以前に私はイギリスでパキスタン人移民たちによる未成年少女グルーミングギャングの裁判の際に、裁判所の前でリポートしていたトミー・ロビンソンが逮捕された事件を紹介したことがある。ロビンソンはイギリス警察が隠蔽してきたギャングたちの行動をことごとく暴露してきたため、裁判所の敷地内でリポートしたという口実で逮捕され数か月投獄された。彼が実際どんな犯罪を犯したかなどということはどうでもよく、真実は彼が政権に対して恥になるようなリポートをしたことが問題だった。つまりロビンソンは政治犯だったのだ。

あの事件が起きた時、まさかアメリカでも現政権と反対意見を持っているというだけの善良な一般市民が逮捕され起訴もされず裁判も行われないまま一年以上も牢獄に閉じ込められるなどということがおきるとは思いもよらなかった。だが実際にそれがおき、まだ裁判を待って拘束されている人が100人以上いる。

ブランドン・ストラカも議事堂乱入事件当日に議事堂付近に居たことで逮捕され起訴された中の一人である。彼は去年罪を認め、最近三か月の自宅軟禁と三年の執行猶予という刑に処されると判決がくだった。

ストラカはトランプ政権設立当時にウォークアウェイという運動を始めた保守派の活動家だ。ゲイで美容師という典型的ステレオタイプの民主党リベラルだったストラカは、なにかの拍子に自分が信じている党は自分の価値観を反映しないと気が付いた。そこで彼はたった一人でウォークアウェイ(立ち去る)という民主党から立ち去ろうという運動を始めたのだ。

近年の民主党の過激化は目に余るものがあり、多くの保守派民主党登録者たちの間でも懸念されるようになっていた。それでストラカのもう民主党は見放そうという運動は人気を得て、ストラカは一躍保守派活動家として重要な人物となった。

あの運命の日、2021年1月6日、トランプ応援ラリーがワシントンDCで開かれた時、ストラカも一人のスピーカーとして演説。「絶対にあきらめない、最後まで戦おう」と観衆を沸かせた。トランプ大統領がみんなで平和的に議事堂まで行進しようと呼びかけた後、ストラカは地下鉄を使って議事堂の東側に近づいた。彼が議事堂に着いた頃にはすでに何千という群衆がひしめいており、議事堂付近に囲いもなく警官の姿もなかった。ストラカはその場に10分くらい居て、様子をビデオに撮った後ホテルに戻った。

問題はここからだった。ストラカによると、そしてストラカのビデオからも明らかなのだが、議事堂の東側に居た群衆は全く暴力的ではなく、壁によじ登ったり窓ガラスを割ったりしている人は一人も居なかった。その時ストラカは西側でそのような暴力行為が起きていたことを全く知らなかったという。

ストラカがホテルに戻ってテレビをつけると、議事堂付近で暴動が起きているというニュースが入ってきたため、ストラカは自分達の行動は暴動などではないことを証明するために、自分が撮ったビデオを諦めるなといったメッセ―ジと共にツイッターに上げた。ところがだんだんと、西側の暴動の様子がテレビで報道されるようになり、これはまずいと思ったストラカはすぐにツイッターのメッセージを削除したが、時すでに遅し。

二週間後、ストラカは夜明けにスワットチームに叩き起こされ手錠をかけられて連行され、二日間留置場に入れられたという。

私は彼が逮捕されたと聞いた時、結構楽観的に考えていた。ストラカによれば彼は議事堂の外側に居ただけで、別に乱暴行為を働いたわけでもないし暴力を煽ったわけでもないので、すぐ保釈され、せいぜい罰金程度で終るだろうと思っていたのだ。2020年夏中繰り広げられたもっと暴力的な暴動でも、逮捕されたほとんどがすぐ保釈されて軽い刑で済んでいたからだ。多分ストラカもそう思ったことだろう。

だが現実はもっと厳しいものだった。ストラカのスタッフが弁護士を雇い、なんとか保釈はされたものの、ストラカに課された罪は非常に重いものだった。トランプを憎むバイデン政権はトランプ支持者に対して物凄い復讐をし始めたのである。ストラカは有名であったがために見せしめとされたことは間違いない。

ストラカは知らなかったのだが、議事堂の階段に立つこと自体がすでに建築物不法侵入とみなされるのだそうだ。しかしそれが本当なら、何故首都警察は当日議事堂の周りには柵を張って警察官を待機していなかったのか。首都警察が「議事堂の階段に登るのは違法行為です。議事堂の階段に登らないで下さい」と放送していたら、ほとんどの人は言うことを聞いたはずだ。右翼保守はたいていの場合左翼過激派のような行為には出ないからだ。

ともかく階段に登っていたくらいで手錠をかけて逮捕とかやりすぎだろうと思うが、ストラカの罪状はテロ行為誘発、警官への暴行、器物破損、などなどあり得ない刑事犯罪が羅列されていた。しかしストラカの撮ったビデオには、ストラカがそのような行為をしている映像が全く映っていない。

だったら何故ストラカは罪を認めたのか、裁判をやって無実を貫き通せばよいではないか、と思われるかもしれないが、ことはそう簡単には行かない。裁判となれば時間もお金もかかる。裁判に勝てるという保証はない。もし起訴罪状がすべて有罪になれば数年の禁固刑は免れない。これは検察が良く使う手だが、最初に重罪で起訴をし、罪を軽減する代わりに容疑者に罪を認めさせるというもの。検察側も裁判などやりたくないので、大抵の犯罪はこの示談で終るのである。容疑者が罪を認めたからといって、実際本人が自分を有罪だと信じているとは限らない。しかし裁判になってお金と時間と労力をついやして禁固刑になる危険をおかすより、軽い罪を認めて執行猶予にしてもらった方がよいと判断する人は少なくない。

私はマーク・レビンによるストラカのインタビューを観た。ストラカが罪を認めたのは群衆を煽ったこと、警官から盾を奪う行為に加担したことなどだが、ストラカのビデオを観る限り、彼がそのようなことをしている映像はない。

無論ビデオを撮っているのはストラカ自身なので、彼の顔は一瞬しか映ってないが、カメラのこちら側で「ゴー、ゴー」と言っている彼の声は聞こえてくる。ストラカによると自分の前に立っていた若い女性がその場から立ち去ろうとしていたが、後ろからどんどん人が集まってきたため身動きが取れなくなっていたのを助け、道が開いた時に「いけ、いけ」と彼女に促したのだという。無論罪状を認めているので自分が群衆を煽らなかったとテレビインタビューで発言は出来ないので、そうはっきりと言ったわけではない。だがビデオを観る限り、それは明らかである。

警官の盾についても、その映像は写っているが、ストラカが居た場所からはずっと遠くの方で起きており、彼は警官から盾を取り上げろとも言っていない。議事堂のドアが何者かによって開けられた時も、ストラカは議事堂の警備員がドアを開けたのだと思ったという。しかし誰かが「中には入るな、戻れ」とメガホンで言い始めたので、ストラカを含めほとんどの人が議事堂から離れ始めた。

検察はストラカが無罪なのは重々承知だっただろう。だが、トランプ支持のインフルエンサーとしての彼を罰することはバイデン政権にとって非常に大事なことだったのだ。だからわざとあり得ない重罪を覆いかぶせ、示談で有罪を認めさせたのである。

さて、アメリカのビッグテックが一様に左翼なのはもう何度となく書いてきたが、ストラカは弁護に必要な経費の資金調達にも非常に苦労した。なぜならアメリカで募金活動をする企業がことごとくストラカとの関係を断ち切ったからである。また、ストラカは左翼やメディアの攻撃は予測範囲だったとしながらも、それまで一緒にトランプ支持活動をしてきた右翼保守の人たちからも一斉に見放されたと語る。

これは私も含め、もしトランプが結果的に負けてバイデンが大統領になったとしても、共和党支持者たちは街に繰り出して暴動を起こすなどということは絶対にしないと信じていた。だから1月6日の騒動は我々保守派にとっても非常な汚点となったのである。それで保守派の間では、あの事件から距離を置こうとする傾向が強くあった。民主党がBLM・ANTIFAの略奪放火行為を全く恥じないどころか誇りとさえ思っているのと違って共和党は議事堂乱入事件を非常に恥べき行為だと思っているからだ。それで、あの事件に少しでも加担したと思われる人たちとは一緒にされたくないという気持ちが働いたのだろう。

共和党議員や保守派の悪いところはこういうところだ。何故自分らを応援してくれた人たちを守らない?何故主流メディアや民主党のいう「謀反」などという言葉をそのまま受け入れるのだ?

議事堂乱入は良くない行為だった。窓ガラスを割ったり壁をよじ登ったりするのは良くなかった。しかし、その場の雰囲気に飲まれて、ちょっと行き過ぎな行為をしたとはいうものの、2016年のトランプ大統領就任式の日に起きた左翼たちの暴動や、その後に起きたBLM/ANTIFAの暴動に比べたら、ほんの数時間議事堂内を歩き回った程度のことで共和党や保守派はビビるべきではないのだ。

カマラ・ハリスを筆頭にBLM/ANTIFAの逮捕者の保釈金を払ってやってる民主党議員を見習って、共和党も議事堂乱入容疑者たちの保釈金集めくらいすべきである。一年以上も独房に拘束されてる人もまだ何人もいるのだ。あの事件は恥かしい行為だったかもしれない。だが、ここまで虐待されるほどの罪なのか?

私は今、議事堂事件容疑者に手を差し伸べない共和党議員にも保守派団体にも非常に腹を立てている。


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