じつは先日、私はツイッターで竹上将人と言う人と自民党が野党のLGBT差別禁止法に対抗して提案した理解増進法について色々と話をした。私はこのような法律を安易に通すのは賛成ではないと主張した。なぜなら、トランスジェンダー差別をしてはいけないという項目がある以上、何かしらの安全弁を設けておかなければ必ずや女性施設や女性活動(スポーツなど)が危機にさらされるであろうことは、諸外国の例を見ていれば明白だからである。

しかしこの法律を推進している竹上氏は先ず、この法律は強制力はないので、違反をしたから罰せられるというわけでもなく取り立てて心配する必要はないと主張した。さらに理解増進法は雇用や職場での差別をなくすための理解を増進させようという法律であり、女子専用施設に男性が立ち入るなどという話とはまるで別の話であるとした。しかし私はこの双方とも完全に間違っていると断言する。何故そう思うのか、今日はそれについてお話しよう。

先ずこの法律に強制性はないのだから特に心配する必要はないという件について。それを主張する竹上氏は、いったい何の目的でこの法律が通るべきだと考えているのだろうか。施行力のない法律など通しても意味がないではないか?何故そんな意味のない法律を通す必要があるのだろうか?

どの政党であろうと、政府がやろうとしていることには必ず裏がある。それを知るためには”Cui bono?”誰が得をするのかを先ず考える必要がある。

しかしその前に、先ずこの理解推進法とはどんなものなのかを知る必要がある。竹上氏の言っていることだけを読んでいても、いったい理解増進法がどんなものなのか全くわからなかったので、(自分の話していることに関して具体的な話を一切しないのはトランスジェンダー活動家にはよくあること) 理解増進法を推進している理解増進会のサイトから読んでみよう。一般社団法人 LGBT理解増進会 (lgbtrikai.net)

先ずはLGBT理解増進法とは何か。

自民党性的指向・性自認に関する特命委員会が法制化を進めている法案で、正式名称は「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」です。

差別禁止ありきではなく、あくまでもLGBTに関する基礎知識を全国津々浦々に広げることで国民全体の理解を促すボトムアップ型の法案です。

増進法と差別禁止法との違いについても、増進会はこのように説明する。強調はカカシ。

  • 時間は掛かるが、確実に理解が深まる
  • 一人の差別主義者も出さない
  • 与党案として成立の可能性が高い
  • 多くの学びが期待され全国の当事者団体等の活動が活性化される
  • 今後のすべての施策の基礎となる

この最後の項目を心に留めておいてほしい。

それについては後ほど説明する。ではその中身について、もっと深く読んでみよう。

このサイトの「LGBTって何?」というページがあるが、そこでトランスジェンダーに関する項目がいくつかあるが、トランスジェンダー(性同一性障害)をこのように説明している。

性別違和・性同一性障害

性別違和を持つ人(トランスジェンダーとも言います)のうち、精神科で診断されると性同一性障害となります。身体を本来の性別に合わせていく性別適合手術やホルモン治療を望む人もいますが、身体はそのままで服装や態度などで自分らしくいようと努力している人もいます。 同性愛と混同されることがありますが、意味合いは大きく異なります。 相反する性別として生きることが求められる苦痛があり、社会からの男らしさや女らしさによって追い詰められてしまいます。 当事者たちの努力で2003年に性同一性障害特例法が成立され現在に至りますが、WHOでは定義の改定が進められています。

太字の部分は、性自認という言葉を使ってこそいないが「体はそのままで、、自分らしく」という部分は明らかに性自認のみが異性の人という意味である。

さて、LGBTの定義がはっきりしところで、彼らを差別してはいけないとは具体的にどんなことを指すのであろうか。先ず竹上氏が問題としている雇用などの際の扱いについて、こちら「企業のみなさまへ」というページを読んでいて、先ほどの「誰が得をするのか」の答えが解った。

法律案では【雇用主の責務】として、雇用する労働者に係る雇用環境の整備を行うこと等を通じて労働者の性的指向・性自認の多様性に関する労働者の理解増進に努めるとともに、国、地方公共団体が実施する施策に協力するという内容で検討されています。
 この法律案は、当会代表理事が、前自民党政務調査会長稲田朋美(現当会顧問)および自民党性的指向・性自認に関する特命委員会に提案したものです。当会は、名称が示す通り、新法成立後は同法の理念にのっとり、わが国の中心となって活動できる当事者と支援者から構成された唯一の団体です。企業様には、当会に会員登録をして頂くことで、緩やかな理解を進めていく一歩をともに踏み出して頂くことができます。

増進法そのものには、具体的に雇用する側のどんな行動が差別と見なされるのか、雇用主にはどんな責任があるのか、といったことは言及されていない。

しかしご安心あれ!増進会に会費を払って登録すれば、カウンセラーが企業に出かけて行って色々とセミナーを開き、企業の理解を仰ぎます、というわけ。

なるほどなるほど、どうして強制性もない内容も漠然とした法律を通そうなんてことになったのか、だんだんわかってきたぞ。

理解増進法が通った暁には企業や教育現場はそれを基本としてそれぞれ色々な方針を作らなければならない。だが自分達だけで法律を勝手に解釈したりすれば、経産省の未オペ男性職員がしたように雇用主は理不尽な理由で訴えられかねない。企業や学校はやたらな方針で訴訟を起こされたり活動家たちから差別者扱いされないためにも誰かにそのガイダンスを求めるようになる。

そこで出てくるのが上記の増進会のような「専門家」と呼ばれる人々だ。そしてこいう専門家になるのは政府と利権関係を結べるロビー力のあるLGBT(おもにトランスジェンダー)活動家達であることは想像に難くない。

イギリスでストーンウォールというTRA団体がイギリスの国営放送や大企業などに多大なる影響を与えていたことは拙ブログでもお話した通りである。もしストーンウォールのようなTRAが理解増進法のガイドラインを決めて政府機関や企業に「アドバイス」するようになったら職場はどうなるであろうか?理解増進法には施行力がないとか強制性がないなどということは、現実的には完全に無意味になることがお分かりいただけるだろう。

さてここで読者諸氏も関心のあるお手洗いや更衣室の問題がでてくる。なぜ雇用や教育の場でLGBT差別をしてはいけないという法律が、お手洗いや更衣室といった問題に発展するのか、竹上氏は全く関係がないと言っている。以前にこの話をした神原元弁護士も増進法はそれについて言及していないと主張していた。

だが常識ある読者諸氏は覚えておいでだろう、経産省のトランスジェンダー裁判の焦点はまさにこの女子トイレにあったことを。

経産省のある男性職員は男性として入省後に性同一性障害と診断され、健康上の理由から性適合手術をうけられず、よって戸籍も男のまま2010年に女性として勤務することを許された。その際、執務室から二階離れた女子トイレを使うように求められた。男性職員は近いトイレの使用を求めたが認められず、また上司らから硬直的な態度で接せられ、人事異動も移動先で男性であることを公表しなければ出来ないと言われたことなどを不服として『2015年11月に「女性としての勤務実績を積み、同僚のクレームもない。トイレの使用制限は、女性として社会生活を送る利益を保障する人格権を侵害している」「他の女性と平等に扱われるべきだ」として処遇改善と損害賠償を求め、国を提訴』東京地裁の一審では原告が勝利したが、高裁の二審では被告の逆転勝ち。今被告は控訴中である。

この男性はもともと男性として入省し、性適合手術も受けていなければ戸籍も変更していない。客観的には今でも男性だ。こういう性自認のみが女性という職員に対して経産省は行きすぎと思われるほどの配慮をしたにもかかわらず、職員は不服として雇用主を訴えた。雇用主はこのような目にあわないためにどれだけの配慮をすることが求められるのか、問題はここである。

ここで前に心に留めておいてほしいといった、「今後のすべての施策の基礎となる」という項目を思い出していただきたい。もしもこの法律によって、性自認のみが女性である男性の女子トイレ使用が無制限に認められたとしよう。「今後のすべての施策の基礎となる」この法律のせいで、他のどんな女子空間も自認女性の男性に明け渡さなければならなくなるのだ。

ガイドラインを作っているのがトランスジェンダー活動家たちなのだから、そういうルールが出来るのは当然の話である。

だからこの理解増進法は無害であるとか、女子空間の問題とは無関係であるとかいう活動家達の戯言を信じてはいけない。野党の差別禁止法よりは多少ましというだけであって、全然女性にとって社会にとって望ましい法律ではないのだ。


4 responses to 理解増進法、なぜ強制性がない法律でも通してはいけないのかを考えてみる

苺畑カカシ1 year ago

トランスジェンダー犯罪率
https://committees.parliament.uk/writtenevidence/18973/pdf/

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よもぎねこ1 year ago

 このLGBTへの理解と言うのが大問題ですね。
 「理解を広げる」と言うのは、要するに「この団体の意向に従わせる」と言う事であり、その意見に反する意見を持つ者を「差別主義者」と断定することでしょう?
 そして「一人の差別主義者も出さない」と言う事は、「自分達に従わない者は抹殺する」と言っているわけです。

 これは政策実行の実務上でも非常に問題の法案だけれど、実は思想・宗教・信条の自由と言う基本的人権その物を脅かす法案ではありませんか?
 
 だってこれが実現したらキリスト教・ユダヤ教・イスラム教など皆、同性愛を禁止しているのです。
 こういう宗教を全部禁止することになります。

 ましてトランスジェンダーに対する対応なんて、トランスジェンダー当事者達でも一致していないのです。 それをこの団体は全部封殺して自分の意見で統一しようとしているわけです。

 これ本質的に完全なファシズム法案ですよね?

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    苺畑カカシ1 year ago

    アメリカでも最近LGBT法案が通ったのですが、これはあきらかに宗教弾圧のためのものです。数年前、キリスト教徒のケーキ屋さんが同性愛結婚のケーキを役のを断ったといって訴訟を起こしましたが、それが最高裁まで行ってケーキ屋さんには宗教上の理由で断る権利があると判決が出ました。しかし活動家たちはそれでは飽き足らず、このケーキ屋さんを何度もくだらないことで訴えて、彼の人生を破壊しようとしています。

    LGBTを差別しないとはどういうことなのか、はっきりさせないと、宗教上の理由でそういう思想を受け入れない人たちの人権が迫害されかねません。

    反差別なんて一見良いことのように見えますが、実は恐ろしい差別が含まれているということに人々は気づいてほしいです。

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