アップデート:12月9日現在。ペン大学のマギル学長は学長の座から本日付けで辞任した。しかし教授としては学校に残る予定。

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数日前、フィラデルフィアにあるイスラエル移民経営のファラフルレストラン前で何百人というハマステロリスト支持者たちが集まり店主や定員たちを脅迫した。店主がイスラエル出身だからといって今回の戦争とは直接関係はない。外国に住む一レストラン経営者を脅して何の意味があるというのだ。それでもアメリカがイスラエルと戦争をやっていると言うのなら同意は出来ないが感情的には理解できる。だがアメリカとイスラエルは同盟国であり、バイデン政権は一応表向きはイスラエルの自衛権を支持しているのだ。

先日もニューヨークの高校でイスラエル支持の平和的な集会に参加したユダヤ系の高校教師が怒り狂う生徒達に追い詰められて自分のオフィスに何時間も閉じ込められるという事件が起きたばかりだ。

また毎年12月に来るハヌカ期間中にアメリカ各地の都市でミノラと呼ばれる大型燭台に一日づつ灯を灯す行事を行う伝統があるが、今年はこんな状況なので中立を保つためと言ってこのイベントをキャンセルする市が出てきている。しかしアメリカ在住のユダヤ教徒の行事とイスラエルの戦争とは直接関係ないはずだ。同じ民族だというだけで他所の国で起きている戦争のために国内のユダヤ人の行事をキャンセルするのは単なるユダヤ人差別である。

もちろんその理屈でいくなら、イスラエルの国策を批判したからといって、それは必ずしもユダヤ人差別にはならないはずだということになる。無論それはそうだ。しかしイスラエルのガザ攻撃を批判する人のなかで、ハマスのテロ行為を糾弾し人質の返還を唱えハマスによるロケット弾攻撃はやめるべきだと訴える人が全く見当たらない。単に罪のない人々がこれ以上犠牲になって欲しくないというのなら、ガザ民同様イスラエルの無実の民間人の犠牲に対しても同じように思いやりがあってしかるべきだが、そうはならないのだ。

日本でも毎日のように東京のイスラエル大使館の前でデモをやっている緑の党の議員のXアカウントでは、イスラエルに今すぐ停戦しろ、ガザ民攻撃をやめろ、といいながらハマスに対してロケット攻撃やめろ、人質返せとは一言も言わない。批判はすべてイスラエルに向けられる。なぜだろうか?

ユダヤ人差別は一応聞こえが悪いので、自分はシオニズムを批判しているのであってユダヤ人差別をしているわけではないと言い訳する人がある。これは昔からある詭弁だ。シオニズムとはユダヤ人がユダヤ教国家を持つことであり、シオニズムを支持しないということは、ユダヤ人に国家を持つなと言う意味だ。もし日本人に対して「日本人を差別してるわけじゃないけど、日本という国は存在すべきじゃないと思う、さっさと近隣諸国に土地を明け渡して日本人は永遠に流浪の民として暮らすべきだ」などと言われたら、日本人はどう思うだろうか?

議会におけるエリート大学学長たちの反ユダヤ人発言が波紋を呼ぶ

先日アメリカ議会においてマサチューセッツ工科大学、ペンシルベニア大学、ハーバード大学などエリート大学の学長たちが招かれ大学キャンパスで高まる反ユダヤ人運動に関して質問を受けた。一部学生たちによるユダヤ民族浄化を訴える言動について学校側はどう受け止めているのかという質問に関する学長たちの答えが波紋を読んでいる。

反ユダヤ主義に関する議会公聴会では、全員が宣誓の上で次のような質問をされた。

「ユダヤ人の大量虐殺を呼びかけることは、(あなたの大学の)行動規範や、いじめや嫌がらせに関する規則に違反しますか?」

これまでのアメリカエリート大学における反差別主義や多様性や平等や包括性といった主義から考えれば、この質問の答えは極めて簡単なはずだ。躊躇なく「イエス」と答えられるはずである。ところが、ゲイ学長、マギル学長、コーンブルース学長ら答えは口を揃えて「文脈による」という信じられないものだった。特定民族を浄化せよという言動を糾弾するのにいったいどんな文脈が必要だというのだろうか。

質問者のエリーゼ・ステファニック下院議員(共和・ニューヨーク代表)はその答えにショックを受け、同じ質問を何度も何度も繰り返した。特にこのステファニック議員とペン大学のリズ・マギル学長のやり取りは衝撃的だ。

マギル学長:それは文脈に頼る決断です。

ステファニック議員:文脈による決断、それがあなたの本日の証言ですか?ユダヤ民族の浄化を唱えることが文脈によると言うのですか?これが虐めでも嫌がらせでもないと言うのですか?これはもっとも簡単な質問ですよ。ミゲルさん。

マ学長:もし言論が行動に移れば嫌がらせとなり得ます。

ス議員:(声を荒げ感情的な言い方で)行動とは大量虐殺を行うということですか?

ジェノサイドとは「特定の国や民族を滅ぼす目的で、その国や民族の出身者を意図的に大量に殺すことである」。行動に移すということは大量殺戮をするということだ。実際に殺人行為に移さなければ大量殺戮を呼びかけても嫌がらせにならないというのか、はっきり言ってこれは校則以前に脅迫という違法行為ではないのか?

MIT大学のサリー・コーンブルース学長も単なる発言で特定の個人に向けたものでなければいじめや嫌がらせには値しないと答えた。

ス議員:ユダヤ民族浄化を唱えることはいじめや嫌がらせとみなされますか?イエスかノーですか?

コ学長:私はユダヤ民族浄化という発言はキャンパス内で聞いていません。

ス議員:でもインティファーダの音頭の声は聞いてますよね。

コ学長:音頭は聞いてます。それは反ユダヤと見なされる可能性はあります、文脈次第では。ユダヤ人殲滅を呼びかけるものであれば。

ス議員:ではこれはMITの行動規範の違反にはならないということですか?

コ学長:それは汎発(はんぱつ)的で激しいものであればその時は捜査されます。

何百という学生が徒党を組んでキャンパス内を練り歩き「インティファーダ、インティファーダ」と叫ぶ行為は汎発的で激しい行為ではないというのか?

ハーバード大学のクローディン・ゲイ学長の答えも同じようにひどい。ユダヤ民族浄化を唱えることはハーバード大学において虐めや嫌がらせと見なされるのかという質問にたいし、

ゲイ学長:文脈によってはなり得ます。

ス議員:どのような文脈ですか?

ゲ学長:個人的に標的にされた場合です。

ス議員:ユダヤ系学生が標的にされています。ユダヤ人学生個人に向けられています。あなたは自分の証言がどれだけユダヤ人を非人間化しているかお分かりですか?

普段から、やれセーフスペースだあ、マイクロアグレッションだあ、正しい代名詞を使わないのはヘイトスピーチだあ、ハロウィンで黒塗りするのは黒人差別だあ、などと大騒ぎしている大学が、あからさまにユダヤ民族浄化を唱え大勢でユダヤ人学生を威嚇し脅迫し時には暴力を加える行為を、虐めとも嫌がらせともみなさないというのはどういう理屈だ?実際に大学構内でユダヤ人学生の虐殺でも起きない限り問題ないとでもいうのか?

この公聴会の様子を見ていて私は腸が煮えくり返る思いだった。単に彼女達がステファニック議員の質問にイエスかノーかで答えないだけでなく、議員の目も見ずにあらかじめ用意して来た書類を見ながらハンコを押したように「文脈による」と同じ言葉を繰り返し、だんだんと腹を立て声を荒げるス議員を嘲笑するかのような笑みすら浮かべているのだ。

この公聴会の三分間のやり取りは保守派メディアだけでなくCNNやMSNBCなどのメディアでも報道され激しい批判が集まった。翌日に三人はそれぞれ弁明の声明文を出したが、特にペン大学のマギル学長はビデオで謝罪と訂正を発表した

昨日の反ユダヤ主義に関する議会の公聴会で、本学のキャンパスでユダヤ人の大量虐殺を呼びかけることは、本学のポリシーに違反するのかと問われた瞬間があった。その瞬間、私は、言論だけでは罰せられないという合衆国憲法に沿った本学の長年の方針に集中していた。ユダヤ人大量虐殺の呼びかけは、人間が犯しうる最も恐ろしい暴力の呼びかけであるという反論の余地のない事実に、私は目を向けていなかったが、向けるべきだった。 それは悪であり、単純明快だ。

はっきりさせておきたいのは、ユダヤ人大量虐殺の呼びかけは脅迫的であるということだ。何世紀にもわたってポグロムと憎悪にさらされ、ホロコーストで大量虐殺の犠牲となった人々を、意図的に恐怖に陥れるものだ。私の見解では、これは嫌がらせか脅迫である。何十年もの間、ペンシルバニア大学の複数の学長の下で、そしてほとんどの大学と一貫して、ペンシルバニア大学の方針は憲法と法律に導かれてきました。今日の世界では、ここ数年見られなかったような形で、憎悪の兆候がキャンパスや世界全体に拡散しているのを目の当たりにしており、これらの方針を明確にし、評価する必要がある。ペンシルバニア大学は、私たちのポリシーについて真剣かつ慎重な検討を開始する必要があり、ジャクソン・プロボストと私は直ちにそのためのプロセスを招集します。

私は学長として、私たちのコミュニティのすべてのメンバーが成長できるよう、安全、安心、そして協力的な環境を約束します。私たちはこの問題を解決することができますし、必ず解決します。ありがとうございました。

言論の自由という概念に集中していたせいで、ユダヤ人虐殺がいけないという概念に考えが及ばなかったというのか?なんという情けない言い訳だ。はっきりさせておかなければならないのは、これらの学長は先日議会に呼び出されることは一週間も前から知っており、大学のPRコンサルタントや弁護士と事前に相談してから出席したのだ。つまり彼女たちは議会でどういう発言をするのかあらかじめ決めていたのだ。にもかかわらず後で弁明しなければならないような恥かしい証言をしてしまったことを、単なる見落としであったかのように言っても時すでに遅しである。

これはアカデミアという世界で如何にユダヤ人差別が汎発であるかを示すものだ。あまりにも普通に行われていることなので、それが差別であることすら意識されていなかったのだ。それが世間に知られ一般市民の怒りを買ってから初めて自分らの考えが異常であることに気付いたのであろう。

ペン大学は緊急会議を開きマギル学長の辞任について話しあったようである。UPenn board of trustees holds emergency meeting amid calls for president to resign over antisemitism hearing (msn.com)

ペン大学だけでなく、MITもハーバードも学長らを首にすべきだ。もしこれがユダヤ民族ではなく、黒人やアラブ人など他の民族だったら間違いなく学生たちは即退学になっていただろうし、それを擁護するような学長は即座に首になっていたはずだ。ユダヤ人にならどんな差別も許されるという風潮を作ってはならない。

ところでXでMay_Roma めいろま 谷本真由美さんがおもしろいことを言っていた。

ハーバード大学総長はアフリカ系女性だが、彼女が発表した査読論文の数や質が20代で博士号取得したばかりで講師に応募する若者並みだとして大変な批判を受けている。理系研究者が激怒。

これらエリート大学の学長が揃いも揃って女性であることや、学歴も業績もともなわない黒人女性が任命されているというのも、すべて多様性のおかげだろう。左翼リベラルの多様性なんて蓋を開ければこんなものなのだ。


3 responses to ユダヤ人差別で明らかになるアメリカ左翼リベラルの偽善

よもぎねこ4 months ago

 シオニズム批判はともかくシオニズム反対で、ユダヤ系アメリカ人への迫害を放置するってあり得ないです。 だってユダヤ系アメリカ人が全てシオニストである訳もないのです。 シオニズム反対でユダヤ系アメリカ人を迫害して良いなら、イスラム原理主義反対で、イスラム教徒やイスラム圏からの移民を迫害しても良い事になりますが、そんな事をしたら差別だと大騒ぎになるでしょう?

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    苺畑カカシ4 months ago

    同じ民族だというだけで特定の民族を迫害する行為は典型的な人種差別です。ユダヤ系アメリカ人は必ずしもイスラエル政府に同意していないし、第一、アメリカ人はユダヤ系でもイスラエル国民ではありませんからね。イスラエルがどんな国だったとしてもそれを理由にアメリカ在住のユダヤ人を差別するのは本来であれば左翼リベラルとしてあってはならないことのはずです。

    ところが被差別者がユダヤ人だと全く問題ないと言えるひとたちの偽善にはおどろきます。

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