レバノンでも、シーア対スンニの宗派間争い

シーア対スンニの宗派間争いといえば、イラクかと思うとそうではない。シリア系のシーア派ヒズボラがレバノンで地元スンニ派と熾烈な戦いを繰り広げている。
木曜日ベイルート市街地でシーアヒズボラはスンニ派レバノン政府軍によるシーア派武装解除に抵抗してロケット弾やマシンガンを使って応戦した。この戦いで4人が死亡、8人が負傷した。
スンニのリーダーであるサアード・ハリリはヒズボラの頭であるハサーン・ナスララに戦闘員を撤退させ「レバノンを地獄から救うよう」に呼びかけている。
今回の暴動のきっかけは、政府がヒズボラの取り締まりを強化すると発表し、その第一段階としてヒズボラ同士の交信ネットワークを違法と断定、ヒズボラとつながりがあるとされたベイルート空港の警備部長を交替させたことにある。
ナスララは全国放映のテレビ演説でヒズボラの交信ネットワークが2006年夏のイスラエルとの戦争の際に多いに役立ったとし、「対イスラエル・アメリカ抵抗運動への挑戦」だとして次のように宣言した。

「我々を逮捕しようとするものは我々が逮捕する。」「我々を撃つものは我々が撃つ、我々に上げられた腕は我々が切り落とす」

まったくいつもながらイスラム教過激派の言うことは勇ましい。やることはいつもお決まりの野蛮なテロ行為だが。
パレスチナでもイラクでもそうだが、中東で暴力沙汰が起きるたびに、常にイスラエルやアメリカが原因であるかのようにイスラム過激派は責任転嫁をするが、結局彼らのシーア対スンニという宗派争いに外部からの手助けなど必要ないのだ。彼らのぶつかるところ常に戦ありである。平和な宗教が聴いて呆れる。
とはいうものの、レバノンにおける宗派間争いにはシーア対スンニの勢力争いであることに違いはないが、その背後にはイランとサウジアラビアがいることも無視できない。
ヒズボラはシリア系のテロリストだが、その裏にイランがいることは周知の事実。イラクでサドルを使って宗派間争いを激化させようと色々工作をしているイランはレバノンでも同じようなことをやっているわけだ。
スンニ派のリーダーは近隣のスンニ派諸国に援助を訴えかけているが、サウジやエジプトは口は達者だが政府が直接介入することは先ずあり得ないだろう。ただしレバノンがシーア派国になるのはサウジやエジプトにとっても好ましいことではないので、対スンニテロ行為の資金援助くらいはしてくれるかもしれないが。
ヒズボラはいまのところベイルート空港を占拠しているが、レバノン政府軍は本格的な攻撃は始めていない。


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イラク軍シーア派民兵との戦い、壊滅状態のマフディ軍

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3月25日、イラクのノーリ・アルマリキ首相はバスラのサドル派民兵に向かって驚くべき抜き打ち攻撃をおこなった。そのあまりの抜き打ちさにマリキ首相は攻撃が始まって二日後になるまでアメリカ軍にシーア派退治を始めたことを知らせるのを忘れていたほどだ。
アメリカ軍はあわててイラク軍に追いつくべく近距離空援助や必要な後方援助を送り込んだ。当初はバスラの戦いはかなり危なっかしい状態に見えた。ケツの青いイラク軍の一隊など敵に圧倒されて退散するという一幕もあったが、マリキ首相は即座に援軍をおくりこんで開いた穴を塞いだ。バグダッドのスラム街であるサドル市で別の前線が展開されたが、そこではアメリカ軍が先導してマフディ民兵らに立ち向かい大勝利を得た。
熾烈な戦いが繰り広げられたが、イラク軍の指揮のもと、最終的にはアメリカ民主党がイラクが独立国として成立するに必要不可欠として挙げていた条件が満たされる結果となった。モクタダ・アル・サドル率いるシーア民兵に断固立ち向かうことによってシーア多数派はシーアだけでなくイラク全土を統治する資格があることを証明したのである。民兵軍をサドルが率いるとはいっても、サドルがイランに逃げ隠れしてからすでに一年近くなる。実際にサドルがどれだけマフディ軍に影響力をもっているのかかなり疑問だ。
一ヶ月以上になる戦いだが、マリキが賭けに勝ったことはかなり明らかになってきた。

  • サドル派はバスラをはじめ他の市や地区で完全に撤退状態で、サドル市では壊滅状態にある。
  • サドル派への攻撃によってマリキ首相をついに信用することにしたスンニ派のタリーク・アルハシーミ副大統領がスンニ派政党に政権に戻るように呼びかけた。
  • サドル自身は完全にその不能さをみせ、イラク政府に対して全面戦争の脅しをかけておきながら、マリキの騎士の突撃作戦の勢いが全く弱まらないのに腰を抜かして数日後には再び停戦を嘆願するという弱さをみせている。
  • マリキ首相は引き続き攻撃をすすめており、今や後片付けの段階にはいっている。イラク軍は兵站(へいたん)と近距離空軍の援助さえあれば独自に軍事作戦が行えるということを証明した。そして全党参加の政権統一も含め、アメリカの民主党がイラク政府に要求していたすべの条件が整いつつある。

その詳細を吟味してみよう。


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バスラのイラク軍作戦、マリキ首相の成功を認めない主流メディア

本日は昨日のイラク情勢好転に主流メディアの情報操作は続くに引き続いて、バスラで行われているイラク軍によるシーア取り締まり攻撃について、マリキ首相のこれまでの功績をみてみよう。
下記は例によってビル・ロジオから:

停戦後、イラク軍はバスラに援軍を出動させると発表し、翌日にはKhour al ZubairとUmm Qasrpushedの港に軍を送り込んだ。以来、バスラ内部ではイラク特別部隊と特別警察隊によるいくつかの手入れが行われている。その間イラク軍の一旅団は4月2日までマフディ軍の本拠地だった真髄に進行した。そしてサドルが停戦を呼びかけた二日後にはイラク政府はサドル市及びバグダッド内のシーア居住区に戒厳令を引くことに成功した。

マリキの共同政府はこの作戦に反抗は見せなかった。イラク政府の反対派がバスラ作戦に抗議して緊急議会を開いたところ、275人の議員のうち参加者はたったの54人だったと AFPは報道している。出席したのはモクタダ・アルサドルの党派とシーアファディラ党、世俗主義イラクナショナルリスト、the Sunni National Dialogue Councilといった零細党だけで、イラクの最大政党であるシーアイラク連盟(Shiite United Iraqi Alliance)とクルド連盟(Kurdish Alliance)の姿はみられなかった。イラク議会の主力な党派が緊急議会を無視したことはマリキ政権が危機に瀕していないということであり、政治的に大きな意味を持つ。

10日間の攻撃停止期間は民兵軍に武器解除をし降参する猶予を与える目的でされたものだ。しかしイランから訓練を受け、イランから直接命令を得ているマフディ軍JAMの一部は未だに戦闘をあきらめていないため、イラク軍による「騎士の突撃作戦」は続けられている。
ところで主流メディアがサドルが勝った証拠としてあげていたことのひとつに、サドルの従者たちはサドルの命令にちゃんと従っているということがあった。しかし現状を見ていると、サドルがいかにその影響力を失っているかが顕著となっている。実際にイラク軍に対抗して戦っているJAMのメンバーはサドルから命令を受けているというより、イランのクォド特別部隊から直接命令を受けていると言っていい。

新しいイラク軍がバスラに到着しはじめアメリカとイギリス軍がイラク軍の援軍として準備をはじめるなか、イランのクォド隊から命令を受けたサドルはマフディ軍に市街地から撤退するよう命令をくだした。サドルは攻撃停止を含む9条に渡る交換条件を要求したが、マリキはそれを拒絶。イラク・アメリカ連合軍はバスラ侵攻を続行しシーア民兵軍に対し、焦点をしぼったピンポイント攻撃を続けている。バスラでの6日間の戦いだけでも、すでに200人以上のマフディ軍戦闘員が殺され、700人が負傷、300人が捕獲されている。

サドルの撤退しろ抵抗するなという命令とやらはあんまり効果がないらしく、マフディ軍の一部は一向に戦いをあきらめる様子を見せていない。しかし戦えば戦うほど奴らは追いつめられていく。どこにも居何処のなくなった奴らはイランに帰るしか道はなくなるだろう。
主流メディアはこれまでマリキが政治的な進歩を遂げていないといって批判してきた。しかし、マリキが政治的な見解の違いを乗り越えてクルドとスンニに手をのばし、その協力を得られた今となっては、主流メディアはマリキの功績をほめたたえるかといえば、無論その答えは否である。マリキの努力の成果を評価するどころか、マリキには近視眼的な汚い動機があると批判する。イラクは10月1日に全国選挙を予定しているが、マリキの所属するダワ党は石油資源の豊かなバスラや宗教的中心であるナジャフやカルバラで苦戦が期待されている。

バスラ攻撃の成功はマリキのダワ党と彼の味方であるイスラム最高評議会(the Supreme Islamic Iraqi Council, SIIC)が選挙で成功する確率を引き上げるはずだった。SIICのバーダー旅団(Badr Brigade)はマフディ軍の宿敵である。

ノーリ・アル・マリキはもともとモクタダ・アルサドルの後押しによって首相となった人である。ダワ党といえば歴史的にサドルのマフディ軍である JAMの味方でありバーダー旅団とはライバル関係にあった。(バーダー旅団は民兵軍というイメージを脱ぎ払うために、最近はバーダー組織と改名した。)
そのマリキが従来のライバルであったSIIC従属のバーダーのライバルであり自分の所属するダワ党の元スポンサーであるマフディ軍を攻めることが、いったいどうやってダワ党への票集めにつながるというのだ? ま、降参降参といって逃げまどっているサドルが大勝利をとげたと平気で言えるAPだから、こういう不思議な理屈も成り立つのかもしれないが。こんな理屈にだまされるのはリベラルくらいだろう。
マリキ首相並びにイラク政府はさらに マフディ軍を孤立させるべく、10月の選挙にはサドル派を参加させない意向だ。 マリキ首相はサドルがマフディ軍を解散しない限り、サドル派の政治参加は許可しないと発表した。これに対してサドルの報道官はナジャフのシスタニ大教祖に相談すると語っていたが、シスタニ自体はサドルから相談を受けた覚えはないとしながら、マフディ軍は解散すべきだという意志を表明している。
となってくるとサドル派はかなり苦しい立場に追い込まれたことになる。マフディ軍を解散してしまえば、サドル派は単なる弱小政党に成り果てる。しかし解散しなければ政治力のないただの民兵軍に成り下がってしまう。そうなればマリキの力はさらに増幅しマフディ軍はマリキによって完全に抹消されてしまうだろう。マフディ軍はいってみればイラン版のイラクのアルカイダとなってしまうのだ。
しかしこの後に及んでも主流メディアはまだバスラの戦いではモクタダ・アルサドルが大勝利を納め、マリキ首相は政治的に滅ぼされたと言い張っている。
どうしてもイラク情勢の好転を認めたくない主流メディアは日に日にそのうろたえぶりがひどくなるようだ。


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イラク情勢好転に主流メディアの情報操作は続く

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イラク情勢に関しては主流メディアに真実を頼ることは完全に無理だ。アメリカの主流メディアも、そしてそれを誠実にコピペしまくる日本メディアも含めて、まるでかつてのバグダッドボブのように、アメリカは負けているイラク政府は混乱状態というニュース以外は流したがらない。しかし中国の大本営放送のように情報操作に余念のない主流メディアでも時々間違って真実を報道してしまうことがある。
この間からお話しているように、バスラのイラク軍によるシーア民兵退治作戦「騎士の突撃作戦」ではノーリ・アル・マリキ首相が大成功を収めているが、それに付け加えてマリキ首相はこれまで対立していたクルド派やスンニ派の支持も得ることができた。APが嫌々ながら報道しているこの記事 によると、、、

ノーリ・アルマリキ首相の弱まるシーア派民兵への取り締まりは、スンニアラブとクルド党から支持を勝ち取った。両党とも強力な民兵ともろいイラク政府の失敗による悪影響を恐れてのことであった。

双方の共通目的がイラクの政治的溝を埋める橋渡しになりそうだ。
クルド自治区の首領であるマスード・バールザニ(Massoud Barzani)は反米聖教師のモクタダアルサドルのマフディ軍との戦いにクルド軍を派遣すると提案した。
もっと意味があるのはスンニアラブのタリーク・アルハシミ副大統領がクルド人のジャラル・タラバニ大統領の声明文を承認しクルドおよびシーアの副大統領アディル・アブドール・マフディとともに石油資源の豊かなバスラにおける民兵退治を支持する意志を表明した。

この間も紹介したが主流メディアはマリキがマフディ民兵軍(またの名をJaish al Mahdi、または JAM)退治に他党との協力を得られていないと批判していた。確かにハシミ副大統領とマリキ首相は馬が合わないライバルではある。そんなそのハシミ氏が主流メディアがいうように「失敗が鮮明」になった作戦を応援したりするだろうか? はっきりいってアラブ人はダークホースを応援するような民族ではない。明かにマリキを勝ち馬と見たから応援する気になったのだ。
もちろんAPニュースはとにかくバスラはイラク軍の大敗だという主張を続けている。

バスラの「無法者」や「犯罪者集団」を対象に行われた取り締まりは激しい抵抗と政府軍の不満分子などに面して行き詰まりをみせている。先週の日曜日、アルサドルが戦いをやめるように民兵たちに呼びかけて以来、主な戦闘はおさまっている。

しかしアルマリキはバグダッドにあるマフディ軍の本拠地への取り締まりも続けると強気の口調を弱めていない。しかしアルサドルが復習をほのめかすと、マリキ首相は若い聖教師の従者を対象とした取り締まりや手入れを中止した。

なんで敵が降参を唱えている戦いが行き詰まっているなんてことになるのだ?お決まりの「泥沼」といわないだけましかもしれないが。確かにマリキは民兵軍攻撃を一時停止すると発表したが、それはサドルの復讐を恐れたからなどではない。そんなことが恐かったら最初から民兵の取り締まりなど始めるわけがないし、一旦JAMが予想以上に強いと分かった時点で戦いをやめているはずだ。しかしマリキは戦いをやめるどころか攻撃を激化させ、援軍まで呼んで戦い続行している。マリキは民兵軍が武装解除をして降参する時間を与えるために一時攻撃は停止すると発表したに過ぎないのだ。バスラをパトロールしているのはいまやマフディ軍ではなくイラク軍なのだということを忘れてはならない。
マリキの成功はまだまだあるのだが、今日は時間がないので詳細は次回に続く。


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イラク情勢:サドル対マリキ、バスラの戦いに勝ったのはどちら?

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先日もお話したように、イラクのバスラとバグダッドにおいて、イランの飼い豚モクタダ・アルサドル率いるシーア武装集団マフディ軍を撲滅すべくイラク軍による激しい攻撃作戦「騎士の突撃作戦」が行われている。マフディ軍がこれ以上は抵抗はしないと停戦交渉を求めてきたことから、一応この作戦は峠を超えたといえる。
しかし、本来ならばマリキ首相の大手柄としてイラク軍の大勝利が讃えられてもいいような結末であるにも拘らず、アメリカの主流メディアはなんとかしてこれをサドル派の勝利だと印象づけたいらしく日夜情報操作に余念がない。だが、反戦派の左翼メディアがサドルの勝利を唱えるのは分かるとしても、右翼側のメディアですらマリキ首相の勝利を認めたがらないのだから不思議である。
保守系人気ブログのパワーラインカウンターテロリズムブログ(Counterterrorism Blog) はこれだけ勝利がはっきりしている戦いなのに未だに「で、どちらが勝ったのか」と問いかけている。何もかもすぐに信じないのは良い性格かもしれないが疑い深いのもここまでくるとちょっと考えものである。
軍事知識豊富なブロガーオースティン・ベイ大佐(Col. Austin Bay)ビル・ロジオ(Bill Roggio)を読んでいれば、どちらが勝ったのか明白であるのに、、、


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対シーア民兵にイラク軍大勝利! 降伏するサドルに狼狽えるメディア

現在イラクではバスラを本拠地とするモクタダ・アルサドル率いるシーア派民兵軍に対して、イラク軍による猛攻撃が行われているが、イラク軍の圧倒的な勝利にサドルは悲鳴をあげ、なんとか生き残ろうと必死になっている。
以下ビル・ロジオより。

イラク政府がバスラのマフディ軍及びイランに援助されたシーア恐怖団体に対して挑んだ、騎士の突撃作戦(Operation Knights’ Charge)が始まって六日後、マフディ軍の指揮者モクタダ・アルサドルは戦士らに武器を捨てイラク警備群に協力するようにと呼びかけた。サドルによるマフディ軍への戦いを終わらせよという呼びかけは作戦が始まって以来マフディ軍に多大なる損害が出たことからきている。

「サドルは彼の忠誠者たちにすべての武力行使をやめるよう訴える伝言を送った。」とアル・イラキヤテレビ局は報道した。サドルはまた「政府や政党のオフィスや事務所…などを攻撃する者は勘当する。」と語った。
サドルの従者への戦いをやめるようにという呼びかけは、6日に渡ってマフディ軍が多くの死傷者を出したことが原因である。火曜日に戦いが始まって以来、358人のマフディ戦士が殺され、531人が負傷、343人が捕虜にとられ、30人が降伏した。米・イラク連合軍はバグダッドだけでも125人のマフディ戦士を殺している。イラク軍はバスラで140人のマフディ兵を殺した。
3月25日から29日の間でマフディ軍は平均毎日71人の割で殺されている。69人がすでに捕虜となり、ほかに160人が戦闘中に負傷したと報告されている。米・イラク連合軍は2007年の夏に行われたアルカイダとの戦いで、このような多大なる打撃を敵に与えたことはなかった。

ところがこの大勝利がニューヨークタイムスにかかると‘ こうなっちゃうんだからおそろしい:

シーア聖教者モクタダ・アルサドル師は日曜日、バスラとバグダッドで彼の味方である民兵軍とイラク・米軍の間で行われている六日間に渡る激しい戦闘を終わらせるべく第一歩を踏み出した。師は従者への提言でイラク軍が自分達の要求を飲む条件で銃を置くようにと呼びかけた。

 …..
米軍の戦闘機に援助されたイラク軍はサドル師関係のシーア民兵軍とバスラにおいて過去六日間に渡って引き分け状態を続けている。この作戦はノーリ・アル・マリキ首相への厳しい批判呼び起こしている。
南部を民兵の統括から取り戻そうとするマリキ首相の作戦は当初の予測よりもずっと激しい抵抗にあっていると先週イラクの防衛大臣アブドゥール・アル・オベイディ氏は認めた。
……
サドル師の今回の行動は2004年にナジャフで死ぬまで戦えと命令した態度とは対照的であり、サドル師の軍事指導者としての技能が過去数年で成長したことを意味する。

死ぬまで戦えと強気だった人間が、抵抗するな、抵抗する人間は勘当するぞ、などといきりたってることが指導者として成長した証拠だ?バカも休み休み言え!勝ってる人間がなんで降参の条件を提案したりするのだ?勝ってるなら戦いを止めろなどといわず、このまま相手が怯むまで突き進め!攻撃はやめるな、というのが筋ではないか。なんで勝ってる人間が相手に協力しろなんていうのだ?
そしてこれが日本の産経新聞になるともっとひどい!

【カイロ=村上大介】イラクのマリキ政権が南部バスラで開始したイスラム教シーア派民兵に対する掃討作戦は29日、5日目に入り、イラク政府軍の威信をかけた「単独作戦」の失敗が鮮明となりつつある。米軍は29日も前日に続き、空爆、昨年12月にバスラの治安権限をイラク側に移譲した英軍も作戦・情報面で政府軍への支援を開始した。しかし、民兵側は依然、バスラ中心部を支配下に置き、戦闘は中南部シーア派地域に広がっている。治安能力の限界を露呈したマリキ政権が自力で争乱を収拾できる可能性は少ないとみられる。

 政府軍は25日、イラク第2の都市、バスラのかなりの部分を支配下に置くシーア派の反米強硬派指導者、ムクタダ・サドル師派の民兵組織マフディー軍の影響力排除を目的に掃討作戦に着手。だが、マフディー軍側は予想以上に強固な抵抗を見せ、マリキ首相は28日、「同日深夜まで」とした民兵側への武装解除の最後通告期限を4月8日まで延期せざるを得なかった。
 バスラ攻略戦への関与を控えていた米軍は28日、戦闘機による限定的な空爆で直接介入に踏み切り、民兵に押され気味の政府軍の支援を始めた。イラクのジャーシム国防相は28日の記者会見で、「抵抗の強さに驚いている」と認めた。
 マリキ首相は27日、バスラの部族長を集め、「無法者とは最後まで戦う。話し合いも交渉もしない」と言明。これに対しサドル師側は「平和的解決を望む」としているが、徹底抗戦を続ける構えで、武装解除に応じる気配は全くない。

はっきり言って産經新聞の記者や編集部には現代の軍事作戦がどういうものか分かってる人間がいるのかと聞きたい。現代の戦闘では先ず地上部隊が戦いに挑み、敵に陣地をしっかり把握した時点で空軍の援助を呼ぶのは普通に行われている。地上部隊と空軍の協力行動は今や当たり前の作戦となっている。だが、イラク軍には空軍はない。また諜報部もない。だからイラク軍に足りない部分をアメリカ軍が補うのは当たり前だ。
これまではアメリカ軍が地上の先鋭部隊を送り込み、イラク軍は後部からの援助に参加する程度だったのが、いまではイラク軍が率先して先鋭部隊として地上で行動し、空軍援助を要請する立場となったのである。これはイラク軍が単独で行動できないことを証明したのではなく、イラク軍がどれだけ現代戦闘のやり方に慣れてきたかその成長ぶりを証明する状況が起きているのだ。それを産經新聞の馬鹿記者は全然わかっとらんのだ!よくもこんな無知蒙昧な人間がエリートメディアでジャーナリストですなんて顔をしてられるものだ、頭くるなあ!
従軍経験豊富なビル・ロジオはこういうことに関しては専門で、カカシは彼のサイトをもう5年くらい読んでいるが、彼がとんちんかんな分析をしたことは一度もない。そのビル・ロジオがサドルが必死に降伏交渉に入っていると言っているのに、ニューヨークタイムスや産経新聞(産経の記事はハッキリ言ってロサンゼルスタイムスの焼き直し)は引き分けだのイラク政府の不能を示しているだの滅茶苦茶なことを書いてる。
ニューヨークタイムスはしょうがないとしても、せめて産経新聞くらいは独自の取材をして真実を書いて欲しいものだな。かなり失望した。


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米共和党大統領候補、ジョン・マケインのバグダッド訪問

共和党の大統領候補ジョン・マケイン上院議員は現在バグダッドを訪問中。マケイン議員は早期からイラクでの戦法はCOINといわれる対テロ戦略を起用しなければならないと、いわゆる現在進行中の増派を押してきた数少ない一人である。マケイン議員はベトナム時代に海軍の戦闘パイロットとして活躍しベトナムで捕虜になっていた経験もある英雄であり、イラク戦争批評家がブッシュ大統領などをチキンホーク(自分は戦闘体験がないのに戦争を推進する臆病者という意味)などといっていた批判もマケイン議員には通じない。詳細を日本語のニュースで探したのだが、下記ような短い記事しか見つからない。どうも日本メディアは共和党候補のマケイン議員にはあまり興味がないようだ。

【バグダッド16日AFP=時事】在イラク米大使館当局者によると、米大統領選の共和党候補指名を確実にしているマケイン上院議員が16日、イラクを訪問した。マケイン氏は欧州・中東を歴訪している。

同当局者は「マケイン議員はバグダッドにいる」と語った。マケイン氏は滞在中、クロッカー駐イラク米大使と会談するという。〔AFP=時事〕

16日付けのAPニュースによると、マケイン議員は日曜日、バグダッドにおいてアメリカの外交官、米軍上層部、およびイラク高官らと会見の予定だという。マケインがイラク訪問をするという話は数日前から報じられていたが、警備上の理由で詳細はあきらかにされていなかった。マケインはイラクに24時間ほど滞在するという話だ。マケインのイラク訪問は今回で8回目だ。

5年に渡るイラク戦争の成功に自分の政治生命を賭けてきたマケインの訪問はイラク北部で起きた化学兵器攻撃のちょうど20周年記念にあたる。
アメリカ大使館の発表では、マケインはイラク副首相のBarham Saleh氏と会見しイラクのアメリカ軍総司令官デイビッド・ペトラエウス将軍とも会見の予定である。 …
出発前にマケインは今回の中東とヨーロッパ訪問は事情聴取が目的であり選挙運動の写真をとるためのフォトアップではないと語っていた。しかし、マケインはイラクのテロリストが11月のアメリカ選挙に影響を与える可能性については懸念していると語った。
「はい、心配しています。」ペンシルベニアの選挙運動中にされた質問にマケインはそう答えた。「彼等が注目していることは知っています。彼等同士の連絡を盗聴しているからです。」
上院議会軍委員会のメンバーとして、マケイン議員の訪問には同僚のジョー・リーバーマン議員(独立)とリンズィ・グラハム議員(共和)が同伴した。二人ともマケインの大統領候補の強力な支持者である。
マケインの今回の諸外国訪問は一週間の予定だが、目的地にはイスラエル、英国、フランスが含まれ、イギリスのゴードン・ブラウン首相やフランスのニコラス・サルコージ首相との会見が予定されている。

まだ大統領に選ばれたわけでもないのに、すでに大統領並の視察旅行に出かけ、各国の首相らと会見をするとはかなりの余裕だ。
マケインが去年の4月にバグダッドを訪問した時は、イラク情勢が良くなっていないという記者団の質問にかなりいらだちを覚えた様子で答えていたマケインだが、今年はバグダッド情勢は非常な良化をみせており、マケインの押した増派が非常な成功をおさめている。イラクでの攻撃は去年に比べてすでに6割型減少しているのである。
二人あわせても政治的な実績からいってマケインの足下にもおよばない民主党のヒラリーとオバマの内部争いが続く中、マケインはすでに国の代表よろしく外国訪問。
やっぱり大統領にはマケイン議員になってもらわなきゃいかんなこれは。


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「イラク戦争の大義は嘘で固められていた」という嘘

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このAPの記事 には唖然とした。これを日本語で説明しているこちらから引用すると、、

米国の調査報道を専門とする独立系報道機関「公共の完全性に関するセンター」(The Center for Public Integrity)は22日、「イラク戦争・戦争カード―偽装に彩られた戦争への道」(Iraq-The war card orchestrated deception on the path to war)と題するチャールズ・ルイス(Charles Lewis)、マーク・リーディングスミス(Mark Reading-Smith)両氏共同署名による調査報道記事を掲載。

その内容についてAPの説明はこちら。

ふたつの無収益報道組織による調査で、ブッシュ大統領と政権の幹部たちは2001年のテロ攻撃以降二年に渡ってイラクが及ぼす国家安全保障への脅威に関して何百という虚偽の供述を発表していたことが明らかになった。

この調査は「世論を効果的に刺激する目的で仕掛けられた操作があり、その過程において国は誤った前提のもとで戦争に導かれた」と結論付けている。

この調査の著者たちは何とブッシュ大統領とその政権が意図的に国民を騙して戦争をはじめたと糾弾しているのである。少なくとも読者にそういう印象を与える目的でこの『調査』が発表されたことは間違いない。
ではいったい彼等の言うブッシュ政権の「嘘」とは何をさしているのだろうか?

 その中で、両氏は、ブッシュ大統領をはじめ同政権の高官7人―チェイニー副大統領、ライス大統領補佐官(国家安全保障担当、当時)、ラムズフェルド国防長官(当時)を含む―が、2001年9月11日の米同時多発テロ以降2年間にわたって、イラクのフセイン大統領(当時)による国家安全保障上の脅威に関する少なくとも935回の嘘の声明を出していたことを明らかにした。

 またそれによると、演説、背景説明、インタビュー、公聴会やその他の別々の少なくとも532件の局面で、ブッシュ大統領とブッシュ政権の3人の高官が、パウエル国務長官(当時)、ウルフォウィッツ国防副長官(当時)、ホワイトハウスのスピーチライター、アリ・フレイシャー、スコット・マクラーレン両氏とともに、イラクは大量破壊兵器を既に保持している(さもなければ製造もしくは獲得しようとしている)と明言。またイラクが国際テロ組織アルカイダと関係がある、さらにはイラクは大量破壊兵器とアルカイダ双方と関係していると明白に語り、これら一致した発言が、ブッシュ政権のイラク戦争開戦の大儀につながっていったという。
 ブッシュ大統領1人に限ってみると、同大統領は、259件の嘘の声明を出した。そのうちの、231件はイラクの大量破壊兵器問題で、残りの28件は、イラクとアルカイダの関係についてだった。パウエル国務長官は、イラクの大量破壊兵器問題で244件の嘘の声明を出し、イラクとアルカイダの関係については10件の嘘の声明を出した。

「よもやイラクが大量破壊兵器を保持していなかったことやアルカエダと意味のある関係がなかったことは議論の余地はない。」と著者のチャールズ・ルイスとマーク・リーディング・スミスは語っている。二人はブッシュ政権が巧妙に作成し操作した誤った情報の基にアメリカは2003年3月のイラク戦争開戦に導かれたのだと断言する。
著者たちはブッシュ政権の嘘に含めているが、イラクがWMDを所持しようとしていたことは事実であり、調査結果もそれ自体は否定していない。また彼等はブッシュ政権のいうイラクとアルカエダに関係があったこと事態を否定しているわけでもない。単にその関係が「意味のある」ものだったかどうかに異論を唱えているだけなのだ。
下記は調査書からの引用だが、意図的に混乱する書き方になっているため、私の力で正しく翻訳できるかどうか分からないが一応やってみよう。

2002年7月、イラクとアルカエダテロリストとは関係があるのかという問いに対してラムスフェルドは一言「もちろん」と答えた。だが事実は同月に防衛庁諜報機関(DIA)が発表した査定(数週間後にCIAのテネット局長も確認した)では「イラクとアルカエダの間には直接な協力関係があるという確実な証拠」は見つけられなかったとある。さらにDIAはそれ以前の査定で「アルカエダとフセイン政権の関係は明かではない」としている。

この回りくどい文章を分かりやすく分析するのはちょっとしたチャレンジだ。

  1. 調査書の文章: 「2002年7月、イラクとアルカエダテロリストとは関係があるのかという問いに対してラムスフェルドは一言「もちろん」と答えた。

    意味: ラムスフェルドはイラクとアルカエダの関係が存在すると断言した。

  2. 調査書の文章: 査定..では「イラクとアルカエダの間には直接な協力関係があるという確実な証拠」は見つけられなかったとある。

    意味: 後の査定では関係があったことが判明しているが、軍事同盟といえるほどの密着な関係ではなかった。

  3. 調査書の文章: DIAはそれ以前の査定で「アルカエダとフセイン政権の関係は明かではない」としている。

    意味: アルカエダとイラクの関係について解るまで、我々はその関係の性質を知らなかった。

著者たちは1のラムスフェルドの返答が、2と3によって嘘だと証明されるといいたいらしいのだが、どういう理屈を使えばそういうことになるのかカカシにはさっぱり分からない。
彼等がいうもうひとつの「虚偽声明」( “false statement” )の例を出してみよう。いうまでもないが彼等のいう「虚偽声明」とは「明らかな嘘」という意味である。

2003年1月28日。毎年恒例の一般教書演説のなかで「イギリス政府はサダム・フセインは最近かなりの量のウラニウムをアフリカから購入しようとした わが国の諜報部からも核兵器製造に必要な高度の強制アルミニウム管をフセインが購入 しようとしたと報告を受けている。」と語った。しかしこの二週間前に国務庁の諜報調査部のアナリストが同僚に、なぜ自分がウラニウム購入の契約書は「多分偽造書」だと思うのかその理由を諜報関係者に説明する準備をしているとメールを送っていた。

この話は今さらここで持ち出すようなものではない。当時さんざんその真偽が分析されているのだ。ご存じない方のために説明すると、契約書そのものが偽造だったことは後になってわかったのだが、フセインがナイジャーからウラニウムを購入しようとしたのは事実である。ただナイジャー政府が国連からの批判を恐れてイラクへの販売を拒否したためフセインはウランを買うことができなかっただけだ。これはナイジャーへCIAから派遣されて調査に行った元外交官のジョー・ウィルソンがナイジャー政府の高官から聞いた話だとして報告しているのである。(後にウィルソンは自分で書いた報告書とは全く反対の声明文を発表してブッシュ政権を批判。それがもとで妻のバレリー・プレームのCIAでの地位があきらかになったとかなんとかいって訴訟になったが、ま、それはまた別の話だからここでは避ける)
この調査書が数え上げ、APがせっせと報告している何百にも渡る「虚偽声明」とは結局こういった類いのものばかりだ。これらの声明についてブッシュ政権からの説明を得ようという努力もされていないだけでなく、実際に政権の声明や発表が自分らの調査結果とどのように矛盾しているのかという分析など全くされていない。
しかしそれ以前にこの調査書を読んでいて一番疑問に思うことは、彼等のいう「虚偽声明」のうちどのくらいのものを、当時ほとんどの人たちが本当だと信じていたかということだ。共和にしろ民主にしろブッシュ政権と同じ諜報を持っていた議会の役員たちも政権と同じことを言っていたのではないのか?もし後になってブッシュ政権の発表した声明が誤りだったことがわかったとしても、当時誰もが真実だと信じていた事実をブッシュ政権が発表したのだとしたら、それは間違いかもしれないがとはいえないはずだ。いったい彼等の調査書のなかにそんなたぐいのものがどれだけ含まれているのだろうか?調査書はその点を全く明らかにせず、こんなふうにまとめている。

ブッシュは間違いや誤った判断について認めようとしない。それどころかブッシュ政権はイラクの脅威に関する戦前の公式発表と現実の「現場の真実」との明らかな相違について何度も国内諜報部の乏しい諜報のせいにしている。

またブッシュ政権の内部や政府の高官のなかからもブッシュが事実をわい曲したという批判が増えていると書かれているが、増えている批評家が誰なのかということは書かれていない。
ところでこの調査書を発表した二つの組織に関しては興味深い点が二つある。

  • 無収益の報道機関ふたつによる調査とあるが、、

    この二つの機関とは、The Fund for Independence in Journalismとthe Center for Public Integrityというのだが、11人いるFundのほうの8人までもがCenterの役員をやっている。つまりこの二つの機関は独立した別々の組織ではなく腰でつながったシャム双生児なのである。.

  • 独立報道機関とは名ばかりで、、、

    独立どころかCenterの投資者は左翼億万長者でブッシュ憎悪症候群を重く煩っているジョージ・ソロス。 創設者はビル・モイヤーというやっぱり左翼のジャーナリストで、その他にも左翼歌手のバーバラ・ストライサンド、フォードファウンデーション、昔は保守派だったが今や左翼と化したピューチャリタブルトラストなどがある。つまるところ、この二つの機関はバリバリの左翼組織なのである。

この調査書に書かれていることは何もいまさら蒸し返さなければならないほど目新しいニュースでもなんでもない。彼等のいう「虚偽の声明」とは単にリベラルや左翼が反対している意見や解釈の違い、もしくは当時は真実だと誰もが信じていたが後に間違っていることが分かったというものくらいで、おおよそ嘘だの虚偽だのという表現からはほど遠いものだ。
しかもこの調査書を発表したのは独立系でもなければジャーナリストでもない、ただのブッシュ大嫌い左翼プロパガンダ組織なのである。彼等がこんなろくでもない調査書を今の時期に発表したのが大統領選挙予備選真っ最中であることと無関係だと考えるほど我々読者はばかではない。
こんな『偽装に彩られた』プロパガンダをあたかもニュースででもあるかのように報道するAPもジャーナリストとして失格だ。もっとも架空のバグダッド警察署長からのインタビューを何年も載せていたり、テロリストを記者に雇っていたりするAPだ、このくらいはお手の物かもしれない。


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イラク、激減したアルカエダ勢力、主流メディアが無視して語らないイラク新作戦の成果!

便りがないのは良い知らせ、とはいうものの、アメリカ軍によるイラク新作戦の大成功をここまで無視するというのも、アメリカ及び日本のメディアは本当にひどいものだ。イラク戦争がうまくいっていない時は、アメリカ兵が何人死んだとかイラクでどれだけ自爆テロが起きているかとかいうニュースが新聞の第一面を埋めていたというのに、いざ新作戦が大成功し、アメリカ兵並びにイラク市民の犠牲者の数が9割方も減ったとなると完全にだんまりを決め込むメディア。あまりにもあからさまな偏向に返す言葉が思い浮かばない。
17日にバグダッドで行われたアメリカ軍による公式発表によると、去年のはじめに始まったイラクの新作戦は大成功を収めているということだ。対テロ戦争を追っているビル・ロジオのサイトからこのニュースをまとめてみよう。
俗にいう『増派』が始まって一年近くがたったが、この一年でイラクのアルカエダの活動範囲は信じられないほど狭まった。まず2006年12月当時の地図をみてもらいたい。濃い赤で示された場所がアルカエダの活動範囲、薄い赤は彼等の交通路である。

AlQaedaDec06-thumb

2006年12月現在のアルカエダ活動区域、赤で示してあるところがアルカエダの活動が活発な場所


そしてこれが『増派』作戦始まって一年後の2007年12月現在の地図。アルカエダの活動範囲が目に見えて狭まったことが確認できる。

AlQaedaDec07

2007年12月現在のアルカエダ活動区域。2006年よりずっと狭まったことが明白。


バグダッドで行われた記者会見において、イラク多国籍連合軍の総司令官であるレイ・オディアーノ中将(Lieutenant General Ray Odierno)は連合軍の新作戦がどれだけ効果をあげているか、激減したアルカエダの威力や行動範囲などについて報告した。

2006年後半から2007年にかけて「イラクはアルカエダの暗雲の下で流血の連鎖に捕われていた」とオディアーノ。2007年6月の増派作戦、ファンタムサンダー作戦が始まるまでアルカエダは「イラク各地の数々の都市に入り込んでいた」。

まだまだその脅威は残っているが、イラクのアルカエダネットワークは大幅にその威力を失った。アルカエダの威力はミクダディーヤ、モスール、ハウィジャー、サマラー、そしてバグダッドの南東にあるアラブジャボアー地域でまだ保持されている。「グループはいまだに危険な脅威ですが、その威力は激減した。」とオディアーノ。「アルカエダはバグダッド、ラマディ、ファルージャ、バクバーといった都市の中心部から追い出された。彼等の上位指導者たちの多くが取り除かれ、それにとってかわる実力者を探すことが日に日に困難になってきている。」多国籍軍はまたアルカエダの行動を可能にする資金源ネットワークやリーダーたちの組織を大規模に破壊したことにより、アルカエダの資金調達能力もかなり衰えたものと推測している。

CivilianDeaths9

宗派間争いによるイラク市民の死者の数、増派作戦によって90%の減少を見ることができる。


CoalitionKIA4

アメリカ軍及び連合軍の戦死者の数も極端な減り方をみせている。


犠牲者の数が多いことが戦争がうまくいっていないということの証拠だったのであれば、犠牲者が激減しているということは、戦争がうまくいっているということの証拠のはずだ。だとしたら数が多いといって泥沼だなんだのと書いていたメディアは良くなっている状況についても第一面で報道すべきではないのか?
さて、現在行われているファンタム・フィーニックス作戦(Operation Phantom Phoenix)だが、1月8日に始まったこの作戦ですでにアメリカ軍は121人のアルカエダ戦闘員を殺し、1023人を捉えた。アルカエダの幹部の損害は大きく92人もの重要人物が殺されるか捕まるかしている。
イラク・米連合軍は351もの武器庫を発見。また4つの地下トンネルも発見した。連合軍はまた自動車爆弾や改良爆弾の製造所を三か所発見。また改良爆弾410個、自動車爆弾18台、爆弾を仕掛けた家屋25軒を発見。また数々の拷問部屋、医療施設、すでに閉鎖されている学校や外国人部隊の訓練キャンプなども同時に発見された。
またイラク軍のみの単独任務も遂行されている。ディヤラ地方ではイラク軍一旅団が起用されいま、イラク軍対アルカエダの激しい戦闘が繰り広げられている。


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選挙は関係なし! 遠慮せず強気の外交に専念できるブッシュ

よくアメリカではすでに任期終了を待つだけになって政策上の実権がなくなっている政治家のことをレイムダックと呼ぶ。二期目の任期もあと一年足らずとなり、従来この時期の政権からは特にこれといった新政策は期待できない。
この時期はある意味でアメリカにとって非常に危険な時期でもある。まずイラクだが、大統領選挙に影響を与えようと選挙をめざしてテロ行為が激化することは間違いない。また先日のイランのように任期を一年未満に控えた大統領が新しく戦争などはじめるはずがないと踏んで挑発をしてくる敵もあるだろう。
しかし今回は従来とはちょっと違う状況がある。従来なら現在の政権の方針を引き継いで大統領に立候補する副大統領が、健康上の理由から立候補していない。大統領の外交政策は議会の承認を必要としない。ということはブッシュ大統領は来期の選挙運動を控えた支持率の束縛や議会のうるさい小言など気にせずに強気な外交に専念できるというわけだ。ブッシュはレイムダックだからと甘く見てやたらにアメリカを攻撃してくると敵は思わぬ猛反撃を受ける可能性がある。
2008年のブッシュ外交政策はこれまでよりも強気なものになるのではないかという意見がStratforに載っている。(メンバー登録必要(Hat tip seaberry

イラク戦争はジハーディスト戦争の延長だ。2001年のアフガニスタン侵略の後、合衆国はアルカエダを可能にしたサウジアラビア、シリア、イランそしてパキスタンという四つの勢力と同時に戦うだけの軍事力に欠けていることに気が付いた。そこでブッシュ大統領の最初の手段はアフガニスタンに対抗する碇(いかり)を確保するためにパキスタンに無理矢理アメリカと同盟を結ばせた。第二段階は他の三つの国を威嚇しアルカエダとの戦いへの協力を強制するため、これらの国と国境を接するイラクを占領した。そして最終段階ではアルカエダが崩壊するまでこの戦争を押し進めるというものだった。

多くの思いがけない犠牲を払ったとはいえ、2008年の夜明けを迎えた今、この作戦がアルカエダが機能不能になるまで潰すことに成功したことが明らかになってきた。 はっきり言ってジハーディスト戦争はもうほぼ終わりを遂げているのである。合衆国は勝っているだけでなく、最初にアルカエダを可能にしたスンニ勢力全体を味方につけてしまった。
これでこの地域においてただ一つ非スンニ派勢力のイランは合衆国との同意を求めなければならないという非常に居心地の悪い立場にたたされることになった。

イラク情勢:
現在イラクではファンタム・フィニックスという大掃蕩作戦が行われており、すでに何十人というテロリストが殺されている。特にファンタム..の一部であるハーベストアイアンではアンバー地域から逃げたアルカエダの連中の温床となっていたディヤラ地区が焦点とされている。
現場の司令官によるとアメリカ・イラク同盟軍は期待したほどの抵抗にはあっていないということだ。これは我々の攻撃が事前に敵側に洩れたため、アルカエダの連中がかなり多く逃げてしまったのが原因らしい。
しかしこれまでの作戦と違ってペトラエウス将軍のCOIN作戦では、一旦制覇した土地は去らずにあくまで守り通すので、テロリストから戦って奪い取ろうが逃げ去ったテロリストの留守中に制覇しようが結果は同じだ。テロリストは奪われた土地を奪い返すことはできないからだ。
イラク戦争がうまくいくいつれて、アメリカ国内でも日本でもイラク戦争の話をあまりきかなくなったが、アメリカ市民が大統領選挙で気を奪われている間にもイラクではアメリカ軍がテロリスト退治を着々と進めているのである。大統領選挙に影響を与えようとテロリストが躍起になって自爆テロ作戦を練っていることは確かだが、味方軍の攻撃から逃れながら住処を次から次へと奪われている最中にメディアをあっといわせる大規模なテロ作戦を練るというのはそう簡単にできるものではない。
イラン:
この間のイランによる挑発行為で、アメリカ海軍は何もしないで見ていたという見解は間違っている。アメリカ側は確かに応戦はしなかったが、イランがこちらの反応を観察したのと同じようにこちらもイランのやり方を注意深く観察していたのである。それにアメリカ側がわざと反応を遅らせて意図的に誤った情報を与えた可能性も考える必要がある。
もしまたイランがあのような挑発行為をとることがあったら、アメリカ側からの反応はかなり恐いものがある。ブッシュ大統領はイランへの武力行使をオプションのひとつとして考えているのは確かだが、それをやる前にイランに対して強気の対処をすることは可能だ。例えばホルムス海峡を通るイランへ出入りする船をすべて差しとめてしまうということなら意外と簡単にできる。これに経済制裁を加えれば、イランの経済は突如として立ち止まってしまうのだ。
それではここで再びイランをどう攻めるか、軍事歴史学者のアーサー・ハーマン博士の提案を振り返ってみよう。

  1. まずホルムズ海峡を通る石油輸送を阻止する国はどこであろうと容赦しないと発表する。
  2. その脅しを証明するために対潜水艦船、戦闘機、じ来除去装置、イージスBMDシステムなどを含む空母艦バトルグループをペルシャ湾に派遣する。むろんこちらの潜水艦も含む。
  3. アメリカ一国によるイランの石油タンカー通行を封鎖。イランから出る石油、イランへ入るガソリンなどを完全阻止する。ほかの国の船は自由に通過させる。
  4. イランの空軍基地を徹底的に攻撃し、イランの空の防衛を完全に破壊する。
  5. イランの核兵器開発地及び関係基地、インフラなどを攻撃する。
  6. そしてこれが一番大切なことなのだが、イランのガソリン精製施設の徹底破壊である。
  7. アメリカの特別部隊がイラン国外にあるイランの油田を占拠する。

読者の皆様もお気付きと思うが、アメリカはすでに1と2を実行に移してしまっている。ブッシュ政権は今年中にイランになんらかの強攻策をとるはずである。
イスラエル・パレスチナ問題:
今ブッシュ大統領はイスラエルを初訪問中。ブッシュ政権はこれまでのどの政権よりも親イスラエルとはいうものの、イスラエルに妥協を迫ってパレスチナに歩み寄るように圧力をかけるという点では従来の政権とあまり変化はない。カカシは他の点ではブッシュ大統領の政策を支持しているが、ことイスラエル・パレスチナ問題に関してはあまり期待していない。オルメルト首相との会話も中東和平よりもイランの脅威に終始した模様で、パレスチナ和平についてはあたりさわりのない会話しかなったようだ。

 【エルサレム笠原敏彦】…パレスチナ和平をめぐってはオルメルト首相が7年ぶりに再開した和平交渉への「完全な関与」を改めて表明したものの、交渉進展へ向けた具体策は示せなかった。
 初のイスラエル訪問となるブッシュ大統領の首相との会談は、予定を約40分も超過。2国家共存に向けてパレスチナ国家の輪郭(国境画定、難民の帰還問題など)を決める交渉の年内妥結やイランへの対応で、突っ込んだ論議を行った模様だ。
 イスラエルは和平問題よりイランへの対応を重視。ブッシュ大統領は会見で「イランは03年秋に核兵器開発を停止した」とする米機密報告書の公表が波紋を広げている事態に言及、「イランは脅威であり続ける」との認識を改めて示し、イスラエルの米政策への懸念軽減に努めた。…
 一方、焦点のパレスチナ和平では、オルメルト首相が改めてパレスチナ側の暴力停止が和平推進の前提だとの立場を強調。ブッシュ大統領は強い圧力を行使する姿勢は見せず、「指導者らがロケット攻撃や入植地の問題に固執し、歴史的な合意の潜在性を見失うことが懸念の一つだ」と述べるにとどまった。
 両首脳とも和平問題では「決意表明」にとどまり、昨年11月の米アナポリス中東和平国際会議での「約束」を「履行」に移す突破口は開けていない。

ブッシュのイスラエル訪問は卒業写真程度の意味しかないという批判もあるが、アメリカ大統領がイスラエルを訪問するのは非常に危険を伴う行為であるから、少なくともその危険をおかしてまで訪問したということに多少の意義はあるかもしれない。私はアメリカのイスラエルへの方針は「放っておけ」というもの。どうしても口出ししたいなら、イスラエルからのイランなどへの諜報と交換に武器供給をするのが得策と思う。


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