ベン・シャピーロやマット・ウォルシの保守派ポッドキャストプラットフォームのデイリーワイヤー(DW)社が本格的にコメディ映画を制作した。DWの共同創設者であるジェラミー・ボーリングが脚本・演出・主演をこなしている。

ボーリングという人は凄い人で、これまでにも自分らの番組から手をひいたスポンサーに立ち向かって「ジェラミーレイザー(髭剃り)」を売り出したり、女性週間にトランス女性をモデルにしたハーシーズチョコレートに対抗してHe/Sheチョコレートを発売するなど面白いことをやってきた。またここ数年マット・ウォルシの「女とは何ぞや」などドキュメンタリーやSFやウエスタンやミステリーなどのフィクション映画も手掛け、最近は子供向けのテレビ番組も始めた。DWは保守派メディアとしてどんどん企業拡大を目指している。

今作品は低予算でかなりの短期間で制作された映画であるし、普通のハリウッド俳優は出演したがらないこともあり、演技経験が有る無しに関わらず、デイリーワイヤー出演者総出の配役である。それでかなり素人感のある映画なのではないかと思われたが、意外や意外、結構おもしろかった。

あらすじ:かつて高校のバスケチームを全国大会で連続優勝させる輝かしい業績を持つコーチ・ロブ(ジェラミー・ボーリング)だが、15年後の今はすっかり落ちぶれ、まるでやる気のない高校生チームのコーチ。しかも、今やポリコレの高校では昔のような厳しい訓練は受け入れられず生徒を厳しく説教をしたため、その仕事さえも首になってしまう。コーチ・ロブは私生活でも妻のダービー(レキシ―・コンターシ)とは離婚裁判中。そんな彼がひょんなことから国際選手権の出場資格が一般公募になったことを知り、多様性・平等・包括規則の抜け穴を悪用し、かつての高校バスケチームメンバーを集めて男子のみの「女子チーム」を結成し国際選手権に挑む。==

お察しの通り、この映画は男子が自分は女子だといって女子競技に参加することのバカバカしさをテーマにしたものだ。保守派のDWが制作したとあって保守的なメッセージが前面にでてお説教じみた映画になるのではないかと思ったが、そんなことはなく結構コメディーとして成り立っている。最近の高予算のポリコレ映画なんかよりもよっぽど説教じみてない。

映画全般にトランスジェンダリズム推進者たちの言説が満載されているため、ちょっと詰め込み過ぎの感はある。ただ彼等の主張をこうやって並べ立てると、いかにトランスジェンダリズムそのものがパロディーであるかが顕著になる。

例えばコーチロブの10歳の娘ウィニー(ローズィー・サラフィン・ハーパー)が学校で女子自認男子のペニスをお手洗いで見せられたとか、それに抗議するコーチロブを娘がトランスフォーブと責めたり、資本主義が家父長制度の最たるものだなどと授業の内容を羅列するシーンは可笑しくて笑えるのだが、実際にこれが学校で教えられていると思うと笑ってもいられない。

また全員男子の「女子チーム」をメディアが担ぎ上げ、ネットで人気が出て「女子選手一日目」とかディラン・モルベイニーをおちょくったシーンも、ディランそのものがパロディーなだけに何とも言えない。

もちろん男子が女子のふりをして女子競技に参加するという話はこれまでにも何度も映画になっている。だが、この映画とそれらの映画の違うところは、それまでの映画では男子はあくまでも女子の振りをしており、彼等が男であると知っていたのはごく一部の人たちだけだったのに対し、この映画では誰が見ても男子と解る男たちが女子だと主張して競技に参加しているということだ。レイディーボーラーズの男たちは髭もすね毛も剃っておらず、どこからどう見ても男に見えるにもかかわらず、メディアが「衝撃的に美しく勇敢」と繰り返すことに誰も異論を唱えることができないのである。

コーチロブを誘惑し男子の女子チーム結成を企てる女性ジャーナリストのグウェン(ビリー・ラエ・ブランディト)は自分のジャーナリストとしての立場を利用し男子だけの「女子チーム」は美しく勇敢だという論説を押し通してしまう。ローカルテレビ局のアナウンサー、ドレイク(マイケル・ノールズ)とステーシー(ブレット・クーパー)は最初は男子は女子に比べ不公平に優利なのではないかとグウェンに質問しようとするが「トランスフォブ」と一括されてしまう。

この二人のアナウンサーたちがシーンを追うごとに自分らが如何にマイノリティーであるかをアピールするためにどんどん自分達の祖先が先住民であったことを強調しはじめインディアン酋長のような恰好に変わっていくのもおもしろい。

レイディーボーラーズのメンバーたちは最初は自分らがインチキをしているという罪悪感を持っているのだが、だんだんと周りのメディアなどに持ち上げられ、雑誌に載ったりインタビューを受けたり、また別の競技でも優秀な成績を収めるなどし始めると、だんだんと自分らのイカサマが気にならなくなっていく。それどころか突然訪れた名声に酔い始めてしまう。私はこれを観ていて、ディラン・モルベイニーも本当はパロディーのつもりで始めた「女の〇日目」動画が思わぬヒットをしてしまい、その一時の名声に酔っているのではないだろうか。

メンバーたちがだんだんと「自認女性」に慣れて来るのとは裏腹に、コーチロブは自分が始めたことであるにも関わらず、だんだんと罪悪感にさいなまれるようになる。娘のウィニーが「私も男の子になりたい。男の子は何でも女の子より優れてるから」と言い始めて、そんなことはないよ、と諭しながら、自分が如何に間違ったことをしているかを悟るシーンはちょっと感動する。

バスケチームの五人を演じるのは明らかにプロの俳優。中でもチームのエースであるアレックス(ダニエル・コンシダイン)と元タオルボーイで「女の子選手一日目」を演じるタイラー・フィッシャーの演技は光る。他の三人ジェイク・クレイン、ブレイン・クレイン、デイビッド・コーンは何故か役名と本名が同じ。ジェイクとブレインは兄弟を演じているが、もしかして本当に兄弟なのかも。長身のデイビッドはバスケを諦めて山男になっていたのをコーチロブらの説得で下界に戻ってくるが、この場面もかなり面白い。(後で調べたらクレイン兄弟とデイビッドは三人でDWでスポーツ関係のトークショー番組を持っており、大学時代はスポーツ選手だった。三人ともクレイン兄弟は185cmくらいでデイビッドは190cm以上の長身。ただし三人とも演技の経験はないそうだ。それにしては上手だな。)

プロの役者に混ざってDWのポッドキャスターたちもちょい役で出ているが、妻の新しい恋人役の超左翼長髪ヒッピーのクリス役のマット・ウォルシはじめ、ニュースキャスター役のマイケル・ノールズやブレット・クーパーそしてベン・シャピーロなど結構演技が冴えている。それもそのはず、主役のジェラミー・ボーリングもマイケル・ノールズもブレット・クーパーも昔役者を目指したことがあり全くの素人というわけではないのだ。シャピーロは役者ではないが、長年メディアで活躍しているだけあって結構いい味を出している。最後の方で自分はトランス女性なのかもと悩み始めるアレックスのカウンセラーとして、ジョーダン・B・ピーターソン博士がちょろっと登場したのには笑ってしまった。

低予算の独立映画なので、演技にしろ脚本にしろ、ところどころ「もうちょっと」と思うところはあるが、それでも結構まとまった映画になっていたと思う。ともかくずっと笑い続けられたのでコメディとしては合格点である。


1 response to メッセージに負けないコメディ、自称男子の女子スポーツ参加をおちょくった映画レイディーボーラーズ

苺畑カカシ4 months ago

興味があったので、この映画の批評動画を出しているユーチューブチャンネルを色々みてみた。

保守派からの反響は結構いい。ただ映画としてところどころ長く続きすぎるシーンがあるとか、メッセ―ジを詰め込みすぎて多少説教じみた場面もあるといった建設的な批判が多かった。

左翼リベラルでトランス自認の男性がやっている二つのチャンネルで批評を観た。二人ともそれぞれ一時間近くの批評で、まあご苦労なこったと思った。彼等は最初からこの映画は嫌いだと決めつけてるせいもあるが、彼等には保守派はこういう考えをしているに違いないという偏見があるため、映画のメッセージを正しく理解出来てない感じがした。

特に映画を通じて男性の方がスポーツにおいて女性より優れていると主張しすぎて、これは女性蔑視ミソジニーの映画になっているという主張には笑ってしまった。コーチロブがグウェンの色気に負けてメロメロになってコントロールされてるところなんず全く男尊女卑には見えないけどね。

最終的に女性が居なければ男性は成り立たないこと、女性が男性を文明人にするという大事なメッセージを左翼リベラルは聞き逃した模様。ところでこれってうちのミスター苺がいつも私に言ってることだけど。

また、映画を通じて女装することに何故か心地良くなっていき自分は女性なのではないかと思い始めるキャラクターに関して、なぜ彼がトランスジェンダーだと理解を示さないのか、という質問をしていて、いや、それはコーチロブはキリスト教徒の保守派男性だからでしょ、と思ったんだが、この人たちは本当に保守派が理解できてないんだなと改めて思った。

保守派の人間はトランスジェンダーの人たちに対して同情しているのだ。彼等が本当の異性だと信じている人はいないが、彼等が性違和で苦しんでいるのだという理解はある。だから彼等に必要なのは心の迷いを治療するカウンセリングだと考えるのだ。彼等をトランスジェンダーとして認めるということは保守派は親切なことだとは思っていないのだ。

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