「ロムニー候補の大統領当選は断固阻止されねばならない!」 リベラル新聞の行き過ぎ社説

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アメリカでは個々の新聞が社説などでどの候補者を支持するか明らかにすることは珍しくない。しかし、最近の新しい傾向なのか、リベラル派の新聞社が共和党大統領候補のミット・ロムニーを「反支持」する社説を掲載した。いや、単にロムニーを支持しないどころか、投票者にロムニーには投票するなと呼びかけているのである。
これは12月22付けのニューハンプシャー州はコンコードモニターに掲載された “Romney should not be the next president” (ロムニーは次の大統領になるべきではない)という題の社説だ。

共和党大統領候補を部品セットから築き上げるとしたら、スポーツマンで筋肉質な体系、レーガンのような髪、カリスマ的な演説スタイル、ぱりっとしたスーツといった部品を想像するだろう。それに加えて美人の奥さんにかわいい子供たち、大成功しているビジネス。これに大統領に必要なリーダーとしての知事の経験もちょうど良い加減にある。 そして共和党のおきまりの経費節約に減税をとなえ、加えて2008年の共和党の新しい姿勢である反移民政策を取り入れ宗教に焦点をあてればもう言うことない。

こうした要素をすべてあわせ持つのがミット・ロムニーだ。彼の不穏な姿はまさに次の大統領そのものだ。そしてロムニー候補の大統領当選は断固阻止されねばならない。

コンコード・モニターはどう見てもリベラルな新聞だ。過去にイランがレーガン時代になってから人質を返還したのはカーター大統領の努力のたまものなのだといった記事を書いてみたり、以前にもロム二ーの宗教について批判的な記事を載せたり、違法移民に運転免許書を発行すべきだなどといった姿勢をとったりしている。
しかしながら、社の方針はどうあれ、候補者が大統領になるのを「断固阻止せねばならない」などと書くのは、いくらなんでも行き過ぎである。これは新聞社がリベラルであるとか保守派であるとかにかかわらずジャーナリストとして一線を超える行動だ。
新聞社が「何々候補に投票すべき」というのと「誰々だけは投票してはならない」というのとではグランドキャニオンほどの溝があるとミスター苺は言う。これは一般人が「ヒラリーだけは勘弁してほしい」というのとは訳が違うのだ。一個人の意見と主流な新聞ではその影響力は比べ物にならない。
それにしてもコンコードモニターはいったいロムニーの何が気に入らないのだろう?彼等のあげる言い訳はあまりにもくだらなく理由にもなにもなっていない。

ロムニーのマサチューセッツ知事時代の経歴だけをおっていれば現実主義で穏健で、社会的な面ではかなりリベラルな面もあり民主党ともうまくやっていく才能のある人間だという印象を持つ。 一方で大統領候補としての選挙運動だけを追っていれば、彼は本格的な保守派でどんな犠牲をはらっても宗教右翼に迎合すると確信するだろう。この両方に注意を払ったとしたらいったい彼の根本には信念というものがあるのかどうか疑問が残る。

1994年の上院議員の候補者として、彼はライバル候補のテッド・ケネディより同性愛者の権利を守ると主張した。しかし近頃では同性愛結婚や養子縁組に反対であることを主張している。.
一時期彼は避妊具をもっと容易に手に入るようにしたいといっていたのが、後になって処方せんなしの避妊ピル販売を否決したりしている。
昔のロム二ーは投票者に自分は人工中絶を支持していると保証していた。「その点について揺らぐことはありません。」とロムニーは1994年に発言している。その時彼は親戚に起きた違法中絶の失敗の悲劇を引き合いに出し、人工中絶は合法で安全な形で保つべきだと語った。しかし最近では彼は自分は プロライフ(カカシ注:命を尊重するという意味だが、一般的に人工中絶に反対な意見をいう。)だと言っている。
ロムニーは幹細胞の医学調査を支持すると言っていた時があった。その時ロムニーは自分の妻の多発性硬化症を理由にこのような調査は彼のような家族を助けることになると説明した。しかし最近は主に調査に反対している。知事候補時代のロムニーは反税金政策はギミックだといっていたが、最近は(反税金議案に)まっさきに調印している。.
人は変わるものだ。変化がないことが人徳とは限らない。しかしロムニーのこうした変化は自分の野心のためだけの何者でもないことが参権者には明らかだ。

日本の読者のみなさんには、ロムニーの変化がどういう方向へ向かっているのか分かりにくいと思うが、実は彼の変化は一方通行であり、すべてが左から右への変化なのである。しかも彼の変化は突然おきたものではなく、数年にかけてじょじょに起きたものなのだ。 つまり、こんコードモニターは「ロムニー候補の大統領当選は断固阻止されねばならない」理由はロムニ年をとって経験を積むにつれて保守的になってきたからだというのである。
保守派の共和党支持者の間でも最初から右翼でない人間を疑う傾向があるとはいうものの、現実として一般人は年をとって人生経験を積むにしたがって保守的になるのは普通だ。こうした変化をとげたことで有名なのは保守派の英雄ロナルド・レーガンその人がある。ほかにも元はリベラルだったのが保守派にかわった、いわゆるネオコンと呼ばれるひとたちはいくらでもいる。年をとってから右から左へ移行するという例外がないわけではないが、そういう例は非常に稀である。
こんな一般的な心変わりをロム二ーの大統領当選を反対する理由にあげることからして、これがコンコードモニターの本音でないことは明らかだ。なぜならこのような変化なら他の共和党候補者であるマケインにしろ、ハッカビーやジュリアーニにしろ皆体験しているからだ。
リベラルなコンコードモニターは必然的に民主党支持だ。そのモニターがロムニーに強く反対するということは、ロムニーなら民主党の候補者を破れる可能性が強いと踏んでいるからだ。はっきり言って敵側の助言を聞くほど愚かなことはない。モニターが押している共和党の候補者はマケインもしくはハッカビーだが、その理由は明白だ。この二人は非常に個性が強くその政治的方針もかなり極端なため共和党全体がまとまって支持しない可能性が高いのである。
例えばジョン・マケインだが、彼はイラク戦争などの国防には強いが社会的な面では非常にリベラルだ。マケイン上院議員のおかげでブッシュ政権のもとで保守派の裁判官任命がかなり阻止されてしまったことでマケインに腹をたてている共和党支持者は少なくない。一方マイク・ハッカビーはマケインと正反対に福音書宗教右翼の支持を強く受けているが、極右翼過ぎるため穏健派世俗主義の共和党支持者に敬遠される嫌いがある。なんにしてもこの二人では共和党はまとまらない。
過激派宗教右翼は別として一般の保守派はロム二ーがモルモン教徒であることを特に気にしていないし、ジュリアーニの保守派の裁判官を任命するという公約を信じて、彼の人工中絶支持には目をつむる用意がある。つまり、ロム二ーやジュリアーニには共和党をまとめる力があるが、マケインやハッカビーは票を割る可能性が高く、従って民主党候補に有利になるというのがコンコードモニターの狙いなのだ。
だから民主党大統領当選の最大の障害物であるミット・ロムニーの大統領当選は断固阻止されねばならない、、ということになるわけだ。そういう本音を隠して理由にならない理由をあげてロム二ーの評判を落とそうなどとはいくら社説とはいえ、主流新聞としてはあるまじき態度である。


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米大統領州予選始まる! ミスター苺のアイオワコーカス予測!

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本来ならばもう少したってから始まるはずの米大統領地区予選だが、どの州も早く早くと勇み足で最初の大統領選挙アイオワ州コーカス地区予選はなんと1月4日に行われる。以前にもちょっと説明したが、もう一度この地区予選について簡単に説明しておこう。

(2008年)11月にある大統領選では共和党と民主党それからあまり意味はないが他党からそれぞれ候補者が出て争う。しかしその前に各党は自分らの党を代表する候補者を選ばなければならない。これが大統領選挙の予備選挙である。この候補者の選び方なのだが、各州でどのように候補者を選ぶかは一般市民が選挙で選ぶプライマリーと党員だけで決めるコーカスと呼ばれる会合の二つがある。そこでその州が一番適当と考える候補者が選ばれる。候補者たちはこうやって州の支持をひとつひとつ得ていかなければならない。だから全国的に人気のある候補者でも地方での予備選で勝てるという保証はないのである。

さてこのアイオワコーカスがどのように展開されるか、ミスター苺の予測を提示しておこう。以下、ミスター苺のアイオワコーカスの結果予測。
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僕はいつもちゃんとした情報もないうちに決定的な予測をするのが好きなんだよね。だから後になって完全にアホにみえる機会が最大限楽しめるってわけよ。
という楽しい考えのもとに、僕は予測する:

  1. 共和党ではミット・ロムニーがマイク・ハッカビーを6点差くらいで破る。
  2. 民主党ではバラク・オバマがヒラリー・クリントンにロムニーとハッカビーの差より小さい点差で勝つ。
  3. 共和党ではジョン・マケインが三位になる。
  4. 四位が誰かなんて誰も興味ない。
  5. マケインはニューハンプシャー予選までは継続するのは確かだが、そこでミット・ロムニーに僅かの差でも負ければ、サウス・カロライナ予選の前に(ミシガンとネバダのあとくらいかな)出馬を取り下げるだろう。

さて、この五つの予測をすべて外して大恥をかくことになるかどうか楽しみだね。
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民主党では無論三位はジョン・エドワーズだろうけど、彼がもう少しがんばってないのは意外だ。
最近共和党の間では宗教右翼のハッカビーが人気急上昇なのだが、カカシはハッカビーはすでに予選前にピークを迎えてしまったと考えている。これは2004年の大統領選で過激派左翼の民主党候補ハワード・ディーンが予選前の支持率がだんとつだったのに、いざ予選となったら完全にポシャってしまったのとよく似ている。


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CIAが拷問テープを破棄していたって、だからなんなのさ!

喉元過ぎれば熱さ忘れるとはよくいったもので、最近のアメリカ議会は一度は容認していたテロリストへの拷問に後ずさりしはじめている。テロ攻撃直後には多少乱暴な扱いをしてもテロリストから重要な情報を得られればかまわないとCIAによる尋問を容認した政治家や裁判所も、911のショックから時間がたつにつれて、どうやら国内でのテロ攻撃はおこりそうもないとなってくると、その安全をもたらす要因となった水攻めは非人道的だからやめるべきだと言い出し、その拷問をおこなったCIAを責めはじめるという有り様だ。アメリカ国内で911に次ぐテロ行為が起きていないのも、CIAの水攻めによってテロリストから絞り出した情報が重要な要因となっているのだということなど左巻きの政治家や裁判所は完全無視である。
最近Central Intelligence Agency(CIA)という組織そのものへの信頼感は薄れているが、CIAがテロリストを尋問した際の記録テープを秘密裏に処理していたという話には、私はそれほど怒りを感じない。いや、それどころか、そんなものは破棄してもらって助かったとさえ思っている。
いまのアメリカの内政を考えれば、こんなテープが存在していれば、CIA内部でブッシュ大統領に反感をもっている工作員がテープを漏えいし、アルジェジーラだのYouTubeなどで放映されるなんてことは想像に難くない。そうなったらこれは反米意識をあおるプロパガンダになるだけでなく、テロリストたちに諜報部員の顔やアメリカの諜報部の尋問方法がばれて暗殺や訓練材料として使われるのが落ちだ。そのようなテープは用がすんだらさっさと破棄するのが妥当である。
はっきり言って、こちらの人間を拉致しては目ん玉くり抜いたり首をかっ切ったりしてるテロリストを相手にやわな方法で情報が得られると考えるほうが甘い。
これについて2004年に行われた911調査委員会の調査中に、CIAがアルカエダのテロリストを拷問していたテープの存在を意図的に隠していた可能性があるとして、それが連邦法に違法となるかどうか現在吟味されていると数日前のニューヨークタイムスが報じている。
CIA側はテープを調査委員会に提出する用意はあったが、特別に要求されなかったので提出しなかっただけで、意図的に隠していたわけではない。また委員会の調査中はテープ提出の要求を考えて破棄せずに保存してあったともしている。はっきり言って、CIAが意図的に隠していようといまいと、問題なのはCIAがテロリストを拷問して得た情報がアメリカの警備に役に立ったのかどうかということであって、テロリストをどうやって尋問したかなど私はあんまり興味がない。

諜報部高官によると、破棄されたテープには2002年にアブ・ズバイダーとアブド・アル・ラヒム・アルナシリという二人のアルカエダ容疑者が同年CIAに拘束された際の何百時間にわたる尋問の様子が記録されていたという。

げんにアブ・ズバイダーを2002年3月にパキスタンで捕まえたチームのリーダーだったCIA元工作員のジョン・C・キリアーク(John C. Kiriakou)氏によれば、水攻めをされるまで堅く口を閉じていたズバイダーも、水攻め後たった35秒で何もかも白状しはじめたという。
キリアーク氏自身は水攻めは非人道的であり今後はされるべきではないとしているが、彼自身、大事な情報を得るためには必要な方法だったと認めている。
これはCIA工作員だけに限らず軍隊などでもいえることだが、政治家のなかには必要な時に一般市民が尻込みしてやりたがらない汚い仕事を腹の座った特別な男女にやらせておいて、危険が去って汚い仕事が不必要になってくると、その汚い仕事をやった人間を忌み嫌い、場合によっては罰っせよなどという輩がいる。いったい現在の平和や安全は誰がもたらしたと考えているのだ?誰もやりたがらない汚い仕事を誰かがやってくれたからこそではないか!
私はこういう傾向は非常に危険だと思う。必要な時には合法だといって促進された方針が、いったん不必要になると違法行為だといって過去にさかのぼって罰せられるとなったら、いったいどんなお人好しがCIAや軍隊に入って国の安全のために戦おうなどという気になるというのだ?
政府や裁判所が一旦は必要だと考え合法とした方針は、たとえ状況がどんなふうにかわっても、過去にさかのぼってそれを施行した人間を罰するようなことがあってはならない。過去の法律での合法行為は現在の事情で違法行為とみなされてはならない。政府の方針が一貫しないと世の中は乱れる。特に汚い仕事を率先してやってくれる特別な人間たちは、敵にまわしたらこわいことになる、、ということを左巻きの平和ぼけ政治家たちは考えるべきだ。


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信仰と政治の両立は可能か? ミット・ロムニー候補の演説を考える

共和党大統領に立候補しているミット・ロムニーマサチューセッツ元知事は、モルモン教徒であるということで、福音書右翼や世俗主義左翼から、大統領にふさわしくないという批判を多く受けている。
モルモン教はその始まりが過激思想のジョン・スミスとその妻エマによって創設されたが、そのあまりの過激さにジョン・スミスは暗殺され、教徒は追放の憂き目をみた。二代目のブリガミア・ヤングは自由の地をもとめて従者をひきつれ旅にで、ユタ州におちついた。しかしその後もモルモン教はテロリスト的な暴力行為を繰り返し、主流キリスト教徒たちからは「カルト」として忌み嫌われた。彼等の一夫多妻制度も長いこと批判の対象となっていた。
しかし時とともにモルモン教は主流化し、今ではごく普通のキリスト教の一宗派として受け入れられている。一夫多妻制度など、とっくの昔に破棄されており、ミット・ロムニーは二十何年前にめとった最初の細君といまだに円満だ。カトリック教徒なのに三回も離婚しているジュリアーニ元ニューヨーク市長とは大違いである。
にも関わらず、ロムニー候補に対する「モルモン教徒」批判は強まる一方である。そこで数カ月前から、ロム二ーは昔、ジョン・F・ケネディがアメリカで初のカトリック教大統領となるべく立候補した時にしたように、自分の信仰と大統領としての信念を国民にきちんと説明する必要があるといわれてきた。ロム二ーは最近ぱ浸礼派教徒の候補者マイク・ハッカビーに押され気味でもあり、1月のアイオワコーカスを前にここはひとつ演説をぶっておかねばならないと考えたようだ。
その演説が、先日パパブッシュの大統領図書館において行われた。上記のリンクからビデオをみることが出来るので、英語のヒアリングに自信のある方はぜひ演説を聞いていただきたい。
まずロムニー候補は先の大統領の紹介に感謝した後、パパブッシュが第二次世界大戦中に戦闘パイロットで活躍し、のちに敵に撃ち落とされたのを米潜水艦に救われたという話をし、先代はアメリカの自由を守るために常に立ち上がって戦ってくれたと讃えた。これが先の世代が「偉大なる世代」といわれるゆえんだとし、自分達の世代が直面するイスラム過激派テロリストによる脅威、国家の莫大な負債、石油の使い過ぎ、離婚問題といった問題をかかえ、先代に見習って自由を守るために戦わねばならないと演説をはじめた。

人によっては、我々の直面する脅威において宗教など特に真剣に考える必要はないといいます。しかし彼等のそうした考えはアメリカ国家創設者たちの考えと異なります。 国家創設者たちは国家の偉大なる危機に瀕した時、創造者の祝福を求めました。そしてさらに、自由な国の生存と宗教の自由を守ることが深くつながっていることを発見したのです。ジョン・アダムスの言葉ですが、「道徳と信仰によって、束縛を解かれた人間の情熱と戦うことができるほど、強く武装した政府は存在しません。我々の憲法は道徳的で信仰心の強い人々によって作られたのです。」
自由は宗教を必要とし、宗教は自由を必要とします。自由は心の窓を開け放ち、魂が神と一体となるためのもっとも重大な信仰を発見することができるのです。 自由は宗教と共に耐え、宗教なくして滅びるのです。
….
50年ほど前、マサチューセッツ出身のもうひとりの候補者が、彼はアメリカ人として大統領に立候補しているのであり、カトリックとして大統領に立候補しているのではないと説明しました。彼と同じように、私もアメリカ人として大統領に立候補しています。私は自分の候補性を私の宗教で形作るつもりはありません。人は、宗教が理由で選ばれるべきでもなければ、宗教ゆえに拒絶されるべきでもありません。
私の協会も、いやそれをいうならどの協会も、私の大統領としての決断に影響を及ぼすことはないと保証します。彼らの権限は彼らの協会内部にのみあるのであり、彼らの権限の境界から国の政が始まるのです。
…..
人によってはそのような保証だけでは不十分だと言います。彼らは私が単に私の宗教から遠ざかるべきだといいます…私はそのようなことはしません。私はモルモン教を信じ、その教えに従って生きるつもりです。
…..
私の信仰に対するこのような告白は私の候補としての立場を危険にさらすことになるという人がいます。もしそれが正しいのであれば、それは仕方ありません。しかし私は彼らはアメリカ市民を見損なっていると思います。アメリカ市民はたとえ世界を得るためでも、自分の信じるものをおざなりにする者を見飽きているのです。

ここでロムニーはイエス・キリストをどう考えるかという説明を始める。モルモン教と福音書ではこのあたりでかなり違った教えがあるからなのだろう。しかしロムニーは自分がモルモン教の教えをつぶさにせつめいする義務はないと語る。なぜならば、そのようなことをするのは国の創設者たちが憲法で禁じた宗教の試験をすることになるからだ。ロムにーが、「どんな候補も彼の宗教の報道官になるべきではありません。そして彼が大統領になったときは彼は人々のすべての信仰によるお祈りを必要とするのです。」と言ったところでは、会場から一斉に歓声が沸いた。
ロムニーは宗教こそがアメリカ国家の基盤だとしながらも、どの宗教を個人が選ぶかは個人の自由だとしている。そして政教分離の大事さを唱え、どのような宗教も政府を独裁してはいけないし、宗教の自由を迫害してもいけないと語った。しかし最近の公の場での宗教関係のシンボルがことごとく取り除かれている傾向については、これはアメリカ国家創設者たちの意図に反するものだと主張した。このような行為は世俗主義という宗教の押し付けであり間違っているとロムニーは言う。また、大統領となった暁には保守派の裁判官を任命するという意志を次のようにあらわした。

創設者たちは、国家宗教の設立は禁じましたが、公共の場から宗教を取り除けなどとはいっていません。私たちは「神の元に」そして神の中にある国家で神を信頼しています。私たちは創設者がそうしたように創造者の存在を認めるべきです。神は私たちの貨幣にも、私たちの宣誓にも、歴史の教えのなかにも、そして祝いの季節のあいだも、残るべきです。キリスト降誕の図やマノラは公共の場で歓迎されるべきです。わが国の偉大さは憲法の元となった信仰の基盤を尊敬する裁判官なくしては長くは持ちません。私は政府の政と宗教の分離に関してはきちんと計らいます。しかし、私は自由をもたらした神から人々を離すようなことは致しません。

宗教保守がこれを聞いて気分が悪いはずがない。なにしろリベラルな裁判官によって何かと宗教が迫害されている今日この頃、公共の場での宗教シンボル掲示は政教分離の精神に反さないという裁判官を多く任命してもらえるかどうかは非常に大切な問題だ。
ロムニーは大事なのは大統領が宗教を基盤にした、平等、助け合い、自由の保護といったアメリカの価値観をもっているかどうかなのであり、このような価値観はどの宗派を信じていても同じだという。この宗教の価値観によってアメリカはまとまってきたのだと語る。
アメリカ人は皆自由は神からの贈り物であることを知っている。アメリカほど自由のために自らを犠牲にして戦ってきた国はないとロムニーは言う。このアメリカの価値観と道徳的伝統はロムニー自身の宗教にも他の宗教にも共通するものだ。
現在のアメリカ人は常に宗教の自由を経験してきたので、そういう自由が無かった時代を忘れてしまったのかもしれないとロムニー。ヨーロッパから宗教弾圧を逃れるために新世界へ逃げてきた人たちが、今度は自分達が異教徒を迫害する立場になったりした歴史を振り返り、ロムニーはアメリカの創設者こそが、フィラデルフィアで「自由とは何か」という画期的な定義付けをしたのだと語る。
ロムニーは自分が欧州を訪れたとき、国教のあった国々には美しい教会がいくつもあったが、礼拝者がいずに空っぽのところが多かったという。これは一重に国が国民に宗教を押し付けたことが原因だという。宗教を国民に押し付けることも悪いが、それ以上に悪いのは過激派聖戦主義者が暴力で人々を改宗させようと言う行為だ。我々はこれまでには無かった偉大なる危機に瀕しているとする。ここでロムニーは対テロ戦争にも真剣に取り組むつもりだと国民に約束しているわけだ。
アメリカの創設者たちは、イギリスとの独立戦争に面して、宗派の違うもの同士がアメリカの愛国者として心をひとつにして祈った過去をもう一度語りかける。

この精神を、神聖な自由の著者に感謝し、一緒にこの国が常に自由の聖なる火にともされ神に祝福されるよう、祈ろうではありませんか。

神よアメリカ合衆国にご加護を与えたまえ!

このような演説を聴くと、日本の読者の皆様は何か神がかりすぎて変な印象を受けるかもしれない。だが、ロムニーが今捕らえなければならない投票者は世俗主義のリベラルではなく、信心深い宗教右翼なのである。ロムニーの最大のライバルであるマイク・ハッカビーは、ロムニーの宗教は本物のキリスト教ではないとでも言わんばかりに、自分は「キリスト教徒の候補だ」とテレビでビデオコマーシャルを流しているほどなのである。
ロムニーは今の時点で無所属やリベラルの支持を得る必要は全くない。大切なのはアイオワとニューハンプシャーで保守派の票を稼ぐことにある。だから自分が信心深い人間であり、アメリカの基盤となっているイエス・キリストが救世主であることを信じていると主張することで、他のキリスト教宗派にこの人間は安全だと信用してもらうことが大事なのだ。私はロムニーはこの演説でそれをやり遂げたと思う。


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米フェミニストの偽善を暴いたモハメッドという熊のぬいぐるみ

最近イスラム圏の二つの国で女性を虐待する二つの事件が起きた。そのひとつはスーダンで小学校の教師をしていたイギリス人女性が生徒たちがマスコットにしているぬいぐるみの熊に「モハメッド」という名前をつけることを許可したことが、イスラム教を冒涜するとして15日間の禁固刑を受けたこと。そしてもうひとつはサウジアラビアで集団強姦された女性が強姦された際、親族でない男性と外出していたという理由で反対にむち打ちの刑にさらされることになったという事件だ。
まずはスーダンのイギリス人女性教師の事件

ハルツーム(CNN) スーダンの学校での授業中、ぬいぐるみのクマにイスラム教の預言者ムハンマドの名を付けたとして有罪判決を受け、バシル大統領から恩赦を与えられた英国人教師ジリアン・ギボンズさん(54)が、スーダンを出国した。英外務省関係者が3日明らかにした。

ギボンズさんはスーダンを訪問した英上院のイスラム系議員を通じて声明を発表し、「わたしはイスラム教を尊重しており、他人を傷つける意図はなかった」と述べ、自身の行動が苦痛を与えたことについて謝罪を表明した。
ギボンズさんは裁判所から国外退去を命じられた数時間後、旅客機でスーダンを離れた。ドバイ経由でロンドンに向かっており、4日未明にヒースロー空港に到着する予定。空港でマスコミ向けに声明を発表するとみられている。

この記事には詳細が述べられていないが、スーダン政府の15日禁固刑に不満をもったスダーン市民たちギボンズさんの処刑を要求して町で暴力的なデモンストレーションを行っていた。スダーン政府がギボンズさんを国外退去したのも、イギリス政府への遠慮と国内のイスラム市民への配慮との間をとった苦肉の策だったといえるだろう。
そして二つ目のサウジアラビアの事件

サウジアラビアの裁判所はこのほど、集団強姦罪で有罪とされた被告らの上訴審で、被害者の女性側の主張を受け入れて被告らの刑を重くする一方、女性の刑も加重する判決を言い渡した。女性の弁護士がCNNに語った。
集団暴行を受けた女性(19)は昨年の裁判で、親族ではない男性と会ったとして、むち打ち90回の刑を言い渡された。それが、14日の上訴審判決では、6カ月の服役とむち打ち200回の刑に加重されたという。
女性と友人男性を拉致・暴行した7被告に対しては、裁判所が昨年、10カ月〜5年の服役刑を宣告。女性側は死刑が妥当として、この判決への不服を表明していた。上訴審では、7被告に2年〜9年の服役刑が言い渡されたという。
女性の弁護士は「被告だけでなく、被害者の刑まで変えられたことに衝撃を受けている」と話している。裁判所はこの弁護士資格を取り消し、司法省の調べに応じるよう命じたという。
英字紙アラブ・ニューズは情報筋の話として、女性側がメディアを通じて裁判所に影響を与えようとしたことが、刑の加重につながったと伝えた。

カカシがイスラム教が嫌いな一番の理由が女性虐待の方針だ。これは単に女性蔑視などという概念では片付けられない。強姦の被害者が辱めをうけて世間に顔向け出来ないと感じるというのならまだ理解できるが、裁判所が被害者を罰するなど言語道断だ。これでは強姦の被害者が訴え出るなどということは絶対に出来なくなる。本来ならば親族の男性に復讐をしてもらいたいところだが、イスラム社会ではやたらに被害者が親族に訴えようものなら、親族を辱めたといって反対に実の兄弟に殺されかねない。要するに女は男の冒涜に黙って耐えよというのがイスラム教の教えなのだろうか?
さて、このような男尊女卑の裁判に対してアメリカではなにかと女性の人権問題で口うるさいフェミニストたちはどれほどの抗議をしているかというと、これが完全なる沈黙を守っている。
元全国女性協会(National Organization of Women, NOW)のテキサス支部長だった、タミー・ブルースがこのアメリカのフェミニストたちの偽善について書いている。(私の記憶が正しければ、先の大統領ビル・クリントンのセクハラ事件を巡ってタミー・ブルースはNOWがクリントンを批判するどころか、クリントンを弁護し、かえって被害者を攻める姿勢をとったことでNOWを辞任した。)

どうやら(スダーンでは)かわいい熊をモハメッドと名付けるのは予言者への冒涜だが、モハメッドと名乗る男が大量殺人を犯すのはイスラムへの冒涜にならないらしい。

少なくとも過去14年間にわたって、特に1993年にオサマ・ビン・ラデンが西洋文化に宣戦布告をして以来、私たちはイスラム原理教の狂気に直面してきた。そして同時に、いかにアメリカの左翼が臆病かということが暴露された。 その通り、ぬいぐるみの熊をもってして敵の精神異常性に焦点が当てられたと同時に、(アメリカの)フェミニストのだらしない実態が明らかにされたのだ。
国際社会のほとんどからギボンズへの仕打ちに適切な怒りが向けられた、ただしアメリカのフェミニストは例外だ。イギリス国内の数々のイスラム教団体がこの判決を批判した。ギブソン先生のクラスで人気者の男の子ですら先生の弁護に出て、熊は自分の名前からつけたと説明している。
しかし、フォックスニュースからコメントを求められたNOWの代表者は「このことについて見解を述べるつもりはない」と答えている。
これほどアメリカの左翼は堕落してしまったのだ。スダーンの幼いモスリムの男の子のほうがワシントンにいる「女性人権の代弁者」と自称する女性集団よりもよっぽども攻撃を受けた女性を守ろうという勇気と信念を持っている。
もう何年もアメリカのフェミニストの体制は便宜上フェミニストを名乗って民主党左翼のサクラと成り果てていることはあきらかだった。NOWやエレノア・スミールのフェミニストマジョリティーなどというグループは過去五年間に渡るイスラム教テロリストの女性への暴力に完全沈黙を守ってきた。女性問題は彼女たちにとって政治的勢力を得るためにがなり立てる便利なスローガンに過ぎない。
彼女らの悪意に満ちた沈黙はギボンズさんの事件に留まらない。サウジアラビアでは集団強姦された犠牲者が200回のむち打ちと6か月の禁固刑という判決を受けている。なぜかといえば、それは彼女が(強姦された時)親族でない男性と外出というシャリア法に違反する行為をとっていたからだ。彼女が生意気にも控訴したことで彼女の刑はより加算されたのだ。
このような奇怪な暴行にNOWやフェミニストマジョリティーの反応はどうかといえば、ジリアン・ギボンズの時と同様、全く同じく無反応。何故ならば(神よ禁めたまえ)戦うに値する邪悪な敵が存在するなどと認めるわけにはいかないからだ。そして(神よ禁めたまえ)一人の女性のためにアメリカが邪悪な帝国主義ではないかもしれないなど人々に気が付かれては困るからだ。

これは決してフェミニスト団体だけのことではないが、1960年代に創設されたアメリカの人権擁護市民団体はことごとく共産主義者や左翼主義者に乗っ取られてしまった。いまや彼等は人権擁護も女性問題も人種問題も興味がない。あるのはどれだけこれらの問題を悪用して自分達の政治的勢力を得られるかということだけだ。彼等は常に自分達こそが弱いものの味方だと言って、平等と公正を求める保守派を冷酷だとか男尊女卑主義だの人種差別者だのといって批判してきた。
だが、彼等こそが体制のみを重んじ、イスラム圏で野蛮人に教養をつけようと出かけていった善良なギボンズおなご先生や、か弱い19歳の乙女が冒涜されたことなど、自分らの政治勢力獲得に役に立たないものはことごとく無視するか邪魔になるものは敵視するかしかしない冷酷な人間どもなのだ。
タミー・ブルースはここ数年に渡ってアフガニスタンやイラクで婦女子虐待の悪を駆除するため感謝もされず認識もされずにひたすら戦ってきたのはNOWやリベラルや左翼が忌み嫌うアメリカ軍隊そのものだという。アメリカの海兵隊が自称フェミニストから命令を受けていたなら、彼等がこれまでに解放した何百万という女性たちがいまでも奴隷生活をしいられていたことだろうとタミー。
まさしくその通りだ。本来ならば女性虐待のイスラム教過激派の冒涜を真っ先に糾弾し、その過激派の悪と戦うブッシュ政権を率先して支持すべきアメリカのフェミニストたち。しかし彼女等の本性は女性人権擁護でもなんでもない。彼女たちの本来の目的は共産主義の促進だ。女性人権問題など単なる道具にすぎないのである。
無邪気なこどもたちのマスコット熊のぬいぐるみがアメリカフェミニストたちの偽善を暴くことになったのだ。


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共和党討論会YouTube質問に民主党運動員を潜入させていたCNN!

今日アメリカの保守派ブログをいくつか読んでいて、昨日の共和党討論会におけるCNNによる信じられない陰謀を知った。なんと討論会を主催したCNNが採用した共和党大統領候補たちへのYouTubeでの質問の多くがヒラリーやエドワーズの選挙運動員によるものだったというのだ!
詳しいことをミッシェル・モルキンがまとめているのでここで、そのいくつかを紹介しよう。

  1. イスラムに関する質問をしたのはイスラム教市民団体でテロ組織と深い関係もあるCAIRの元インターンだった。
  2. 年金問題について質問した男性は民主党上院議員ディック・ダービィンのところで年金関係の仕事をしている人だった。
  3. とうもろこし生産援助に関する質問をした男性は民主党下院議員ジェーン・ハーマンの元インターンだった。
  4. 人工中絶について質問した若い女性ジャーニーと、子供二人とビデオに映っていたリアーンという若い母親は二人とも民主党大統領候補のジョン・エドワーズの支持者だった。
  5. 共和党同性愛政治団体のメンバーだと言っていたデイビッドという若い男性は実は民主党大統領候補のバラク・オバマの支持者だった。
  6. 軍隊の同性愛政策に批判的な発言をした退役軍人キース・カー准将はヒラリー・クリントンの支持者だった。

このほかにもまだかなりあるらしいのだが、何千と応募のあったビデオ質問のなかから、限られた時間で放映されたビデオのなかにこれほど多くの民主党支持者が入っているというのは偶然にしては出来過ぎている。CNNがこれらの人々の政治背景を知らなかったと言い訳するにしては、ここに登場した人々はこれまでにネット上で自分らの意見を大々的に発表しており、本名で検索すれば彼等のホームページや彼等が製作したビデオなどを簡単に見つけることができる。たとえば人工中絶について質問したジャーニーなる女性は別のビデオで「ジョン・エドワーズ’08」と書かれたTシャツを着ているし、共和党員だといっているデイビッドなる男性のHPのプロフィールで「私がバラク・オバマを支持する理由」といってオバマを称えているのを読むことができる。ミッシェルのページでこれらの映像が載っているので興味のある読者は参照されたし。
ま、CNNが民主党寄りなのはすでに周知の事実ではあるが、ここまであからさまに民主党のプロパガンダに協力するとは恥知らずにもほどがある。
それにしても、YouTubeというネット機構を使いながら、ネット検索という強い道具に気が付かなかったというのもCNNの間抜けぶりが伺われる。こんな子供だましが今時通用すると思ってるのだから。


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信用度低い、ヒラリーが共和党候補には勝てないというゾグビー世論調査

ヒラリー・クリントンがアイオワコーカスでは不利な模様だという話をこの間したが、昨日ゾグビーの世論調査で共和党候補との一騎討ちではバラク・オバマとジョン・エドワーズのほうが有利だという結果が発表された。

調査結果によると、クリントン氏は、共和党のジュリアーニ前ニューヨーク市長、ロムニー前マサチューセッツ州知事、マケイン上院議員、トンプソン元上院議員の4候補との比較でそれぞれ5~3ポイント差で敗れた。7月時点では4候補全員に勝っていたが、今回逆転された。無党派、若年層の離反が響いたという。

一方、オバマ氏は共和党4候補に全勝。民主党3番手のエドワーズ元上院議員も3勝1分けだった。クリントン氏は全米規模の支持率で首位を維持。このため民主、共和両陣営からの批判を一身に集めていることが苦戦の背景にあるとみられる。

ヒラリーおばさんだけは勘弁してもらいたいカカシとしてはこの話は一見良いニュースだ。残念ながらこの調査、そう手放しで喜べるほど信用できるものではないのだ。まず世論調査というもの、特にまだ選挙まで一年近くもあるこの時期に行われるものはあまり当てにならない。しかもこれはオンラインアンケートで、9,150人を対象に11月21から26日にかけてオンラインで行われたという。
対象がオンラインで政治アンケートに答えるくらい四六時中コンピューターに張り付いている人間だということと、対象となったサンプルが少ないということを考慮にいれるべきだろう。我々はオンライン人間だから何でもかんでもオンラインですることが普通になっているが、まだまだ一般市民はそれほどオンラインに頼っているわけではないのだ。
1948年にシカゴ・トリビューンが大統領選挙の世論調査を電話アンケートで行ったことがある。その結果実際には圧勝したトゥルーマンが惨敗するという結果が出たという。これは1948年当時に電話を持っていたエリート市民だけを対象にしたことによる偏った結果に問題があった。今回のオンライン調査も似たようなものである。
ミスター苺によると、アメリカの世論調査は往々にして民主党のサンプルをとり過ぎるそうだ。これは意識的にそうしているというわけではないが、週末に電話でアンケートをとる場合、週末は家族サービスで忙しい共和党支持者はながながとアンケートに答えずにきってしまうことが多い。民主党支持者が多い都市部での調査は自然と民主党に偏ってしまう。むろんこの偏向は単に返答した人たちの投票登録がどちらの党かを聞くことによって、調査結果をアメリカの投票登録者の割合と調整すればいいだけの話なのだが、一般の調査会社はこれをしない。彼等の理屈は共和党に登録している人間が必ずしも共和党候補を支持するとは限らないからだというものだ。これは阪神ファンが巨人と阪神のどちらがいいチームかときかれて、巨人と答える可能性が大いにあるといっているのと同じで馬鹿げた理論なのだが。
無論、今回の調査は民主党支持者だけが対象だから民主党よりの偏向は影響をもたない。だが、今回の偏向はオンライン使用者のみという対象にある。世論調査ではサンプルが一番大切だ。誰を対象にしたか、それが一般の人口分布を反映しているかどうか、それがはっきりしなければその調査結果は意味あるものとはいえない。
そういう意味で今回のゾグビー社の調査はそれほど信用のおけるものとは言えないのだ。


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イラク治安向上で作戦に悩む民主党大統領候補たち

今日のニューヨークタイムスにイラク情勢が良くなっていることから、ペトラエウス将軍の新作戦に真っ向から反対していた民主党の候補者たちは新作戦が大成功を遂げている事実を前にどのように自分らの選挙運動を繰り広げていくか難かしい立場にたたされているとある。
面白いのはこのNYTの記事はいかにして民主党候補がこの状況を乗り切るかという選挙運動作戦への助言のように書かれていることである。さすがニューヨークタイムス、民主党支持の偏向を隠す気もないらしい。

ヒラリー・ロダム・クリントン上院議員とバラク・オバマ上院議員の選挙アドバイザーたちは、増派後のイラクにおいて警備状況が良くなっているという事実を見てきた以上その成果を認めないのは間違いだと結論づけている。しかし同時にアメリカ軍の死傷者はまだ多すぎること、早急な撤退こそがこの戦争を終わらせる唯一の方法であり、いわゆる増派はイラクの政治過程には成果をあげていないことを強調している。

つまり、アメリカ軍の努力は認めながらも、まだまだ十分ではないという主題で貫こうという作戦のようだ。なにしろイラク戦争の失敗を振り上げてブッシュ政権並びに共和党を攻撃してきた民主党だけに、戦争に勝てそうだなどという現状は非常に都合が悪いわけだ。
しかしニューヨークタイムスは、民主党候補たちは気をつけないと共和党候補者らに、勝てる戦争を時期尚早な撤退によって負けようとしている、民主党は敗北主義だ、と攻撃されかねないと指摘する。
攻撃されかねないもなにも、実際敗北主義なのだから仕方ないではないか。選挙に勝つためになんとかアメリカにはこの戦争に負けてもらわなければならない連中なのだから。

「イラクの希望的な状況が続く限り、一般選挙におけるイラク関係の政治は劇的な変化を遂げるでしょう。」とブルッキングス・インスティトゥーションのマイケル・E・オーハンロン氏。氏はクリントン女史の支持者であり、軍隊増派賛成派でもある。「もしイラクが少しでも救いようがあるなら、候補者としてどのように救うのかを説明することが大事です。どうやって戦争に負けずに軍隊を撤退させるのか、民主党は何と言うか自分らを追い込まないように非常な注意を払う必要があります。」

本当は戦争に負けたいが、それを言っては一般国民の支持は得られない。軍隊バッシングはジョン・ケリー候補者の失言でも分かるように大統領候補としては致命的。しかし撤退をうりものにしてきた候補者たちが突然撤退しないと主張すれば民主党の反戦派市民からの反感を買うので、そうするわけにはいかない。とはいえ勝てる可能性の出てきた戦争から兵を撤退させることがアメリカにとって良いことなのだと国民を説得するのは至難の業である。
最近の民主党候補者たちの口からは、イラクの治安問題に関する批判の声は減り、今度はイラク政府の政治的進展が遅すぎるという批判が多くなった。しかし政治家たちが協力せずに仲間割ればかりしているというのであれば、アメリカ政府だって同じことだ。なにもイラクだけに問題があるわけではない。候補者たちがアメリカ軍の増派によってイラク内政への効果があがっていないと主張すればするほど、現場の治安問題はほぼ解決されたという印象が強まってしまう。
ニューヨータイムスはこのような増派が軍事的効果をあげているというメッセージは民主党支持者の間では快く受け入れられないだろうとし、(民主党)候補者がこの話をする時は、かなりの注意が必要だと忠告する。
ここで民主党強力候補者の三人の言い訳を聞いてみよう。まずはヒラリー。

「我が軍は世界最強です。その数を増やせば効果があがるのは当然です。」…
「基本的な点は、増派の目的は政治的解決をする余裕を作り出すことだったのに、それが起きておらず、おこるような兆しすらなく、イラク人が政治的な目標に達することができないということです。」…「我々は内戦の仲介などやめてさっさと出ていくべきなのです。」

ブラコ・オバマは話題を変えるのに必死。

「11月にガソリンが3ドル代なんて前代未聞です。」…「人々はより多く働き少ない見返りを得ています。クレジットカードの限界まで使いきり、なんとか生活をしているのです。人々は苦労しているのです。それをワシントンは気にかけているようには見えません。」

ガソリンが高いのは通勤の長いカカシとしても非常に迷惑な話だが、この好景気に人々が苦労しているというメッセージがどのくらい効果があるのかちょっと不明。しかしオバマもイラク情勢を無視することはできない。

オバマの報道官、ビル・バートンはイラクの暴力減少について「歓迎すべきニュースである」としながらも、今年の戦死者の数は記録的な高さであり、イラク国内の政治見解の相違が歩み寄られていないと語った。

「イラクの政治リーダーたちにちゃんと仕事をさせるために一番いいやり方は即軍隊を撤退しはじめることです」とバートン氏は語った。

アメリカ兵の戦死者の数は去年に比べて激減しているというのに、いったいバートンのいう「記録的な高さ」とはどういう意味だ? 第一アメリカ軍が撤退することとイラクの政治家たちが歩み寄ることとどういう関係があるというのだろう?
そして最後に「撤退、撤退、なんでも撤退」としかいわないジョン・エドワーズは今の時点ではまだ自分のイラク見解を再検討するに値する政治的な効果はあがっていないとしている。

「基本となる疑問は全く変わっていません。その疑問とは政治面において真剣な努力がされ、真剣な動きがあったかどうかということです。」…「スンニとシーアの間で政治的な解決がされない限り安定などあり得ません。暴力は終わらないのです。ですからこういう面ではほとんど進展がみられないと私は思います。」

エドワーズはイラクの話はよく取り上げるが、増派そのものよりもライバル候補者のイラク戦争に対する姿勢を批判することの方が多い。特にヒラリーが当初イラク戦争に賛成票を投票した事実や最近のイラン革命軍をテロリストと指定する議案に賛成した事実をあげ、ヒラリーをブッシュと一緒くたにして批判している。
民主党候補者の本音はイラクへの米軍増派があまりにも効果をあげているので、早急に撤退してもらって再びイラクを混乱に陥れたいというものだ。しかし民主党が主権を握っているにもかかわらず議会はブッシュ大統領の意向に背いて米軍撤退を実現させることができない。だからイラク内政に進展がないということくらいしか批判のしようがないのだ。しかしこの方法も民主党にとってはかなり危険な賭けである。なぜならば、イラク内政に焦点を当て過ぎるとイラク治安がそうであったように、来年の11月までにイラク内政に大幅な進歩が見られた場合にどのように言い訳をするのかという疑問が残るからだ。
イラクは軍事的にも政治的にもブッシュ政権による大失敗だったという結論をつけたい米民主党が、どちらもうまくいっているという現実に直面した場合、いったいこれをどうやって乗り切るのか、そしてそれが選挙にどのような影響を与えるのか、かなり面白いことになってきた。
追記:イラク情勢良化について古森義久さんがアメリカのメディアの反響についてまとめているので参照されたし。それにしても、イラクからの良いニュースについて日本メディアが完全無視しているというのは不思議だ。


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ヒラリー危機? 大統領選挙アイオワ州コーカス地区予選

来年の11月にある大統領選では共和党と民主党それからあまり意味はないが他党からそれぞれ候補者が出て争う。しかしその前に各党は自分らの党を代表する候補者を選ばなければならない。これが大統領選挙の予備選挙である。この候補者の選び方なのだが、各州でどのように候補者を選ぶかは一般市民が選挙で選ぶプライマリーと党員だけで決めるコーカスと呼ばれる会合の二つがある。そこでその州が一番適当と考える候補者が選ばれる。候補者たちはこうやって州の支持をひとつひとつ得ていかなければならない。だから全国的に人気のある候補者でも地方での予備選で勝てるという保証はないのである。
さてコーカスの一番最初の州はアイオワ州。ここでヒラリー・クリントンの人気がちょっと危ないらしい。ワシントンポストABCニュースの世論調査(PDFファイルのリンクはこれ)によるとアイオワではバラク・オバマの支持率が30%で、その次にヒラリ・クリントンが26%とヒラリーを抜いている。しかも三位のジョン・エドワーズも22%とヒラリーを追いつめている。パワーラインによるとヒラリーの支持者は比較的若い女性が多く、コーカスに参加する人のほとんどは男性や年配の女性で若い女性は少ないのだという。アイオワでのコーカス会合は1月で非常に寒い。そういうところにわざわざ平日の夜遅くまでかかる会合に出席するほど熱心なクリントン支持者がいるかどうかわからない。
ヒラリーはこのことを十分に承知しているらしく、夫のビルを出演させて「コーカスは易しい」というビデオキャンペーンを行っているくらいだ。
しかし、ヒラリーにとってアイオワはそれほど大事ではないという人もいる。アイオワコーカスがヒラリーの選挙運動にどういう意味を持つのか、ニューヨークオブザーバーでスティーブ・コーナッキ(Steve Kornacki)が説明している。
コーナッキによれば、アイオワでのシナリオは4つ考えられる。まず第一にヒラリーが勝つこと。ここで勝てればヒラリーの候補指名はまず間違いない。なぜかといえば次の予選はニューハンプシャーのプライマリー。アイオワと違ってヒラリーはニューハンプシャーでは二番のオバマを20%も離して一番人気。 三番のエドワーズとは30%も離れている。
もしアイオワでエドワーズが勝った場合でもヒラリーはニューハンプシャーは勝てるだろうとコーナッキ。 エドワーズはアイオワではかなり熱心に選挙運動をしているらしい。しかしここでヒラリーが二番になったとしてもヒラリーにとって最大のライバルはオバマであるから、オバマに勝てさえすれば問題はない。
エドワーズはニューハンプシャーではあまり人気がないし、ヒラリーやオバマと比べ選挙資金に限りがある。そこで多分エドワーズはニューハンプシャーは飛ばしてサウスカロライナへ直接持ち込もうとするだろう。ヒラリーはニューハンプシャーを勝ち取っていればサウスカロライナで勝てる可能性は大きい。万が一サウスカロライナで負けたとしてもエドワーズよりも選挙資金が勝っているヒラリーなら2月の大型予選でエドワーズを圧倒することができる。
しかし三番目のシナリオで、オバマが勝ってヒラリーが二番になった場合はちょっと問題だ。これが起きるとヒラリーの候補指名がかなり危なくなってしまう。オバマがアイオワで勝ったら、エドワーズのキャンペーンは終わりだとコーナッキは言う。となるとここでヒラリー対オバマの一騎討ちとなるわけだ。アイオワで勝利を得ればオバマには勢いがつきニューハンプシャーでも勝てるかもしれない。アイオワとニューハンプシャーを連続で勝ち取ったジョン・ケリーの例もある。
ニューハンプシャーでは無所属がかなりの数で民主党の予選で投票する。無所属はオバマ支持が非常に多い。オバマがアイオワとニューハンプシャーで勝利をおさめればこれまでのようにヒラリーが自動的に候補指名を受けるというわけにはいかなくなる。オバマがその後積極的な運動をすればオバマ勝利の可能性は高まる。
四つ目のシナリオで、一番ヒラリーにとってよくない結果はヒラリーがオバマとエドワーズの双方にまけて三位になることだ。特に距離をあけての三位だった場合にはニューハンプシャーで勝てるかどうかでヒラリーが候補者として生き残れるかが決まることになる。
私が思うにヒラリーはアイオワでもニューハンプシャーでも勝たねばならない。なぜならば、いまヒラリーの第一人気はヒラリーが絶対に候補者に指名されると誰もが考えていることからきている。ほかの候補者たちはヒラリーが大統領候補になった場合に副大統領候補になるために存在している程度にしかメディアも民主党支持者たちも考えていない。ところがもしもヒラリーがアイオワで負けたら、ヒラリーが絶対に勝つという保証はなくなる。そうなれば、それほどヒラリーは好きではないが民主党大統領候補になる人物だからと支持している民主党員の間からヒラリーを見捨てる可能性が高まる。ヒラリーの民主党候補指名は自動的ではないということになるのだ。
先の大統領選挙でずっと民主党の有力候補者といわれていたハワード・ディーンが蓋をあけてみたら、最初のプライマリーで惨敗してキャンペーンが完全に崩壊してしまったなんて例もある。ヒラリーも今支持率一番だからといって全く油断はできない。
むろん私としては、ヒラリーおばさんだけは勘弁してほしいのだが、、、


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ハリケーンカトリーナの復讐、ルイジアナ州に新知事誕生

みなさんは2005年の9月にルイジアナ、アラバマ、ミシシッピを襲ったハリケーンカトリーナを覚えておられるだろうか?私は当時も今と同じようにハワイに長期出張で来ていたが、当時のメディアの報道のお粗末さにはあきれ返ってものが言えなかった。アメリカメディアが自国の連邦憲法を理解せずに、ルイジアナの被害が何もかも連邦政府、つまりブッシュ大統領の責任だと書き立てていたからだ。しかも現地に何人も特派員をおくっておきながら、おきてもいない殺人事件や暴動や略奪の噂をあたかも真実であるかのように報道し、数週間後にはそれがすべてデマであったことがばれても主流メディアからは何の謝罪もなかった。
下記は私が当時日本の友人たちに書いた手紙である。

こんにちは。ここ連日みなさんもルイジアナ、ミシシッピ、アラバマを襲ったハリケーンの被害と救済が「遅れている」という話を聞いていると思いますが、もしアメリカの報道がそのまま日本で報道されているとしたら、多分かなりの誤解があると思うので私から説明しておきたいことがあります。

先ず、多分みなさんはブッシュ大統領の対応が遅くて州兵の出動に4日もかかったという話を聞いていると思います。でも実際はブッシュ大統領の対応は遅いどころか非常に迅速だったのです。ハリケーンがくることは先週の金曜日の時点ですでに分かっており、ハリケーンのくる2日前にブッシュ大統領は被災地となりうる三州を非常地帯と命名しました。この時点ですでに連邦の救済組織FEMAは州知事の要請があり次第出動できる待機状態にあったのです。さらにブッシュ大統領は各州の知事に被災予測地域の全面的避難命令を出すように要請しました。多くの市民がハリケーンがくる前に避難できたのはこの命令のせいです。

さて、ここでみなさんにご理解頂きたいことは、アメリカは連邦制であり日本のような中央集権ではないため、州兵の出動や避難救援の手配は大統領の管轄ではなく州知事の管轄なのだということです。地元知事の要請があれば出動できる状態を用意しておくのが大統領の役割なのであり、細い手配は地元の州知事が仕切らなければならないのです。

みなさんはハリケーン被害にあったのが三州あるにも関わらず、ルイジアナだけで問題が起きていることに気が付かれましたか? この理由はアラバマとミシシッピの知事がいち早く略奪などの問題を州兵を動員することで阻止したためです。特に一番問題になっているニューオーリンズの市長の役立たずぶりには腹がたつばかりです。

私たちは、テレビのニュースで、被災時にニューオーリンズでは略奪、人殺し、強姦、といった犯罪が激増し、洪水で逃げ遅れて亡くなった市民は一万を超すというふうにききましたよね。特に避難場所の球技場やコンベンションセンターでは殺人の犠牲になった遺体が何百もころがっていたという話がまことしやかに報道されました。

ところがなんと、球技場で警備と救援にあたっていた州兵たちの話によると、そのようなことは全くなかったというのです。球技場には2万人以上の避難民があつまりましたが、ほとんどのひとが非常に行儀よく協力して助け合っていたというのです。球技場で出た死者は200人どころかたったの6人。しかもそのうち一人は自殺、もう一人は麻薬中毒、あとの4人は病死です。またコンベンションセンターに多くの遺体が捨て去られていたというのもただの噂で、コンベンションセンターで見つかった遺体は4体。そのうちで殺人の犠牲者ではないかと思われる遺体は一体だけ。

ハリケーン直後にニューオーリンズでおきた殺人事件は4件。もともと治安の悪い都市で、年平均の殺人事件が何百というところですから、これならいつもより少ないくらいです。また洪水による死者の数もせいぜい1000人ということで、確かに大被害であったことにかわりはありませんが、何万という単位ではありませんでした。天災でもないのに、たかが30度くらいの暑さがつづいたくらいで15000人の死者を出したフランスなどに比べれば、これだけのひどい天災にしては非常に少ない数だと思います。

アメリカのマスコミが非常に無責任な報道をしたため、世界中にアメリカが野蛮な国であるかのような印象をあたえてしまったことが非常に腹立たしく思われます。ニューオーリンズの被災者を二重に被害者にしてしまったともいえます。私は地方紙でニューオーリンズのひとたちが職業用の漁船をつかって町中のひとを救援に回った話とか、高台にあって被害のなかった協会のひとたちが、被災者たちを迎え入れた話とかを読みました。しかしアメリカの主流メディアはテレビにしろ新聞にしろ悪い話ばかりをとりあげ、地元の人たちが助け合った話や、前代未聞の早さで救援にかけつけた州兵軍や赤十字の話は全く無視しています。どうして自分の国の恥だけを世間にさらして良いことを報道しないのか、なんでアメリカの報道陣はこうも反米なのか、私には理解に苦しみます。

アメリカ人のほとんどのひとは心優しく寛大です。今回も被災者への基金が一般市民から何億ドルと集まっています。謝った報道のために、日本や世界中のみなさんにアメリカの姿を誤解されてしまったことが残念でなりません。

主流メディアがどう歪曲報道をしようが、地元以外の人々がどれだけブッシュ政権を責め立てようが、地元ルイジアナ州民はカトリーナの被害が誰の責任だったか充分に心得ていたものと見える。ニューヨークタイムスの記事によればこの間の日曜日に行われた知事選挙にブロンコ現知事が現職として再選に立候補しなかったのも、カトリーナ災害やその後の復興の遅れの責任がブロンコ知事にあると考える州民が多く、ブロンコ知事への支持率があまりにも低かったからだとある。

ハリケーン中やその直後には、州の被災者はブロンコ知事が何もかも連邦政府が悪いと言ってたことを信じたかもしれない。だが、時がたつにつれて、同じように被災したアラバマやミシシッピの復興がどんどんはかどっているのに対し、ルイジアナでは復興が大幅に遅れていることに加え、連邦政府からの支援金で私腹を肥やす知事の腐敗が明るみににでたりして、州民はだんだんとカトリーナ当時の責任もブロンコ知事にあると考えるようになったようだ。

普通ルイジアナ州の知事選では共和民主あわせて何人もの候補者が立候補するが、票が割れて誰一人として過半数の票を得ることができなければ、上位二人が決勝戦をおこなうことになっている。今回も候補者は8人だったため、いつものパターンになると思いきや、なんと53%というルイジアナ州では一回めの選挙では前代未聞の投票率を得て共和党の若手ホープ、ボビー・ジンダル氏が当選した。

実はジンダル氏が知事選に出たのはこれが初めてではない。4年前にも現知事のキャサリーン・ブロンコ(民主党)のライバルとして共和党から立候補している。当時、支持率が高く当選が予測されていたジンダル氏は土壇場で負けた。それについて、ブロンコによる大型選挙違反があったからだという疑惑があがったのだが、ジンダル氏は抗議もせず潔く負けを認め、その足で下院議員として立候補し当選していた。下院の任期が切れたジンダル氏に、上院議員に立候補してはどうかという推薦があちこちから上がったが、ジンダル氏はもう一度知事選に賭ける意志を崩さなかった。

今回ジンダルが圧倒的勝利を得て当選したのも、州民の多くが過去4年のブロンコ知事の行動から、先の選挙ではブロンコ候補による違反があったのだと確信したことにも原因があるという。
リンカーン大統領が言った有名なことばに、「少数の人を常にだますことはできる。多数の人を時々騙すこともできる。だがすべての人を常にだますことは出来ない」。ジンダル氏にルイジアナの腐敗した政治を掃除してもらいたいものだ。


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