拙ブログでも何度かご紹介したスコットランドの性自認のみで性別が変えられる性別認定改悪法が先週の木曜日(12/22/22)国民の2/3が反対しているにも関わらず、ついに86:39という圧倒的な数で議会を通ってしまった。

以前にもお話したように、この法律は、本人が異性を自認していると言うだけで性違和という医師の診断書を必要とせず、過去に三か月ほど異性として暮らした実績があれば法的な性別を変更することが出来るというもの。議会では性犯罪歴のある男性の場合はもっと慎重な審査が必要であるという補正案も否決された。そして性別変更の年齢もこれまでの18歳から16歳まで引き下げられることとなった。

実はこの法律が施行されることを阻止する方法がひとつだけある。それは史上一度も使われたことのないイギリス政府の拒否権である。日本では一口にイギリスと言っているが、実はイギリスはユナイテッドキングダムと呼ばれイングランド、スコットランド、アイルランド、そしてウェールズという四つの王国からなる合衆国である。とはいっても王様はバッキンガムに居る王一人なのだが。それはともかく、スコットランドはこの合衆国の一つであるから、イギリス政府にはスコットランドの決議を否決する権限がある。1998年スコットランド法の35条がそれである。(Section 35 of the 1998 Scotland Act)。

もともとイギリス政府はこの改悪案に否定的であり、スコットランドの二コラ・スタージョン首相にこの法を諦めるようにと要請していた。大抵の場合イギリス政府がスコットランドの内政に干渉することは望ましくないとされているが、法律が社会に多大なる害を与えるとイギリス議会が判断した場合にはイギリス議会に否決することは可能なのである。そして今回は実際にその特別な場合かもしれないというわけだ。

スコットランドは一応自治体ではあるが、イギリスの一部である以上、スコットランドで性別を合法に変えた人間の性別は他の三か国でも尊重しなければならない。そうなると、容易に性別を変えられるスコットランドに性別を変えるために訪れるけしからん者が増える可能性がある。いくら他の国々で厳しい法律があっても、それらの法律は意味のないものとなってしまう恐れがあるのだ。

例えば、この新法では女性空間に侵入したい男性が非常に容易に合法に女性を名乗ることが出来る。しかも女性への性犯罪を犯した前科者ですら規制がないのだ。だから性犯罪歴のある男がスコットランドで性別を変更し、その後イングランドで再び犯罪を犯してイングランドで逮捕された場合、イングランドの女子収容所に収容されなければならないという恐ろしいことが起きかねないのだ。

最近日本でも多々の地方自治体でパートナーシップ制度だのLGBT差別禁止法だのといって誰でも賛成できそうな法律に隠れて性自認法を通そうと言う動きがある。杉並区パートナーシップ法案などがその典型だ。

説明文から抜粋すると,条令の目的と基本理念というところにこう書かれている。強調はカカシ。

条例の目的は、杉並区(以下「区」という。)において、
基本構想(令和3年10月策定)に掲げた福祉・地域共生分
野の将来像「すべての人が認め合い、支え・支えられなが
ら共生するまち」を踏まえ、性の多様性が尊重される地域
社会の実現に向け、基本理念、区・区民及び事業者の果た
すべき責務及び区の取組の基本事項を定め、推進すること
です。

そして用語の説明部分では「性自認 自己の性別についての認識をいいます。」とある。一番問題となるのは第三項目の「区・区民と事業者の責務及び性を理由とする差別などの禁止」という部分。

  • 区は、性の多様性が尊重される地域社会の実現に関する施策を実施します。
  • 区民は、性の多様性について理解を深め、区が実施する施策に協力するよう努めます。
  • 事業者は、性の多様性について理解を深め、事業活動を行うに当たっては性の多様性に配慮するとともに、区が実施する施策に協力するよう努めます。
  • 性を理由とする差別、性的指向又は性自認の表明を強制し、又は禁止すること、本人の意に反して性的指向又は性自認を明らかにすること、その他の権利利益を侵害する行為を禁止します

元来パートナー法というのは、現在合法に結婚出来ない同性同士のカップルが法律上ほぼ婚姻関係と同じ関係を結べるようにするための法律のはずであり、トランスジェンダーだの性自認など無関係なはずだ。それなのに何故そんな言葉が法案の説明文に記載されているのだろうか?

だいたい同性同士でパートナーシップを結びたいというカップルはすでに自分らで自分らの性指向を明らかにしているので強制もなにもない。また性自認がどうあれ、カップルの法律上の性別が異性同士であれば普通に結婚できるわけだからパートナーシップの必要はない。だからこの「性自認の表明を強制」するなどということが起きる理由がない。なんでこんな項目がパートナーシップ法のなかに入っているのだ?

聡明な読者諸氏はもうお分かりだろう。実はこのパートナーシップ法はパートナーシップとは完全に無関係なのだ。この法律の真の目的は性自認を認めさせること、つまり他人の性自認に対して誰も文句を言えなくすることなのだ。

杉並区の法律を推進している政治家や支持者たちは、他人の性自認を認めないことは差別だと言い張る。しかし彼等は故意にこの「他人の性自認を認める」とはどういう意味なのかという議論を避ける。なぜなら真にそれがどういう意味であるかを一般人が知ったら、そんな法律を支持する人など居ないことを彼らは熟知しているからである。

言うまでもないが、ここでいう「性自認を認める」とは、「性違和を患い自分を異性だと思い込んでいる可哀そうな人がいることを認める」という意味ではない。真の意味は「他人が自認している方の性別を全面的に受け入れること」だ。つまり、以前に松浦大悟氏が言っていたような「男性器付きの自称女が女湯にはいってくる」ことを認めるという意味になるのだ。

それに気づかずに安易な感情論でこんな法律を支持すれば、いずれ東京都もスコットランドのようなことになってしまうだろう。どうか杉並区民はそのことに気付いて、断固区議会に反対意見を送ってほしい。

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3 responses to スコットランド、性自認のみで性別が変えられる性別認定改悪法が議会を通る、性犯罪前科があっても問題なし

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