ケビン・スペーシーと言えばアメリカでは大御所映画俳優。その演技力の幅は広くブロードウェイの舞台でも活躍し、数々の映画に出演しアカデミー賞も受賞している。またテレビでもアメリカ版ハウスオブカードの主役も務め、ネットフリックス至上最高の視聴率だった。俳優としてのスペーシーのキャリアはまさに順風満帆といったところだったのだが、2017年、突然若い俳優からミーツ―攻撃を受けてしまう。そして彼のキャリアには急ブレーキがかかってしまったのだ。

2017年、アンソニー・ラップという男優から、ラップが未成年の頃にスペーシーに性的加害をされたと告発された。彼はスタートレックシリーズのディスカバリーでゲイのエンジニアを演じた男性だ。ラップは1986年に当時14歳だったラップをスペーシーが自宅のアパートで開かれたパーティーに招待し、ラップを寝室に連れ込んで性行為をしようとしたが、スペーシーが泥酔していたのでラップは逃げることができたというもの。

この告発があって以来、スペーシーは主演のドラマから降板させられ、撮影途中だった映画も中断。2017年以来スペーシーの姿を見ることはほとんどなくなった。その後無名の男性からもバーでスペーシーに股間を触られたとか、ハウスオブの撮影現場でスペーシーからセクハラを受けたなどという告発もあったが、それぞれ裁判にまではいかなかった。

しかし2022年10月、アンソニー・ラップはスペーシーを訴えていた民事裁判で自分の告発は嘘だったことを認めるという意外な展開があった。

そして三か月前、イギリスでもスペーシーが性加害をしたという刑事裁判で、陪審員たちはスペーシーの無罪判決を下した。この裁判を追っていたダグラス・マレーに言わせると、有罪の証拠はほとんどなく、裁判沙汰になるべきではない事件だったと怒りを隠せない様子だった。

さて、実は私はこの一連の事件をほとんど追っていなかった。私はケビン・スペーシーは好きだが、ドラマも観ていなかったし、ああ、また別の俳優がミーツ―の犠牲になったのかと思ったくらいだ。無論本当に有罪かどうかもわからないのに、単に誰かが告発すればそれで大人気スターのキャリアが崩壊するなんてことがあってもいいのだろうかと疑問だった。出来れば私は彼が無実であってほしいと思っていた。

ただ、当時私は彼は有罪だと思っていたのだ。その理由はラップの告発がバラエティー紙で発表された直後、スペーシーは謝罪文を出したからである。スペーシーはラップの言うようなことは記憶にないとしながら、「酔って不適切な行為をしたことについて心から謝罪する」 “I owe him the sincerest apology for what would have been deeply inappropriate drunken behavior.”という内容の謝罪をした。

私が思ったのはスペーシーがその事件を覚えていないのは本当だろうが、普段からそういうことをしょっちゅうやっているから、その事件そのものの記憶はないが、もしかしたらやったかも、と思ったのだろうということだ。しかしこの裁判の途中で、スペーシーは彼は周りからとにかく謝って置けとプレッシャーをかけられたという。スペーシーの事務所としては、大したことではないのでさっさと謝ってしまえば事は収まるという考えだったのだろうが、ミーツ―狂気のあの時代、これが罪を認めたと解釈され、スペーシーは完全に干されてしまったのだ。スペーシーは自分は子供に性愛を感じないので自分がそんな行為をしていないことは確信していたとし、自分のしていないことには決して謝罪していはいけないと学んだと話している。

ラップの裁判についての記事を読んでいたら、スペーシーは当時26歳でブロードウェイ舞台に出ており、当時ラップは同じ舞台俳優ジョン・バローマンとも友達で、スペーシーは二人を自分のアパートに招待したことがあった。バローマンは裁判中にスペーシーのアパートに行った時の話を証言している。バローマンの証言では三人でスペーシーの犬と遊んだとかありふれた話で、この事件とは無関係だった。ただ、ラップはスペーシーのアパートには事件があったとされる一度しか行ったことがないと言っていたことと矛盾している。

またラップの話がおかしいのはスペーシーのアパートは一間でラップが言うようなリビングと寝室と別れておらず、自宅でパーティーなど開いたことはなかったとスペーシーは証言している。

結局これはラップが昔からの知り合いであるスペーシーの成功に嫉妬して、彼を引きずりおろそうとでっち上げた話だったわけである。

で、このことでラップは罰を受けるのか?ラップはスペーシーと違ってさほど有名な俳優ではない。舞台では色々活躍していたようだが、2017年にスタートレックのレギュラーになるまで私は彼の名前をきいたことがなかった。やっと自分のキャリアにも芽が出始めた頃にスペーシーを告発というのも卑怯きわまりない。

私はハリウッドの掌返しには本当に呆れている。はっきり言ってラップの告発が100%本当だったとしてもその程度で一人の男のキャリアを潰していいのか?ハリウッドではそんなこと普通に起きていることではないのか?スペーシーをキャンセルした重役たちも身に覚えがあるだろう。しかも何の証拠もない、単にラップがそう言っているというだけなのに。

さて、スペーシーは二つの裁判で無罪となった。では中断されていた彼のキャリアはこれからどうなるのだろうか?彼の演技力やカリスマは誰もが認めることだ。しかしいったん傷物となってしまった彼に仕事の依頼は来るだろうか?

ダグラス・マレーはロンドンでの自分の講演の最後にサプライズでケビン・スペーシーを招待し、シェークスピアの一節をスペーシーに演じさせた。その場にいた観客からはスタンディングオベーションがあった。帰ってきてほしい。ケビン・スペイシー。

何も知らないうちに彼の有罪を決めつけた私も反省。


1 response to キャリア絶頂期にミーツ―でキャンセルされたケビン・スペーシー、アメリカとイギリス双方の法廷で無実!

苺畑カカシ4 months ago

この判決に関して感想を述べていたイギリスの朝のトークショーを観たが、この中でスペイシーに同情的な発言をしていたのは年配のコメンテーターだけで、となりに座っていたいかにもゲイという若い男性は「いくら法廷では無実とはいっても、ことが事だけに簡単にはカムバックは無理よ」と法的無実は意味がないかのような発言。

しかしもっと腹立たしかったのは黒人のデブ女が「ケビン・スペーシーみたいなひとはキャンセルされないわよ。現にオックスフォードでスタンディングオベーション受けてるじゃない。映画にだって出てるし」

何言ってんだこの馬鹿女は。スペーシーは人気絶頂の番組を降ろされて、しかも契約違反ということで3000万ドルの損害賠償金を支払わされたのだ。そして2017年以降まともな映画にも舞台にも出演していない。これがキャンセルでなくて何なんだ?

スペイシーはもしかしたら鼻持ちならない傲慢なプリマドンナだったのかもしれない。なにしろトップAリスト俳優だったのだから、周りの人間を良く扱っていなかったのかもしれない。しかしだからと言って無実の罪を着せられてキャリアを破壊されてもいいということにはならない。

以前に前妻からDVの濡れ衣を着せられ、人気映画から降ろされたジョニー・デップの時もそうだったが、俳優事態の人柄がどうであろうと、実際にやっていない罪で糾弾されるべきではないのだ。

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