イランに鼻であしらわれたオバマのナイーブな直接外交

ブッシュ大統領の『ならずもの国家とは直接交渉はしない』という強行姿勢とは対照的にオバマ新大統領は選挙の時から、イランとは条件抜きでサシで交渉に及ぶと公約してきた。アルアラビアとのインタビューでも先日行われたオバマ大統領最初の記者会見においてもオバマはイランと交渉をするつもりだという柔軟な姿勢を見せた。下記はアルアラビアとのインタビューでの一部。

(オバマ)はイランの指導者たちの行動は「地域の平和と経済向上に貢献していない」と批判した。これには核兵器開発の疑惑やイスラエルへの脅迫、そして「過去におけるテロ軍団への援助」も含まれていた。

しかし、大切なのはイランと会話をする意志であるとし、双方の違いを表現した上で「発展の道につながる地点」を探すべきだとした。

ロシアを始めヨーロッパ諸国は、アメリカがイランとの交渉に積極的に参加してくれることは好ましいことであると語っているが、ヨーロッパ諸国はイランと利害関係があるためブッシュの強硬政策を煙たく思っていた。
しかし、イランのような独裁国にとってアメリカが友好的であるかどうかなどということは余り意味がない。彼らにとって意味があるのは、アメリカが強国か弱国かのどちらかということだけだ。イランの態度が全く変わっていないにも関わらず、イランに何の条件も付けずに、こちらから歩み寄りの姿勢を見せれば相手がどう解釈するか、これは火を見るより明かなはず。

テヘランのアザディ(自由)広場で、旗を翻している何万という群衆を前に、アクマディネジャドはバラク・オバマが月曜日に発表したイランとの「新しい窓口を探している」という供述について初めての応答をした。

「明らかなことは、(アメリカからの)変革は単なる戦略的なことではなく、根本的な変革でなければならない。イランが根本的な変革を歓迎するのは言うまでもない。」とアクマディネジャドは述べた。「イラン国家は交渉をする用意はあるが、それは公平な環境におけるお互い尊敬しあえるかたちでなければならない。」
交渉へのうなずきとは裏腹に、国営テレビでのメッセージは容赦ないものだった。IRIBチャネルで夕方のニュースでは、テヘランはじめイラン全土各都市で行われたデモ行進の様子が25分間にわたって放映されたが、どの市においても人々が「アメリカに死を」を叫ぶ声に焦点があてられていた。

オバマは条件抜きでサシで面と向かって交渉しようと提案しているのに、イラン側は交渉するにあたっては「公平な環境におけるお互い尊敬しあえるかたち」を条件としてつけてきたのである。彼らのいう「お互い尊敬しあえるかたち」がどんなものか察しがつくというもの。
アメリカはブッシュ時代に、イランが核兵器開発を諦めない限り、イランとの交渉など無意味だという強行姿勢をみせてきた。もしイランがアメリカに交渉を求めるのであれば、イランのほうがその姿勢をあらため、アメリカにひざまずいて交渉を嘆願するのが筋だった。イランが強気に出て核兵器開発を続行すれば、アメリカからの攻撃も覚悟しなければならないとイラン政権はかなり恐れおののいていたはずである。
それが、オバマ政権になったら、イランの姿勢は変わってないのにオバマ政権は無条件で交渉を求めると言って来た。これが弱さでなくて何だ?この間の衛星打ち上げにしてもそうだが、イランはオバマの器量を試している。オバマはそこでイランの衛星打ち上げにとことん抗議するどころか、イランと交渉をする意志を変えていない。こんな弱腰の大統領ならイランは自国の核政策を変更する必要は全くない。こんな弱腰大統領がイランに攻め入ってくるなんてことはありえないと踏まれたのである。
つまり、オバマは完全にイランに鼻であしらわれたのである!
これは、アメリカにとって大統領が情けないというだけでは済まされない。イランの核兵器開発だけでなく、過去どころかイラク戦争の間も、現在はイスラエル攻撃に際しても、イランのテロリスト軍団への援助は続行している。オバマはそれに関しても全く批判の声を述べていないのだ。これではイランは核兵器開発もテロ支援もアメリカからは何の邪魔も入らないと判断するのは当たり前のことだ。となればもともとイランと仲良くしているロシアや中国が対米政策に強気になるのはもとより、同盟国であるはずのヨーロッパや日本もイランとの裏取引を始め、今後イランの勢力を弱めることがさらに難しくなることだろう。


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オバマ大統領就任たった二週間で犯した失態の数々

カカシもこのブログで何度か取り上げた歴史学者のビクター・デイビス・ハンソン教授が、オバマの大統領就任二週間をふりかえって痛烈な批判をしている。
オバマの経済や外交対策の失態をみるにつけ「だから言ったじゃないの」と言いたくなるのはやまやまなのだがアメリカの国土安全を考えたら、そんなことをいってるばやいじゃないのである。オバマのせいでアメリカが危機にさらされて困るのはアメリカに済む我々なのだから!
では今回はこの二週間でオバマの経験不足が災いして、彼がどんなに悲劇的な失態を犯してしまったかを説明しよう。そして次回はこの危機を乗り切るためにオバマ新政権がなにをしなければならないのか、ハンソン教授の提案を紹介したいと思う。
第一:自分は道徳的に崇高であると宣言したこと。
もちろんオバマのグルーピーとなり下がったアメリカメディアもこの宣言にひれ伏してしまっているが、オバマのどこが道徳的に崇高なのだとハンソン教授は問いただす。オバマ最初の政治界への挑戦である下院議会への出馬は失敗に終わった。その後の当選は二度に渡ってライバル候補の離婚スキャンダルが選挙直前に何者かによって暴露され、二度ともライバル候補が辞退してしまったため、挑戦者なしでオバマが当選。人種差別牧師のジェラマイヤー・ライトや、左翼テロリストのビル・エヤーズなどとの付き合いを考えると、オバマは道徳なんて言葉を真顔で口に出来るような人間ではないはず。ハンソン教授は書いていないが、選挙違反で悪名高い左翼過激派団体のエーコン(民主党の経済救済法案のなかにエーコンへの援助金が含まれている)や上院議員の席を競りに出したイリノイ知事との深い関係なども考慮にいれると、オバマの道徳観念など、とても自慢できるものではない。
選挙前の公約で、ワシントンDCにはびこるロビーイスト(企業や団体に雇われて、特定の政策を政治家たちに陳誠する人たち)を一掃するとか言っておきながら、ロビーイストの代表みたいなトム・ダッシェル脱税家を始め、次々に10人以上もロビーイストたちを自分のスタッフに加えているオバマ王室。それに加えて各省の長官候補は脱税や汚職疑惑で次々に辞退。辞退していない候補でも疑惑の陰が深く陰っている。そんな奴が前代のブッシュ政権の道徳観念を批判し、自分は前代よりも善良だなどと言ってみても説得力皆無である。
第二:アメリカ歴代政権の悪口を言い、諸外国の反米偏見を確証してしまったこと。
無知というのは恐ろしいもので、経験もないくせに自分は聡明だと思い込んでいるオバマは、歴代政権の政策を外国でこき下ろすことで自分の株があがると思い込んでいる。外国にとってはオバマ政権もブッシュ政権もアメリカに変わりはない。アメリカの悪いイメージは大統領がブッシュでもオバマでも全くかわりはないのである。前政権の悪口はアメリカへの悪口と理解されるだけなのだ。しかも自国の歴史に疎いオバマ王はこれまでアメリカがトルコやレバノンやサウジといったイスラム諸国に数々の資金援助をし、コソボやボスニアそしてクエートを始めイラクやアフガニスタンの例でも解るように、時には戦争して自国兵の命を犠牲にしてまでイスラム庶民の命を救ってきたことを恩に着せるどころか、イスラム圏でアメリカが不人気なのは一方的にアメリカに責任があるとほとんど謝罪口調なのだ。イスラム諸国との交流を強調していたカーター時代にイランがアメリカ人をどう扱ったか、オバマにはもう一度歴史の勉強をやり直してほしいもんだ。
イスラム諸国では歴史を無視した「アメリカは悪」という先入観がすでに存在している。オバマが彼らの偏見を真実だと認めてしまった以上、いくら自分は歴代の大統領とは違うなどと言ってみても、すでに反米意識で凝り固まったイスラム諸国の人々はアメリカに好意を持つどころか、は「アメリカは悪」という自分らの主張が正しかったことが確認されたとし、それを糧にさらに反米攻撃に奮起することは間違いない。
第三:ブッシュの対テロ政策は憲法違反だったと宣言したこと。
ブッシュ大統領が911同時多発テロの後に新しく設立したFISAやグアンタナモテロリスト収容所や愛国法やイラク戦争や外国人テロリストのアメリカへの強制移動など、アメリカ本土を守るためにやってきた政策をすべて憲法違反だと宣言し、ブッシュが911以後アメリカ本土はもとより外国でもアメリカを標的にした攻撃を阻止し、アメリカの安全を守って来たことを完全に無視していることだ。オバマは他の公約を次から次に破っていることでもあり、これらアメリカを守って来たブッシュ政策はの変更は、単に選挙に勝つために憲法違反だと宣言しただけで実際に変更する気など全くないことを祈りたい。
第四:オバマの発案した経済活性法案は単に民主党の社会主義活性法案となり替わり、税金の無駄使い政策にすぎないこと。
オバマ及び民主党が発案した経済活性救済法案は、経済を活性するどころか、経済とは何の関係もない教育だの芸術だのエーコーンのような民主党の応援団のような政治団体への資金援助だの、民主党が長年夢精してきた社会主義政策に満ち満ちている。こんな予算案を承認したら、将来アメリカは取り戻せない巨額の負債を負うことになる。なんで経済低迷中に経済活性になんの役にもたたない政策の予算を増やすのだ?
オバマのエマヌエル参謀総長は「危機を無駄にしてはいけない。」と語ったという。これはどういう意味かといえば、国が危機に瀕している時こそ、「緊急事態だから、、」という言い訳で政府の力の増長に利用することを怠ってはいけないという意味である。第二次世界大戦中に国の危機を口実に時のルーズベルト大統領が極端に政府の権力を増幅したことをエマヌエル総長は念頭においているのだ。
第五:全く無能なロバート・ギブスを報道官として起用したこと。
ハンソン教授はオバマの報道官はどうしようもなく無能だと手厳しい。そのひどさんはクリントン大統領のマクレラン報道官よりもひどいかもしれないと語っている。カカシはマクレランはそれほどひどかったという記憶はないのだが、ハンソン教授に言わせるとギブスは裏表があり、あいまいで、オバマ政権の党を超えた方針とやらを全く反映していないという。オバマに友好的な記者団だからまだ救われているが、彼が共和党大統領の報道官だったら、もうとうの昔に八つ裂きにされていたことだろうという。
第六:副大統領のジョー・バイドンにやたらと演説をさせてしまったこと。
だいたいジョー・バイドンのように思いつきで訳の馬鹿げたことを語るので悪名たかい人間を副大統領になどしたことに問題があるわけだが、バイドン副大統領は予測どおり、副大統領になってもオバマに恥をかかせるような発言ばかり連続で放っている。すでに最高裁判官の宣誓式での間違いをおちょくり、前副大統領の悪口を声高く唱え、自分は国務庁長官の候補にも上がっていたのだなどとヒラリーを侮辱するような発言までしている。外交の面でも何の経験も実力もないバイドンが、ヒラリーの悪口をいえた義理か、あほ!などと今さら言っても無駄だろう。
オバマ連続失態のもたらしたもの
私は以前からオバマはアメリカの敵国から試されるだろうと指摘してきたが、すでに北朝鮮は長距離弾道ミサイルの発射を予定しているし、イランは人工衛星を打ち上げるし、ロシアはヨーロッパの弾道ミサイル防衛は終わったと宣言し、近隣のキルギスタン(Kyrgyzstan)国に多額の支援金を約束し、アメリカ空軍基地をキルギスタンから追い出そうという魂胆だし、自然ガスのヨーロッパへの販売についてもかなり強気の保護主義をみせている。アフガニスタンのカルザイ大統領もオバマ政権のことは全く信頼していないらしく、オバマが時期大統領となった去年の11月から宿敵ロシアと交渉をはじめたと言われている。
つまり、諸外国はオバマ政権の実力を全く信頼していないのだ。私は何度も強調してきたが、アメリカは諸外国に好かれる必要はないのである。それよりも強いアメリカとして諸外国に恐れられていたほうが、アメリカの安全を保つためには好ましいことなのだ。
オバマのおかげてアメリカは危険な敵国を含め諸外国から見下されてしまった。今後アメリカがこれ以上恥じをさらさないためにも、オバマは早急に政策を変更する必要がある。どのように変えるべきなのか、それは次回改めてお話しよう。


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OPEC、アメリカの自己防衛は許さんと脅迫 

OPECのアブダラ・サレム・エルバルディ書記長は、もしも米国がイランを攻撃した場合には、たとえそれがイランからのアメリカやイスラエルに対する攻撃への応戦であろうとも、OPECは 原油の値段を制限なく大幅に引き上げる 用意があると語った。

ここ数週間、イスラエルがイランの核兵器施設攻撃の用意をしているかもしれないという投機による原油の値上がりがおきている。イランのミサイル試射によって剣の振り回しは緊張度を高めている。イランとのどのようないざこざもイランが湾岸地域の輸送を阻止することが出来ることから、原油市場はさらに揺るがされている。

「値段は無制限に上がるでしょう。」と軍事闘争の影響についてのインタビューでバルディ氏は語った。「いくらとは言えませんが」

エル・バルディはイラク風のイラン侵略を考えてのことなのだろうが、アメリカがイランを攻撃するとしても、イラクのようなやり方は懸命ではない。その理由はというと:

  • だいたい兵士の数が足りない。アメリカはすでにアフガニスタンとイラクで戦争をやっている。ビル・クリントン時代に大幅に縮小された現在の軍隊の規模ではいくつも同時に戦争をやるなど不可能である。

  • 第一、そんな戦争はアメリカ国民が許さないだろう。すでに国民の半数がイラク戦争は戦う価値がなかったとおもっているくらいなのに、ここでイランとまた戦争だなんてことになったら国民は黙っていないはずだ。無論イラク戦争が決定的に勝ったと国民が納得出来れば戦う価値があったかどうかという感情も変化するだろう。
  • イランを平穏化させるというのはかなり難しい。ブッシュ大統領の任期中には先ず無理だ。もしオバマが選ばれたら、ブッシュが侵略し占領したイランからさっさと手を引き、イランは戦争以前より悪い混乱状態となるだろう。
  • むやみやたらな無差別攻撃及び侵略はイラン国民の感情を逆撫でし、イラン国民全員をアメリカの敵に回すことになる。ムラーに反対している若者すらもムラー支持者にしてしまうだろう。
  • そしてこれが一番大切なのだが、そのような戦闘はイランのムラーたちに油田を破壊する機会を与えてしまう。それこそまさに世界の原油市場を混乱させ、エル・バルディがいうように 無制限に原油の値段が上がる可能性がある。米国だけでなく世界の経済が大きな悪影響を受けるだろう。

幸運なことにそのようなことをしなくても、もっと良い方法がある。これは軍事学者のハーマン博士の作戦だが、カカシもここで2007年の1月に紹介している

  1. まずホルムズ海峡を通る石油輸送を阻止する国はどこであろうと容赦しないと発表する。
  2. その脅しを証明するために対潜水艦船、戦闘機、じ来除去装置、イージスBMDシステムなどを含む空母艦バトルグループをペルシャ湾に派遣する。むろんこちらの潜水艦も含む。
  3. アメリカ一国によるイランの石油タンカー通行を封鎖。イランから出る石油、イランへ入るガソリンなどを完全阻止する。ほかの国の船は自由に通過させる。
  4. イランの空軍基地を徹底的に攻撃し、イランの空の防衛を完全に破壊する。
  5. イランの核兵器開発地及び関係基地、インフラなどを攻撃する。
  6. そしてこれが一番大切なことなのだが、イランのガソリン精製施設の徹底破壊である。

詳しいことは先のエントリーを読んでもらうとして、ハーマン博士の言うとおりにすれば、イランの石油をコントロールするのはイランではなくアメリカとなる。ということは、戦争になってもイラン以外の国への石油流通は途絶えることはないが、イランの経済は破綻する。
そしてアメリカが保証した石油の流通で得た収入は一時的に預託し、イランが政権交代をし過激派のムラー政権を倒した暁にはその金はすべて返還されると宣言するわけである。イランの若い青年達はもともとムラー政権崩壊を狙っているのだから、それを応援するようなものだ。
イスラム圏諸国は無論金切り声で反対するだろう。しかしこのやり方ならアメリカがイランの石油を盗んでいるとは責め難い。世界中にわかるように預託口座にいれておいて、政権交代の際には返還するといっているのだから。
原油の値段は当初は急騰するだろう。だがアメリカが原油通路をしっかりと守っていることがわかれば、原油の値段は下がるはずである。
であるからアブダラ・サレム・エルバルディ書記長には、アメリカの偉大なる格言でお答えしよう。”Go ahead… make my day!”(やれるもんならやってみろ!)


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イランのミサイル試射フォトショップコンテスト

この間のイランのミサイル試射は成功どころか写真は合成写真だったということがバレた話はもうしたが、イランの革命軍に負けじと、アメリカのブロガー達がイランのミサイル試射フォトショップコンテストとでもいうか面白い写真があちこちで発表されている。そんななかで傑作なフォトショップのコレクションを発表したブログがあったので、私も紹介しておこう。これまでカカシがここで紹介した数々のフォトショップ捏造写真なども含まれており、大笑いすること間違いなし。
サイトはスコッツブログ


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イランのミサイル試射写真はフォトショップされていた!

いやはや、またもアメリカの主流メディアはイランの大本営放送にだまされたようだ。どうしてこうもアメリカメディアってのはナイーブというかアホなんだろう。独裁政権の軍隊が嘘をついたからって何を今更ってとこだ。嘘つきが嘘つくのはあたりまえではないか。
LittleGreenFootBallsというブログに写真がこのことを最初に指摘。

IranMissilePhotoshop

フォトショップされたイランのミサイル試射写真


こちらにフォトショップされる前の写真が掲載されている。これを見ると右から二つ目のミサイルが発射しなかったことが解る。
イランが嘘をつくのは当たり前だが、そういう所からの情報をきちんと調べもせずに鵜呑みにしてそのまま報道してしまうアメリカのメディアの怠慢さには呆れる。


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選挙は関係なし! 遠慮せず強気の外交に専念できるブッシュ

よくアメリカではすでに任期終了を待つだけになって政策上の実権がなくなっている政治家のことをレイムダックと呼ぶ。二期目の任期もあと一年足らずとなり、従来この時期の政権からは特にこれといった新政策は期待できない。
この時期はある意味でアメリカにとって非常に危険な時期でもある。まずイラクだが、大統領選挙に影響を与えようと選挙をめざしてテロ行為が激化することは間違いない。また先日のイランのように任期を一年未満に控えた大統領が新しく戦争などはじめるはずがないと踏んで挑発をしてくる敵もあるだろう。
しかし今回は従来とはちょっと違う状況がある。従来なら現在の政権の方針を引き継いで大統領に立候補する副大統領が、健康上の理由から立候補していない。大統領の外交政策は議会の承認を必要としない。ということはブッシュ大統領は来期の選挙運動を控えた支持率の束縛や議会のうるさい小言など気にせずに強気な外交に専念できるというわけだ。ブッシュはレイムダックだからと甘く見てやたらにアメリカを攻撃してくると敵は思わぬ猛反撃を受ける可能性がある。
2008年のブッシュ外交政策はこれまでよりも強気なものになるのではないかという意見がStratforに載っている。(メンバー登録必要(Hat tip seaberry

イラク戦争はジハーディスト戦争の延長だ。2001年のアフガニスタン侵略の後、合衆国はアルカエダを可能にしたサウジアラビア、シリア、イランそしてパキスタンという四つの勢力と同時に戦うだけの軍事力に欠けていることに気が付いた。そこでブッシュ大統領の最初の手段はアフガニスタンに対抗する碇(いかり)を確保するためにパキスタンに無理矢理アメリカと同盟を結ばせた。第二段階は他の三つの国を威嚇しアルカエダとの戦いへの協力を強制するため、これらの国と国境を接するイラクを占領した。そして最終段階ではアルカエダが崩壊するまでこの戦争を押し進めるというものだった。

多くの思いがけない犠牲を払ったとはいえ、2008年の夜明けを迎えた今、この作戦がアルカエダが機能不能になるまで潰すことに成功したことが明らかになってきた。 はっきり言ってジハーディスト戦争はもうほぼ終わりを遂げているのである。合衆国は勝っているだけでなく、最初にアルカエダを可能にしたスンニ勢力全体を味方につけてしまった。
これでこの地域においてただ一つ非スンニ派勢力のイランは合衆国との同意を求めなければならないという非常に居心地の悪い立場にたたされることになった。

イラク情勢:
現在イラクではファンタム・フィニックスという大掃蕩作戦が行われており、すでに何十人というテロリストが殺されている。特にファンタム..の一部であるハーベストアイアンではアンバー地域から逃げたアルカエダの連中の温床となっていたディヤラ地区が焦点とされている。
現場の司令官によるとアメリカ・イラク同盟軍は期待したほどの抵抗にはあっていないということだ。これは我々の攻撃が事前に敵側に洩れたため、アルカエダの連中がかなり多く逃げてしまったのが原因らしい。
しかしこれまでの作戦と違ってペトラエウス将軍のCOIN作戦では、一旦制覇した土地は去らずにあくまで守り通すので、テロリストから戦って奪い取ろうが逃げ去ったテロリストの留守中に制覇しようが結果は同じだ。テロリストは奪われた土地を奪い返すことはできないからだ。
イラク戦争がうまくいくいつれて、アメリカ国内でも日本でもイラク戦争の話をあまりきかなくなったが、アメリカ市民が大統領選挙で気を奪われている間にもイラクではアメリカ軍がテロリスト退治を着々と進めているのである。大統領選挙に影響を与えようとテロリストが躍起になって自爆テロ作戦を練っていることは確かだが、味方軍の攻撃から逃れながら住処を次から次へと奪われている最中にメディアをあっといわせる大規模なテロ作戦を練るというのはそう簡単にできるものではない。
イラン:
この間のイランによる挑発行為で、アメリカ海軍は何もしないで見ていたという見解は間違っている。アメリカ側は確かに応戦はしなかったが、イランがこちらの反応を観察したのと同じようにこちらもイランのやり方を注意深く観察していたのである。それにアメリカ側がわざと反応を遅らせて意図的に誤った情報を与えた可能性も考える必要がある。
もしまたイランがあのような挑発行為をとることがあったら、アメリカ側からの反応はかなり恐いものがある。ブッシュ大統領はイランへの武力行使をオプションのひとつとして考えているのは確かだが、それをやる前にイランに対して強気の対処をすることは可能だ。例えばホルムス海峡を通るイランへ出入りする船をすべて差しとめてしまうということなら意外と簡単にできる。これに経済制裁を加えれば、イランの経済は突如として立ち止まってしまうのだ。
それではここで再びイランをどう攻めるか、軍事歴史学者のアーサー・ハーマン博士の提案を振り返ってみよう。

  1. まずホルムズ海峡を通る石油輸送を阻止する国はどこであろうと容赦しないと発表する。
  2. その脅しを証明するために対潜水艦船、戦闘機、じ来除去装置、イージスBMDシステムなどを含む空母艦バトルグループをペルシャ湾に派遣する。むろんこちらの潜水艦も含む。
  3. アメリカ一国によるイランの石油タンカー通行を封鎖。イランから出る石油、イランへ入るガソリンなどを完全阻止する。ほかの国の船は自由に通過させる。
  4. イランの空軍基地を徹底的に攻撃し、イランの空の防衛を完全に破壊する。
  5. イランの核兵器開発地及び関係基地、インフラなどを攻撃する。
  6. そしてこれが一番大切なことなのだが、イランのガソリン精製施設の徹底破壊である。
  7. アメリカの特別部隊がイラン国外にあるイランの油田を占拠する。

読者の皆様もお気付きと思うが、アメリカはすでに1と2を実行に移してしまっている。ブッシュ政権は今年中にイランになんらかの強攻策をとるはずである。
イスラエル・パレスチナ問題:
今ブッシュ大統領はイスラエルを初訪問中。ブッシュ政権はこれまでのどの政権よりも親イスラエルとはいうものの、イスラエルに妥協を迫ってパレスチナに歩み寄るように圧力をかけるという点では従来の政権とあまり変化はない。カカシは他の点ではブッシュ大統領の政策を支持しているが、ことイスラエル・パレスチナ問題に関してはあまり期待していない。オルメルト首相との会話も中東和平よりもイランの脅威に終始した模様で、パレスチナ和平についてはあたりさわりのない会話しかなったようだ。

 【エルサレム笠原敏彦】…パレスチナ和平をめぐってはオルメルト首相が7年ぶりに再開した和平交渉への「完全な関与」を改めて表明したものの、交渉進展へ向けた具体策は示せなかった。
 初のイスラエル訪問となるブッシュ大統領の首相との会談は、予定を約40分も超過。2国家共存に向けてパレスチナ国家の輪郭(国境画定、難民の帰還問題など)を決める交渉の年内妥結やイランへの対応で、突っ込んだ論議を行った模様だ。
 イスラエルは和平問題よりイランへの対応を重視。ブッシュ大統領は会見で「イランは03年秋に核兵器開発を停止した」とする米機密報告書の公表が波紋を広げている事態に言及、「イランは脅威であり続ける」との認識を改めて示し、イスラエルの米政策への懸念軽減に努めた。…
 一方、焦点のパレスチナ和平では、オルメルト首相が改めてパレスチナ側の暴力停止が和平推進の前提だとの立場を強調。ブッシュ大統領は強い圧力を行使する姿勢は見せず、「指導者らがロケット攻撃や入植地の問題に固執し、歴史的な合意の潜在性を見失うことが懸念の一つだ」と述べるにとどまった。
 両首脳とも和平問題では「決意表明」にとどまり、昨年11月の米アナポリス中東和平国際会議での「約束」を「履行」に移す突破口は開けていない。

ブッシュのイスラエル訪問は卒業写真程度の意味しかないという批判もあるが、アメリカ大統領がイスラエルを訪問するのは非常に危険を伴う行為であるから、少なくともその危険をおかしてまで訪問したということに多少の意義はあるかもしれない。私はアメリカのイスラエルへの方針は「放っておけ」というもの。どうしても口出ししたいなら、イスラエルからのイランなどへの諜報と交換に武器供給をするのが得策と思う。


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イランの挑発、アメリカは迎撃すべきだったのか?

昨日イランがホルムズ海峡でアメリカ海軍の米軍艦艇に信じられない挑発行為を行った。

【1月8日 AFP】(一部更新、写真追加)ペルシャ湾(Persian Gulf)のホルムズ海峡(Strait of Hormuz)の公海上で5日、イランの革命防衛隊(Revolutionary Guards)に所属するとみられる5隻の高速艇が、3隻の米軍艦艇に対し攻撃を示唆する威嚇行為を行った。米テレビ局CNNが米軍関係者の話として伝えた。
 米軍関係者によると、イラン側は「われわれは攻撃を行う。あと数分で吹き飛ばす」などと無線を通じて攻撃を示唆。高速艇は米軍艦艇の正面の海中に白い箱状の物体を投下したという。米軍側が攻撃を開始しようとした直前に高速艇は引き返し、交戦には至らなかった。
 ホルムズ海峡はペルシャ湾の出入り口という戦略上重要な海域で、米軍艦艇は同海峡を通過中だった。

このバトルグループの一部として参加していたイージス艦、USSホッパーから撮ったビデオはこちらで見ることができる。実は二年前に真珠湾で仕事をしていた時、ホッパー艦上で乗組員と仕事をしたことがあり、今では乗組員は入れ替わっているだろうが、どうも他人事という気がしない。
それはともかく、アメリカ側が応戦の準備をしている最中にイランが引き返したので交戦にはいたらなかったという事実に関して、そんな逃げ腰でいいのかという批判が出ている。下記当ブログもいつもお世話になっている陳さんの意見

アメリカはこんなナメたマネされても何もできないような腰抜けの国になってしまった。アメリカドルの裏づけの半分は、その圧倒的な軍事力が世界通商の安全を保障しているからだ。

ホルムズ海峡という地政学的・戦略的要衝で、交戦すれば瞬殺のイランの魚雷艇相手に目視距離まで近づかれて、爆雷攻撃の真似事されて、何もできないとなれば、この前提が崩れたと言っても良い。つまり、ドル売りだ。
今のブッシュはジミーカーターに劣るインポ野朗だ。

なんか陳さんが言うと迫力あるなあ。陳さんと同意見のアメリカ人コラムニストのラルフ・ピータースもニューヨークポストでイラン船はすべて沈めるべきだったと書いている。

イラン船たちはずっと迫ってきて、フットボール球場二つ分程度の200メートルにまで近付いてきた。我が海軍は発砲の用意が出来ていたというが発射の命令がでる寸前イラン船が引き上げたのでうたなかったという。

すべて沈めてやるべきだったのだ。
それは我々が戦争好きだからではない。イランは我々を口頭でも物理的にも威嚇したのだ十分に戦闘行為だ。いったいいつになったら我々は初期に行動をとることが後になって多くの命と宝を救うことになるということを学ぶのだ?

ピータースはワシントンからしたら自制したとかなんとかいうだろうが、重大なのはイランが我々の反応をそどう受け止めるかだという。イランがブッシュ政権がイランと交戦しなかったのはアメリカがイランを恐れているからだと思ったとしたらこれは大変なことである。
これは最近のNIEの調査書でイランが核開発を何年も前にやめていたという報告と重なって、イランはアメリカがイランが核兵器開発をやめたなどと信じているはずがないと思っているから、それなのにあんな報告を発表したのは、アメリカがイランを恐れて戦わないで済む口実を探しているからだと考えているだろう。

「いまならアメリカの臆病者を押し倒せる。奴らはイラクで懲りて、完全に落ち込んでるからな。次の大統領なライオンに狙われた鹿のように逃げるだろう。」「奴らの軍隊ですらおれたちを恐れている。日曜日やつらは俺たちの気力にひれ伏した。奴らは恐れて神に見放された。そして今こそ奴らを倒す時がきたのだ」

とかなんとかイランのムラーたちは言ってるのではないか、とピータースは想像しているが、カカシもこれには同意見だ。
以前から西側諸国はイスラム圏政権を刺激しないことがテロ攻撃や戦争を避ける得策だと間違った解釈をしてきた。だからなるべく波風たてないように何もかも穏便にという姿勢が普通に取り入れられていた。だが911以後の世界ではそんな甘い考えは通用しない。平和を守りたいのであれば戦う覚悟をする必要がある。戦争を避けたければこちらから威嚇して相手を古いあがらせ相手の戦意を失わせる以外に道はない。
去年、イギリスの海軍兵と海兵隊員がイランに拉致された時も、彼等はほとんど抵抗せずにイランに連れ去られてしまった。あの時私はあれがアメリカならああ簡単には拉致などされなかっただろうと書いたが、今回のアメリカの反応をみているとなんだか心配になってきた。
イランの威嚇は、我々の戦闘能力を試す稽古のようなものだった。我々がどれだけすぐに侵入者を察知するか、攻撃態勢に入るのにどのくらいの時間がかかるのか、といったことを知るのも大事だが、彼等がもっとも知りたかったことは、現場にいる司令官はワシントンの命令を待たずに独自の判断で攻撃者に反撃できるのか、アメリカ政府はイランに反撃するだけの根性があるのかどうかであったことは間違いない。そうだとすれば今回のアメリカ軍による「自制」はかえって相手を図に乗らせ将来のイエメンで自爆テロに攻撃されたUSSコールの二の舞いになるのではないかという心配はある。
イランのアメリカへの挑発はこのままでは終わらないだろう。次回はもっと攻撃的な手段をとってくるはずだ。そうやって彼等はアメリカがどこまで折れるか試しているのだ。我々の態度を見守っているのは何もイランだけではない。世界にはびこるテロリストどもがアメリカが根性があるかどうかじっくりと観察しているはずだ。
この次にアメリカ艦艇に近付くイラン船は生きて返してはならない。すべて撃沈すべきである。それを怠れば、アメリカはイランとの戦争は避けられないだろう。
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イギリス諜報部、アメリカはイランに一杯食わされたと指摘

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イランが2003年後期に核兵器開発を停止していたというNIEの報告はどうも疑わしいと感じているのはカカシだけではない。どうやらイギリスの諜報部もこの報告書はかなり眉唾だと感じているようだ。 英国のテレグラフ紙によると、

イギリスの秘密工作員たちはアメリカの諜報報告が先週発表したイランが核兵器プログラムをお釈迦にしたという話は非常に疑わしいとし、CIAはテヘランに一杯食わされたと考えている。

先日カカシがここここでも書いたように、イギリス諜報部もNIEが元にしたという新しい情報とは、イランが意図的に流した偽情報なのではないか考えているらしい。
先日紹介したワシントンタイムスの記事で、アメリカ諜報部の幹部は新しい証拠がイランの情報操作による偽情報あるという可能性はみとめたが、多分そんなことはないだろうと語ったとあった。しかし同じ諜報幹部はイランがウラニウム濃縮をしていることを認めておりイランが始めようと思えばいつでも核開発を始められる体制にあることは多いにありうると認めたとあった。
次に紹介したロサンゼルスタイムスの記事で、我々は新しい情報とはイラン軍部高官同士の盗聴された電話での会話と、後にみつかった軍人の日記だということを学んだ。.
素人目でみても、イラン政府が経済制裁や軍事行使の危機を防ぐため、自分らが敵に対して驚異的な存在ではないことを証明する偽情報を流し、必ず見つかる場所においておくなんてことはすぐに思いつく。これ、情報操作の常識。NIEは諜報分析の専門家なのであるから、これが偽情報である可能性についてもっと深い分析が必要なのではないか?
前述のテレグラフでもイギリスの分析者によってその点に焦点が当てられている。

関係者の話によるとイギリスの分析者はイランの核兵器開発スタッフは自分らの電話が盗聴されていることを承知のうで意図的に偽情報を流したと考えているという。「我々は非常に疑っている。我々はこの情報がいったい何を基にしているのか、いったいどこからきたのか、これは亡命者から得たじょうほうなのか、盗聴した内容が基本なのか、知りたい。彼らは電話が盗聴されていることは知っている。こちらを混乱させるためにどんなことでもいうだろう。」
「だいたいアメリカの諜報部はあのあたりではあまりたいした仕事をしていない。イラクの件でもかなり痛い目にあってるし。」

どうやらイギリス諜報部はアメリカのCIAを高くかっていないようである。
ジミー・カーターやビル・クリントンの時代に、アメリカは実際にスパイを敵地に送り込む、いわゆるヒューマンインテリジェンスを極端に減らしてしまった。それで我々の諜報技術は衛星写真だの、盗聴だの、ネット監視だのといったものに頼りすぎる傾向がある。こうした情報はその国の非常網がどうなっているかといったことを調べるには格好の道具なのだが、敵側の意図を分析するには不十分である。こうして得た情報では、相手側が意図的に嘘をついているかどうかを分析することは出来ない。
敵側の意図を確かめるためには、どうしても生身の人間によるアメリカに忠誠心をもったスパイによる諜報が必要になってくる。この人間は敵国に長年普通の市民として住み着き、敵国の文化や宗教に慣れ親しみ、表向きの政権ではないく実権を握っている組織やその機構について充分に理解し、敵の言動の微妙なニュアンスを正確に捉えることができ、実際に敵がどのくらい真剣にわが国や近隣諸国を攻めるつもりなのかといったことをきちんと把握できる人間でなければならない。このような人材はちょっとやそっとでは育たない。敵国への諜報行為は長年にわたる長期計画でやっていかなければ駄目なのである。
まさにイギリスやイスラエルが何十年もかけてやってきた諜報作戦がそれである。イギリスに関しては帝国時代からすでに世紀単位で諜報活動を行ってきたし、イスラエルの場合は諜報が間違っていればイランのアクマディネジャド大統領の希望通り、この世から抹殺されてしまう恐れがあるのであるから、諜報にかけては真剣だ。
アメリカの諜報はスパイによる諜報ではなく単なる盗聴だけだ。才能ある人材を駆使してアメリカよりもずっと諜報網が優れているイギリスとイスラエルの諜報部が、NIEはイランに一杯食わされたといっている以上、ブッシュ政権はNIEの報告をもう一度真剣に見直す必要がある。もしもこの情報が偽情報でNIEが本当にイランに騙されていたとしたら、そしてこの情報をもとにイランへの圧力を緩和してしまって二年後にイランに核兵器完成なんてことになったら目も当てられない。
もっともアメリカのスパイのなかにも、この問題をかなり心配している人たちがいる。上記の記事によれば、CIAの中間層の工作員の間でもイランは核兵器開発を続けていると考えている人たちが多いようだ。ただ残念なことにCIAは2004年にイラン国内での大事なコネを大量に失ってしまったため、その確認がとれないのだという。
どうして2004年なのかというと、2004年はイランで選挙があり、当時テヘランの市長だったアクマディネジャドが大統領に選ばれた年で、彼の党が圧倒的多数議席を取り、ハシミ・ラフサンジャニ前大統領とその配下のものが一世に取り除かれてしまったのである。どうやらアメリカのコネはアメリカ人スパイではなくて、すべてイラン人高官だったらしく、彼らが勢力を失ったとともに、アメリカもコネを失ってしまったというわけだ。
イスラエルもイギリスも自国民をスパイとしてイランに送り込んできた。両国とも多くの才能あるスパイをその正体がばれて暗殺されるという犠牲を払ってきた。アメリカは賄賂を使ってイラン高官を買収することと、盗聴や衛星写真での諜報に力を入れてきた。どのやり方も諜報には重要な役割を果たす。しかしアメリカは、(特に民主党は)短期的な目でしか物事を見ることが出来ず、長期的に敵国の様子を探るスパイの育成を全くしてこなかった。アヤトラ・ホメイニによる宗教革命をCIAが全く予期できなかったのも、CIAがイランからスパイを一斉に引き上げてしまったことが直接の原因だ。
現在の世界は非常に危険な状態にある。このような非常時には非常対策が必要だ。北朝鮮、ベネズエラ、ロシア、中国など、スパイを送り込んでアメリカがじっくり観察しておかなければならない危ない国がいくらもある。アメリカ市民はアメリカ政府によるスパイ活動を反対したりはしないだろう。だが、問題は民主党ならびに、共和党とは名ばかりのRINOと呼ばれる政治家達である。CIAがテロリストを尋問するときに多少手荒な真似をしたというだけで大騒ぎをしている連中だ、アメリカのスパイがイランに潜入して任務のために人殺しもいとわないなどとなったらねずみを怖がるご婦人のように机の上にのっかって裾をまくって叫び出しかねない。
繊細な心の持ち主に諜報政策を任せていてもいい時代はとっくの昔に終わったのだ。我々にはラングリーにあるCIA司令部の壁にもっともっと多くの黒星(殉職した人は黒星で表される)が張られる覚悟ができるような根性の座った男女が必要なのである。アメリカには「非合法戦闘員」を敵国に潜入させるという誇り高い伝統が以前には存在した。いまやアメリカはその伝統に戻るときである。いや、もうとっくに戻っているべきだったのである。


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NIEはイランの情報操作にまんまとのせられたのか?

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昨日も疑問点多いNIEのイラン核開発停止報告で書いたように、今回のアメリカの国家情報評価(NIE)による、イランは2003年秋に核兵器開発を停止していたという調査報告には腑に落ちない点が多すぎるのだが、アメリカ主流メディア各紙の反応を読み比べてみよう。
まずはウォールストリートジャーナル(WSJ, 登録有料)の社説 からよんでみると、WSJはカカシが昨日指摘したように、この報告書が2年前の報告書を完全に覆しているという事実そのものがNIEの信用度を落としていると書いている。:

ほんのつい2005年までは「国際的な義務や圧力にも関わらず」「イランは現在核兵器開発を行っていると確信している」というのが一般的な見方だった。これはNIEによる「高度の自信を持った」判断だった。ところが新しいNIEはイランが「国際社会の圧力に反応」して2003年に核兵器開発プログラムをあきらめていたという。そしてこれもまた「高度の自信を持った」結論だという。とすれば二つの結論のうちどちらかが間違っていることになり、根本的な分析過程の信用度そのものがかなり疑わしくなってくる。

NIEの主要な著者たちが「極度にブッシュ政権に反対していた」元国務庁の役人たちであると知って、我々は報告書に高度な「自信」をもつことができない。彼等はトム・フィンガー元国務庁諜報調査部、バン・バンダイパン国家諜報大量破壊兵器部、ケニース・ブリル元国際原子力機関(IAEA)アメリカ大使である。

またWSJは2003年にイランに圧力をかけた事件といえば、イラク戦争しかないことを指摘している。ジョージ・W・ブッシュのイラク戦争は単にパパブッシュやクリントンのやった戦争のように、短期間にやって「よくやった」とお互いの肩をたたきあってさっさと撤退し、後の混乱には全く無頓着などという戦争ではなかった。ジョージ・Wの戦争では、フセインを倒しバース党を崩壊させた後の反乱分子との戦いにアメリカは苦戦して歯を食いしばって居座った。ジョージ・Wは内外からの批判をよそに全く方針をかえる気配もなかった。これはそれまでイスラム諸国がアメリカ軍にたいして持っていた印象とは正反対の反応だった。もしイランがジョージ・Wの態度に圧力を感じて核兵器開発を一時停止したのだとしたら、これはブッシュ政策の大勝利と考えるべきではないのか?
だがNIEはこれを「国際的な圧力」としている。国際社会のどのような圧力のことをいっているのか報告書は特定していない。 2003年にあった国際的圧力とはいったい何だ?当時アメリカはヨーロッパにイランと核兵器開発について交渉してほしいと説得している最中で、まだとりたてた圧力がかけられていた時期ではない。
WSJ はもっと大事な点はイラン核プログラムにあるという。イランはいまだに核爆弾の燃料となるうるウラニウム濃縮作業を工業並みのスケールで継続している。そしてこれは明らかな国連条例違反である。しかもIAEAはイランにはすでにウラニウムを核兵器の核形に製造する設計図を持っていることを確認しているというのだ。それに加えてイランには弾道ミサイルを武装する技術的な知識があることはすでにアメリカ諜報部は知っているのである。またイランの革命防衛隊はすでに点火の技術すら開発中だという。だとすれば、単に核兵器製造をおこなっていないというだけであって、イランの核開発プログラムは健在だということになるではないか?
ロサンゼルスタイムスによるとNIEが2005年の結論を完全に覆した理由は新しく取得された証拠によるものだという。
その新しい証拠というのは、現職ならびに退職した合衆国諜報部の関係者によると、この夏にアメリカの諜報部がイラン高官同士の核兵器プログラムに関する電話での会話内容を取得したというところからはじまる。どうやって取得したかという詳細は載ってないが、多分衛星電話などの会話を途中で捉えたのだろう。またこれと共に高官同士の会話が記載された核兵器開発に関する日記がみつかったのだそうだ。
この新しい情報がきっかけとなって、これまでの諜報が大幅に見直しされたのだとロサンゼルスタイムスは伝えている。
しかしここで注意しなければならないのは、諜報というものは最終的な絵がわからない点の集まりだ。この点をどう結び付けるかは分析者の判断に頼らなければならない。星座などでも柄杓だといわれるからそうかなという気もするが、見る人によって見える絵は違う。NICは2005年にはこの点のかたまりを「高度な自信」を持って核兵器開発がされていると判断したが、今回は全く同じ点と新しくできたふたつみっつの点をあわせて、同じく「高度な自信」をもってイラン核兵器開発を停止したと判断していることになる。
NIEはイラク戦争の前イラクに大量破壊兵器の備蓄があるという誤った結論を出してしまったことから、その教訓を生かしてもっと慎重に今回の分析にあたったという。ひらたくいうならば、アメリカはイラクの大量破壊兵器について1990年に過小評価しすぎていた。そして2002年には過大評価していた。そして2004年にはイランの核兵器開発を過小評価していたので、2005年には過大評価し、2007年には過小評価して調節しているということだ。
そうだとすれば、今回の結論も極端な過小評価である可能性が非常に大きいということになる。しかも著者三人が極端にブッシュ政策に批判的であるということも考慮にいれると、今回の報告書がいったいどこまで信用できるものなのか、ハッキリ言ってカカシには「高度の自信」がもてない。(笑)
ニューヨークサンはNIEは明かに外交政策に影響を与えようとしていると書いている。

この報告書の正しい読みはワシントンにいる選ばれた政権にたいして諜報組織が長年に渡って挑戦してきた葛藤の結果だということだ。彼等はずっとブッシュ大統領の主な政策決断に反対してきた。 彼等はイラク国会に反対だったし、イラクの選挙にも反対だった。彼等はI. Lewis Libbyにも反対だったし、イランへの強硬路線にも反対だった。

言ってみればこれは役人の復讐のようなものだ。著者の重要なひとりであるバン・バンダイペンはアメリカにイランのウラニウム濃縮をみとめさせようと過去5年にわたって働きかけてきた。バンダイペンがこの見積もり報告を組織のなかで押し進めることによってワシントンでの政策に影響を及ぼすことが出来ると考えていることはあきらかだ。役人たちは自分らの手で次の戦争をとめようとしているのかもしれない。
しかしこの危険なゲームはブーメランのように戻ってきて、かえって戦争が起きる可能性を高めてしまう可能性がある。外交官たちは今月中になんとか安全保障委員会でイランに関する三つ目の条例を通過させたいと望んでいた。すでにタートルベイ(国連ビル)の中国代表はそのような書類を支持するのはやめたいと騒ぎはじめている。…

イランが差しせまった脅威ではないということになれば、国際諸国はイランへの経済制裁だの条例だのに控えめな姿勢を示すようになるのは必定だ。国際社会からの圧力によってイランに核開発をやめさせようとアメリカ民主党が考えているなら、この報告書のおかげで国際社会からの圧力など全く見込みがなくなってしまった。
さて前述の「新しい証拠」だが、これについてはニューヨークタイムスがもっと詳しく説明している。

入手されたノートに2003年後期に核兵器の複雑なエンジニアリングデザイン企画を差しとめたことについて、軍幹部の人間が苦々しく文句をいっている会話が記載されている….

ニューヨークタイムスはこのノートの内容は別の幹部によって確認されており、別に取得された会話の内容とも一致していることから、このノートの中身は信用できるとしている。しかしこのノートも衛生電話の内容もイランが故意に流した嘘情報であるという可能性は多いにある。イランはCIAがイラン国内で電話の盗聴をしていることは十分承知しているはずだ。だとしたらこちらを惑わすために偽情報を盛り込んだ会話をわざわざ軍隊幹部にやらせるなど朝飯前だろう。同じ内容の情報が別々に集められたからといって、その情報が正しいということにはならない。
ニューヨークタイムスによるとCIAはこれがイランが経済制裁から逃れるために意図的に流した偽情報ではないかという意見は拒絶している。しかしCIAはそのことについてどうしてこれが偽情報ではないと思うのか、二週間前に大統領、副大統領ならびに政府高官の前で説明したそうだ。
その会議に是非出席したかったな。


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疑問点多いNIEのイラン核開発停止報告

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先日、アメリカの国家情報評価(NIE)が、イランは2003年秋に核兵器開発を停止していたという調査報告を発表したが、それについてミスター苺がカカシより一足先に詳細に渡る分析をしているので、今日はミスター苺のエントリーをそのまま紹介したいと思う。
まずはこの国家情報評価の報告内容について読売新聞の記事から。 

【ワシントン=坂元隆】米政府は3日、イランの核問題に関し、米国のすべての情報機関の情報をまとめた国家情報評価(NIE)を発表し、イランが2003年秋の段階で核兵器開発計画を停止していたとの分析結果を示した。
 ただ、ウラン濃縮活動は継続しているため、2010〜15年に核兵器製造に十分な高濃縮ウランを生産することは可能だとも指摘。ハドリー国家安全保障担当大統領補佐官は同日、イランの核問題は依然、「きわめて深刻」として、外交的手段を通じてイランに国際的圧力をかけていくこれまでの政策に変化はないと強調した。
 米情報機関は2005年の同様の報告では、イランは「核兵器開発を決断している」と述べていた。今回のNIE報告は米政府がイランの核問題に関する認識を転換したことを意味している。ブッシュ政権内では、大統領自らが今年10月に「第3次世界大戦を回避したければイランに核開発させてはならない」と発言するなど、イランに対して武力行使も辞さない強硬論が出ていたが、今回の報告で強硬論は沈静化しそうだ。

米民主党のいうことを信じるなら、NIEのイラクの核兵器開発プログラムに関する調査書にはイランには最初から全く心配することなど何もなく、ヒラリー曰く「剣を振り回す」行為は今すぐやめて、イランに今後アメリカの安全を脅かさないでもらうよう賄賂を検討する平和的な交渉を初めるべきだと書かれているかのような印象を受ける。 (俗な言い方をすれば、イランの恐喝に従えということだ。)
NIEの調査結果が本当だとしても、実際に調査書の指摘する重要点は四つある。

  • パキスタンの核兵器科学者A.Q.Khanから買い求めた知識によりイランは核兵器開発プログラムを所持していた。
  • イランは核兵器開発を2003年の後期に(中止ではなく)停止したが、これはすぐお隣のイラクを侵略するという、ブッシュ大統領の「剣を振り回す行為」への直接的な反応だった。

    核兵器開発停止が起きたとされているのは2003年の秋である。これはアメリカがイラクに攻め入ってバース党を倒した直後ではなく、イラクでアルカエダやイランが支援しているシーア派の反乱分子との戦いがすでに始まってからのことだ。ビンラデンやアラブ諸国の予測に反してアメリカ軍は逆境に立たされても怯む様子を全く見せていなかった。
    アメリカ軍によるイラク占領がイランに安堵感を与えていたはずはない。ということはこのまま核兵器開発を進めていては「悪の枢軸」とブッシュに名指しされている自国がブッシュにいつ攻められるか分からないと心配したイランが核兵器開発の一時停止を考えた可能性は大いにある。

  • イランは核兵器に必要なウラニウム濃縮プログラムは継続している。
  • イランはアメリカ政権がバラク・オバマやヒラリー・クリントンのようなイラン政策穏健派に代わってイランへの圧力が減り次第、核兵器開発プログラム再開する機能を保持している。

注意すべきなのはイスラエルの諜報部もイランが2003年に核開発を一時停止したことは確認しているが、すでに再開されているとしている点である。 (hat tip to Hugh Hewitt):

イスラエルのエクード・バラク防衛長官によるとイランが2003年に軍事的な核開発を停止したというのは「本当らしい」とのことだ。

「しかし我々の見解では 以来プログラムを継続している模様だということです」 とバラクは陸軍ラジオで語った。「世界の諜報組織によって意見の違いが見られます。誰が正しいのかは時とともに明らかになるでしょう。」

ミスター苺の見解は、NIEの情報が正しいとするならば、 イランは核兵器開発をジョージ・W・ブッシュの任期中は一旦差し止め、民主党の候補者が2008年の選挙で勝利して彼等の公約通り、イランへの圧力を減らすという状況になってからプログラムを再開させようと考えているのではないかというものだ。なにしろ米民主党はイランをイラクの安定化に協力してもらおうと考えているくらいだから。
NIEも認めているとおり、イランは核開発施設を解体したわけではない。 ウラニウム濃縮施設はそのまま残っているし、核兵器開発知識も保持している。彼等は単に見張りの交代を待っているにすぎないのだ。
ところで、ミスター苺がいちいち、NIEのリポートが本当ならば、と注釈をつけている理由はケニース・ティマーマンというイラン関係に詳しいジャーナリストが、これは国務庁の妥協派のでっちあげだと主張しているからだ。ティマーマンの記事はニュースマックスにて掲載された。普通ミスター苺はニュースマックスの記事はあまり信用できないと感じているのだが、ティマーマン自身が中東の大量破壊兵器プログラムについて少なくとも1990年から研究している人であること、彼の著書Poison Gas Connection: Western Suppliers of Unconventional Weapons and Technologies to Iraq and Iranにおいてはイランとイラクの化学兵器についてかなり詳しい研究が発表されている。また、最近ではフランス政府とフセインイラクの癒着やイランの核兵器開発について、またCIAがそれを容認してきたことなどに関していくつかの著書がある。
過去のティマーマンの著書からティマーマンの分析は信用できるとミスター苺は考える。であるからミスター苺は彼がCIA並びその背後の国務省がイランの核兵器開発の危険性について過小評価しているという批判は真剣に注意を払う必要があると言う。

イランの核開発プログラムにおける国家情報評価(NIE)の150ページに渡る非常に問題の多い報告書は、元国務庁の諜報分析者らによって書かれたもので、もっと経験をつんだ諜報部員によって書かれたものではないことをニュースマックスは学んだ。

イランが国際社会からの圧力によって核兵器開発を2003年に閉鎖していたという最も劇的な結論はたったひとつの確認できない情報源を元にしており、これは外国の諜報組織から得た情報でアメリカによって直接尋問はまだ行われていない。
テヘランのニュースマックスの情報元はワシントンはイラン革命防衛隊による「意図的は情報操作」に嵌っている と感じている。これは革命防衛隊の諜報部員がヨーロッパの外交官に扮してアメリカの諜報部へ送り込んだねつ造情報ではないかという。

ティマーマンによれば、新しいNIEは国家情報審議会(NIC)の会長であるトーマス・フィンガー(Thomas Fingar)という典型的なペルシャ親派によって仕切られているらしい。彼等はもと国務庁の中東専門家だったのだが、とっくの昔にアメリカのことより中東優先の姿勢をとるようになっている役人だ。もしフィンガー会長がイランの情報操作に騙されているとしたら、それは彼がもともとイランのムラー達とまともな外交交渉ができるという偏見があるからで、 国務庁の多くの役人がそうであるように、ジョージ・W・ブッシュ こそがイランの核兵器よりも国家にとって危険だという考えているからに他ならない。
フィンガー会長は国務庁の諜報分析のベテランであり、長年に渡る民主党支持でブッシュ政権批判家だという。フィンガー氏こそが民主党と協力してボルトン国連大使を引退に持ち込んだ責任者だ。フィンガー氏は国務庁や国家情報審議会でベネズエラのチャベズやキューバのカストロとも深い関係のあるイランがアメリカに脅威的だという分析結果を出すアナリストを次から次へと首にしてきた歴史がある。
もしそれが本当だとすれば、お世辞にもフィンガー氏は中立な分析者とはいえなくなる。 フィンガー氏の愛弟子のケニース・ブリル(Kenneth Brill, Director of the National Counterproliferation Center, 国家対増殖センターの責任者)、とバン・H・バンダイペン(Vann H. Van Diepen, 大量破壊兵器および増殖対策専門の国家諜報委員)はNIEにイランと交渉する政策を強く押しているという。
さてここでカカシから、ブッシュ政権対国務庁及びCIAの対立についてちょっと説明しておく必要があるだろう。読者の皆様のなかには国務庁もCIAもブッシュ政権の統治下にあり、すべて政権の言いなりになっていると感じておられる方が多いのではないかと思う。
国務庁やCIAの長官は大統領の任命によって決まるが、その下で働く人々は政権をまたがって働いているただの役人である。彼等にはそれぞれの政権に対する忠誠心などというものはない。彼等にとって一番大切なのは自分らの権力を維持していくことなのであって、国家安全や愛国心など二の次という役人意識の人が多い。
だから、イランやイラクが国家にとって驚異的であるとすることで、諜報活動が活発に取り入れられ、自分らが国家政策に大きな影響を与えることができる時は敵の危険度を割高に評価するが、敵が危険すぎて軍隊(防衛庁)が乗り出して来て自分らの権力が弱体すると判断した途端に敵の脅威度を過小評価するという傾向がある。イラク戦争直前まではイラクは核兵器開発間近だとか、化学生物兵器の完成品の備蓄が大量にあると主張していたCIAが、いざ戦争となると、それまでの自分らの報告をそっちのけにして、本来ならば大量破壊兵器、すくなくともその成分や部品であると解釈されてもいいような発見までWMDとは無関係であると判断してブッシュ大統領に恥をかかせ、国家警備に関わる秘密情報を漏えいしたりする有り様だ。
今回のイランの件にしても、イランの核兵器開発が危険だとして、外交交渉やCIAのイラン国内での活躍が活発に行われると判断した時期には、イランの核兵器開発の脅威を誇張し、それが戦争に結びつくかもしれないとなると、とたんにイランは危険ではないと報告する。そうだとすれば、2005年にNIEがイランは危険だと報告した内容と、今回イランは差しせまった危険ではないと判断した報告内容とどちらが正しいといえるのだ?
ティマーマンが参照しているこの ワシントンタイムスの記事においてビル・ガーツ記者は2005年の結論を覆すこととなったNIEのいう「新しい情報』とは元革命護衛隊から今年の2月に亡命したアスガリ将軍(Gen. Alireza Asgari)の証言からではないかという。
アスガリはイラクやレバノンにおけるイラン革命護衛隊の活動に関する詳細な知識を持っているとされる。それというのも自分がその訓練にあたったからだという。またアスガリはイランの核兵器など秘密兵器についても必要物資の調達にあたっていたためよく知っているとされる。しかし、アスガリは核兵器開発の任務には当たったことがなく、開発プログラムについては何も知らないとイランのコネはニュースマックスに語っている。
ガーツ記者のリポートはティマーマンの説を裏付けるものだが、アメリカの諜報部も記者たちの説をいまのところ否定していない。アメリカ諜報部の高官もこの報告がイランからの意図的な情報操作という「可能性はある」と認めている。
イランが核兵器開発を続行しているという情報が間違っていたとしても危険ではないが、イランが開発を続行しているのに停止したと思い込んで政策を変えたらそれは非常に危険だ。この問題は早急に真実を突き止める必要がある。NIEの新しい情報とはどこから得たものなのか?もしこれがアスガリの証言だとしたら、アメリカ側はすでにアスガリを尋問しているのか?していないならなぜなのか?
もしNIEが国家警備のことよりも自分らの政治的権力保持を望むペルシャシンパの集まりで戦争を避けたいばかりに情報をねつ造したとしたらこれは由々しきことだ。
むろんこのニュースに米国民主党は大喜び。「だからいったじゃないの… イランには優しく褒美でつればいいんだって。」:

剣を振り回すのはやめるべきだったのです。最初かはじめるべきじゃなかった。」とバラク・オバマ上院議員。ニューヨーク代表ヒラリー・ロダム・クリントン上院議員はブッシュ大統領は「この機会を利用すべき」としながら、アメリカからの圧力が効果があったとし、ライバルのデルウェアー出身ジョー・バイドン上院議員の発言とは異論をとなえた。

ブッシュは報告書の内容については先週ブリーフィングを受けたばかりだとしているが、この点について民主党は信用していない。
「大統領は知っていたにもかかわらず『大三次世界大戦』なんてことを言ってたのです。」ウエストバージニアのジェイ・ロックフェラー議員。「知っていたのです。知っていたのです。 ブリーフィングを受けていたのですから」
「ブッシュ大統領はアメリカ市民からの信用度を落としました。 民主党委員会のハワード・ディーン会長。「我々は イラクでもだまされ、今度はイランです。 私たちは真実を知る必要があります。外交問題ではタフであるとともに賢くなければなりません。」

しかしカカシにいわせるならばだ、2005年に報告したNIEのイランの核兵器開発は間近だという内容を信用できないと言っていた民主党は、いったい何の根拠があって同じ組織による別の内容は信用できると判断しているのだ? 2005年にそんな大幅な間違いをおかしている諜報機関なら、今回の調査報告にしてもどれほど信用できるかわからないではないか!
それにたとえNIEの調査報告が正しいとしても、それはブッシュ大統領の強行作戦にイランが恐れをなして核開発を一時停止したにすぎない。そうだとすれば、イランが穏健派のオバマ、エドワーズ、ヒラリーの到来を心待ちして核兵器開発の準備を着々と進めているということにある。国防に弱いとされている民主党にとってこの事実が国民に良い印象を与えるとは思えない。
無論そのことを、共和党がきちんとアメリカ市民に説明できるかどうかはまた別問題。なにかとつまづきの多い共和党なので、あまり当てにはならないが、、


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