イスラムの危機:近代化に失敗したイスラム諸国の悲劇

近代化に失敗したイスラム諸国の悲劇
この著書の一番大切な章はなんといっても第七章のA Failure of Modernity 「近代化の失敗」である。イスラム教諸国のほとんどの国が独裁政権下にありそれゆえに貧困に苦しんでいる。しかしこれらの国々の指導者達は自分らの無能な政策から目をそらすために、自分らが貧乏なのは欧米のグローバリゼーションのせいだといってまったく反省しない。政府経営のアラブメディアは必ずその最大の原因としてアメリカの経済進出を指摘する。しかしアメリカの経済進出がアラブ諸国の貧困の原因ならば、同じようにアメリカの経済進出を体験している極東アジアの経済発展の説明がつかない。
高い出生率に伴わない低い生産力が災いして若者の失業率はイスラム諸国では深刻な問題になっている。職にあぶれてすることのない欲求不満の若者が溢れる社会は非常に危険である。しかもイスラム諸国の若者は自由に女性とデートできないので、逆立った心を慰めてくれる人もいない。国連や世界銀行の調査ではアラブ諸国は、新しい職種、教育、技術、そして生産力などすべての面で西洋社会から遅れているだけでなく、西洋式近代化を受け入れた韓国や台湾、シンガポールといった極東アジア諸国からも遅れを取っている。
こうした比較調査におけるイスラム諸国の数値は悲劇的だ。一番高い順位を持つトルコでさえも6400万の人口で23位。人口がそれぞれ5百万のオーストラリアとデンマークの間である。次が人口2120万人のインドネシアが28位。人口450万のノルウェーの次だ。イスラム諸国の中での購買力はインドネシアが一番で15位。その次がトルコの19位である。アラブ諸国ではサウジアラビアが最上位で29位でエジプトが次ぎに続く。生活水準ではQatarが23位、United Arab Emiratesが25位、クエートが28位。
教養面でもイスラム諸国は非常に遅れている。世界の書籍の販売率で上位27位のうち、アメリカの最高位とベトナム27位の中にイスラム諸国は一国も含まれていない。国連の調査によるとアラブ諸国は毎年約330冊の外書を翻訳するが、これはギリシャの約五分の一だという。アラブ諸国が翻訳した書籍の数は9世紀から現代までなんとたったの10万冊。これはスペインが一年で翻訳する書籍数と同じである。
国民生産率GDPになってくるともうアラブ諸国は目も当てられない状態だ。1999年のアラブ諸国合計のGDPは5312億ドルだったが、この数はヨーロッパのどの一国のGDPよりも少ない。学問の上でも専門書の引用さえるような科学者はアラブ諸国からほとんど出ていない。
以前にエジプトの学生の書いていたブログで読んだことがあるのだが、毎年発表される世界中の大学の位置付けのなかで、アラブ諸国の大学がひとつも含まれていないことについて、アラブのメディアが良く文句を言っているが、アラブ諸国の大学からは優秀な学者が一人も出ていないのだから当然だというような内容だった。つまり、アラブ諸国に人々が自分達が西洋や極東からも遥かに遅れをとってしまったことを痛感しているのである。以前ならばこのようなことは知らずに済んだかもしれないが、今の情報社会、このような調査はすぐに世界中に広まる。多少なりとも学識のある人なら自分達がどれほど世界から遅れをとっているか感じないはずはない。
政治の近代化も同じく惨めな状態だ。いや、場合によってはもっとひどいかもしれないとルイス教授は語る。アラブ諸国はそれぞれ、それなりに民主主義のような政策を多かれ少なかれ取り入れてきた。イランやトルコのように内部の改革者によって試されたものもあれば、撤退した帝国によって押し付けられたものもある。しかしどれもこれもその結果は芳しくない。アラブ諸国でただ一つ一応機能した政策はナチスドイツやソ連をモデルにした一党独裁制のみである。フセインイラクやシリアのバース党がその名残といえる。
これではアラブ諸国の人々が近代化に希望を失うのは仕方ない。しかし問題なのは彼らが近代化をどのように間違って行ったのか、どうすれば正しい近代化を進めることが出来るのか、といった質問がされないことだ。彼らの答えは常に「近代化そのものが間違っているのだ。イスラム教の原点を忘れたことがいけなかったのだ。」となるのである。古いイスラム教のしきたりが近代化の妨げになっていないだろうか、などということは死んでも考えない。アラブ諸国の人々は自分達と外の世界の人々の間の溝がどんどん深まってきていることを意識している。そして自分達のみじめな生活環境への怒りは自然と自分達の指導者へと向けられる。そしてその怒りはそのリーダー達の地位を保ち続けている西洋社会へと向けられるのである。リーダー達が親米であればあるほど、市民の米国への反感は強まるのだ。
911の犯人達が、比較的親米な政権を持つサウジアラビアやエジプトの出身であるのも決して偶然ではない。無論正常な外交関係のある国からなら訪米ビサが取りやすいという理由もあるが。


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イスラム教の危機:アメリカにまつわる歴史的誤解

アメリカにまつわる歴史的誤解
さてここで、アメリカとイスラム諸国との歴史で、一般的に誤解されているいくつかの点を上げてみたい。実は私自身も知らなかったことや不思議思っていたことが結構あったので、これは非常に興味深い部分だと思う。
先ず現在のイラン大統領、マフムッド・アクマディネジャドを含むイラン人学生がテヘランにあったアメリカ大使館を占拠し、警備員や職員を数名殺した後、残りの50余名を444日も拘束したあの事件だが、これはイランの宗教革命後アメリカと新イラン政府との間が険悪になっていたことの現れであるとされているが、実はそれはまったく逆であるとルイス教授は語る。
この話の発端は、1953年当時のモサデック政権にさかのぼる。当時国民から厚く支持のあったモサデック政権は石油利権を国営化しようと試みていた。無論そうなれば外資系の投資会社はすべて締め出されることになる。しかもソ連がモサデック政権に強く肩入れしてきていることもあって、英米が共謀してシャー国王の承認を得てモサデック政権を倒すべくクーデーターを企てたとされている。しかしクーデターは失敗に終わり、シャー国王は国外へ逃亡した。しかしその後何故か世論はモサデック政権よりもシャーを支持するように変化、特に軍隊がシャーを支持したため、モサデック政権はザヘディ政権に取って代わられ、シャーは英雄として帰還した。
しかしイスラム過激派はシャーをアメリカの傀儡と考え、シャーの世俗的な政治は西洋の腐敗した文化でイランを汚染しているとし、亡命中のアヤトラ・ホメイニを中心としてイランで宗教革命を起こした。ルイス教授は指摘していないが、このとき民主党のカーター大統領はイランのシャー政権がどれほどアメリカにとって大事であるかをきちんと把握していなかった。リベラルな生半可な正義感を持ったカーター大統領は、先代のイラン内政干渉に批判的でイランに潜入していたアメリカの諜報部員らをすべて引き上げさせた。そのおかげでCIAもカーター政権も1979年にホメイニの宗教革命がイランでくすぶり始めていることを察知できず、起きたときは寝耳に水という無様な結果となったのである。
カーター政権はアメリカが後押しをしたシャー国王を見捨て、シャーをアメリカへ亡命させることさせ許さなかった。アメリカは利用できるときだけ利用して、価値がなくなると簡単に見捨てるという評判が立ったのもこのことが大きな原因となっている。これは敵側に怒りと軽蔑を沸き立たせる「危険なコンビネーション」だとルイス教授は語る。
さて話を元に戻すが、ルイス教授が1979年の11月にイスラム教過激派の学生達がアメリカ大使館を占拠した理由はアメリカとイランの関係が険悪していたからではなく、良くなっていたからなのだとする理由は、当時の人質の話しや選挙した学生の供述などから次のことが明らかになったからである。実は1979年の秋、比較的穏健なイランのMehdi Bazargan首相がアルジェリア政府を仲介にしてアメリカのセキュリティアドバイザーと会見した。その時二人が握手しているところが写真に撮られているという話だ。もしこれが事実だとすれば、過激派にとっては危険な状態である。せっかくアメリカの傀儡政府であったシャーの王権を倒したにもかかわらず原理にもどるはずの宗教革命後の政権が再び偉大なる悪魔と手を結ぶなどと言うことは許されてはならない。というわけで学生達はアメリカ大使館を占拠することによって、アメリカをイランから追い出し、今後のイランとアメリカの外交を不可能にしようとしたのである。そしてこの作戦は成功した。アメリカはイランから引き上げ、28年たった今だに正式な外交は行われていない。
ところで、アメリカ大使たちを長期にわたって拘束した学生達は、当初、拘束はほんの数日の予定だったのだという。その計画が変わったのは、カーター大統領によるイランへの直接的な報復はありえないということが、弱腰なカーターの嘆願声明によって明らかになったからだと言う。ここでもカーターのリベラル政策によってアメリカは敵に侮られたと言うわけだ。あの時もしもカーター大統領が人質を即座に返さなければ軍事攻撃もありえるとひとつ脅しでもかけていれば、人質はすぐにでも帰ってきたのかと思うと、まったく忌々しいったらない。カーター大統領が共和党のレーガン大統領に大敗した後人質が返された理由は、レーガン大統領になったらアメリカの政策が変わるかもしれないとイラン側が恐れたからだと言う。
相手にいい顔を見せれば解ってもらえるなどと言う甘い考えがイスラム過激派にどれだけ通用しないかをアメリカ人はここで学ぶべきだった。しかし911以後のアメリカでもまだ「話せば解る」などといってる甘い人間がいるのだからあきれる。
敵に甘いという話なら、湾岸戦争の頃から私が常に疑問に思っていたこととして、パパブッシュ(第41代アメリカ大統領)がフセイン政権を倒さなかったことがある。あの時フセインをあそこまで追い詰めておきながら、何故バグダッドまで侵攻してフセイン政権を倒さなかったのか。なぜフセイン政権に反発していたクルド族やシーア派の反乱分子をけしかけておきながら、土壇場になって彼ら見捨て、我々の目の前で彼らが無残にもフセインに虐殺されていくのを見殺しにしたのか、私にはまったく理解できなかった。

(アメリカの)この行動、というよりむしろ無行動、の背後にあるものを見るのはそれほど難しくない。勝利を得た湾岸戦争同盟軍がイラク政府の変革を望んでいたことは間違いない。しかし彼らが望んでいたのはクーデターであり、本格的な革命ではなかった。本物の人民蜂起は危険だ。それは予測できない無政府状態を起こす可能性がある。それが民主的な国家となるという我々のアラブ「同盟国」にとっては危険な状態になりかねない。クーデターなら結果は予測がつくし都合がいい。フセインに代わってもっと扱いやすい独裁者が、連合国のひとつとして位置してもらうことが出来るからだ。

イラク戦争後の復興でイラクが混乱状態になったことを考えると、当時の政治家達の懸念は決して被害妄想ではなかったことが解る。だがどんな独裁者であろうと自分らの都合の良い政権を支持するという方針はこれまでにもことごとく失敗してきた。湾岸戦争で大敗し弱体したはずのフセインは、政権を倒されなかったことを自慢して偉大なる悪魔にひとりで立ち向かって勝利を得たと近隣諸国に吹聴してまわった。フセインをハナであしらえると思ったアメリカは完全に馬鹿をみた。だいたい傀儡政権ほどあてにならない政権は無い。傀儡政府が独裁者なら耐え切れなくなった市民によって倒される危険があるし、また政権自体が常に我々の敵と裏工作をして寝返る企みをし、我々の隙を狙っては攻撃する用意を整えているからだ。表向きは都合のいいことをいいながら、裏でテロリストと手を組んでアメリカ打倒を企だてていたフセインはその典型だ。傀儡政権ではないが、独裁政権ということで、私はサウジアラビアもパキスタンも信用していない。
パパブッシュの息子ジョージ・W・ブッシュが、イラクの政権交代を強行しイラクに民主主義の国家を設立すると宣言したのも過去の過ちから学んだからである。イラク戦争においても、フセインを別の独裁者と挿げ替えて、傀儡政権を通してイラクを統治してしまえばいいという考えが保守派の間ではあった。また、イラク戦争はイラクの石油乗っ取りが目的だったという反戦派もいた。だが、ブッシュ大統領は、これまでアメリカに好意的だというだけで我々が悪徳な独裁者に目を瞑ってきたことがどれだけ間違いであったか、今後平和な世界を作り出そうと思ったら世界中に本当の意味での民主主義を広めなければならない、と語ったことは本心だった。だからこそイラクで主な戦闘が終わった時点ですでに存在していたイラク軍や警察やバース党をそのままにして頭だけ挿げ替えるという簡単な方針を取らずに、民主主義国家設立のために大変で面倒くさいことを一からやり始めたのである。今は確かに苦労するが、長い目でみたらこれが一番確実なやり方だからだ。
我々がイラクを攻めなければならなかったもうひとつの理由は、長年にわたるカーター(民主)、レーガン(共和)、クリントン(民主)の中東政策により、イスラム諸国では「アメリカは戦わない」という強い印象を打ち砕くためである。湾岸戦争を率いたパパブッシュ大統領(共和)でさえ、圧倒的戦力を有しながら根性がなかったおかげでフセイン政権を倒すことが出来なかったと歴史は書き換えられてしまったのだ。イスラム過激派に慈悲など通用しない。こちらの戦争へのためらいは単なる弱さと解釈されるだけだ。ビンラデンが911攻撃を計画した理由として、カーターの大使館占拠に対する無報復、レーガンのレバノン海兵隊宿舎爆破事件後のレバノン撤退、クリントンのブラックホークダウン後のサマリア撤退、を挙げて、「アメリカに戦う意志はない」と判断したことを挙げている。下記は1998年にビンラデンがABCニュースのインタビューでその本心を明かしたものである。

我々は過去10年間に渡りアメリカ政府が衰退し、アメリカ兵士が弱体化するのを見てきた。冷戦に対応する準備は出来ていても長い戦いへの用意は出来ていない。また彼らがたった24時間で遁走できることも証明された。これはサマリアでも繰り返された。我らの若者はたった数発の打撃で負かされて逃げ帰った(アメリカ兵)に呆れた。アメリカは世界のリーダーたるもの、新しい世界のリーダーであることを忘れてしまっている。彼らは彼らの遺体を引きずりながら恥かしくも退散したのである。

次回へ続く。


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イスラムの危機:アメリカが「偉大なる悪魔」といわれる理由

引き続き、バーナード・ルイス著の「イスラムの危機」について話をしよう。
アメリカが「偉大なる悪魔」といわれる理由
よくイランの大統領をはじめ、イスラム過激派の連中はアメリカのことを「偉大なる悪魔」と言って忌み嫌う。歴史的にみて、別にアメリカはイスラム教諸国の伝統的な敵というわけではない。アルカエダが好んで我々を呼ぶ「十字軍」も正しくはヨーロッパのキリスト教徒であり、アメリカが生まれるずっと以前の歴史であるし、スペインからムーアが追い出されたことにしても、オトマン帝国の衰退にしても、トルコをはじめ中東を牛耳っていたのはイギリスやフランスであり、アメリカは無関係だ。イスラエル建国の経過にしたところで、アメリカ政府はまったく関知していなかったばかりでなく、建国後のイスラエルとの外交にも非常に消極的だった。イスラエルがアラブ諸国から攻められたときはイスラエルへの武器輸出を禁止したりしていたくらいである。
アメリカはイスラム教にとって敵であるどころか、サウジアラビアやクエートを世俗主義のサダム・フセインの手から救ったこともあるし、キリスト教のサルビアからイスラム教のアルベニアを守ったこともあるではないか?何故そのような善行はまったく感謝されるどころか認識すらされず、他の西洋諸国の過去の行いの責任を何故まだ建国もされていなかったアメリカにおしつけられるのであろうか?
ルイス教授は実はこの反米意識ははじめはドイツ、そして後にソ連によって広められた意図的な意識であったことを指摘する。先ず1930年代のRainer Maria Rilke, Oswarld Spengler, Ernst Junger, Martin Heideggerといったドイツのインテリ作家たちによる歪んだアメリカ像が当時のアラブのインテリを感化した。無論ナチスの思想はシリアのバース党といったファシスト達の間で人気を呼んだ。ドイツはイラクに親ナチスの政権を作ろうと努力していた時期もあったほどだ。イラクやシリアのバース党の基盤はこの頃に始まる。当時ドイツの思想家たちが広めた「アメリカには独自の文化がない何もかも人工的だ」という思想はいまだにバース党の間ではよく口にされる。
ナチスドイツが滅びた後、反米思想を取って代わったのはソ連である。ソ連は決してアラブの友人ではない。だが何故かソ連が親共産主義の政権を作ろうと広めた反米プロパガンダだけはソ連が滅んだ後も根強くアラブ諸国に残ったのである。
無論アメリカにまったくなんの責めもないのかといえばそうとは言えない。1970年代から冷戦が終わった1990年初期に至るまで、アメリカの方針はソ連牽制優先だった。だからソ連に敵対している国であれば、その国がどのような独裁者によって支配されていようともアメリカは協力関係にあった。そのいい例が革命戦争以前のシャー国王であり、イラク・イラン戦争当時のサダム・フセイン大統領である。小さいところではフィリピンのマルコスやパナマのノリエガなどがある。今となれば、この方針は大失敗だった。
イスラム教徒が近代化を拒む理由のひとつに、イスラム教諸国を支配した世俗主義の独裁政権がある。これらの独裁政権は近代化と世俗主義をうたい文句に国民を弾圧した。アメリカ及び西側諸国は彼らが共産主義ではないというだけで援助したため、イスラム諸国の人々にしてみれば、アメリカこそが極悪な独裁政権の大本なのであり、近代化こそが自分らの不幸の原因なのだと考えたとしても理解できないことはない。このことについてはまた後ほど詳しく話したい。
しかしなんといってもイスラム教過激派がアメリカを嫌う一番の理由はアメリカ人が生活の根本として持っている西洋文化そのものであり、それのもたらすイスラム教への脅威なのだ。よく、ミスター苺はアメリカの文化はボーグ文化だという。ボーグとはスタートレックというアメリカの人気テレビSF番組の中に出てくる宇宙人だが、彼らはどのような星も征服し、その星の星人を身も心もすべてその共同体に取り入れて融合してしまう力を持つ。彼らの口癖は「抵抗は無駄だ。融合せよ」。アメリカの文化とはいい意味で多文化を融合して、より強くなっていく文化である。アメリカが熔解の鍋と言われる所以だ。この文化に感化されると、元の文化はもとの姿を保つことが出来ず、必ずアメリカ化してしまう。それほど誘惑的な力を持つのである。まさに「抵抗は無駄」なのである。
イスラム教過激派達はそのアメリカ文化の脅威を正確に理解しているのだ。一旦アメリカ文化に染まれば、彼らの求める回教の支配する世界など望めない。だからこそ彼らはアメリカを憎むのである。アメリカがアメリカであること、それが彼らにとって最大の脅威なのである。
次回に続く。


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イスラム教の危機:西洋は神の敵という概念

また一週間ほどネットアクセス不能になるので、今回は中東文化研究では第一人者として知られるバーナード・ルイス教授著のThe Crisis of Islam 「イスラムの危機」を特集したいと思う。
ルイス教授は以前にもWhat Went Wrong?「なにがいけなかったのか」という著書のなかで、一時期は飛ぶ鳥を落とすような勢いで文明の最先端を行き、他宗教にも比較的寛容で、軍事力も圧倒的勢力を誇っていたイスラム文化が、なぜ欧州に追い抜かれ衰退の憂き目を見たのかをつづっていた。今回の「イスラムの危機」はその続編ともいうべきもので、イスラム社会が押し寄せる近代化の波に巻き込まれ、近代化への失敗に失敗を重ねた末、その葛藤の苦しみに耐え切れず近代化を拒絶し、近代化をもたらした西洋諸国(特にアメリカ)を敵視するようになった経過が説明されている。
西洋は神の敵という概念
911が起きたとき、私は無論アメリカによるアフガニスタン攻撃を支持した。なぜならば、911直後のアルカエダの親玉であるオサマ・ビンラデンのスピーチを聞き、彼らは私たちが私たちであること自体が許せないのだということを知ったからだ。そのような敵とは交渉の余地はない。そのような敵とは滅ぼすか滅ぼされるかの二つに一つしかないからである。ルイス教授もイスラム社会の西洋に対する敵意は単に特定の国が特定の行為をしたというようなことに限らないという。

この憎しみは特定の興味や行為や政策や国々への敵意を越えたものであり、西洋文化への拒絶につながる。この拒絶は西洋文化がしたことへの拒絶と言うよりもそのような言動をもたらす西洋文化の価値観そのものへの拒絶なのである。このような価値観はまさに生来の悪とみなされそれを促進するものたちは「神の敵」であると考えられるのだ。

この神に敵がいて、信者が神の手助けをしてその敵を排除しなければならないという考え方は、イスラム教徒以外の現代人には、それが仏教徒であろうとキリスト教徒であろうと世俗主義者であろうと、不思議な概念である。しかしオサマ・ビンラデンのみならずイスラム教過激派はイランの大統領をはじめ常に「西洋社会は神の敵」というテーマを繰り返している。
もともとイスラム教創設者のモハメッドは宣教師であるだけでなく、統治者であり戦士であった。イスラム教は戦争によって他宗教を打ち倒すことによって創設された宗教といってもいい。だからモハメッドの軍隊は神の軍隊なのであり、モハメッドの敵は神の敵というわけだ。
となってくると西洋社会に自然と沸く疑問は「イスラム教は西側の敵なのか?」ということになる。以前に私はロバート・スペンサーの著書を紹介したときに何度も西側諸国はイスラム教を敵に回してはならないと主張した。だがもしイスラム教徒自体が西側の文化そのものを「神の敵」とみなしているとしたら、我々は彼らを敵に回さないわけにはいかないのではないだろうか?一部のイスラム教徒を味方にしてテロリストとだけ戦うということは可能なのだろうか?
ルイス教授はイスラム教は西洋の敵ではないと言い切る。ソ連亡き後、世界を脅かす危険な勢力としてイスラム教が台頭したという考えも、西側諸国のこれまでの悪行に耐え切れずに善良なイスラム教徒らは止む終えず西洋の敵に回ったのだという考えも、その要素に多少の真実があるとはいえ危険なほど間違った考えだと教授は言う。


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イランの隠し兵器、テロリスト

アルカエダはアメリカ軍の激しい攻撃のおかげで(NATO及びイラク軍の活躍も忘れてはならないが)その勢力は衰退しつつある。しかし現社会にはびこるテロリストはアルカエダだけではない。レバノンで反対政党の政治家をどんどん暗殺しているシリア攻撃犬ヒズボラは去年のイスラエルの攻撃にもかかわらずその勢力は増すばかりである。もしもアメリカがイランと本気でやりあうつもりなら、ヒズボラの脅威を充分に念頭に入れておく必要があると、ベルモントクラブのレチャードは警告する。
イランが面と向かってアメリカと戦争をやるとなったら勝ち目はないが、イランがヒズボラのような手先を使って世界中のアメリカ関係の施設を攻撃するというやり方にはかなり効果があるだろう。イランにはヒズボラのほかにも諜報と警備担当の省Ministry of Intelligence and Security (MOIS) 、イスラミック革命団Islamic Revolutionary Guard Corps (IRGC)、クォッズを含む特別部隊などがある。
無論アメリカの民主党はイランとの戦争は絶対にやってはいけないと言い張る。しかし最初から武力行使はありえないと宣言することほど愚かなことはない。イランの学生が1979年にアメリカ大使館を占拠し人質を444日間も拘束したというのも、アメリカから何の報復もなかったからだと後で誘拐犯の学生達が白状しているくらいだ。
イランはアメリカと対等に外交などする気は毛頭ない。アメリカが武力で脅かしてこそイランは交渉の座に付くのだ。アメリカが外交優先で武力行使をほのめかさなければ、経済制裁の復讐としてイランおかかえのテロリストたちが欧米で暴れまくるのは火を見るより明らかである。


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キャンパス左翼とイスラム過激派に対抗する方法

アメリカの大学では左翼思想が横行し、保守派思想が弾圧されているという話はこの間もしたが、今回もそれを象徴するような出来事があった。
デイビッド・ホロウィッツという極右翼の作家がいる。彼は1960年代にはバリバリの左翼運動員で、かなりあくどい政治活動をしていた人なのだが、それが友人が自分が信用していた極左翼の市民団体に殺されたことがきっかけで、左翼の悪に気づき心を入れ替えて右翼に転向した人だ。このホロウィッツがエモリー大学の共和党クラブに招かれて「イスラモファシストを知る週間」の一貫として大学構内で演説をおこなうことになった。ところがそれをききつけた左翼団体やイスラム系の学生たちが、ホロウィッツの講演を邪魔しようと大学の公会堂に団体で入り込み講演がはじまるや否や大声で怒鳴り散らし、ホロウィッツの演説が全く観客に聞こえないような騒ぎを起こした。警備員が特に騒いでいる若者を追い出そうとすると若者は「全員を追い出せはしない。みんな立ち上がれ!」と関係者を立ち上がらせて大騒ぎ。ついに警察が呼ばれて講演は中止。ホロウィッツは警察官に護衛されて立ち去るという結果になった。
このときの詳細やビデオはフロントページマガジンで見ることが出来る。
この間デンマークでヨーロッパのイスラム化に抗議するデモ行進の主催者が待ち伏せをくって暴行をうけた事件や、カナダの大学でイスラエルの著名人を招いた講演会が、イスラム系暴徒によって集まった観客が暴行を受けるなどして講演が阻止された事件などもそうなのだが、いま、世界中で過激派イスラム系と左翼連中が共謀して保守派思想を弾圧する事件があちこちで起きている。
こういう事件を見るたびに私はおもうのだが、左翼及びイスラム過激派に敵対する講演会やイベントを主催する側は、自分らの行為がどれほど危険を伴うものなのか充分に覚悟して、それに対する事前の処置をとってもらいたいということだ。イスラム系テロリストにしろ左翼市民団体にしろ、言論の自由になど興味はない。彼らは自分らこそが正しいと信じ異論はどのような手をつかっても(テロを含む)封じ込めようという堅い意志のある恐ろしい敵なのだということを自覚してもらいたい。
大学のキャンパスは保守派には非常に危険な場所である。やたらに自分の意見を表したりしたら、教授からは落第点をもらうし、学校側からは言いがかりをつけられて退学になったり、他の生徒から訴えられたりする。場合によっては暴力を振るわれ殺されかねない。自由の国アメリカでこのようなことが横行するなど信じられないことだが、講演を中断されたホロウィッツが「ナチスのブラウンシャツもこうやって反対意見を封じ込めた」と語っているように、イスラミストや左翼は悪度さでは全くナチスと同じなのだ。
しかしだからといって保守派生徒たちは身を守るために沈黙を守らなければならないのだろうか?言論の自由や思想の自由が保障されているはずの自由国家の大学で、自分の意見を述べることが命にかかわるという状況をそのままにしておかなかればならないのだろうか?いや、それは違うだろう。「悪が栄えるには善人が何もしないでいればいい」という言い回しがあるように、保守派学生や教授たちは黙っていては、アメリカ大学の状況は悪化する一方である。
では具体的にどうすればいいのか?大学の共和党生徒たちが保守派の政治家や作家を招くのは大いに結構なことだし、どんどんやってもらいたいと思う。ただし、そのような行為には危険が伴うことを覚悟して、警備体制をしっかり敷いておく必要がある。そこでカカシは大学内の左翼にどう対処すればいいのかをが考えた対処策は次のとおり。
大学内の警備員をあてにしてはならない。
大学事態が右翼や保守派をきらっているのに、その大学が提供する警備員など最初からやる気があるはずがない。暴徒が暴れても見てみぬふりをするのがおちだし、暴れた生徒も処分をうけないと鷹をくくっている。事前に募金運動などをして民間の警備会社を雇うか、地元警察に相談して警察官を派遣してもらえるかどうか折り合う必要がある。
あからさまな妨害者を締め出せ。
プラカードや横幕をもって現れた人々は、最初から騒ぎを起こす目的で入場しようとしていることは明白。入場する際にプラカードや横幕を持った人々は入場させないとあちこちにサインを張り、もってきた人たちがこうしたものを捨てられるようなゴミ箱を会場からかなり離れた場所に設置しておくこと。入場口でまだ持っている人間はプラカードをその場で捨てようがどうしようが入場させない。またハンドバッグやバックパックに大きな音のでる笛やラッパを隠し持っている人間も入場させないこと。講演を静かに聴く意志があれば、こんなものは必要ないはずだ。
会場内で騒いだ人物は即座に強制的に取り除くこと。
こういう団体には必ず先導者がいる。騒ぐつもりで入場しても、誰かが始めないと自分からは何も言えない臆病者が大半なので、一番最初に騒いだ奴をかなり乱暴に強制撤去するすれば、後の奴らは怖気づいて何も出来なくなる。とにかく最初が肝心。
我々は自由社会に住んでいるので、思想や言論の自由は当たり前だと考える節がある。だが、世界中の多くの国で言論の自由は独裁者によって弾圧されてきた。我々がアメリカの大学や欧州でみていることは、そのほんの一例に過ぎない。我々自由主義の人民がこの神に与えられた権利を守ろうというのであれば、それは命がけで守らなければならない大切なものだということを充分に自覚すべきである。戦いの危険を顧みずに戦場へ挑むのは勇敢かもしれないが愚かでもある。戦いは勝たなければ意味がない。左翼やイスラム過激派と対抗しようというのであれば、それなりの自衛を考えるべきだ。自由のために勇敢に、そして賢く戦おう。


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米国いよいよイラン攻撃に備える?

この間からブッシュ大統領はイランの核兵器開発を批判する演説を続けているが、先日アメリカはいよいよイランを攻める準備にはいったのではないかというニュースがはいった。(10月25日23時3分配信 毎日新聞より。)

<米国>イランに経済制裁 革命防衛隊との商取引禁止など

 【ワシントン笠原敏彦】米政府は25日、イラン革命防衛隊を大量破壊兵器の拡散に関わる組織に指定し、米企業・個人との取引を禁止する経済制裁を発動する、と発表した。また、防衛隊傘下の精鋭部隊、クッズ部隊を主権国家の軍として初めてテロ支援組織に指定。一連の制裁は1979年の米大使館人質占拠事件以来、最も強硬な措置とされ、イランとの緊張が一層高まるのは必至だ。
 ライス国務長官とポールソン財務長官が発表した制裁内容は、主に金融面での締め付けに焦点が当てられている。軍組織の他にイランの国営主要3銀行(メリ、メラト、サデラト)が国際金融システムを悪用してミサイル拡散やテロ支援に関わっているとし、同じく制裁対象に指定した。
 経済活動でも重要な位置を占める革命防衛隊は、ミサイル拡散のほか核開発への関与が指摘されている組織で、関連の20以上の企業・個人が制裁対象となる。また、クッズ部隊は、米国がイラクやアフガンなどで武器を供与していると見る組織。制裁対象となった組織・銀行は、米国内の資産凍結や米企業・個人との取引禁止が科される。の反対でメドが立たない中、米国は今回の措置が国際的な波及効果を生むことを期待している。

さて、このような措置に対してイラン側はどういう反応をみせているのかといえば、経済制裁などなんの効力もないと見ているようである。(翻訳:喜多龍之介さん)

アメリカがテロや核拡散への国家的関与を狙った新たな制裁を科した一日後、イラン当局は反抗姿勢を表明した。

強硬派のイラン革命防衛隊司令官モハマド・アリ・ジャファリ将軍は、イランはアメリカによるいかなる猛攻撃にも耐えられると宣言した。「イスラム共和国は人々の侵攻の強さと力を持っている」。
「この力には防衛における経験、知識、技術が加わる。我々は更に決定的な攻撃で、如何なる攻撃にも応じるだろう」。
より厳しい制裁もイランに核開発を諦めさせることはない、と同国の新しい核交渉責任者であるサイード・ジャリリは言った。「その前のものと同じく、新しい制裁はイランの方針に一切の影響を与えないだろう」。
コンドリーザ・ライス国務長官は、イラン政府内に亀裂を作ることでマハムード・アハマディネジャド大統領を孤立させることを目的とした措置だ、と言った。「イランと指導部にはアハマディネジャド大統領よりも沢山人がいる」。

ライス国務長官が表向きにはイランと交戦の意志はないといくら主張してみても、ブッシュ大統領の本音はイランへの経済制裁は極一部的な効果しか得られないことは承知の上だろう。私がアメリカがイラン攻撃の準備を進めているのではないかと懸念する理由はフォックスニュースで報道された下記のようなニュースが原因だ。

バグダッド南東にあるアメリカ軍基地に打ち込まれたロケット弾はイランで製造されたものであると米軍当局は土曜日発表した。これはイランがイラクの反乱分子に継続的に援助をしている証拠である。

10月23日に戦闘武器庫で行われた攻撃ではけが人はひとりも出なかったが、米軍の乗り物が一台破損されたと米当局は語っている。
米軍当局によれば、107mm のロケットは今年の三月ごろイランで製造されたもである。ロケット発射位置を捜査中の隊は標的を定めは発射するための六つの発射台を未発のロケットとタイミング機がついたままの状態で発見した。
押収されたロケットは過去4ヶ月に渡って兵士らが押収したイラン製造ロケットの40台目のロケットであると軍は発表した。

イラン製造のロケット弾がアメリカ兵宛てに打ち込まれているという事実はなにも今に始まったことではない。イラクで戦闘に携わっていた人なら誰でも反乱分子が使っている武器の多くがイランから供給されていることは二年前くらいから知っていた。しかし軍当局もブッシュ政権もイランのイラク関与については公式な認識はしてこなかった。その理由は色々取りざたされるが、一番単純な理由はブッシュ政権がイランとの時期尚早の戦闘は避けたいと考えていたからだろう。それが軍当局がイランからの武器がイラクで発見され押収されたという事件を大々的に発表したり、ブッシュ大統領がイランへの経済制裁をいまの時期に強行するということは、ブッシュ政権はいよいよイランを攻める準備態勢にはいったのだと考えるのが自然だ。
さて、ここでイランを攻めるとしたどういう方法があるのか、今年の初めにカカシが今こそイランを攻めるチャンス!で紹介した歴史家のアーサー・ハーマン氏のイラン攻撃作戦を振り返ってみよう。

ホルムズ海峡は確かにイランからの石油輸送にとって非常に大事な場所である。だが、それをいうならイランにとってもこの海峡は非常に重要な航路だ。イランはホルムズ海峡を手に取って世界をコントロールしようとしているが、アメリカはこれを逆手にとってイランをコントロールできるとハーマン氏は語る。それをどういうふうにするのか、下記がハーマン氏の提案だ。

  1. まずホルムズ海峡を通る石油輸送を阻止する国はどこであろうと容赦しないと発表する。
  2. その脅しを証明するために対潜水艦船、戦闘機、じ来除去装置、イージスBMDシステムなどを含む空母艦バトルグループをペルシャ湾に派遣する。むろんこちらの潜水艦も含む。
  3. アメリカ一国によるイランの石油タンカー通行を封鎖。イランから出る石油、イランへ入るガソリンなどを完全阻止する。ほかの国の船は自由に通過させる。
  4. イランの空軍基地を徹底的に攻撃し、イランの空の防衛を完全に破壊する。
  5. イランの核兵器開発地及び関係基地、インフラなどを攻撃する。
  6. そしてこれが一番大切なことなのだが、イランのガソリン精製施設の徹底破壊である。
  7. アメリカの特別部隊がイラン国外にあるイランの油田を占拠する。

イランは今非常に厳しい状況にある。ハーマン氏は我々はそれを最大限に利用すべきだという。

イランは非常に大きな石油輸出国であるにもかかわらず、なんとガソリンの40%を湾岸諸国を含む外国からの輸入に頼っている国なのである。精製施設がなくなり保存施設も破壊されれば、イランの自動車、トラック、バス、飛行機、戦車および軍事機器がすべて乾いてしまう。これだけでイランはイラン軍による反撃など不可能となってしまうのである。(イランの海軍は年老いて破損が激しい。一番の財産であるロシア製キロ級潜水艦は港を出る前に破壊してしまうべきである。)

この攻撃と同時にアメリカはイラン国民に「イラン政府を倒しアメリカに協力してガソリンを取り戻すか、イラン政権のムラーたちと餓死の運命を共にするか、君たちが選びたまえ」と呼びかける。もともとイラン市民はイラン政府に満足しているというわけではない。イラン国民は意外と世俗主義で西洋的な文化を持っており、宗教家ムラーたちの政権では圧迫を受けている。若者の失業率は75%というひどい状態で、最近では若い男女がイスラム教徒としてふさわしくない格好をしているという口実で無差別に服装警察に拘束され拷問されるという事件があいついでいる。イラン市民は今こそ自分らの将来をどうするのか、選択の時である。
ところで、イラン関係の記事を探していたら、先月の9月にブッシュ大統領のイラン批判演説について、毎日新聞のイラン:米大統領演説に反発必至 イラク情勢さらに混迷か(2007年9月15日)という記事を見つけた。
この「イラク情勢さらに混迷か」という部分が私は非常に気になったので読んでみると、記事はこんな具合に始まる。

【テヘラン春日孝之】イラク情勢を巡り、ブッシュ米大統領が13日の演説で「イラン脅威論」を展開、米軍のイラク駐留継続の必要性を強調したことに対し、イランが反発を強めるのは必至だ。イランでは国際協調を志向する穏健派が巻き返しつつあるが、米国のイラン敵視の先鋭化はイランの強硬派を勢いづかせ、イラク安定化を一層困難にする可能性がある。

毎日新聞はこれまでにすでにイランがイラクにクォッズという特別部隊を送り込んで、イラクのスンニ、シーアにかかわらず戦闘訓練をしたり武器供給をしたり、時にはイラン兵事態がイラクでアメリカ兵を殺しているという事実を全くしらないかのようだ。アメリカをサタン(悪魔)と呼び、アメリカやイスラエルの撲滅を公言している国がこれ以上アメリカを嫌うなどということが可能なのか?しかも毎日新聞は今年の2月ごろから始まったアメリカ軍のCOINと呼ばれる対反乱分子作戦が非常な効果を上げている事実を完全に無視している。あたかも今が2005年か2006年の秋ごろのような言い方だ。日本でも指折りの新聞である毎日がここまでイラク情勢に無知というのは信じがたい。

イランでは昨年末の地方選挙や最高指導者の任免権を持つ専門家会議の選挙で強硬派が惨敗。米国との和解を検討しているとされるラフサンジャニ元大統領を中心とする穏健派が巻き返しを図っている。こうした流れの中で今年5月、イラク安定に向け80年のイラン・米国の断交以来初めての公式協議が始まった。

だが、最近は米国内でイラン空爆論が再燃し、イラン革命防衛隊を「テロ組織」に指定する動きが浮上するなどイラン敵視が激しくなっており、両国協議は7月に2回目を開催して以降、めどは立っていない。
米国の対イラン強硬論は「米国との対話は無駄」「米国とは徹底的に対決すべきだ」というイラン強硬派の主張に正当性を与え、穏健派の動きを封じ込めかねない。米国がイラクのイスラム教シーア派武装勢力を支援していると主張するイラン革命防衛隊は強硬派の牙城でもあり、対抗措置を本格化させれば、イラク情勢の一層の悪化は避けられない。

もし毎日新聞がラフサンジャニが「穏健派」でアメリカと交渉の意志があるなどと考えているならナイーブとしか言いようがない。イランでいう「比較的穏健派」などという言葉はほとんど意味がないのだ。ラフサンジャニはアクマディネジャドほどあからさまにアメリカへの敵意を表していないというだけであって、彼らが核兵器を使って中東をコントロールしたいという野心に変わりはない。ラフサンジャニは確かにアメリカと交渉するかのようなそぶりはするかもしれないが、交渉しながら影で武器開発を進める分、正直にアメリカへの敵意を表明するアクマディネジャドより始末が悪い。
イラク情勢がこのまま良化の一途をたどり、比較的自由な国として復興することができれば、イラン国民も自分らの独裁政権を倒してアメリカという勝ち馬についたほうが懸命だと思うかもしれない。アメリカがイランを攻めるとしたら、なるべく非戦闘員を巻き込まないように充分気をつけてやってもらいたい。なにしろ将来イラン市民とは本当の意味での友人関係を結びたいのだから。


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人権保護という名の言論弾圧

イギリスでは人権保護という名目で自由がいたるところで束縛されるようになったと、コラムニストのメラニー・フィリップスは書いている。
ゴードン・ブラウン首相は現在人権保護のための新しい法案を製作中だという。しかしこの法案は人権保護どころか言論の自由を弾圧するものだとメラニーは警告する。

これは非常に恐ろしいことだ。政府が自由という言葉を口にするたびに、私は歯ブラシをスーツケースに入れる。これはゴードン・ブラウンという自由社会の根本を破壊しようとし、ヨーロッパ連盟の憲法条約を議会で押し通し、わずかながら残された自治の権利を失うかどうかについては国民の意見を取り入れるという公約をやぶり、英国の自治を脅かしている同じ首相である。

英国には人権法というのがあるが、これが悪用されて人々の自由をどんどん束縛するようになっているのだそうだ。これはもともと少数民族が差別を受けないようにと設けられた法律だが、アメリカのアファーマティブアクションと同じで時がすぎるにつて、少数派が裁判所を使って一般民衆の道徳観を攻撃する道具となってしまったようだ。たとえばテロリストの容疑者が人種差別をしたと訴えて警察の捜査が邪魔されたり、違法移民が人種差別を言い訳に国外追放を免れたりと、国の安全にかかわることですら人権法が人々の前に立ちふさがっているのだ。
メラニーが気に入らないのは、ブラウン首相がヨーロッパ連盟(EU)の法律を英国人の意志を無視して押し付けようとしていることにある。メラニーが例としてあげている差別禁止法が与える影響として、スコットランドのNHSという政府の部署で発行された52ページにわたる”Good LGBT [Lesbian, Gay, Bisexual and Transgender]Practice in the NHS” という同性愛者、バイセクシャル、性転換者への正しい気遣いの仕方が従業員に配布された。これはLGBTの人々への差別をなくすという主旨でつくられた規則なのだが、そのなかに差別用語の禁止という項目がある。それでいったいどのようなひどい差別用語が禁止されているのかというと、、、

「夫」「妻」「結婚」といった言葉は異性同士の関係を前提としたものであるため自動的にLGBの人々を疎外することになるります。伴侶に対しては「パートナー」または「あの人たち」と呼ぶことにして問題を防ぎましょう。 これには結婚しているいないに関わらずすべての異性同士のカップルが含まれます。….子供と話すときは「両親」「世話人」「保護者」といった言葉を使い、「お母さん」「お父さん」という言い方は控えましょう。

要するに、人権保護とか差別禁止とかいう名の下に、ヨーロッパでは伝統的な家族構成の思想を破壊していこうというのである。
イギリスも例外ではないが、昨日お話したデンマークや、オランダや、フランスで、イスラム系移民にいよる暴虐が横行しているのも、ヨーロッパ社会が自分達の伝統を人権保護という名目でどんどん破壊していっているからだ。宗教心の強いイスラム教徒からすれば、ヨーロッパの崩壊は世俗化によるものだと判断されても当然であり、これは必ずしも間違った見解とは思えない。ヨーロッパは冷戦で共産主義のソ連に勝ったのにもかかわらず、内側から自由主義の背骨を砕いていこうというのである。なんという嘆かわしいことだろう。
さて、この傾向は少なからずアメリカにもあるので、決して他人事ではない。アメリカ社会でも人権保護とか多様性とかいう名目で思想の自由がどんどん奪われつつある。その最たるものがアメリカの大学キャンパスだ。
イヴァン・コイン・マロニー(Evan Coyne Maloney)という若い映画監督がアメリカの大学キャンパスをあちこち巡ってつくったIndoctrinate Uというドキュメンタリーでは、いかにアメリカの大学が思想の自由を弾圧しているかを描いている。(私はまだ見ていないが、パワーラインで予告編を見ることができる。)
アメリカの大学では「ヘイトスピーチコード」という規則を取り入れているところが多いが、要するに相手が嫌がる言葉使いをしてはいけないというものなのだ。しかしあらかじめ使ってはいけない言葉がきちんと列記されているわけではなく、少数派だと自分で考えている人が差別されたと感じれば、その言葉を使ったひとはヘイトスピーチを使ったとして罰せられるという恐ろしい規則だ。相手がどんな言葉で傷つくかなど人それぞれではないか、何が違反かもわからない状態ではやたらなことはいえない。
多様性を重んじるなどと表向きは言う大学も、この多様とは人種とかLGBTのような人々のことであり、決して思想の多様性ではない。特に左翼主義が横行し、保守派や右翼主義の生徒はやたらに政治の話などキャンパス内でした日には、教授から落第点をもらうだけでなく、差別者として大学を退学になったりひどい時には裁判沙汰になって賠償金を支払わされたりすることがあるという。
アメリカは熔解の鍋と言われるほど多様の人種や国籍が集まり、それがアメリカ人として融合するというのがその強さの基盤となっていた。ところが最近のアメリカの大学では、「女性の会」「黒人生徒サークル」「同性愛サークル」といったようにそれぞれのグループを区分けするやり方がごく普通になっている。私は大学生の頃、どこかのサークルの集まりでピザの箱が山済みになって学生達がピザを食べていたので、自分は関係なかったのだが、中国人のクラスメートと一緒にサークルのメンバーのふりをしてピザを盗んじゃおうかという悪いことを企んだことがある。ところが、集まっている生徒の顔をみていたらみんな黒人。我々東洋人がメンバーのふりをしようにもこれは不可能。仕方なく諦めたという笑い話になったことがある。
しかし、少数派が少数派で固まり、外部者を受け付けないやり方は差別をなくすどころか、かえって差別をひどくする。口を利くたびに差別用語を使ったとして処罰されるのでは、普通の白人男性は怖くて有色人種や女性と口が利けなくなるではないか?無論それが大学側の狙いなのだ。彼らは学生達が左翼の教授らと全く同じ思想をもつように洗脳するのが目的なのだから。
デューク大学でパレスチナのテロリストの看板組織ISMが大学のサークルを利用してメンバーを募っていたなんて話は有名だが、もしデュークでISMサークルはテロリスト組織だと学生達が疑ったとしても、それを口にするのは非常に危険だ。差別者として退学になるだけでなく名誉毀損で訴えられかねない。その挙句にパレスチナ系テロリストに暗殺される危険すらある。
人権保護法は法を尊重する善良な市民を守らず、テロリストや犯罪者を守り、政府に多大なる力を与える非常に危険な法律である。イギリスも他のヨーロッパ諸国も、そして無論アメリカも、この恐ろしい法律をもう一度見直して欲しいものだ。


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アルジェジーラにまで見放されたイラクアルカエダ

この間アルジェジーラで放送されたビンラデンの声明テープの件で、イラクのアルカエダの連中が怒って抗議の声をあげているという。

アルカエダシンパたちはアルジェジーラテレビ局に対してオサマ・ビンラデンの最近の音声テープの抜粋を歪曲して紹介したとして怒りの声を爆発させている。 このテープではビンラデンはイラク反乱分子の間違いを批判している。
イスラム過激派のネット掲示板では、ビンラデンの反乱分子への日は何に焦点をあてたこの全アラブネットワークに対して何千という侮辱のメッセージが投稿された。
評論家によれば、これは民兵たちがビンラデンの言葉に驚ろいたことを象徴しており、ビンラデンが取り持とうとしているアルカエダとイラク武装集団との間の大きな溝への失望感の表れだという。
「問題はアルジェジーラじゃありません。これはビンラデンから受けた衝撃です。とエジプトのイスラム武装集団専門学者のDiaa Rashwanさん。「精神的な指導をするはずのビンラデンが初めてアルカエダを批判し間違いを認めたのですから。これは普通じゃありません。」

アルジェジーラですら、ビンラデンの声明は悲観的だと気がついたというわけだ。ビンラデンの声明はテロリストを元気付けるどころか、かえって失望感を高めてしまったらしい。これではビンラデンはスピリチュアルリーダーとしては全く失格だな。(笑)


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デンマーク、反イスラム過激派運動員、イスラム暴徒に襲われる

デンマークに、Stop Islamisation of Europe(ヨーロッパのイスラム化を止める会)という市民団体があるが、彼らが先日コペンハーゲンでデモ行進を行う直前、運転中の二台の車が襲われ、運動員四人がイスラム系暴徒に鉄パイプで殴られ重傷を負という事件があった。下記は彼らのサイトからで、けが人の写真が何枚か掲載されている。彼らは主流メディアはこの事件を完全に無視しているか、歪曲した報道をしていると書いている。ことのいきさつは下記のとおり。
10月21日、SIOEはコペンハーゲンでデモを行うと発表した。デモが始まる前に主催者のアンダース・グラヴァースさん(Anders Gravers)はもうひとつの車の後をついてミニバンを指定された場所に駐車すべく運転していた。バンには74歳の婦人ともうひとりのメンバーが乗っていた。
アンダースさんが車を止めて車から出ようとしたとき、突然フロントガラスが何者かによって割られた。二人のイスラム系暴徒が「車からひきだせ!」と大声をあげてアンダースと隣に乗っていた乗客を助手席側の窓を割って鉄パイプで殴りだした。老婦人はソーダの入っているビンで頭を殴られた。
アンダースさんは暴徒の顔を足で蹴り、車から消火器をとりだしもうひとりの暴徒の肩を激しく打った。後になってわかったことだが、どうやら暴徒はアンダースさんを刺し殺そうとしたようで、アンダースさんのシャツにはいくつも切った後があった。しかしアンダースさんはシャツのしたに防弾チョッキをきていたためナイフによる怪我は免れた。
突然暴徒はいなくなったが、もうひとりの男性のメンバーは4~5人の暴徒に鉄パイプでなぐられ道端に倒れていた。彼も何度か刺されたがチョッキのおかげで命は取り留めた。アンダースの前の車に乗っていた婦人は混乱して暴徒の指図どおりに車からおりてしまったため、逃げようとしたところをやはり鉄パイプで殴られた。
おどろいたことにアンダースさんは怪我にもかかわらず、デモ行進に参加したという。この程度のことでは黙りはしないという信念からだ。
デンマークでのイスラム教移民による暴虐はここ数年かなりひどくなっているようだが、左翼の政府がこうした犯罪者を取り締まるどころか、過激派に怯えて彼らに迎合するような態度ばかりをとるため、過激派はどんどん図にのって一般市民を苦しめている。
SIOEのようなグループの活動は、今回の事件でもわかるように、すでに命がけのものとなっている。もし彼らがいまのうちにこの戦いに勝たなければ、デンマークに言論の自由など存在しなくなってしまう。それにしても、このようなグループがデモ行進をするのに警察の警備はなかったのだろうか?アンダースさんは携帯電話のシグナルが届かず、警察を呼べなかったと言っているが、アメリカの場合、どんなグループでもあらかじめデモ行進は許可が必要で、そのイベント次第で規模は異なるが、必ず警察がたちあうことになっている。特にSIOEのように過激な敵の多い団体がデモをする場合には群衆規制をする機動隊が出るのは普通だ。
もし、デンマーク政府が反イスラム過激派のデモ行進に対して消極的だというのであれば、主催者側は参加者の警備に対してもっと積極的な態度をとるべきではないだろうか?アンダースさんや他のメンバーが防弾チョッキを着用していたことからして、彼らはそれなりの危険を感じていたはずである。だとしたらもう一歩進んで、ボディガードを付けるとか、自分なりに武装するとか何かしら考えるべきである。
彼らは今回のことで、相手が待ち伏せや暗殺を使ってまで、反イスラム過激派を黙らせようとしていることを充分に学んだはず。今後はブラックウォーターの警備員でも雇って身を守ることを考えて欲しい。
いったいデンマーク政府は誰の味方なのだとききたい!


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