今アメリカでは、ミシシッピ州で2018年に通った厳しい人工妊娠中絶法の巡ってその訴訟が最高裁で審議されて話題になっている。アメリカでは1973年にロー対ウエイドという訴訟によって、アメリカ全土で妊娠中絶が合法となった。その後プランドペアレントフッド対ケイシーで、母体外で生存可能になる前の胎児の中絶を政府が規制してはならないと判決を下した。

現在審議が行われているのはダボス対ジャクソンウィメンズヘルスオーガニゼーション。これはミシシッピ州の妊娠15週以後の中絶をほぼ全面的に禁止する法律に挑戦したもの。

crowd of people holding "Repro Freedom for All" banner in front of Supreme Court building

中絶支持者たち Nov. 1, 2021. (Katie Barlow)

この H.B. 1510 という法律は胎児に極度の異常がある時のみ例外が認められるが強姦や近親相姦の場合の妊娠は例外とならない。

ジャクソンウィメンズヘルスオーガニゼーションは、ミシシッピ州で唯一つ中絶を認可されている医療機関。ジャクソン、、はこれはロー対ウエイドで保証されている憲法に違反するものだとして州を訴えている。

PP対ケイシーでは母体外での生存不可能とされていた24週目未満の中絶規制を禁じたものだが、ミシシッピの法律は15週未満というケイシーの判決よりずっと初期の規制となる。

ミシシッピ州としては、ローにしろケイシーにしろ覆されるべきで、中絶規制の判断は各州の決断に戻されるべきだという考え。

1973年のロー対ウエイドが決まってから、プロライフ呼ばれる中絶反対派はずっとこの悪法を撤回すべきだと運動を続けて来た。現在最高裁は一応建前上は保守派判事が多数を占めるため、もしローとケイシーが覆されるとしたら、今は絶好のチャンスかもしれない。

ところでローとケイシーが覆されたとしても、それはアメリカで中絶が完全に違法になるという意味ではない。もともとこれに関する法律は各州独自の判断で決められるべきものであり、連邦政府が一律に決めるべきことではなかったというのが保守派たちの考えだ。明らかに左翼リベラルが幅を利かせるニューヨーク州やカリフォルニア州で厳しい中絶規制など起きるはずはない。それに厳しい規制のある州ですら、中絶を全面的に禁止しているのではなく、中絶が可能な時期が早いか遅いか、何を例外とするのか、といった違いがあるだけで、母体に極度の悪影響を及ぼす場合は例外として認められるということはどこでも変わらない。

プロライフ(中絶反対派)とプロチョイス(中絶推進派)との歩み寄りはあるのか?

もし両派で歩み寄りがあるとするなら、まず人間が人間となるのは何時なのかという点で合意する必要がある。宗教保守派の考えでは人は受精時から人間としてみなされる。過激左翼は生まれた数時間後まで人間とみなさない。これら両極端の人々の歩み寄りは不可能だろう。だが大抵の人は受精と出産のどこかで線引きをすべきだと考えているはず。

次の問題点はどのような例外を認めるべきかということ。中絶は原則的には反対だが場合によっては中絶もやむ負えないと考える人は多く居るが、その場合とはどんな場合なのかで意見も分かれる。保守派は母体の命が危険にさらされる時のみが普通だが、中庸な人はレイプや近親相姦や胎児に極端な障碍がある場合などを例外として認めるべきと考える。

アメリカのような広い国で様々な価値観を持った人々が集まっている社会では、この線引きが全国で一律に出来ると思う方がおかしい。だからこそ創設の父たちはアメリカを中央集権の国とせずに連邦制にしたのである。州の法律が気に食わない人は、もっと自分の性に合った州に移るという選択肢があるからだ。

PPにしろジャクソンにしろ、中絶は大ビジネス。この審議は非常に興味深いものである。

ところで、日本の中絶法制はどうなっているのか興味があったのでちょっと調べてみた。下記はこちらのサイトから引用:強調はカカシ。

日本の人工妊娠中絶に関する法律

日本での妊娠中絶は、基本的には、刑法堕胎罪で禁止されていますが、母体保護法に定める中絶の要件を満たしている場合に限り、配偶者の同意を得た上で、合法的に中絶手術を受けることができます。母体保護法指定の病院、あるいはクリニックで行われます。合法的に人工妊娠中絶手術を受けられるのは、22週未満、つまり21週6日までです。中絶手術は、健康保険の適用外で、費用は10−15万円です。

日本で合法的に中絶をできる要件とは、第一に、「妊娠の継続または、分娩が身体的または、経済的理由により母性の健康を著しく害する恐れのあるもの」、第二に「暴行もしくは脅迫によってまたは抵抗もしくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの」です。配偶者(つまり胎児の父親)の同意は、配偶者が知れない時、もしくは、その意思を表示することがでいない、または、妊娠後に配偶者が亡くなった時には、本人の同意だけで足ります。日本の中絶のほとんどのケースが、経済的理由適用の下で行われています。

妊娠12週以後の中絶手術を受けた場合は、役所に死産届けを出し、胎児の埋葬許可証をもらう必要があります。

つまり、22週未満の中絶は経済的理由であるとし配偶者が知れないということにすれば、お金さえ出せれば合法に中絶は可能ということだ。で、もし22週目以降の中絶が行われた場合にはどうなるのか。自分で堕胎した場合や他人に依頼した場合や医師や助産師に依頼した場合などで3か月から7年の懲役という結構厳格な罰則がある。しかしそれにしたところで、例外がある。それについてはこちらから引用

医療上の理由で母体救命のために中絶手術が必要でも、胎児が生存可能な早産時期なら胎児救出を優先してから母体救命すべきとされています。

ただし指定の医師が胎児の生存の見込みが無いと判断した場合は、分娩途中で中絶をして母体救命の緊急措置がとられます(母体保護法第14条)。

この母体保護法第14条に基づく後期中絶手術を「胎児縮小術」「回生術」「部分出産中絶」などと言います。

ここでも医師が母体救命のために必要だとすれば例外は簡単に認められてしまう。

中絶はビッグビジネス

日本でもアメリカでも中絶はビッグビジネスである。日本では費用は10-15万円というから決して安い金額ではない。アメリカでも1500ドルくらいというから同じようなものだ。プランドペアレントフッドなど全国津々浦々にある大企業。建前は女性の健康管理だの産児制限だのと言ってるが、本業は中絶だけで他のことはほとんど何もしていない。最近は金になるということでトランスジェンダ手術にも手掛けるようになった。

私は日本で避妊ピルが普及しないのも、日本の医療業界が中絶での金儲けの邪魔になるのを恐れてのことだと思っている。何故か日本では避妊ピルが敬遠されているが、中絶で身体を危険にさらすくらいなら、多少の副作用があってもピルをお勧めする。副作用というが医者の処方で定期的に検査を受けていれば特に問題はない。私は10年以上服用したが何の問題もなかったから。また日本ではピルが手に入りにくいというのも嘘で、普通に産婦人科医に相談すれば処方してくれる。私は日本でも二年間服用したから証言できる。

カカシとミスター苺がプロライフになった瞬間

ここでちょっと個人的な話をしよう。実は格いう私も20代のころは中絶賛成派で所謂プロチョイスだった。ミスター苺もそうで、中絶規制反対デモに参加したことがあるくらいだ。(家にプロチョイスのプラカードまであった!)その二人が敬虔なプロライフ派になったのにはきっかけがある。

二人が付き合い始めて2~3年経ったころ、私の生理がちょっと遅れたことがあった。私は避妊はしていたが、避妊は100%完璧ではないので、もしかしてと思ってミスター苺に話すと、「出来てたらもちろん堕ろすんだよね」と言われて「なんでそう簡単にいうのよ!」と激怒したことがある。そして自分でも何故そんなに怒ったのか驚いた。

結婚する気もましてや子供を産む気もなかったから避妊していたわけで、万が一妊娠したら中絶は仕方ないと思っていたはずなのに、いざその可能性を考えたら絶対ありえないと思った。しかもミスター苺が当然のように言ったことにも腹が立った。

しばらくしてお互い落ち着いてから「さっきは怒鳴ってごめん」「こっちこそ軽はずみなことを言ってごめん」とお互い謝ってから「もし出来てたら結婚しよう」と合意した。二人の頭に中絶という選択肢はもうなかった。(結局妊娠はしていなかったが、妊娠を待つまでもないと思い結婚した。)

今思うと、あの時が我々二人がプロライフになった瞬間なんじゃないかと思う。


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