ゲリラには勝てないという神話

先日歴史家のドナルド・ストカー氏が書いた「ゲリラはめったに勝たない」(“Insurgencies Rarely Win – And Iraq Won’t Be Any Different (Maybe) By Donald Stoker)という記事を読んで、イラク戦争も多いに歴史に学ぶことがあるなと思って感心した。
ゲリラ戦というとアメリカではどうしてもベトナム戦争の記憶が新しい。しかしストカー氏はアメリカはベトナム戦争からゲリラには勝てないという間違った教訓を学んだという。氏はゲリラは常に勝つどころか、めったに勝たないと断言する。だから、イラクでもアメリカ軍を増派し作戦を変更することで十分に勝利をおさめることが可能だというのである。しかし、イラクでアメリカが勝とうというのであれば、アメリカは過去の間違いから学ばなければならない。なぜならゲリラ撲滅は辛抱強く時間をかけてやる必要があるのだが、ブッシュにはあまり時間がないからである。

ゲリラや反乱軍は不滅であるという神話はアメリカの南ベトナム敗退についてアメリカ人が集団的に誤解したことからはじまる。この敗北は一般にパジャマ姿のベトコンによる卓抜さと軍事力によるものだと思われている。ベトナム人はタフで辛抱強かったかもしれないが、彼等は卓抜ではなかった。というより彼等は単にアメリカという自らの間違いから学ぼうとしない敵に面するという幸運に恵まれただけなのである。ベトコンが面と向かってアメリカ軍と戦った1968年のテット襲撃ではベトコンは惨敗した。1975年に南ベトナムが遂に墜ちた時も、南ベトナムはベトコンによっておとされたのではなく、北ベトナムの正規軍の侵略によっておとされたのである。ベトコンのゲリラはアメリカ民衆の戦う意志を崩壊させる要因となったが、それをいうならリンドン・ジョンソン大統領の戦争のやり方も民衆の士気を弱めた。 ハノイ勝利の鍵は北ベトナムの意志とアメリカの失敗にあるのであり、ゲリラの戦略にあるのではない。

氏はソビエトのアフガニスタンでの敗北についても同じような誤解があるという。これにしてもムジャハディーン(アフガニスタンの反ソビエト反乱軍)がソビエトを追い出したというよりも、ソビエト内部の経済および内政の混乱が原因だったのだと言う。
カカシはここでもうひとつアフガニスタンの反乱軍が勝った理由を付け加えておきたい。それはアメリカや諸外国が反乱軍に武器供給を惜しみなく与えたということだ。
ストカー氏も書いているが、反乱軍が一般的に成功しない理由は、組織力と資源に乏しいからである。あっちで一発、こっちで一発、といった散発的な攻撃をいつまでもやっていれば、いずれは弾も人間も乏しくなり戦闘は尻つぼみとなる。資源も人員も豊富な一国を相手にこのような方法ではいずれ負ける。だから反乱軍が勝つためにはこの二つの点をどうにかして確保する必要がある。
であるからイラクでの問題はイラクの反乱軍を倒すことができるかどうかということではなく、アメリカがその機会を逃してしまったかどうかにかかっている、とストカー氏は語る。
私はもうずいぶん前から、アメリカ軍がスンニ派反乱軍のアジトなどで何百という武器を発見したとか、フセインがイラク各地に隠しておいた爆弾だの銃器だのをトン単位で破壊してきたことでもあり、もうそろそろ反乱軍は人も弾も足りなくなっているはずだと考えていた。
現に2005年くらいには、テロリスト攻撃はかなり弱体化しており、アメリカ軍や保守派の間でも希望的な気持ちが高まっていたのである。それが2006年になって再びおかしな状態になってきた。私はいったいイラクの反乱軍はどこから武器弾薬や人員を補給しているのだろうと不思議に思ったものである。
最近になってその原因がイランにあることが明らかになってきた。アメリカがイラクで勝つためにはこのイランからの供給ラインを切断することが最優先されなければならない。まずイラクとイランの国境を固めること、そしてイランに政治的、経済的、軍事的な圧力をかけ、イラクの反乱軍を援助することがイランのためにならないことを思い知らせることが大切だろう。
ストカー氏はイランの話はしていないが、増派による新作戦はゲリラ反乱軍を倒す可能性を非常に高めたと語る。だが氏が一番心配しているのはアメリカがすでに反乱軍を倒す機会をのがしてしまったのではないかということだ。

一つ確かなことは時間が迫っていることだ。ゲリラとの戦いは普通8年から11年はかかる。だがブッシュ政権はアメリカ民衆の世論にあまりにも無関心であったため、このような戦争に関する説明を全くしてこなかった。それで市民の戦争を支持する気持ちはほとんど使い果たされてしまったのである。イラクでの一つの悲劇は反乱軍に対する勝利をおさめるには作戦変更がおそすぎたかもしれないということにある。

アメリカはアメリカとイラクのためだけでなく、自由を愛するすべての社会の安定のためにもこの戦争には勝たねばならない。なぜならこの戦争に負ければ戦争が終わるのではなく、新たな戦争が始まることになるからだ。その時はアメリカもそして欧州も日本も恐ろしい戦争に巻き込まれることだろう。
新作戦の成功を切に願うものである。


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脱走兵ワタダ中尉の軍法会議は無効審理へ

イラク戦争が始まった直後の2003年に陸軍に入隊し去年初めてのイラク出動を拒否して軍法会議にかけられていたハワイ出身のワタダ中尉の軍法会議が本日無効審理となり、今年の4月に審理がやり直しされることになった。

イラク派遣拒否の中尉、軍法会議が「無効」…再審理へ

 【ロサンゼルス=古沢由紀子】米ワシントン州フォートルイス陸軍基地で行われていたイラク戦争への派遣を拒否した日系3世アーレン・ワタダ陸軍中尉(28)に対する軍法会議で、担当判事は7日、事前の弁護側と検察側による事実認定手続きに問題があったとして、「審理無効」を宣言した。
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 軍法会議は3月以降に再審理が行われることになった。
 AP通信によると、ジョン・ヘッド判事は、ワタダ中尉が訴追内容をよく理解しないまま無罪を主張しており、事実認定に矛盾があると判断した。
 中尉は「イラク戦争は根拠がなく、違法行為だ」として派遣を拒否。軍の命令を無視し、将校として不適切な行為をとった罪に問われ、軍法会議にかけられた。有罪なら最高で4年の禁固刑の可能性がある。
(2007年2月8日12時1分 読売新聞)

ワタダ中尉はアメリカ人将校としては唯一人出動を拒否した軍人である。ワタダ中尉はイラク戦争は違法だと言い張っていたが、すでに戦争が始まっていた2003年に、しかも出動する可能性が非常に高い陸軍にわざわざ入隊して三年間ずっと黙っていた人間が出動する段になって突然「違法云々」を言い出すのはおかしいという意見がミルブログを中心に交わされた。
ワタダ中尉は最初から反戦運動をする目的で軍隊に入ったのではないかという話もあるが、これはちょっと変だろう。もし現役軍人であることで反戦運動に博をつけたかったのなら、陸軍よりも海軍か空軍に入隊すれば実際に戦地へ送られる可能性はかなり低い。
話はずれるが、現役軍人が創設したというAn Appeal for Rederssというイラク戦争反対運動がある。創設者も参加者も現役もしくは元軍人で最初は草の根運動だということになっているのだが、これがどうもうさん臭い団体なのだ。草の根運動とは建前だけで、実は左翼のプロ団体が背景にあり組織力も資金力も抜群の団体なのだ。(詳細はMudville Gazetteを参照されたし)が、その話はちょっとおいといて、、
先ず創設者というのが海軍の水兵二年目のジョナサン・フトーという男性。フトー兵は自分の反戦ウェッブサイトで「無収益団体, NPO」に何年かつとめ小学校の教師を目指したが失敗し、2004年の1月に海軍に志願入隊したと書いている。しかしフトー兵が働いていたというNPOとはアムネスティーインターナショナルというおよそ親米とは言えない団体で、2001年には社会主義労働者党という過激派左翼のメンバーと並んで反警察運動をしていたこともある。2002年には同団体の大西洋地域部のプログラムコーディネータをしていた。
そしてきわめつけは2003年にフトーはイラク反戦運動に参加していたのである。
そういう人間がどうしてわざわざアメリカ海軍に入隊したのか。そして入隊後たった2年で再び反戦運動をはじめた理由はなにか? これは最初から軍隊内部で現役軍人として反戦運動をするつもりだったと考えるべきだろう。だから彼は海軍を選んだのだと私は考える。海軍ならば職種を選べば、特別部隊にでも入らない限り軍艦をあちこち乗り回す程度でイラク戦地でライフルもって歩き回る可能性はほとんどないからだ。
一般市民が反戦運動をすれば、軍隊に入る勇気がないからだろうといわれかねないが、実際に現役の軍人が反戦ということになれば話は別である。
さて、ここでワタダ中尉に話を戻そう。もしもワタダ中尉が最初からイラク戦争に反対で現役の軍人として反戦運動をするのが目的だったのだとしたら、出動の可能性が非常に高い陸軍に入隊するのはおかしい。実際にイラクへいって帰ってきてからなら話は別だが、出動拒否ではお話にならない。
思うにワタダ中尉は何の考えもなく陸軍に入隊したのだ。3年間の任期があと半年で終わるという時までずっとだまっていたのも、このまま戦地へいかずに除隊できるかもしれないと考えたからだろう。だが出動命令が出てはじめて恐怖におののいたのである。そこで自分の臆病心に直面する勇気もないから戦争が違法だのなんだのとこじつけを考えたに過ぎないのだ。
みじめな男だ。ワタダ中尉。


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イラク反増派議案、採決ならず

や〜っばりね。採決するには票が足りないとカカシが予測した通りだった。まずはこの記事から。

イラク増派反対決議案、共和党が上院で採決阻止

ワシントン(CNNー2007.02.06) ブッシュ米大統領が先月発表した米軍イラク増派に反対する超党派決議案の本格審議が5日、米上院で始まったが、共和党議員らが採決を阻止した。上院の規定により、審議および採決の動議可決には60票の賛成票が必要だが、賛成49反対47と、共和・民主両党の議席数でほぼ割れる結果となった。
反対決議案は、共和党のジョン・ワーナー上院議員(バージニア)と民主党のカール・レビン上院議員(ミシガン)が各自の決議案を一本化したもの。ミッチ・マコーネル少数党院内総務(共和党、ケンタッキー)は、共和党側が作成した2つの代替案についても審議と採決を行うべきだと主張したが、ハリー・リード多数党院内総務(民主党、ネバダ)がこれを拒否。両者は先週末に協議したものの、行き詰まりは打開できなかった。
5日の本会議では、リード同総務がイラク新政策をめぐる「審議をつぶそうとしている」として共和党を非難。これを受けてマコーネル同総務は、共和党は「審議の用意がある」ものの、過程の「公正さ」求めて審議に反対している、と反論した。
マコーネル同総務が採決を求めている代替案は、ブッシュ大統領の戦略を支持する案と、イラク戦費の拠出継続を盛り込んだ案。共和党指導部は動議採決に強硬に反対しているものの、同党はイラク政策について一枚岩ではない。

民主党は多数派になって少数党の切り札が身にしみただろうか。なにせ民主党はこの手を使って何度もブッシュ大統領推薦の裁判官承認の採決を阻止していきたのだから文句は言えまい。戦争反対といって戦争予算を削るほどの度胸はないくせに、全く拘束力のない議決だけ通して立派に反戦運動やってる気分なんだからあきれる。
ところで、この議案の草案者であるへーグルとワーナーの両方の議員が採決に反対する票を入れたのには笑ってしまった。アルファベット順だったので共和党で来期の選挙では苦戦が予想されるミネソタのノーム・コールマン議員は最初のほうで採決に賛成の投票をして完全にバカを見てしまった。私がミネソタ住民なら次回はかなり考えるだろう。だが、彼のライバルはなんと反ブッシュの本を何冊も出版している人気コメディアンのアル・フランケン。ミネソタは大変だわな。


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米軍ヘリ4機を撃ち落としたミサイルはイラン製

ここ2週間で米軍の攻撃ヘリ4機が連続してイラクで墜落するという事件が発生している。

バグダッド(CNNー2007.02.03) イラク駐留米軍は2日朝、バグダッド北方のタジ近郊で米軍の攻撃ヘリコプター「アパッチ」が墜落、乗員2人が死亡した、と発表した。米軍ヘリの墜落は過去2週間で4機目。

墜落原因は不明。砲火を浴びる中で落ちた、との目撃証言がある。米軍は、乗員の遺体を収容した。
国際テロ組織アルカイダ系を名乗る組織が犯行声明をイスラム系ウェブサイトに載せたが、真偽は不明。米軍機を撃墜する新たな方法を得たとも主張している。米統合参謀本部のペース議長はワシントンで、武装勢力による米軍ヘリへの地上砲火は過去数週間、命中精度が向上したと認めた。
中部のイスラム教シーア派の聖地ナジャフでは1月29日、武装組織との交戦で同じアパッチ型ヘリコプターが墜落し、2人が死亡。23日には米民間警備会社のヘリが墜落。

アルカエダの連中はこれまでにも肩がけ対航空機ミサイル(Sholder Fired Anti Aicraft Missile)を使って戦闘機を狙っていたがその命中度は悪かった。それなのに最近になってその精度があがったというのは何故だろうか?必然的に誰かが性能の高い武器をアルカエダに供給しているからだと考えられる。
アメリカ軍当局はこれはイラン政府だと考えているようだ。アルカエダの連中はこれまでにもSA-7ミサイルを使っていたが、最近の一連の攻撃はもっと性能の高いSA-18と考えられる。イラクのアルカエダは最近になって「神が新しい道をお導きになった」と宣言していることから、「新しい道」とはイランから供給された新型対航空機ミサイルのことではないかという話もある。
これがもし本当にイラン製のミサイルで、イラン政府がイラクのテロリストに武器や戦闘訓練を供給しているとしたら、これはイラン政府によるアメリカ軍への攻撃ととれる。にも関わらずアメリカ軍はイラン政府に対して何もしない態度をとるのであれば、今後イランからの攻撃はイラクのテロリストを通じてまずます激化することだろう。
もともとアメリカがイラクのフセイン政権を倒したというのも、イラクがテロリストの温床となって、フセインがテロリストを手先にしてアメリカやアメリカ関係の対象を攻撃するのを防ぐためであった。それがフセインは倒したものの、イラクがイランによってテロリストの温床となってアメリカを攻撃するのであれば、せっかくフセインを倒した意味がなくなってしまうではないだろうか。


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戦争を反対して軍隊を支持できるのか?

最近よく、「イラク戦争には反対だがアメリカ軍は支持する」と言う人がリベラルの、特に政治家の中で増えている。民主党のジョン・ケリー議員が「勉強にしないとイラクへいくはめになる」とアメリカ軍人をバカにした発言をして以来、人気急下降で希望していた大統領選挙への出馬を断念せざるおえなくなったのでも分かるように、アメリカ人はアメリカ軍人をバカにされるのが大嫌いである。
アメリカリベラルの間では軍人を嫌うのが日常茶飯事になっている。自分達の内輪ジョークではしょっちゅう軍人の悪口を言っているから、つい公式の場でもうっかり軍人の悪口をいってしまうのだろう。だが、賢い政治家になってくるとそんなへまはやらない。下院議長のナンシー・ペロシもことあるごとにイラク戦争の批判をしながら、演説の最後にアメリカ軍を支持すると付け加えることを忘れない。2008年の大統領選挙希望の星、ヒラリー・クリントンもアメリカ軍への予算を削ってはならない、とアメリカ軍への支持を強調している。
しかしアメリカ軍人がやっていることを真っ向から反対し、現場の軍人が必要だと訴えている援軍の出動に異議を唱え、アメリカ軍人の仕事がやりにくくなるような決議案を通し、アメリカ軍人をより危険な状況に陥らせるような行為ばかりをとるリベラル政治家の口先だけの「軍隊支持」にはいい加減アメリカ軍人もうんざりしている。
この間アメリカのテレビ局NBCで、リチャード・エンゲル特派員がそうした軍人へのインタビューをし、戦地で戦う兵隊さんたちが祖国の偽善者たちに口々に不満を漏らす映像が放送された。

エンゲル:新しい兵士らが慣れなければならないのは新しい任務だけではありません。彼等には他に心配なことがあります。それは祖国において高まっている戦争討論です。ここにいる兵士らは口々にアメリカ市民の戦争批判に関して不満がつのっているといいます。兵士の多くが自分達が戦っていることへの批判は自分達への個人攻撃であると受け取っています。21歳の技術者、タイラー・ジョンソン兵は今回初めてのイラク任務です。彼は戦争に猜疑心のある人たちは批判する前にここへきて現場を自分の目で確かめてみてはどうかといいます。
タイラー・ジョンソン兵(Specialist Tyler Johnson):..人が死んでんですよ。分かります? 俺のいってること? あんたたちは軍隊を支持するとかいうかもしれないけど、軍隊が汗水たらして血流して命落としてがんばってることを支持しないっていってるわけですよ。そんなの俺に言わしたらおかしいっすよ。
エンゲル:マヌエル・サハガン伍長はアフガニスタンでも勤務し、イラクは4回目の任務です。彼は祖国の人々は両方を支持することはできないといいます。
マヌエル・サハガン伍長:(Staff Sergeant Manuel Sahagun): ひとつ私が一番嫌いなのは軍隊を支持するといいながら戦争を支持していないということです。支持するなら全て支持してほしいです。
エンゲル:ピーター・マナ兵は人々は戦争がどれだけ大変なものか忘れているといいます。
ピーター・マナ兵(Specialist Peter Manna): もし人々がおれたちがちゃんとした仕事をしてないって思うなら、おれたちがやってきた全てが無駄だったっていってることになる。
リチャード・エンゲル:アパッチ隊は二人の兵士を失いました。兵士たちは同士が命を捧げた任務を捨てざる終えなくなるのではないかと心配しています。NBCニュース、リチャード・エンゲルがバグダッドからお伝えしました。

この番組を見ていて腹がたったのはワシントンポストのコラムニスト、ウィリアム・アーキン(William Arkin)だ。彼は早速翌日のコラムにアメリカ軍人は文句をいうどころか、『反戦でありながらアメリカ軍を支持しているアメリカ市民に感謝すべきだ、アメリカ軍人は志願者だけの傭兵のようなもので、市民から唾を吐きかけられないだけでもありがたいと思え』という内容のコラムを書いた。リンクはすでにつながらないので私が保存しておいた元記事から抜粋する。

これらの兵士らは、世論調査では圧倒的にブッシュ大統領のイラク戦争のやり方を支持していないアメリカ市民が、それでも軍隊を支持し尊敬していることに感謝すべきである。
アルグレーブだの、ハディーサだの、強姦や殺人が起きる度にアメリカ市民は一部の不届きものによるしわざだとか、政権や司令部の責任だといって軍事を赦免してきた。
そりゃ確かに下っ端兵隊は監獄送りになる。だが反戦運動ですらその焦点はホワイトハウスの方針だ。近頃では制服組のひとりとして「赤ん坊殺し!」などといわれて唾を吐きかけられるなんてことはめったに聞かない。
そのうえ我々は兵士にまともな給料を払い、家族の面倒をみて、家裁だの医療費だの社会保障をし、戦地で必要とされる訳の分からない必需品まで供給している。我々は軍隊をできる限りのやり方で援助しているというのに、彼等はその上にさらに、我々に地べたにはいつくばって死んだふりをしろというのだ。軍人たちは自分達が社会の掟を超越しているのだから軍隊に道を譲り将軍たちに戦争をさせろ、そして我々の権利や言論の責任を放棄しろというのである。

アーキンは911以後のアメリカ政府の対テロ戦争の意味が理解できないという。本当にイスラムテロリストによる脅威などあるのだろうかとさえ問いかける。

NBCのこの放送はアメリカが傭兵、おっと失礼、志願兵軍、を持つことの代償を思い知らされる。汚い仕事というのは、洗濯と同じで誰もやりたがらない。しかしイラクは汚い洗濯物を洗うのとは違って誰かがやらなければならない仕事ではない。もう誰もそんなことは信じていない。
兵士らが仕事をするためには、自分らが大事な防御壁を守っているのだと信じなければならないというのは分かる。そこから彼等の不満が生まれるのだということも理解できる。彼等は若く無垢で自分らの仕事が全く成果をあげず、何の変化もない状況に不満を持っているのも理解できる。世間から遮断され常に誰もが彼等を支持すると聞かされてるのに祖国での討論で混乱するのも無理はない。

アーキンは、アメリカ兵は世間知らずの教養のないバカばっかりで、自分らの戦っている戦争が意味のないものであることすら知らずに戦争を批判する人間に八つ当たりをしている、とでも言いたげだ。実際にはアメリカ兵はイラクでもインターネットで世界のニュースを知ることができるし、その上に現場の状況を把握しており、アメリカでパジャマを来たままソファに座ってパソコンたたいてる我々なんかよりよっぽども正しい判断のできる立場にいるのだ。
これを読んで怒ったのは現役軍人だけではない。記事は軍人の家族、親戚一同はもとより、保守派ブロガーや軍隊を支持している一般市民の逆鱗に触れた。ワシントンポストへはよっぽど大量の苦情が寄せられたとみえ、元記事はオンラインからは削除され、本日アーキンはネット上で謝罪を余儀なくされた。(元のリンクへいってみるとたちまちのうちに600以上のコメントが寄せられたため、サイトは一時閉鎖されたと注意書きがあるほどだ。)
もっとも昨日ラジオのインタビューで彼は『発言を撤回するつもりはない、アメリカは負けている、アメリカ軍は教養が低い』などと息巻いていたから、謝罪文は編集部に言われて仕方なく書いたもので心のこもったものでないことは明白である。
アーキンのように軍人は黙って戦争やってろというような奴に限って自分が批判されると言論の自由を迫害しているといってごねるのは常だ。しかしアーキンは決して軍人が文句を言う権利がないとか、唾をはきかけられるべきだとか言ったのではなく、軍人も反戦でありながら軍隊を支持しているアメリカ市民に感謝すべきだといいたかっただけだと強調している。私には全くそうは読めないけどね。とにかくこの謝罪文の一部を読んでもらいたい。

私が今日のアメリカ兵を傭兵と表現したことは明かに誤りであった。
(軍隊の)男女はお金のために国家おざなりに働いているのではない。現状はもっとひどい。制服を着ている非常に多くの人々が自分らこそが本当の国家だと思い込んでいる。彼等は憲法と国旗の影に隠れ反民主的、反リベラル、反ジャーナリズム、不寛容、多少でもアメリカに反する考えを否定する姿勢をとっている。
私が「軍隊もアメリカ市民を支持すべきだ』が火曜日に掲載されて以来、多くの人々から私は黙って他者が私のために犠牲になっていることに感謝しろと言われた。

これが謝罪?謝罪どころかアメリカ軍人を傭兵などといったのは生易しすぎた、アメリカ軍人は自由も民主主義も信じない暴君だと言い直しただけではないか、なんというごう慢さだろう。
私は戦争そのものを支持できなくても軍隊を支持することは可能だと考える。私はクリントン大統領政権下で行われたコソボ・ボスニアの戦争には大反対だった。しかし出動した軍人たちの任務が失敗すればいいなどとは思ったこともないし、戦地へ行った人々には「がんばってね、無事にかえってきて下さい」と激励の声をかけた。戦争そのものが間違っているとしても戦っている兵士らに責任はないではないか、彼等に八つ当たりしてどうなる?
アメリカ軍人が文句をいっているのは、アーキンのように戦争に反対なだけでなく、その戦争で戦っている軍人を軽蔑している人間が、社会からつまはじきにされるのを恐れるばかりに口先だけで軍隊を支持しているなどとでまかせを言っている人間に対してのものだ。家族と別れて危険な場所で感謝もされない仕事をしている兵隊さんたちのことを一度でも真剣に考えたならば、こんな下らない記事はかけないはずだ。アーキンのようなバカが自由にものがいえるのも、我々の勇敢な軍人たちが命がけで戦ってくれているからだ。
すこしは感謝しろ!


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イラク、アメリカ兵拉致殺人事件、イランの関係を追う

私は先日イラン工作員がイラク国内で紛争促進の工作を行っているという話をしたばかりだが、この間カルバーラで起きたアメリカ兵拉致殺人事件はイランの特別部隊ウォード(Qod)の関連についていよいよペンタゴンも調査に乗り出したらしい。

イラクの軍施設襲撃事件、米当局がイランの関与を調査

バグダッド(CNNー2007.01.31) イラク中部カルバラで1月20日、米軍とイラク治安部隊の共同施設が武装勢力に襲撃され、米兵5人が死亡した事件で、米国防総省は容疑者がイラン人か、イランで訓練を受けた活動家であるとみて調査を進めている。米当局者が30日、CNNに語った。
犯行グループは米軍風の制服で変装し、米軍で使用されている種類の車に乗り、英語を話すなど、用意周到だった。米軍は当初、死亡した米兵らが武装勢力に抵抗していたと説明していたが、後日犯行グループが検問所を難なく通過したうえ、米兵らを施設から連れ出し殺害したことを認めた。こうした手口は、武装勢力や外国人過激派には見られないという。
イラクでは1月11日、米軍主導のイラク駐留多国籍軍が、北部アービル市内のイラン領事館を強制捜査し、職員を5人を拘束した。米誌タイム電子版が30日伝えたところによると、カルバラの事件はイラン革命防衛隊による報復攻撃との見方がある。
米当局者が1月26日に明らかにしたところによると、ブッシュ米大統領はイラク駐留米軍に、イラク国内のイラン人工作員を殺害あるいは拘束する権限を認めた。また、タイム電子版によると、イラン革命防衛隊は敵に対して容赦ない報復攻撃を実行することで知られる。

アメリカ政府はイランによるシーア殺人軍団及びスンニ反乱軍やイラクのアルカエダへの援助について詳しい説明会を開く予定だったがイランへの気兼ねから遅らせることになったらしい。いまさらイランに気兼ねもないだろうが、裏取り引きがあるのかもしれないので、詳しいことは分からない。この説明会では、イラクで使用されている爆発物や武器にイラン製のラベルがついているとか、シリアル番号まで入っているといった詳細な証拠が提示されることになっている。
ところで、アンサーアルスンナというアルカエダ系スンニ派のテロリストが、イラクではイラン人工作員による暴力行為があちこちで行われているという告発プロパガンダビデオを発表した。

ビデオでは反乱軍がライバルのシーア民兵にイランから密輸入された武器にペルシャ語で「イラン内政省」と書かれたラベルを見せている図がある。

テロリストのプロパガンダビデオだから内容は100%信用できるわけではないが、ペンタゴンからの情報と同じものであるのは興味深い。


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米議会の腰抜け反増派議案

アップデート:訂正のお知らせ。最後をご参照のこと。
民主党と共和党の双方から草案が出ていたイラク増派反対決議案だが、今日になって口調のきつい民主党の案は反故になり、比較的柔らかい口調の共和党の案ひとつに絞ることで議決案が決定した。

ワシントン──共和党のジョン・ワーナー上院議員(バージニア)と民主党のカール・レビン上院議員(ミシガン)は1月31日、新イラク政策に基く米軍増派への超党派反対決議案を提出した。
レビン議員は1月、ワーナー議員の後任として上院軍事委員会議長に就任。両議員は各自の決議案を競い、厳しい表現が少ないワーナー議員案の方が共和党の支持を集めていた。
超党派となった新たな決議案は、増派反対に関するワーナー議員案の表現を尊重したうえで、米軍のイラク駐留費を守る方針を盛り込んだ内容。レビン議員案の「増派は国益に反する」といった表現や、ワーナー議員案で一定規模の増派支持を示唆する部分は削除された。
決議案の一本化で共和・民主両党の支持は一層拡大し、可決の可能性が高まる見通し。リード上院多数党院内総務(民主党)は軍事委員会での審議を経ずに、2月5日から本会議で決議案の討論に入る意向を示した。

ヒューヒューイットのサイトに決議案の全文が載っている。長ったらしくぐたぐた書いてはあるが、どこにも「増派絶対反対」とか新作戦がうまくいかなかったら「即刻撤退すべき」といった文章は出てこない。多少きつい言い方があるとしたら、イラク市民が率先して治安維持と復興に取り組まなければ、アメリカ国民からの支持を失うであろう、といった部分くらいだろうか。
具体的にイラク政府がしなえければならないこととして11の項目が挙げられており、その結果をイラク政府はイラク大使を通じて月毎にアメリカ議会に報告することとある。
はっきり言ってこんな議決通してなんになるのだろうか? 単にブッシュ大統領の新作戦がきちんといくかどうかちゃんと報告して下さいね、イラクさん、いつまでもアメリカに頼ってばかりじゃ駄目よ、程度の内容であり、ブッシュ批判にも増派反対にも全くなっていない。しかも投票阻止にあわないための60票が集まる可能性はほとんどなく、この議決は投票にも持っていかれずに消え去るだろうというのが今の見方。
全く騒いだ割には意味のない腰抜け内容になったようだ。
アップデート:私がウォーナー議員提案としてヒュー・ヒューイットのサイトへのリンクを張った提案は、ウォーナー議員のものではなく、マケイン(共和)・リーバーマン(独立)議員が主催となって提案した議決案でした。訂正します。しかし、ウォーナー氏は自分の提案からは辞退し、新しく提案されたマケイン・リーバーマンのほうに投票するかもしれないという意志を示しはじめている。となるとウォーナー議案が通る可能性はかなり低まった。本文でも説明したようにマケインの発案は単にイラクが復興の経過をアメリカ議会に定期的に報告せよというもので、別にブッシュ新作戦への批判ではないから、この議決案、はっきりいって何の意味もないものになりそうだ。


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イラクに伸びるイランの魔の手

English version of this post can be read here.
私がしょっちゅうサドルがイランの飼い豚だという話をしているので、ブログ仲間のアセアンさんからそんな証拠はあるのか、あるとしたら、サドルのマフディ軍はレバノンのヒズボラのような存在だとカカシが考えているのかどうか、というご質問を頂いた。私はサドルがヒズボラのような立場を望んでいるとは考えていない。奴はイランを利用できるだけ利用してイラクの混乱に乗じて自分の勢力を広げようという魂胆だろう。イランはイランで利用できる人間はシーアのサドルであろうと、スンニのアルカエダであろうと利用してやろうという魂胆だと思う。
イラクへの増派が始まるまでもなく、イラクではイラク・アメリカ連合軍による戦闘が勢いを増している。最近起きている激しい戦闘にはスンニ派にもシーア派にもイランの指紋がべったりとついているのだ。
イラクで起きる数々の暴力沙汰にイランの魔の手が関与していることは、もうかなり前から疑われていた。しかし、去年の秋頃までは無駄にイランを刺激しないことで、イランからの協力を得られるかもしれないというかすかな希望にでもすがっていたのか、アメリカ軍はイランの影響力を公の場では過小評価してきた。しかしこの方法は全くイランの強行な姿勢を変えていないどころか、イランの核開発はどんどん進んでいる。そこでどうやらやっとアメリカはイランの関与について暴露する方針に変えたようだ。
さて28日にナジャフで起きた戦闘についてちょっと考えてみよう。

ナジャフで戦闘、武装勢力の死者300人と イラク
イラク・ナジャフ(2007.01.29- CNN/AP/REUTERS)─イラク中部のイスラム教シーア派聖地ナジャフで28日、イラク治安部隊と同国駐留米軍が600人近い武装勢力と交戦し、武装勢力側の推定250─300人が死亡した。内務省関係者が明らかにした。地元警察幹部によると、戦闘は29日朝まで続いたが、その後ほぼ沈静化した。…
地元警察幹部が国営テレビ局アルイラキアに語ったところによると、イラク治安部隊は、ナジャフの北方約10キロのザルカ付近に武装勢力が集結しているとの情報を得て出動した。その後、兵士や地元警官ら6人の死者が出たためいったん撤退し、米軍の援護を求めたという。
ザルカでは戦闘中に米軍のヘリコプターが墜落し、米兵2人が死亡した。米軍は墜落原因を調査中としているが、イラク当局者は武装勢力のミサイルに撃墜されたとの見解を示した。
武装勢力は、イスラム暦新年に行われるシーア派の宗教行事「アシュラ」に合わせ、ナジャフへ向かう巡礼者らに紛れて南進したとみられる。

この記事には書かれていないが、英語版のAPの記事によれば、さらにスダン人を含む外国人戦闘員など100人が拘束されたとある。
また、28日の段階では反乱軍がスンニなのかシーアなのかはっきりしていなかった。それもそのなず、「天国の兵士」と名乗るこの軍団はこれまで全く知られていなかったカルト集団で、アルカエダが主体とはいえ、シーアの民兵もかなり含まれいたらしい。しかも彼等の武器整備はすごいもので、少なくとも二機の対航空機スティンガー形ミサイルを使用し、重量型マシンガンも使われたという。
本日の ニューヨークタイムス にもっと詳しい情報が載っている。NTTimesによれば、敵側の戦死者は470人は下らないという。しかも味方イラク軍の戦死者はたったの25人。これは圧倒的なイラク・アメリカ連合軍の勝利である。
しかし、そこは反米NYTimesの記事。味方の大勝利を素直には喜べない。なんとか悲観的な見方をしようと必死だ。そこでNYTimesはイラク軍の戦いかたに「困惑する疑問」が湧くとしている。

イラク軍は整地ナジャフ付近でこの週末に起きたよく知られていない与太者民兵軍と激しい戦いに驚かされもう少しで圧倒されそうになった。イラク軍は当初発表されたような単なる後方援護よりももっと大規模な援護を必要としたと米軍とイラク軍の要員は月曜日語った。

関係者の話によるとイラク軍は自らを「天国の戦士」と名乗る何百人もの戦闘員の強さを危険なほど過小評価しすぎ、アメリカ軍は空からだけでなく、地上隊も出動してイラク軍を援助するに至った。…
イラク軍とアメリカ軍は最後には戦闘になんとか勝った。しかしイラク軍の反乱軍の強さとその意図に関する誤算にはイラク軍の脅威を把握し処置する能力に関して 困惑する疑問が湧いた。

まったくこれだけの圧倒的な勝ち戦でここまでこき下ろされるんじゃ、負け戦だったら何と言われることだろう。現実にはイラク軍は反乱軍の規模の大きさに気が付かなかった。それというのも、反乱軍はアシュラの参詣者に紛れ込んでナジャフに数日前から潜入していたからだ。だが、ここで注目されるべきは圧倒的多数の敵に面してイラク軍は怯まず、2004年の最初のファルージャ戦闘の時のように制服を脱ぎ捨て退散するようなことはしなかった。それどころか、周りを敵に取り囲まれながら堤防を築き、空と陸からの援軍が来るまで味方を大量に失わずに勇敢に戦ったのである。本来ならばそのことが讃えられるべきなのだ。
ま、それはともかく、この綿密に計画を立てられた用意周到な戦闘は、最近カバーラで起きたもうひとつの事件 を思い出させる。
去る1月20日(2007)地元のイラク人と会議中のアメリカ兵が攻撃に合い、1名がその場で死亡、4名が手錠をかけられ拉致された上、数十キロ先で銃殺されるという事件があった。警備にあたっていたイラク軍の話では12人の何者かがアメリカ兵の制服を着用し、アメリカ軍が常用する乗り物に乗り、アメリカ軍の持つ兵器を所持して関門を通り抜けたという。しかも「兵士」の一人は英語を話し、一人は金髪だったという証言さえある。
この非常に巧妙な手段はアルカエダの乱暴な自動車テロなどとは全く異質のものであるし、シーア派の民兵などによる能のない撃ち合いなどよりずっと高度な作戦がとられていた。これはただのテロリストやギャングの仕業ではなく相当な訓練を受けたイランでも特に凶暴な特別部隊、クウォード隊(Qods)の仕業ではないかという見方が強まっている。
事実イランはイラク国内でずっと以前から秘密工作をおこなっていた。イランはなんとスンニとシーアの双方に武器調達、戦闘訓練などを提供してきていたのだ。最近アメリカ軍によるイラン勢力アジトへの攻撃の際、アメリカ軍は ある書類を発見した。 それはなんとイラン軍によるイラク紛争促進の青写真だったのである。

アメリカ諜報部員によると、新しく発見されたこの書類の信憑性は諜報専門家の間で調査済みだという。 これによって「イランはシーア民兵軍とスンニ聖戦軍の両方と密接に活動している」ことがはっきりした。…

同じ書類を調査した別のアメリカ要員は、この書類は「煙の出ている銃」だとし、「攻撃計画、スンニ関係者の電話番号などあらゆること記されており、今まで何をやっているのか、空白だった部分が相当埋められました。」と語った。

どうやらイランにも独自の「イラク調査委員会」があったようで、彼等の「推薦」はイラクに内戦をおこさせることだったようだ。皮肉なことに月曜日, イランはイラク「援助」の計画を発表した。 :

ハサン・カゼミ・クミ( Hassan Kazemi Qumi)大使は「治安維持の戦い」のため イランはイラク政府軍を訓練し、武器援助やアドバイザーを送る用意がある。と発表した。また経済面でもイランは4年前にフセインを倒してい後アメリカが失敗している部分において、イラク復興のため主な責務を果たす用意があると語った。

「我々は戦後の復興には経験があります。」とクミ大使。1980年代におきたイラン・イラク戦争をさして語った。「この経験を生かしてイラクの復興に役立てたいと思います。」
またクミ大使は、先月アメリカ軍が一時的に拘束し解放したイラン人が、アメリカが主張していたように軍事要員であったことを初めて認めた。しかし彼等はイラクでイラク政府と話あうために正当な活動をしていたのであり、拘束されるべきではなかったと語った。

イランは親切にもアメリカが足りないところを補ってイラクの復興に手を貸してくれるというのである。なんとありがたいことではないか? 無論、奴らの企みはかなり明白である。最近アメリカが公にイランのイラクへの関与を暴露し批判しはじめたため、イランも圧力を感じているのだ。イランはアメリカが一旦責めはじめたら、ヨーロッパやイスラエルのようには簡単に引かないことを承知している。だからアメリカからの攻撃から一時的に話をそらすために白々しい言い訳をしているのである。
しかしこのイランの態度を見る限り、イラクがアメリカと誠実な交渉などする気がないことは明白だ。ベーカー・ハミルトンが代表したイラク調査委員会の推薦がどれほど馬鹿げたものだったのかこれではっきりした。


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サドルの計算違い

イランの飼い豚サドルがアメリカとの衝突は避けマリキ政府と協力すると発表した。LATimesはサドルの動きにアメリカは驚いたとしているが、私は予想どおりの結果だと思う。先日私がラストチャンスという神話で、モハメッド君の話を紹介したのを思い出してもらいたい。

バグダッドに話を戻そう。サドルのマフディ軍は正面きってのアメリカ軍との戦闘は避けるつもりのようだ。マフディの司令官らはマフディ戦闘員に黒い制服を脱いで一般市民の間に紛れ込み、しばらくほとぼりが冷めるまで大人しくしているようにと命令したらしい。そしてアメリカ軍の捜査活動には全面的に協力し逮捕されても一切反撃してはいけないと厳重に注意したという。すでに高位の司令官らはイランに逃れたり、近隣都市に分散したりしてしまったようで、サドル派の本拠地であるサドルシティに残っているのはただのちんぴらだけという可能性もある。

すでに、サドル派はアメリカ軍への表立った抵抗は止めている。これまでアメリカ軍を「占領軍」と呼んでいた彼等もアメリカ政府と協力する姿勢をみせている。では本日のLATimesでは何が新しいニュースだと報じているのか、本筋はこれだ。

木曜日、バグダッドの本拠地にあるサドル運動のひとつのリーダーが、公にブッシュの新しい警備作戦を承認すると発表した。すくなくとも数人のアメリカ要員は作戦をサドルと戦うのに使うと公言していた。

「我々はこの作戦がうまくいくように出来る限りの協力をします。」サドル市近隣のシーア派系地区のリーダー、アブドゥール・フセイン・カーバイ(Abdul-Hussein Kaabai)氏は「イラク政府によって行われる計画なら自分達は協力する。」と語った。

どうやらサドル派は必死でアメリカ軍に自分らに抵抗の意志はないと訴えているように見える。だが、サドルが本気で政府に協力して暴力をあきらめるなどと考える人はいないだろう。サドルはアメリカ国内で何が起きているか十分に知っているのだ。ブッシュ大統領が新作戦を実施できる時間はブッシュが議会に新しく戦争予算の提案をするまでの数カ月であることをサドルはわきまえている。彼の計算ではその間おとなしくしていれば、アメリカ議会が予算を切り、ブッシュはイラク撤退を余儀なくされると踏んでいるのである。そうなったらまた兵を挙げればいい。増強された軍隊と真正面に戦ってやたらに人数を失う必要はないという考えだろう。サドル派はアルカエダと違って自殺願望ではないらしい。だが、この作戦にはいくつかの大きな問題がある。
まず第一に、意図的にしろ無理矢理にしろ一旦敵に占拠された領土を取り戻すとなると、もともとの領土を守るようなわけにはいかない。特に今回はアメリカ軍は完全に治安維持が保てるまで占拠した領土を数カ月はアメリカ軍で押さえ、その後にイラク軍に治安維持を受け渡すという作戦をとっている。バグダッド付近の警備に増派されるのは2万人のアメリカ兵だけではない。数万というイラク兵のことも忘れてはならない。
反戦派が何と言おうとアメリカ軍は野蛮人ではないので、占拠した市街地の市民を厳しく取り締まりはしても、理不尽な扱いはしない。地元民から金品を巻き上げるようなこともしなければ、婦女子を冒涜するようなこともない。それどころかアメリカ軍は一旦占拠した土地に学校をたてたり病院をたてたりするだろうし、地元のリーダーたちと協力して自治が可能な体制をつくるだろう。LATimesによれば、サドル派が占拠していた界隈でも民兵らの横暴な態度に市民からの不満が高まっていたという。サドル派民兵が留守の間に地元民による平和な自治が設立しイラク軍による警備が行われるようになっていたら、ただの愚連隊の民兵どもがそう易々とは戻って来れまい。
また、いくらこれがサドル派の生き延びる作戦とはいえ、それを教養のないシーア派民兵連中に理解することができるだろうか?これまで「占領軍」と言っていたアメリカ軍に媚びを売り、警備に全面協力しろなどという呼びかけは、単にサドルが自分の皮だけを救おうとしている臆病な手段なのではないだろうか、逮捕されたシーア派民兵が後で釈放されるという保証はあるのだろうか、サドルはおれたちを犠牲にして自分だけ助かろうとしているのではないだろうか、などという疑いがサドル派の民兵連中の間で生まれる可能性は大きい。民兵たちは正規軍ではない、ただのギャングである。何か月もサドルのいうことをきいて大人しくしているとは思えない。
自分勝手に暴れた民兵たちが大量にアメリカ軍やイラク軍に殺されるのは目に見えている。
そして、一般のイラク人たちはどう思うだろう? サドルが後に勢力を復活させるための「負けるが勝ち」という賢い手段だと解釈して感心するだろうか? バグダッドの地区が次々にアメリカ軍によって占領され治安が何か月も保たれたならば、はたしてイラク人はサドルの作戦を巧妙だと考え続けるだろうか?
最後にここが一番の問題だが、アルカエダの勢力は昔に比べたら大幅に衰えている。シーア派民兵が抵抗しなければバグダッドの治安はあっという間に安定する。つまり、サドルの思惑はどうでも傍目にはブッシュの新作戦が大成功をしたように見えるのである。アメリカ議会が新作戦に反対しているのはこの作戦が失敗すると思っているからで、失敗した作戦に加担したと投票者に思われるのを恐れた臆病者議員たちが騒いでいるに過ぎない。だが、新作戦が大成功となったなら、奴らは手のひらを返したようにブッシュにこびへつらうだろう。そして勝ってる戦争なら予算を削ったりなど出来なくなる。そんなことをすればそれこそアメリカ市民の怒りを買うからだ。
結果アメリカ軍は早期撤退どころか、イラクが完全に自治ができるまで長々と居座ることになるだろう。その間にアメリカ軍はなんとかサドルを殺す口実を作る必要がある。だが、サドルは所詮犯罪者だ。いずれ間違いを犯す。その時こそサドルを退治するチャンスである。
サドルの作戦は裏目にでるかもしれない。


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私が決断者だ!議会ではない、ブッシュ大統領が断言

今朝のニュースでは二つほどブッシュ大統領の決断に関する記事があった。先ずはブッシュ大統領がイラクへの増派について、決断をする権限があるのは大統領である自分だと断言したという記事。
ブッシュ大統領は新作戦に反対する決議案が民主共和の両党から提案されていることに関して、「私は一番成功する可能性のある計画を選んだ」「作戦がうまくいく暇も与えずに批判しているひとがいる」などと強い口調で反撃。そこまでいうなら自分達で成功する方法を提案してみろ、とまで言っている。
リベラル連中はすでにこのブッシュのきっぱりとした口調をあざ笑っているが、普通のアメリカ人はこういう強気の大統領を頼もしいと思うのではないかという気がする。大統領は国のリーダーであり、軍隊の総指揮官である。そのリーダーが権限もない議会の決議案で右往左往しているようでは戦争に勝てるはずがない。こうしてきっぱりと議会に挑戦状を叩き付けるとは、さすがジョージ・W・ブッシュ。
ホワイトハウスの芝生で記者からイラクにいるイラン戦闘員に対する扱いが厳しくなっているが、それがかえって暴力を激化させているのではないかという質問に対してブッシュは自分の方針を弁護しながらも、イランに戦争が拡大するという可能性については「そのような考えは正しくない」と答えた。「我々の方針は我が軍を守ることにある。理屈にあっている。」と付け加えた。
さて、そのイラクのイラン戦闘員の話だが、それが二つ目の記事だ。

イラクのイラン人工作員の「殺害承認」

ワシントン(2007.01.26、 CNN/REUTERS)米紙ワシントン・ポストは26日、ブッシュ大統領がイラク駐留米軍に対し、同国内で活動するイラン人工作員を殺害もしくは捕そくする権限を昨年秋に与えていたと報じた。この権限付与を直接知り得る立場にある政府やテロ対策当局者の情報として伝えた。…
同紙は、イラン人工作員の殺害承認について、一般人や外交官が対象ではなく、イラクの武装組織と関係するイラン革命防衛隊や情報機関の要員が主な狙いとも報じた。米軍は殺害承認を受け、特殊部隊を投入してはいないが、米政権高官は同部隊を使うよう促しているという。
イラクでは先月、米軍の3度にわたる捜索で複数のイラン政府関係者が拘束されている。カリルザード駐イラク大使は24日、拘束の容疑については近く発表するとの方針を示していた。ただ、米軍の捜索は、イラクへのイランの関与を示す治安要員のネットワーク追及の目的があったとしている。

イラク国内で戦闘員の訓練や武器、資金の援助などの工作をしているイラン人やシリア人は容赦しないというのもブッシュの新作戦の一部である。だからアメリカメディアが今さら驚くほどのことはないはずだ。
ブッシュ大統領は国境を越えてイランまで戦闘を拡大するつもりはないと言っているが、私はそれはちょっと疑わしいと思う。ブッシュのイラン工作員に対する新しい方針はイランへの牽制であると考えることも出来るが、イランのイラクでの介入があまりにもあからさまになった場合、ブッシュはその行為をそのままイラク内での工作員退治だけに留めておくだろうか?
もっともイランにそのような猜疑心を持たせておくのも悪くない。イランがアメリカ攻撃を真剣に心配するようになれば、核兵器開発への野心も鈍る可能性があるからだ。


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