先月、俳優のアレック・ボールドウィン主演・プロデューサーの映画「ラスト」の撮影セットで、ボールドウィンが発砲した弾に撃たれてシネマトグラファーの女性ハリナ・ハッチンスさん42歳が死亡、監督のジョール・スーザ氏が怪我をするという事故が起きた。

当初の報道ではボールドウィンが撃ったのは小道具の銃ということだったが、後に銃は本物で銃弾が入っていたことが解った。ボールドウィンは助監督から銃を渡され、銃には弾は入っていないと言われたのを信じたという。

ボールドウィンは極左翼で一般市民の銃所持に大反対の立場にある。それで彼自身、銃の扱いかたについて完全に無知だったのかもしれない。しかし、たとえそうであったとしてもプロデューサーとして現場での安全確保は彼にも非常な責任がある。

この事故は、もしも銃を扱ったすべての人がガンセイフティールール(安全に銃を扱う規則)を守っていれば、絶対に起き得ない事故であった。

私は銃取り扱いのプロではないが、自衛のために銃を購入した時、撃ち方と取り扱いの授業を受けた。もうだいぶ昔のことなので色々忘れていることもあるが、この事故について、素人の私でもおかしいと思う点がいくつもある。

第一に、何故映画セットに実弾の入った本物の銃があったのかということ。当初、小道具の銃が使われたと報道されていたが、小道具の銃は弾をうつことは不可能なので話を聞いた時からおかしいと思っていた。映画セットで銃を扱う責任者のことを英語ではArmourerと呼ぶそうだが、ここでは武器担当者と呼ぶ。そのプロのインタビューをいくつか聞いたところ、映画セットで本物の銃が使われることは先ずないとのことなので、何故この映画セットに本物の銃があったのか非常に不思議である。

第二に、よしんば本物の銃が使われることがあったとしても、担当者が銃の安全性を先ず確認すべきであり、銃が完全に安全な状態にあると確認してから俳優に直接渡すのが基本であるのに、担当者がチェックをしなかったのは何故なのか?

第三に、この現場では担当者ではなく、助監督が銃をボールドウィンに渡したという。銃は担当者が直接俳優に渡すべきであり他の人間が扱ってはいけないことになっている。何故銃砲責任者の担当者ではなく助監督が銃をあつかったのか、この時いったい担当者は何をやっていたのだ?

ではここで、銃の安全な扱い方基本四事項をおさらいしよう。

  1. すべての銃に実弾が入っているものとして扱う。たとえ他人が弾は入っていないと保証したとしても必ず自分で確認すること。
  2. 破壊する気のない物体には、決して銃口を向けてはならない。たとえ弾が入っていなくても絶対に銃砲を人や動物やその他の物体に向けてはいけない。
  3. 撃つと決めた標的に狙いが定まるまで引き金に指をかけてはいけない。
  4. 標的とその後ろに何があるかを確かめること。これは射撃をする際にも自衛の際にも大事な注意事項だ。

お分かりのように、ボールドウィンはこの最初の二事項を完全に怠っていたことが解る。彼は常に人々が銃を所持することを反対しているため、きちんと扱わなければ銃がどれほど危険であるかということ知らないのかもしれない。

1.ボールドウィンは最初に助監督から銃を渡された時に弾は入っていない「コールドガン」だと言われたという。たとえそれが本当だとしても、渡されたボールドウィン自身が自分でそれを確かめる責任がある。この映画は西部劇なので渡された銃はリボルバーだろう。リボルバーは弾が入っているかどうかチェックするのは非常に簡単。さっと見て弾が入っていないくても、銃砲に弾が残っている可能性を考えて、一度地面に向かって引き金を引いてみれば確認は出来る。もしもやり方が解らなければ銃を渡した人に見せてもらえばよかったのだ。

2.映画撮影の現場でも直接銃を人に向けることはあり得ない。たとえ相手役を殺す設定になっていたとしも、カメラの角度を調整すれば、実際に相手に向けているように撮ることが出来るからだ。シネマトグラファーがこの銃がたとえコールドガンだと思っていたとしても、自分に向けて撃てなどと言うはずはないので、ボールドウィンは故意に ハッチンス に向けて撃ったとしか思えない。完全にノーノーである。

もしもボールドウィンが1と2のどちらかだけでも守っていたらこの事故は起こらなかったのだということがお分かりいただけたと思う。

このような事件が起きる背景には二つの要素が考えられる。先ずボールドウィン自身がアンタイガンと言ってアメリカの憲法補正案第二条で保証されている一般市民が銃を所持する権利に大反対な活動家であるということ。銃砲所持の権利を信じているプロガンの人たちは、自分らが銃をしょっちゅう扱っているため、銃が人を殺すのではなく人が人を殺すのだということを弁えている。つまり銃は単なる道具であり、使い方次第で危険にもなれば安全にもなる。プロガンはその点を弁えているため銃の取り扱いには非常に神経質になるのだ。

しかし普段から銃は危ない危ないと言っているひとたちに限って、銃取り扱いに無頓着である。机の上に乗ってる銃が突然ひとりでに弾を打つなんてことはあり得ないが、実弾が入っている銃を人に向けたりしたら危ないのは当たり前だ。

第二に、これはアファーマティブアクションが問題だとする人がいる。実はこの映画の武器担当者は25歳のハンナ・グティレズ・リードさん(Hannah Gutierrez-Reed)。実はこの女性、映画はこれで二作目。しかも前作でも予告なしに銃を発砲して主役のニコラス・ケイジが怒ってセットから立ち去るという失態を犯している。

なぜこんな未経験な若い女性が高予算の大型映画で銃砲取り扱いの責任者になれたのか。彼女は父親がベテランの担当者だったというから、コネで雇われた可能性は大きい。だが、それ以上に彼女が女性であるということが決めてになっているようだ。

ハリウッドは最近、ディバーシティといって人種や性別で多様な人たちを配役及びスタッフに起用しなければならないという規則を作った。そのせいで経験も技術も伴わない人たちが、マイノリティー枠で雇われるというアファーマティブアクションが横行しているのである。そうでなければこんな若くて未経験な女性が単にコネがあるというだけで、こんな重要な責任を任せられるはずがない。

私は彼女が若い未経験な女性であることがこの事故が起きる大きな要素となっていると思う。これは完全に私の想像だが、こんなシーンが思い浮かぶ。

監督:(助監督に向かって)おい、銃はどうした、なんでアレックは銃をもってないんだ?

助監督:は、まだ銃のチェックが終わってないんで。

監督:さっさとやれよ、早く持ってこい!

助監督:はい、(ハンナに向かって)おい、なにもたもたやってんだよ、銃のチェックは終わったのかよ。

ハンナ:あ、いえ、その、、

助監督:これいいね、持ってくよ。

ハンナ:あ、それはまだチェックが、、

ハリウッドでは完全に新米。それに若くて女性。監督から命令うけてる助監督には逆らえないという気持ちが働いたとしても不思議ではない。もしもこれがハンナのお父さんのようなベテランなら、

担当者:うるせい、安全チェックが終わるまで待ってろと監督さんに言え。

助監督:これいいね、持ってくよ

担当者 :触るな!俺がいいって言うまで誰にも触らせねえ。それは俺の銃だ。チェックが終わったら俺が直接もっていくから待ってろと監督さんに言ってこい!

てな具合になったはずだ。経験豊富なその道のプロが言うことなら、監督もしぶしぶでも彼の言うことをきいたことだろう。何しろ安全にかかわることだから。しかし、未経験な若い女性の言うことを監督やその他のスタッフが聞いただろうか?いや、ちゃんと言えば聞いたかもしれないが、そこは若い女性、監督に怒鳴られるのが怖くて、ちゃんと言えなかったのかもしれない。

ハリウッドは表向きはどうでも、実はものすごい男尊女卑な社会。だからこそアファーマティブアクションなんてものが必要になったわけだが、それでも女性というだけで無能な人材を大事な部署に就ければ、こういう事故が起きるのは当たり前といえば当たり前である。現にこの現場では安全性が保たれていないとしてスタッフが一時ストライキを起こすという事件も起きていた。

前の職場でも失態をおこし、今回の現場でも色々苦情が出ていた人間を、そのまま雇っていたプロデューサーのボールドウィンにも非常な責任がある。


3 responses to 映画撮影現場で起きた銃による死亡事故、アンチガンとアファーマティブアクションが原因か?

苺畑カカシ7 months ago

新しく出て来た情報によると、この銃では空砲が使われるはずだったという。甲冑師の弁護士によると、実弾と空砲(ブランク)が入れ替えられていた可能性があるとのこと。しかし、甲冑師ともあろう人が実弾とブランクの見分けが付かないということがあるだろうか?ブランクはガンパウダーを止めるために紙などで栓がしてあるが、弾がついていないので重さも見かけも違う。プロなら一目でわかるはずだ。

それに誰かが実弾とブランクを交換できたとしたら、非常に安全性を必要とする小道具がきちんと管理されていなかったということになり、やはり甲冑師の責任は免れない。

また、ブランクでも至近距離で撃てば、その圧力で栓が飛び散るため、それに直に当たれば怪我をしたり死亡する可能性もある。以前にも映画セットでブランクに当たって死んだ役者が少なくとも二人いる。有名なところではブランドン・リー(ブルース・リーの息子)がいる。

だからこそ、たとえブランクでも他人に銃を向けてはいけないという鉄則があるのだ。

さっき観ていたテレビでプロの甲冑師のインタビューがあったが、この映画セットでは一つの規則が無視されたのではなく、少なくとも三つの規則が無視されていた。特に最後の、銃を人に向けないという規則だけでも守られていれば、たとえ実弾が発砲されたとしても、誰も死ぬような事件には至らず、その場でセットの安全性見直しがされることで終った事故である。

であるから最終的にアレック・ボールドウィンはこの責任から逃れることは出来ないのだ。

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苺畑カカシ6 months ago

まず映画のセットで武器取り扱いをする人のことは甲冑師という言いかたはせず、武器担当者と呼ぶらしいので本文でも後で訂正しておく。

さて映画の武器担当歴30年というスティーブ・ウォルフ(Steve Wolf)によると、ブランクが実弾に入れ替えられていたという弁護士の想像はばかげていると語る。そんな想像をしなくても、もっとあり得る説明があるという。誰かが実弾を使って練習をしていたのだろう。そしてその弾が銃のなかに残っていた。それを担当者であるハンナがチェックせず、そのまま助監督が持ち去って助監督もチェックせず、渡されたアレック・ボールドウィンもチェックしなかった。この三人のうち一人でもチェックしていたら、この事故は起き得なかったのだ。無論一番の責任は担当者であるハンナにあるが、その後に銃を扱った助監督とボールドウィンにも責任はある。

実はこの映画セットではこの銃は射撃練習に使われていたという話がある。ウォルフに言わせると、時々役者がセットから離れた場所で射撃練習をしたいと希望することがあるという。しかしそういう場合はセットに銃が戻される前に弾が残っていないかどうか厳しいチェックが行われるという。

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