ディズニーは同社のアニメ映画をどんどん実写化して金儲けを企んでいるが、なんかもう焼き直しばっかりでつまらないというのが私の感想。アニメの名作はそのままにしておいて、もっとオリジナルの映画を作ればいいのにと思うがリメイクの方が簡単で金になるという最近のディズニーの姿勢は怠慢すぎる。しかも、最新作の白雪姫と人魚姫のどちらも黒人が演じるという話を聞いて、もうやめてくれよと思った。映画界が「だいばあしてぃ」を重んじるのは解るが、なんでもかんでも有色人種にすればいいってもんじゃないだろう。それでも黒人が主役というオリジナルの作品を作るならまだしも、伝統的に白人キャラクターを無理やり黒人にやらせるのはいい加減やめてほしい。

これに関して、いや、ハリウッド映画では白人が有色人種の役を演じたことなんていくらもあるじゃないか。その時誰も文句など言わなかったのに、黒人が白人の役を演じたら文句をいうのは人種差別だあ!という意見もある。白人が異人種を演じてもいいのに黒人が白人役をやって何が悪い?という理屈はわからんでもないのだが、どうもしっくりこない。

そこで私は白人が異人種を演じた場合のパターンをいくつか考えてみた

1)白人がメイクなどで異人種に見えるようにして演じる場合

かなり古いところになるとワーナー・オランドによる中国人名探偵チャーリー・チャン(1940年代)、ジョン・ウエインのモンゴル人のジンギスカンやマーロン・ブランドやミッキー・ルーニーによる日本人役(1950年代)などがある。

古い映画だと、メイクアップの技術があまりよくないせいもあり、白人俳優はどうみてもその役柄の人種には見えない。なぜその人種の役者を起用しなかったのかといえば、単純に当時のハリウッドで少数民族で観客を惹きつけるだけの大物俳優は存在しなかったからだ。今と違って当時の社会はかなり人種差別がひどかったから、白人俳優でもイタリア出身だったりすると名前をイギリス風に変えたりしていたくらいだ。観客も大物俳優が出ていれば、その役柄が中国人だろうがモンゴル人だろうが大して気にはしていなかったのだろう。

もう少し後になると、イギリスの名優ピーター・セラーズ(1960年代)やアレック・ギネスがインド人を演じた(1980年代)こともあった。この二人の場合はメイクが物凄くよくて、特にギネスの場合、私は本当にインド人が演じていると思うくらいだった。二人とも演技が非常にうまいため、全く違和感を持たなかった。

2)有色人種のキャラクターが白人に書き換えられている場合

一番普通に起きるのは、キャラクターの人種は特に話に影響しないため、アメリカ観客に合わせてキャラクターの人種を台本の段階で書き換えるという場合だ。最近だとゴーストインザシェルのスカーレット・ジョンソンなどがこれにあたる。

この場合、主役が何人であろうと映画の筋に特に問題はないので、白人人気俳優を起用したい場合には理解出来るやり方だ。これがもしラストサムライに出てくる主要人物が全員白人とかだったらかなり問題だが。

白人が異人種を演じても問題なかったのか?

まず上記の1)のパターンはずっと昔の話だ。当時の観客が苦情を述べなかったから誰も違和感を持っていなかったのかと言えば多分そんなことはないだろう。特に中国系アメリカ人はこれらの映画をみて「ありゃどうみても中国人じゃないっしょ、あんなアクセントあり得ないし」とか思っていたことだろう。しかし、少なくともチャーリー・チャンの場合はチャーリー自身は白人男優だったが、彼の息子や娘役は東洋系俳優が演じていた。当時の映画で東洋系俳優が主要な役でハリウッド映画に出演すること自体が珍しかったので、あれはあれでかなり画期的なことだった。

それに、今もしこれらの映画を作ったとしたら、これらの役に東洋系俳優が起用されることは先ず間違いない。東洋人を実際に見たことのない人がほとんどだった当時のアメリカと、ごく普通に東洋人に接するようになった現代のアメリカとではまるで事情が違うからだ。

2)のパターンは、原作のキャラクターの人種が異人種でも映画のキャラクターは白人なので全く問題はない。

伝統をわざと破壊する配役

では何故白雪姫や人魚姫を異人種が演じることに違和感を覚えるのかというと、これらのキャラクターは何百年も世界的に親しまれてきたキャラクターであり、ディズニーによるオリジナルアニメ映画の成功により、多くの観客の頭のなかにこれらのお姫様たちのイメージが完全に出来上がってしまっているからだ。

ディズニーランドに行ってみれば、それぞれのキャラを演じるキャストさんたちも、アニメのイメージそっくりの人たちばかりである。東京ディズニーランドでも上海ディズニーランドでもキャストさんんたちはみなそれぞれのキャラクターに沿った人種の人が演じている。よしんば黒人キャストが白雪姫やアリエルの恰好をしたとしても、子供たちは絶対に彼女たちをそれぞれのお姫様たちとして受け入れることは出来ないだろう。

問題なのはこれらの役柄を黒人俳優が演じているということではなく、長年にわたって人々に親しまれてきたキャラクターのイメージをわざわざ破壊するような配役をしているということにある。もしもこれが全く新しいおとぎ話で、主役がどんな人なのか人々の頭のなかでイメージされていないキャラクターなら誰が演じようとかまわない。

聞いた話によると人魚姫のほうは元のデンマークではなく、キャラビアンを舞台にするらしいので、オリジナルアニメのイメージを完全に捨てて新しい映画として観る分には大丈夫かもしれない。だが白雪姫に限ってはお断りする。色が白くない白雪姫なんてありえないからだ。ついでに小人たちはNBAの選手たちにでも演じてもらえばいい。


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