ツイッターで最近、「女性用トイレがなくなる!」という話題で花が咲いている。こちらがそのきっかけとなったツイート。
樹木医みずほ#IStandwithjkrowling@mizuhoTreeDr·【拡散希望】 女子トイレの危機です!!!なんと今月の28日に厚生労働相の諮問委員会にて女子トイレの設置を無くし共同トイレにしようとする諮問委員会が開かれるそうです! 小さな事業所が対象だそうですが小さい事業の方が女性が多く社会進出には欠かせないインフラです。
一瞬かなり衝撃的な内容ではあるが、私はその内容をよく理解していなかったので、どういうことなのかわかるまでは意見は差し控えようと思っていた。
どうやら今年開かれた労働政策審議会安全衛生分科会において、10人以下の小規模な職場におけるトイレに数についての見直しが問題視されているようだ。「それで女子トイレがなくなる」というクレームはどこから来たのか、弁護士の猪野 亨(いのとおる)という人が説明しているので引用する。問題なのはこの部分。
少人数の事務所における便所の男女別の取扱い
少人数の事務所においては、建物の構造上1つの便所しか設けられていないことがあり、便所を男性用と女性用に区別して設置することが困難な場合もある。
少人数の事務所に設けられた便所のうち、独立個室型の便房からなるものについては、男性用及び女性用の便所の機能を兼ねるものとみなす等の柔軟な運用を行うことは、プライバシーが確保されるという前提の下、例外的に認められ得る。
猪野はこれについて、「どこにも既存の女性用トイレを潰して共用にせよ、などとは書いてありません」と言っている。もちろんそのようには書かれていない。では一体何が問題なのか?
問題とされるべきなのは、何故今このような「改正」が必要なのかということだ。
既存の法律ではどうなっているのだろうか?2018年現在での 宮崎誠(社会保険労務士)の回答を引用する。 強調はカカシ。
労働安全衛生規則第628条
事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。ただし、坑内等特殊な作業場でこれによることができないやむを得ない事由がある場合で、適当な数の便所又は便器を備えたときは、この限りでない。
1. 男性用と女性用に区別すること。
2. 男性用大便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上とすること。
3. 男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上とすること。
4. 女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個以上とすること。
~以下略~
事務所衛生基準規則第17条
事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。
1. 男性用と女性用に区別すること。
~以下略~
私が読んだ色々な人の体験談や自分の体験談から察するに、一応法律上はたとえ女子職員が一人の場合でも女子専門トイレは作るべきということになっているが、実情では敷地の広さの問題などからそれが出来てない場所もあるということだ。既存の法律でも「やむ負えない事由がある場所で」という例外を認めている。しかし、一応本の上で義務づけられても、それが実行されていない場合と、本の上で義務はないと明記される場合とではかなりの違いがあるのではないか?
例えばの話、法律上男女別トイレが義務付けられている場合には、それまで古い建物で共用トイレ一つだけだった職場でも、リモデルしたり新しところへ移った際には女子専用トイレの設置を女子職員たちが求めることが可能だ。少なくとも法律を盾に女子職員が交渉しやすくなる。私が読んだ事例のなかでローソンのようなコンビニではトイレが一つしかなく、客も使えるため、女子職員が嫌がって短期で辞めてしまうということがあった。ローソンのような大企業でもその是正策として女子専用トイレを作る計画が始まってから実行されるまでに2年もかかったという。それでも法律上それが求められていたからこそ実現したわけで、法律上経営者にその義務がないとなれば、女子職員には全く交渉手段がなくなってしまう。
女性達のそうした危惧を先の猪野弁護士は「トランス排除のためのデマ」と表現している。
確かに一見して読んで驚くし、女性用トイレの廃止なんてとんでもないことですから、感覚的に「いいね」となってしまうのでしょう。
しかし、何のためにこんなデマを?
「トランスヘイトを煽るもの」と言う指摘にもなるほどと思いました。
先般、東京高裁で、国税庁職員である性同一性障害の方の女性用トイレの使用を求めた裁判がありましたが、確かに女性用トイレの利用を認めることは女性の側にとっては「共用」になるのではないかという懸念もあり、当然に利用できるということにはならないでしょうが、トランスジェンダーの方々に対する嫌悪感から、こうした女性トイレがなくなるなどというデマを敢えて流したということなのでしょう。
私はこれまでこの問題に関しては中立な立場で居たいと思っていたが、猪野のこの一言で考えが変わった。
女性が男性とトイレを共有したくないと訴えることを「トランス排除」などという言葉で片付けようとする人間には碌な奴はいないし、そんな人間の言うことは先ず疑ってかかるべきである。女性専用トイレを保持すべきだという要求とトランスヘイトとは無関係だ。我々は男性との共有は嫌だと言っているだけで、その男性が女装していようが自分を女性と自認していようとどうでもいいことだからだ。いったいどうしてここにトランスヘイトなどという概念がはいってくるのだろうか?
しかし私がこの法律は改正(改悪?)されるべきではないと考えた決定的な議論はこちら。
mina@yumina08730331·女性が必要としているのは女性専用トイレです。男女共用やトランス女性が入ってくるトイレは求めていません。「女性が使えるトイレ」ではなく「身体女性専用トイレ」です。 デマではなく、あなたがこの違いを理解していないだけですよ。
そうなのだ。我々女性が求めているのは「女性が使えるトイレ」ではなく「女性専用トイレ」なのだ。女性にとって男女共用は女性用トイレがないのと同じ。使おうと思えば確かに使えるが、女子職員たちは昔からずっと不自由を感じていた。現実上なかなか男女別トイレの設置は難しいというのは解る。個人経営者に負担がかかると言うのもわかる。だが少なくとも法律で男女別が理想な形として残されていれば改善の余地がある。だが義務化しないと明記してしまったら、せっかく女性権利の向上が後退してしまうではないか。今は出来なくても将来は出来るように努力すべきなのであり、それをしなくてもよいと言うことにしてしまっていいはずがない。
正直な話、猪野弁護士がこうした女性の危惧をトランスヘイトに結びつけることの方が、かえって不自然だと思う。何故男女別トイレの話がトランス排除という概念につながるのか、既存の法律でことは足りているのに、何故それを今わざわざ変えようとするのか、そっちの方がおかしくないだろうか?
私が猪野弁護士の誠意を疑う理由はこれらの文章からだ。
トランスジェンダーが男性器のまま女湯に入りたいなんていうのは、もちろん過激主張でしかありませんし、それが社会で受け入れられるはずもありません。そして普通のトランスジェンダーはそうした過激主張とは無縁です。
それにも関わらず、女性専用トイレがトランスジェンダーのために共用トイレにとって変わるかのように主張するのはやはり対立を煽っているとしか言えないでしょう。
一体いつまでトランス活動家達はこういうお惚けを続けるつもりなのだろうか。こうした無責任な発言をする猪野弁護士に対して「弁護士のくせに女装して女湯や女子トイレに入る痴漢の事例を知らないのか」という質問がいくつも来たそうだ。そりゃ当たり前だろう。それに対して彼はこのように書く。強調はカカシ。
驚いたのは、実際に女湯に入っている男がいるんだという主張です。トランスジェンダーの話をしているのですから、私としては当然のことながら強行突破しているトランスジェンダーがいるのかと思いました。
女性専用(優先)車両に無理やり乗り込んで行った男がいましたが、あの男のようにです。男性が女湯に入るのは許されませんし、違法(犯罪)行為です。当たり前のことです。
時折、そうした犯罪が報じられますが、しかし、これがトランスジェンダーによる犯行なのかという点がすっぽりと抜け落ちてしまっています。
弁護士なのに知らんのか、には唖然としました。こうした痴漢レベルの犯罪があるかどうかでいえば、「ある」というだけの話でしかないのに、ここで問題になっているトランスジェンダーという視点はまるでなくなってしまっているのです。
上記のツイートにあるように、女性専用の領域に踏み込むな、これが唯一絶対の基準になっています。だから、女湯に入ってきた男が痴漢目的であろうがトランスジェンダーであろうが全く関係がありません。もちろん違法(犯罪)行為というレベルでいえば無関係です。
しかし、これでは、どうみても、トランスジェンダーに対する差別意識が丸出しでしょう。痴漢もトランスジェンダーもまるで同じ扱いで論じられています。
トランスジェンダーを憎むあまり、その観点からの議論のはずが、全く抜け落ちてしまっていることは極めて残念です。
私がこれまで何度も指摘してきたように、男性が女子施設に侵入してきた場合、その人がただの痴漢かトランスジェンダーかということを見極めるのは意味がない。男性に自分の裸を見られたくないと思っている女性にとって、相手が自認男性か女性かなどということは全く関係ないからだ。これはトランスヘイト云々ではなく女性のプライバシーを守りたいという気持ちが優先されるべきだからだ。
女子施設を男子と共用したくないと考えてる女性達は、決して男性全体を痴漢とみて「排除」しているわけでも「憎悪」しているわけでもない。ただ単に男女別のプライバシーを守りたいと言っているだけだ。どうして同じことが男性体トランスジェンダーにも当てはまると主張することが、トランス排除とかヘイトとかいうことになるのだ?
欧米諸国では精神科のお墨付きをもらい合法に性別を書き換えたトランスジェンダー女性がいくらも性犯罪を犯している。だから、彼らがただの痴漢かトランスジェンダーかなどという話をするのは無意味なのだ。弁護士である猪野がその事実を全く知らないというなら勉強不足も甚だしいと言わせてもらう。
ともかく、男女共用トイレが嫌だという女性達をトランスヘイトを煽っているという言い方しかできないような人には女性の気持ちなど全く理解できないだろう。自分に害が及ばないことには、こうも無神経になれるのかと思うと、本当に男は楽でいいなと思う。