝もされていないという。
もう20年くらい前になるが、私が投資会社に勤めていた頃、セールスマンの上司は常に外回りをしていた。携帯がまだ広まっていなかった当時、上司とは常にカーフォンで連絡を取り合っていた。上司宛にオフィスに誰かから電話がかかって来て、私が「今移動中ですので」というと必ず「カーフォンについないでくれ」と言われたものだ。昔なら移動中だと言えばその間は連絡が取れなくても何も言われなかったのに、カーフォンなんて便利なようで不便だなと私はその時思ったものだ。
だが今やカーフォンどころか誰でも携帯を持っているだけでなく、スマホを使えば何でも即座に情報が得られるため、何もかもが緊急事態になってしまった。スマホでメールをチェック出来るから会社に居なくても上司や顧客からのメールを無視できなくなってしまった。何時だったか連休明けの会議の時間が変わっていて遅れたときに、「メールを三日もチェックしないなんて、言い訳にもならない」と言われてもの凄く腹が立ったことがある。自分が働いてるからって他人も週末に働いていると決め込んでる人が最近は増えたようだ。
しかしこういう働き過ぎはストレスが溜まり、かえって頭脳の働きを鈍くすると言う。頭脳は時々休めないと新しい情報を消化できずに記憶として残らないのだそうだ。だから残業を何時間もしている人が、週40時間働く人より多くの仕事をしているかというとそうでもないらしい。
私はスマホは持っていない。実は2年前までスマホを持っていたが、使い切れずに電話とデキスとが出来るだけ、という簡単に携帯に変えた。回りの同僚たちは色々と使いこなしていて便利だなと思うこともあるが、そんなことまで電話で調べなくてもいいだろうに、と思う事もある。せめてデートの時くらい、顔をあげてもいいんじゃない?


View comment

初めて知った節分と立春と旧正月の関係

この歳になるまで旧暦の常識を知らなかったというのもお恥かしい話なのだが、実は私は日本の旧正月がどのように決められているのかよく知らなかった。ただ、私の回りの東洋人が盛大に祝う旧正月が節分の前後に来ることには気がついていたので、旧正月と節分には何らかの関係があるのだろうくらいの知識くらいはあったが。
カカシの職場にはベトナム人や中国人が多く、彼らは新正月より旧正月のお祝いを盛大に行うので、何時が旧正月なのか知らないと困ることがある。(例えばベトナム人の同僚が一斉に休暇を取ったりするとか。)アメリカでは一般に旧正月のことをチャイニーズニューイヤー(中国の新年)と呼んでいたが、最近は他の東洋人たちから「新年は中国人だけのものではない」という苦情が出たのか出ないのか、ルーナーニューイヤー(陰暦新年)と呼ぶ人も多くなった。
さて、それで節分と旧正月はどういう関係になるのかという話だが、よく節分は旧正月の大晦日だと言われるが、それは厳密には正しくない。節分は立春の前日で、立春は年のはじめとされるが、旧暦1日は必ず朔(新月)でなければならないので、立春と新月が必ず一致するとは限らず、というより一致しないことの方が多いので、立春すなわち正月とはいかないわけだ。
中国の太陰太陽暦だと、旧正月は冬至から二番目の新月なんだそうだ。立春はその新月の前に来る事もあれば後に来る事もあるので、私が旧正月が節分の前後だと思ったのも当たり前の話。
で、立春が正月前か後かでそれぞれ年内立春、新年立春と呼ばれるのだそうだ。それで立春と旧正月が偶然重なった年は朔旦立春(さくたんりっしゅん)といって非常に縁起がよいとされた。
立春から新しい年が始まるという考えは昔からあったので、年内立春は昔の人も困惑したらしい。参照したウィキによると、『古今和歌集』の巻頭には、年内立春を詠んだ歌があるという。

ふるとしに春たちける日よめる、年のうちに 春は來にけり 一年(ひととせ)を去年(こぞ)とやいはむ 今年とやいはむ       —在原元方

『年が明けないうちに立春が来てしまった。昨日までの一年(一月一日から節分)を去年と言おうか、今年と言おうか』

ま、古今和歌集の人でも混乱するくらいだからカカシが混乱したのも無理はない。ま、ともかく立春おめでとうございます。


Comment

ケチるとひどい目にあう、ホテルのチップ

カカシは今、サンフランシスコのフィッシャーマンウォーフ付近のとあるホテルに滞在中。長期滞在の多い私としては、ホテルでどのくらいチップをあげればいいのか迷うことがよくある。あんまりあげすぎても長期になると結構な値段になるし、といってケチるとサービスが落ちるので、このへんの調節が大切。

ジェイコブ・トムスキーの本「Heads in Beds: A Reckless Memoir of Hotels, Hustles and So-Called Hospitality」のなかで、トムスキーは、必要なチップをケチったためにひどい目にあった滞在客の話を紹介し、ホテル滞在で不快な思いをしないように読者に色々なアドバイスをしているので、今回はそのいくつかを紹介しよう。

「(ホテル従業員には)あなたがしたと意識していないことにさえ、1000以上の仕返しをする手段があるのです。」と著者。

著者はホテル従業員によるひどい仕打ちの中でも特にひどい上位五位を紹介している。

  1. バレエパーキングの恐怖
    従業員との接触はホテルのフロントでチェックインする前の、車で正面のバレエパーキングに乗り込んだときからすでに始まっている。
    滞在客が最初に対する敵はバレエパーカー(車を駐車してくれる人)。バレエパーカーは最低時給で雇われているのでチップがないとお話にならない。とはいえカカシが滞在中のバレエパーキングはすでに一日36ドルとか馬鹿高い金を取っている。これに加えてパーカーにチップなんて冗談じゃないという気がする。しかも一日に何回も出たり入ったりしたら、その度に1ドルでも2ドルでも払っていたら結構出費がかさむ。断っておくが、カカシの会社はチップは自腹である。
    しかしバレエへのチップをケチると、パーカーはどんな運転をするかわからない。特に数多くこなせばそれだけチップももらえるから、駐車場をものすごいスピードで飛ばす恐れあり。車を傷つけられたくなかったらチップはケチらないほうが懸命。
  2. フロントデスクの陰謀
    バレエの難関をくぐったら、その次に直面するのがフロントデスク。オンラインで特安予約をとった客はここで特安サービスを受ける可能性があるという。
    ホテルはどの部屋もほぼ同じというのは大嘘だと著者は言う。フロントで$20ドル札をちらつかせるだけでアップグレードされること必定。しかし何も持参していかなければ、ひどい部屋を押し付けられて本人は全く気がつかないなんてことは普通に起きる。
    これはカカシは経験済み。うちの会社は特定のホテルと提携していて、宿泊費もほかの滞在客よりずっと割安になっている。ホテルとしては特定の滞在数を確保できるという面で我々を受け入れてはいるが、一人頭で得る収益は少ないので我々への対応もそれなりに割安になる。
    私がこれまでにあてがわれたひどい部屋の例として、エレベーターのすぐ隣、製氷機の隣、ハウスキーピング倉庫の隣などがある。特にハウスキーピングの部屋は、メイドさんたちが朝早くからドアをばたばた開け閉めするため、その度に部屋に振動するし開け閉め音だけでなくメイドさんたちの声やウォーキートーキーの音などで非常にうるさい。
  3. ニューヨーク市に泊まったら、1212号室は要注意
    これは気がつかなかったのだが、ニューヨークの市局番は212番。普通に電話をかけるときは、1-212-としてから番号を続けるが、ホテル外線の場合は9-1-212とかけるのが普通。だが、ホテルからの電話に慣れてない田舎もんの宿泊客がそのまま1212とかけると、ホテル内戦の1212号室につながってしまうというわけ。それで1212号室の人間は四六時中、間抜けなほかの滞在客の間違い電話をうけることになる。
  4. ドアマンやベルマンの不自然な長居は周到な作戦
    チップが惜しいからといって自分で荷物を運ぼう思っていても、なぜかポーターさんに運んでもらう羽目になるのはよくあること。ドアマンやポーターさんがな~んか必要以上に長いこと自分の前に立ってるなあとおもったら、これは彼らがよく使う手口だと覚えておくべき。これを無視して自分で運んだりすると、後で色々やってもらえなくなる。それでもよければ別にいいが、私は荷物が多い時は運んでもらうし、タクシーなどを呼んでもらったらチップを払っている。ちょっとのことだが、長期滞在するときはこうした小さな心遣いが後で良いサービスにつながる。
  5. 部屋ではプラスチックのカップを使うべし
    メイドさんは忙しいので、部屋のグラスもトイレも同じ洗浄剤やタオルを使って洗ってる可能性ありなんだそうだ。だから一見きれいに見えるグラスでも口に付けるのは考え物。いや、これには気がつかなかった。私はプラスチックカップは大嫌いなので、グラスがあるときは必ずグラスを使っている。今後は先ず自分で洗ってから使うことにしよう。

サービス料をごまかす二つの方法: ホテル従業員が客に出来るひどい仕打ちを色々のべてきたが、客にはそれなりにホテルのサービス料をごまかすやり方がある。

  1. 有料映画やドリンクを無料にするには
    たとえば、有料映画とかミニバーのドリンクなんかでも、自分がサービスを使ったのに、間違いだといって請求書から取り消してもらうことは可能。ホテル側は多少のことなら融通してくれる。
    でも実際に自分が使ったなら、こういうやり方はお薦めできない。ただ、ホテル側が実際に間違えた場合には、きちんと説明すれば取り消してくれる。私は朝食を含めた滞在費で予約したのに、朝食が毎日チャージされていたことがあって、フロントの女の子では話にならなかったが、マネージャーに話したらすべて取り消してくれただけでなく、お詫びにといって一晩分の滞在費が無料になったなんてこともがあった。
    部屋の位置にしろ、間違いにしろ、本当に問題があるのならその場で解決したほうがいい。変にごまかして映画代やミニバー代を帳消しにしてもらうなんてのは感心しないね。
  2. キャンセル料金を払わずに済む方法
    普通のホテルは24時間以上前にキャンセルしないとキャンセル料を取るが、土壇場でキャンセルせざる終えないときは、ホテルに二回電話する方法がある。
    最初の電話では、「キャンセルじゃなくて、日にちを変更したいんですけど」と言って今日の予約を来週に延ばしてもらう。それからまた電話して別の受付と話をし来週の予約をキャンセルすれば、ドタキャンにならずに済むというわけ。
    なるほどねえ~。

私の体験からいって、頻繁に泊まっていてステータスのあるホテルなら、こういう場合でも多少の融通は利く。ホテルでひどい目にあったら泣き寝入りせず、部屋が気に入らないとかサービスが気に入らない場合には素直に苦情を述べたほうがいい。だが、その際にもきちんとしたチップを忘れずに。
何にしても、いざというときに融通を利かせてくれるのも、普段どれだけホテル従業員にチップをばらまいているかにかかっているのかもしれない。


View comment

レイ・ブラッドベリーがカカシから漫画本を奪った夜

数日前、科学空想小説SF作家の大御所レイ・ブラッドベリー氏が亡くなった。カカシはブラッドベリーのファンというほどではなかったが、SF好きの妹がファンでうちに結構ブラッドベリー著の本があった。後に漫画家の萩尾望都さんがブラッドベリーの「ウは宇宙のウ」を漫画化した本を私は妹からもらって持っていた。
実はカカシはブラッドベリー氏に数回会った事がある。私の住む市にはSFの古本屋さんがあり、ブラッドベリー氏は晩年ちょくちょくその本屋でサイン会を開いていた。しかし私が氏に最初にで会ったのは、かれこれ10年くらい前、うちの近所にある地方劇場でブラッドベリー著の映画にもなった「華氏451度」が芝居化され舞台上演されたのを観に行った時である。
ミスター苺の友達で、自称ブラッドベリーの一番弟子、その名も先生と同じブラッドから、初日は脚本家のブラッドベリ先生も来るから観に来ないかと言われてミスター苺と観に行ったのである。
ブラッドべリーほどの大御所SF作家が自ら脚本を書き、30年前とはいえ(映画は1966年)映画にもなって人気のあった作品の芝居化なのだから、何もお弟子が切符を売りさばく必要もないだろうと思うが、実は結構地方劇団の経営は苦しく、多分ブラッドも何枚かチケットを売るよう義務付けられていたのだろう。
ブラッドベリーの大ファンの妹のためにサインをもらっておこうと、私は氏の邦訳本と萩尾さんの漫画本を持って行った。当時もう80歳を越していた氏は、見た目もかなりお年寄りと言う感じだった。芝居が始まる前の劇場のロビーで、ブラッドベリー氏はファン達に囲まれ、ファンが持って来た著書にサインしていた。私もサインしてもらおうと話かけると、氏は私の持って来た漫画本を見て「それは何だね」と聞いた。「『ウは宇宙のウ』を漫画化したものですよ。これにサインしていただけますか?」と私が答えると、私の英語の発音が悪かったせいなのか、氏の耳が遠かったせいなのか、氏は私の漫画本を手にとりぱらぱらとめくったあと、「ありがとう」と言って漫画本を懐に仕舞ってしまった。
「え?違うよ、プレゼントじゃないよ」と思ったのだが、ブラッドベリ大先生に「違います、サインして返してください」とも言えずにぐずぐずしていたら、おつきの人が来て氏はさっさとおつきに乗っていた車いすを押されて客席の方に行ってしまった、私の漫画本を持ったまま。
しょうがないので、自称一番弟子に「先生に漫画本を取られた。返してももらって欲しい」と言うと「お芝居の後で聞いてみる」と言われた。
私は「華氏451度」の映画はだいぶ以前にテレビで観た事があったが、その内容はほとんど覚えていなかったで、お芝居は面白かった。地方劇団だったせいか演技は今ひとつだったが。
さて、お芝居が終わってからお弟子が戻って来て「これから先生と役者さんたちと、みんなで食事に行くから、一緒においでよ。お酒が入れば言い出しやすいし」という。まったくこのお弟子は普段はブラッドベリ氏先生とはつーかーだとか自慢してるくせに、本を返してくださいの一言もいえないのか、全くしょうがないなあ。
しかし、ミスター苺も私も翌朝早くから仕事で夜遅くまで食事などしている余裕はなかったので、ブラッドに頼んで本は後で返してもらうことになった。
しかしブラッドは結局先生に漫画本はプレゼントではなかったとは言い出せなかったらしく、本は結局返って来なかった。
数日後ブラッドがうちにただメシを食いに来た時(当時ブラッドは売れない作家でいつもうちに食事をしに来ていた。)ブラッドは、「漫画本はだめだったんだけどさ、替わりに先生がこれ渡してくれて、漫画本のお礼だからって」と言われてもらったのがサイン入りの「たんぽぽのお酒」という自叙伝だった。
実はカカシはまだその本を全然読んでいない。後でその話を妹にしたら、妹は大笑いして、「漫画本はまた送ってあげるよ」と言ってくれた。
氏の遺品を整理している家族の方は、私の漫画本を数ある氏の本のなかから見つけただろうか?
ブラッドベリー氏の凶報を聞いて、思い出した一場面であった。


Comment

世界地図が読めない部下

北朝鮮のミサイル発射はどうやら失敗に終わったらしい。日本領海や公海に域に入った場合には撃ち落とすと日本やアメリカがいきり立っていた割にはあっけなかった。

北朝鮮が13日午前7時39分に発射した長距離ロケットは発射後1、2分ほど飛行して空中で爆発したと、国防部が公式発表した。

国防部のシン・ウォンシク政策企画官は「北朝鮮のロケットは発射後に飛行し、ペクリョン島上空151キロ地点で落下を始め、本体と推進体は20余りの破片に分離して、平沢(ピョンテク)と群山(クンサン)西側100-150キロ地点の公海上に墜落した」と明らかにした。続いて「北朝鮮ロケットが私たちの領海を侵犯することはなかった」と説明した。
、、、米国とカナダが共同運営する統合防衛組織NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)はこの日の声明で、「北朝鮮が13日に発射したロケットはテポドン2号弾道ミサイル」とし「北朝鮮のテポドン2号発射を探知した後、追跡を続けていたが、1段階で海に墜落した」と明らかにした。

まあね、かなりの専門家が成功は危ういと予測していたから、驚くべき結果ではないが。第三段階までいくはずだったのに一段階目で墜落では、まだまだ研究が必要ということかな。ま、もっともロケットが海に落ちても、ランチングシステムが悪いのかロケットそのもに問題があるのか解らないから、データ分析しないうちには何がどう失敗だったのか断定は出来ない。
こういうことがあると、我が職場では我が軍の艦船はどのあたりに出動してるのか、また別のストライクグループがどのあたりに待機しているのかといったことが話題になる。
昨日、私は会議の時に上司から「○○艦はどのへんに居るのかね」と聞かれたので、部下のRが用意したリポートを読みながら「ハワイです」と答えると、「え〜そうかあ?」と正されてしまった。よくよく地図を見てみると○○艦がいるのは日本海。
おい、どうなってんだよR君。「R君、これが太平洋に見えるか、ここがハワイか?」と問いつめると彼は単に肩をすくめるだけ。
実を言うとRは地理の知識ゼロ。私も高校時代地理は大の苦手だったので他人に自慢できるほうではないが、太平洋と日本海の区別くらいつく。
以前にもRとは、ホルムズ海峡の話をしていて、Rがホルムズ海峡というものがあることも知らなかっただけでなく、中近東がどのへんかということも全然しらなかったことに驚いたことがある。ましてやどうして、アメリカにとってあのあたりが重大な場所なのかなんてことはRはまるで理解出来ていない。
というわけなので今回も、彼は地図をみても○○艦がどこにいるのか解らなかったのだ。だからRは地図を無視して単に○○艦の普段の任務区域はハワイだからハワイに居るんだと報告したわけ。こういう仕事していて世界地図も読めないんじゃ話にならんだろうが。これだから本社勤務は嫌なのよ。

カカシ注:アメリカの○○艦は仮名で現在位地は架空のものです。○○艦が日本海にいるという事実はありませんのであしからず。

あ〜海に帰りたい!


Comment

ホテルの朝食の盗み方教えます

アメリカのホテルでは滞在客に朝ご飯をブッフェスタイルで出すところが結構ある。大抵がコンティネンタルブレックファストで大した物はないが、コーヒーやオレンジジュース、マフィン、果物、ヨーグルト、ゆで卵といった程度の軽い食事が出るので、朝は軽くと思っている人にはちょうどいい。ところが滞在客でもないのに、この朝ご飯を目当てにホテルを徘徊する地元民が結構居るらしい。
私が読んだ記事はフロリダ州マイアミ市の例だが、ホテルの従業員はお客さんと朝ご飯泥棒の区別は一目でつくらしい。だいたい地元民は観光客のような格好はしていないし、いくら他にいくつかのホテルを回っていても、いずれは同じホテルに顔を出すことになるから、長くやっていれば常連になって従業員に顔を覚えられるのは当然。
ここで例に出されているハンプトンインはヒルトン系のチェーンで全国あちこちにある。私も良く泊まるが、確かにどのホテルも朝ご飯を盗みやすい場所にブッフェが設置されていると思う。フロントドアを入ってすぐのロビーに朝ご飯を設置する場合が多いからだ。従業員は結構回りに居るので、フロントから入って行って朝ご飯に手を出したらすぐにバレると思うが、脇のドアから入ってくればバレないかも、、
ま、私から言わせたらハンプトンインの朝ご飯なんて食べられた物じゃないけどね。ただでもご遠慮したいっていうのが本心。
しかし、私は自分が食べる権利のないものは、いくら監視が疎かな場所に並べられていようと、どうしても取って食べる気持ちにはなれない。
一度、あるホテルで会議があって、朝早く行ったらロビーに朝ご飯が並べてあった。お腹がすいていたので、マフィンとコーヒーだけもらったらいくらになるのかと従業員に聞いたら、個別売りはしないので、全額の$7.50はらってもらうと言われて諦めた事がある。そんなお金払うなら、そのへんのコンビニで買った方が安上がり。ところが同じ会議に参加していた他の人のなかには、ロビーからマフィンやら果物やらを何も言わずに頂戴してきた人がいた。驚いたことに彼らは自分らの行為が窃盗行為だとは気がついていない様子だった。
ただ、朝ご飯はそうでも、夜のハッピーアワーになると私でもちょっと誤摩化した事がある。この間泊まったエンバシースイートでは、夕方5時から7時くらいまでハッピーアワーというのがあって、滞在客には無料でアルコールを含んだ飲み物が下のロビーでサービスされた。(ただしチップは別)一応泊まり客であることを証明する部屋のキーカードを見せることになっていたのだが、終わりの時間近くに行くと、このチェックがかなりルーズになっていた。それを利用して私とミスター苺は泊まり客でない友達を招待してお酒を一杯飲ませてしまった。もっともミスター苺も私も他の泊まり客ほどお酒を飲まなかったので、ま、一杯くらいいいんじゃないの、という軽い気持ちだったのだが。厳密に言うとこれも駄目だろうな。
ホテルによっては、例えばマリオットとか、泊まり客ともう一人までは朝食をただにするというところもある。これはいい規則だと思う。私なんか出張で一人で泊まっているところへ、ミスター苺が週末に訊ねて来たりすることがあるので、そういう時に常連の泊まり客に対して、ゲストの朝ご飯は有料だなんて無粋なことは言わない方がいいと思う。ヒルトン系のホテルはこういう融通が効かないところが多いけどね。


Comment

隣に太り過ぎの男が座って7時間立って飛行した乗客

実はこの見出しを読んだだけでも、え〜そんなひどい! と思ってしまったのだが、お隣になんと400lbsというから180kg以上の超肥満の男性に座られた乗客が立ったまま7時間の飛行を強制されたという記事を読んだ。
立ったままの飛行を強制されたのはアーサー・バーコウィッツさん57歳。US Airwaysの901便でアラスカのアンカレッジからフィラデルフィアまでという国内線では一番長距離のノンストップフライトにおいて、隣に座った男性の身体が自分の座席の半分以上を占拠してしまったため、自分は座れなくなってしまった。しかし満席状態で他の席に移る事もかなわず、なんとバーコウィッツさんは立ったまま7時間の飛行をする羽目に。
ちょっと待ってよ。それって最悪のサービス以前に安全性の問題があるのでは?
超肥満の男性は非常に恐縮して「もうしわけない、私はあなたにとっては最悪の悪夢です。」と謝ったというが、この責任は超肥満の乗客にあるのではなく、USエア航空の対処の仕方にある。どう考えても一席に座りきれない乗客をどうして満席の飛行機に乗せたのだ? 
実は私もこの間ハワイに行った時、帰りの便で三席並んだ真ん中の席になった。そして両隣が肥満男性! 二人とも肘掛けが邪魔と見えて上に上げてしまった。そうすると両隣の太った男性の身体が私の座席にはみ出て来て私は非常に窮屈な思いをしただけでなく、一人の男性は半袖だったので、その毛深い腕が私の素肌にあたって気持ち悪いったらなかった。たまりかねて私は「肘掛けを降ろしてください。」と言ったほど。肘掛けが上がっているとイアホンも差し込めないしね。
バーコウィッツさんは離着陸の際にシートベルトを使うことが出来なかったのは非常に危険だったと語っている。全くその通りだ。もし何かあってバーコウィッツさんが航空機内をふっとんで頭をぶつけて怪我なんてことになったら航空会社はどうやって保証するつもりだったのだろう?
で、USエア航空の反応はというと、全く申し訳ないと謝りはしたものの、そのお詫びとしてバーコウィッツさんにたった$200ドルのバウチャーを渡しただけ。バーコーウィッツさんの苦労を考えたら、800ドルの航空券全額返済くらいじゃ収まらない。それなにのたったの200ドルのバウチャー? ふざけるのもいい加減にしろ!
バーコウッツさんはUS Airwaysを50年も利用してきたそうだが、スチュワーデスは同情的ではあったが、何もする事が出来ず、どうしようもない状態だったという。
この話とは反対に、肥満の乗客に二座席購入を強制する方針の会社もある。エアトランというサウスウエスト航空系の会社は、来三月から肥満の人は二人分の座席を買うことを強制する方針だという。
USエアとは対照的にサウスウエスト航空は太った人を搭乗させない方針で話題になることが多い。
カルト映画監督のケビン・スミスはオークランドからバーバンクへの飛行で(これって一時間ちょっとの飛行だが)席を二席買っていたのに便が遅れたかなにかして別の機に移された時に、席が足りなくて一人座席に座らされたが、いざ離陸という時に回りの人に迷惑だからと降ろされてしまったという事件があった。この時は航空会社側は謝罪し、スミス氏は別の飛行機に乗せてもらった。
またサウスウエストは肥満の母娘の搭乗を「太り過ぎ」を理由に拒否したこともあった。ケンリー・ティグマンさんと母親のジョーン・チャーペンティアーさんはダラス空港で、搭乗口の係員から100人以上いる他の乗客の前で、二人とも太り過ぎなので二座席づつ購入すべきだったと言われ非常に恥かしい思いをしたと語る。係員の無神経さは改めるべきだとティグマンさん。(アメリカの空港係員の無礼さなんて、ヨーロッパのそれに比べたらまだずっとましだ。ドイツのミュンヘン空港の係員のつっけんどさったらなかったけどね。ま、それは別の話だけど)
また去年、トロントに住む危篤の叔母の死に目にあうために、ロンドンから飛ぼうとしていたサンディ・ラッセルさん32歳は、二座席購入しなければ搭乗できないと言われた。二座席分の$1444ドルを支払う余裕がなかったラッセルさんはトロントへ行けず、二日後に叔母は亡くなった。こういう場合は航空会社が融通を利かせて別の便に乗せて上げるとかしてもよさそうなものだが。
昔は航空機が完全に満席で一席の余裕もないということは非常に珍しかった。感謝祭やクリスマスの前といった祝日付近の日にちでないかぎり、大抵の航空機には太り過ぎの人が二席空いたところに移してもらうくらいの余裕があった。
しかし近年、飛ぶ飛行機、飛ぶ飛行機、どれも満席なんてのは珍しくない。預ける荷物や毛布や機内食や、場合によってはノンアルコールのドリンクさえ有料になり、ひと座席は狭く、機内サービスは最低なのに、なぜか今日日国内線の飛行機は常に超満員。
私はここ10年来、出張で何度も飛行機に乗っているが、数年前までは手荷物は二つまで、と一応言われていても、三つも四つもぶらさげて行く人はざらだった。私もコンピューターバッグとハンドバッグの他に寝袋を持って乗った事なんて何度もある。だが、最近は搭乗の順番が後の方だとローラーのついた持ち込みサイズぎりぎりの鞄などは置き場所がなくなってしまうことが多い。
こういう状態であるから、太った人には気の毒ではあるが、実際に二座席以上必要なほど太っている人は他人迷惑も考えて二座席分購入する必要がある。それが嫌ならば、満席の飛行機から降ろされる可能性は覚悟するしかない。
もっともダイエットという方法もあるけどね。


View comments (2)