Twitterで軍事オタクの人がロシア軍のウクライナ侵攻に関して色々面白い情報を発信してくれているので、そちらからご紹介したいと思う。これを読んでいくとロシア軍が何故こんなにも苦戦しているのかと解ってくるかもしれない。

この情報を発信してくれているのは阿部隆史氏(阿部隆史@ジェネラル・サポート (@GS_abetakashi) / Twitter)。先ずはロシア軍の死傷者の数を分析してみよう。

(三月十七日の段階で)ロシア軍は40%の兵力を損耗とある。 投入した兵力は16万だから6万4千。 つまり現有兵力は10万弱だ。 6万4千と聞けば多そうだが戦死+負傷+捕虜+逃亡を合計すればそんなもんだろう。 既に少将3人が戦死しており4人目として第150自動車化狙撃兵師団長が加わるかも知れないので戦死者だけで2万を越える事は充分にありえるし、それだけ戦死していれば3万程度の負傷や1万程度の捕虜/逃亡は存在すると考えられるからだ。

ありゃ... BBCの報道によるとやっぱ戦死したらしい。 前線に居る将官20名のうちこれで1/5が戦死したとあるが常識的に考えれば戦死者と同数以上が負傷するので将官の40%は戦力外になった考えられよう。

さてウクライナ側に国を憂うる勇士はたくさん居るが武器が無ければ戦えぬ。 ここでバイデンは8億ドルの武器の追加支援を決定した。 これまで2億ドルなので一挙に4倍だ。品目は携帯型地対空ミサイル「スティンガー」800基、対戦車ミサイル「ジャベリン」2千基などでドローンも含まれる。 これらは防勢的兵器なので攻撃には向かないが勇敢な歩兵が携行して良く準備された陣地で戦うなら強大な防衛力となる。 ただしコレらの援助物資が滞りなく到着すればの話だが...

ウクライナの狙撃兵は現場の司令官を狙って狙撃しているとはいうものの、特に位の高い兵だけを撃っているわけではないし、また、撃たれたら必ず死ぬというわけでもないので、狙撃兵による死傷者数はかなりの数になると思われる。死亡確認が取れている少将四人から推定して、一般兵の死亡者の数は7千から2万人にも上ると阿部氏は算定する。

何故戦死者数推定にそんなにも幅があるのかというと、アメリカ軍のように負傷兵が出た場合には救援が即ヘリコプターなどで現れ避難するため死亡率はあまり高くないのに比べ、ロシア軍のように負傷者が長期放置される場合とでは死亡率がかなり変わってくるからである。何にしても大事な点は戦死者の数ではなく死傷者の数。つまり戦闘員から外れた人数がどのくらいいるかということなのだ。

さて、それでは此処で「これから」を考えるとしよう。 4人の将官が戦死したとて戦争が終わったわけではない。 前線に20人の将官が居て4人が戦死したとするなら16人は残ってるわけで「これから戦死したり負傷したりする」というわけだ。 いや、既に数名は負傷していると考えられる。

素人考えだが、たった数週間の戦闘で40%もの兵を消耗したのであれば、もうこれは負け戦であり、さっさと退陣して講和談義に入るべきだろう。しかしそれが出来ないのが独裁者プーチンである。

阿部氏はここでどんな将軍たちが指揮を指揮を執っているのかを名前入りで詳細に紹介してくれているが、それは原文を読んでもらうとして、司令官たちの経歴がこの戦争には多大なる影響を及ぼしていると阿部氏は語る。

つまり、自分が戦車兵出身なら戦車兵の、空挺出身なら空挺の発想から抜け出せなのだという。軍隊で一番頭のいい人が居るのが砲兵。なので軍司令官に砲兵出身者があまりいない軍は賢い軍隊とは言えないのだそうだ。

砲兵ってのは砲を移動させて砲弾を撃つのが仕事だ。 その為には砲弾をトラックに積んで移動させてから集積しなくてはならない。 つまり事前準備に多大な時間と器材を要し計画性が必要となる。 勇猛や猪突猛進とは無縁の職種が砲兵なのだ。 ナポレオンは砲兵出身だから頭が良いのである。

今回のウクライナ戦争でトラックが64kmに及ぶ大渋滞を起こしたでしょ? ありゃ計画性が無いからだ。 計画を立案したのは参謀総長のゲラシモフ上級大将だそうだが戦車兵出身である。 戦車はキャタピラだから「道路が使えなきゃ野っ原走りゃいいじゃん」とすぐ言う。 トラックは道路以外走れねえんだよ。

そりゃ戦車兵にだって賢い人は居るが計画性の無い人が多い。 取りあえず砲弾と燃料を満載し道路じゃなくても走れる機動性があるからね。 そんで補給部隊に「おめえら何とかしろ!」と言う。

ロシア軍の高層部には空挺出身が多いが、空挺出身は勇敢だが計画性がなく諸職種連合の大部隊指揮官には向かないのだそうだ。

そりゃ空挺にも賢い人は居るだろうが諸職種連合の大部隊指揮官には向かないのである。 まずは事前準備と計画性、道路の重要性、輸送力の見積もりが旨く出来なきゃダメさ。 そんなのは幕僚がやるから不要だって? 冗談じゃないよ。 上の人がチェックしなきゃダメ幕僚か有能な幕僚か判断出来ないじゃないか。

(略) 幕僚が提出した補給計画や輸送計画にちゃんと目を通さず盲判を押す様では絶対、戦には勝てん。 勇猛さより綿密な補給計画が何よりも重要なのだ。 その部分が欠落しているのが今のロシア軍なのである。 負けて当然だ。 それにしても昔のソ連軍にはコーネフとかゴボロフとか砲兵出身の優秀な将官が居たんだぜ。 だから強かったのだ。

たしかに、今回のウクライナ侵攻には計画性がないなと素人ながらに思っていた。また戦闘軍だけ先に逝っても兵站が追いつかなければ武器や弾薬燃料や食料も足りなくなってしまう。ロシア軍は道路で立ち往生して食べるものも満足にない状況に陥ってしまった。

ロシア軍に残されているのは第49軍と第29軍及び空挺2個師団だけということだが、第29軍司令官であるコレスニコフ少将は既に3月11日に戦死しているので、すでに出動しているのかもしれない。

阿部氏は当初の戦死者には少将が多かったが、そのうちに少将は底をつき中称、大将へと戦死者が増えるだろうと語る。

その間3月26日現在、戦況がうまく行かない責任に問われ、6軍司令官のエルショフ中将が解任され、第1親衛戦車軍司令官のキーセル中将も「キーセル中将は、作戦の失敗と設定された目標の達成の欠如、ウクライナでの軍事作戦への徴兵の関与、および人員の大幅な損失の存在のために解雇された」という。解任といっても独裁者プーチンの牛耳る国。軍法会議にかけられて敗戦の罪をすべてかぶせられて阿部氏のいう「非業の最期」を遂げることになるのだろう。

ロシア陸軍には12個軍あり11個軍がウクライナ侵攻に投入された。 司令官のうち既に3人戦死、2人更迭された。 更に41軍は副司令官と参謀長が揃って戦死。 前線の軍司令官の半分近くが居なくなっちゃったのである。 こういうのを「負け戦」という。

投入されたロシア軍兵力は11個軍ではなく12個軍である事が確認された。 さて軍司令官を更迭した理由はプーチン並びに側近の罪をなすりつけスケープゴートにする為であるが他にも色々な効用がある。 まず残った7人の軍司令官は更迭されて裁判にかけられたりしちゃ堪らぬので急いで前線に出かけ一歩も退かずに死守命令を乱発しながら戦うである。

壮烈無比なる事この上ない。 だがそれは敵狙撃兵の的となる事を意味する。 なにしろ「この顔にピンときたら110番」じゃないけどこうして顔写真が出回ってるんだろうしね。 でも更迭されて名誉と命を失うよりゃ戦死した方がマシだよ

ということは、ロシア軍司令官はこれからもどんどん戦死するだろう。司令官を失った部隊はにっちもさっちもいかずおかしな動きをするから余計に犠牲者が出る。

しかし旅団長クラスまでは不名誉な更送などされたくないので前線に市が無着くかもしれないが、それ以下の兵士たちはどうなるのか。アメリカのようにノンコムと呼ばれる下士官たちの自由裁量が許されているような軍隊なら、不利になれば撤退する手もあるわけだが、ロシアのように上からの命令は絶対服従の軍隊では、負け戦と知っていても退くことが出来ない。兵士たちは嫌気がさしてどんどん脱走してしまうだろう。

だから普通は作戦中の前線指揮官を更迭したりしない。 「乃木を代えてはならん」というヤツだ。 まったくプーチン君の利敵行為は計り知れんな(笑)

これだけ読んでいると、ロシア軍に勝ち目があるとは到底思えない。たとえ最終的にウクライナを占領することが出来たとしても、多分ウクライナに残った地下組織によってゲリラ戦が続くだろうし、あまりにもインフラを破壊しすぎてしまったから、ロシア軍が得るものがあるとは思えない。子の侵攻で軍隊がずたずたにされてしまった今、それこそロシアに誰かが攻め入ったらどういうことになるのか?

妙佛さんも以前に言っていたが、独裁国家の怖いところは、独裁者は実際に自分の行動が国のためになるかとか、国民のために有益かなどということは全く考えずに行動する。だからこんな戦争ロシアにとって何の利益もないと普通なら考えることでもプーチンはやり通してしまうのである。


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