先日アメリカの下院で選挙法を変えるHR1という法案が通った。下院議長のナンシー・ペロシ発案なので、上院で通すとなると60票必要となり、共和党議員の賛成も必要なのでまだどうなるかは分からない。バイデン元副大統領は法案には署名すると宣言している。端的に言って、この法案は選挙法設定の権限を各州から奪い、連邦政府が一括して統一するというもの。日本のように中央政権制度に慣れておられる方々には、選挙法が全国で統一されることの何が悪いのかとお感じになるかもしれないが、アメリカは合衆国であり、それぞれの州の自治権は非常に重要視されている。それでもまだ、この新法律が前回のような不正を防止するために役立つというのであればまた話も別なのだが、事実はその逆。HR1は前回不正の温床となった数々の制度を全国的に起用しようというとんでもない法案なのである。その問題点についていくつかご紹介しよう。

選挙登録の簡易化

住民票がないアメリカでは、選挙で投票したい人はあらかじめ事前に投票名簿に登録する必要がある。無論その際身分証明書などの提示が必要となる。しかしカリフォルニア州などではもうかなり昔から、本人が好むと好まざるとにかかわらず自動車免許を取得の際に自動的に登録されるようになった。しかし免許書を取る人がすべて有権者であるとは限らないので、これをやると居住権があるだけの外国籍の人が間違って登録されてしまう危険性がある。有権者でない人はこの名簿への記載を断る必要があるのだが、そこまでする人がどれほどいるだろうか?

しかもHR1では、選挙当日登録も可能にするという項目がある。選挙当日の投票場での登録では、本人が有権者であるかどうかの確認は不可能だ。新規登録者がすぐさま名簿に加えられるというシステムもないので、当日登録であちこちの投票場で何回も投票することが可能になる。しかも、、

身分証明の廃止

この法案では投票の際身分証明書提示を要求することも廃止するというのである。もうすでにカリフォルニア州ではだいぶ前から投票の際に身分証明書の提出は必要なくなっているが、これを全国的にやろうというのがこの法案。本人かどうか確認できなければ、投票券を盗んだり、他人から買ったりした人間が何回も投票できることになり、不正はやり放題である。ジョージア州では最近不在投票要請の際の身分証明をもっと厳しくするという州法を通したが、それを地元の民主党活動家たちは抗議して議事堂に乱入するという事件まで起きている。(民主党が乱入した場合は反逆罪だなどと言うメディアは居ない)。

郵便投票の拡大

HR1では全国的に郵便投票を拡大するという項目がある。前回の選挙で一番の問題となったのは言わずと知れた郵便投票の拡大である。これまでにも不在投票はどこの州でも許可されていたが、それはあくまで例外であり、きちんとした理由のある本人からの要請がなければ郵便票を送付するというのが普通だった。しかし前回は武漢ウイルスを口実に、多くの民主党の州で本人が希望するしないに関わらず前回の登録者名簿に載っていたすべての有権者に送付された。そしてその投票券はあちこちに仮設された監視の全くない投票箱に投函できるようになっていた。

登録者名簿は選挙の度に新しくしていく必要がある。登録はしたものの過去何回か全く投票していない人、亡くなった人、引っ越した人等々、名簿から削除していく必要がある。だが、お役所仕事、常に一番新しい名簿であるという保証は全くない。それで登録者名簿に載っているすべての人に投票券を送付したりすれば、そのいくつかは本人ではない人の手に渡ることになる。実際にそういうことは多く起きている。これは全国的に拡大したらどういうことになるか、前回の選挙などの比ではなくなるだろう。

代理人投票の規制緩和

アメリカでは自分で投票場に行かれない人のために、家族や介護人が投票してもよいという法律があるが、誰が代理で投票できるかには規制がある。しかし、すでに民主党が暗躍する地域では、民主党活動家が選挙になど全く興味のない有権者の家々を回って郵便投票の「手伝い」をし、集めた投票券をまとめて投票するなどという不正行為を行っている。この法案ではこうしたいわゆるバレットはーべスティング(投票券収穫)がさらにやりやすくなるようになっている。

HR1は憲法違反

冒頭で述べた通り、アメリカは連邦制であり、州による自治権は多大なるものがある。各州による選挙法は各州の議会が決めると憲法に明記されており、連邦政府といえども勝手にそれを変えることは出来ないのである。たとえこの法案が選挙法改正として妥当な法案であったとしても、それを取り入れる入れないは各州が独自に判断しなければならない。それでも強硬するというのであれば、多々の州から訴訟が起きることは先ず間違いない。

この法律は憲法改正を必要とするため、上院で通すためには三分の二にあたる60票が必要だが、今のところ共和党から賛成票を投じる人は居ないようだ。

賛成派の議論

民主党が独裁政権を握りたいという理由を隠しながら、このHR1を推進している人たちが、どのようにこの法案を正当化するのか、その議論を読んでみた。ようするに我々が不正の温床になると指摘している偏向が、人々が投票しやすくなる良い方法だという議論である。賛成派が良いことだとして挙げている項目を羅列すると、、

  1. 全国的な投票者自動登録。
  2. 早期投票や不在投票の拡大
  3. 重犯罪者の投票権回復
  4. 郵便投票過程の簡易化
  5. 投票を阻止する様々な手口を阻止する、たとえば選挙登録者名簿の整理、選挙警備の強化、紙の投票用紙推進、選挙関係の契約会社の厳しい管理などのように。

これが良いことだと思える人は、不正が横行することが良いことだと言っているに等しい。

だいたい私は投票は安易にできるべきだとは思わない。実際に国の将来を左右する人間を選ぶのだ、きちんと身分証明書を所持し自ら登録するくらいの気持ちのない人に安易に選挙になど参加してほしくない。他人に言われて報酬をもらって訳も分からず投票用紙を埋めるような人に投票などしてもらいたくない。そんな票が投じられても、政治に一般庶民の意志など全く反映されないからだ。

1960年代までの南部では、黒人票を阻止するために不公平な規制が設けられ、黒人が正当な投票が出来ない状況が起きていた。しかし公民権法が通ってから、そのような投票妨害は違法となり、いまや正式な手続きを踏んだ有権者が投票できないなどという状況は存在しない。

よく活動家は誰もが身分証明書を持っているとは限らない、身分証明書取得にはお金がかかるので貧乏な人(多分マイノリティー)には難しいなどという。だがコンビニでビール一本買うのにも身分証明書が必要な今日び、選挙で身分証明が必要ではないという理屈の方がおかしくないか?

アメリカでは運転免許書がなくてもDMVに行けば身分証明書を無料で発行してくれる。それに、生活保護を受けている人にはそれなりの証明書があるはずなので、身分証明書を持っていないアメリカ人なんて先ずいない。

身分証明書のあるなしが選挙に影響を及ぼすと本気で考えているなら、活動家は多くの貧困層が身分証明書を簡単に取得できる方法を考えるべきだ。

無論賛成派の本意は不正を簡単にできるようにして、今後一切共和党が選挙で勝つのを防ぐことにある。投票がしやすくなるとか単なる口実に過ぎない。はっきり言って民主党はその本意を隠す気すらない。上院では絶対に否決してほしいが、バイデンが大統領命令で強硬しようとしたら、多々の州で訴訟が起きるだろう。それが長引くと2022年の選挙ではどうなるのか、かなり難しいことになりそうだ。