前回もお話したように、日本ではイスラエルのパレスチナ政策は、中国共産党によるウイグル人虐待と同じだと思っている人が結構いる。中共を批判するならイスラエルも批判しなければならないと考えている人道家もかなりいるようだ。しかし皆さんはご存じだろうか、イスラエルは1948年の建国以来、なんどとなくパレスチナの国としての独立を提案しパレスチナ・イスラエルの平和共存を望んで来たと言う事実を。そしてそのたびにパレスチナがその提案を拒否してきたということを?

ことイスラエルに関する報道は偏向報道が多く、世界中の人々が悪いのはイスラエルでパレスチナは可哀そうな犠牲者だというイメージを持っている。しかしこのイメージは意図的に作られたものだと語るのが、元APの記者マティ・フリードマンだ。

今回の紛争でAPの事務所も入っていたガザの建物がイスラエルの攻撃によって崩壊されるという事件が起きたばかりだが、この2014年に書かれた記事は、いまでも十分に通じるものがあるので読み返してみたい。

先ずフリードマンは何故国際社会はイスラエルとパレスチナの紛争に注目するのだろうかと疑問を投げかける。確かにイスラエルとパレスチナは何十年にもわたって領土問題でいざこざを続けているが、隣接する国家同士の紛争なら、なにもイとパに限らず、イランとイラクやインドとパキスタンやアフリカのコンゴの内戦やロシアとジョージア、最近ではインドと中国などというものがある。しかも犠牲者数はこれらの紛争の方が何百倍も多い。いや、犠牲者の数だけで言うのであれば、一か月で出るシカゴやセントルイスの殺人事件の方がイとパの紛争より、よっぽども数が多いだろう。

では何故世界の人々はパレスチナとイスラエル紛争にこうも反応するのだろう?

フリードマンは人々は実際の紛争に反応しているのではなく、メディアの報道に反応しているのだと言う。そしてどんな内容の記事を書くかはほんの一握りのジャーナリストや編集者によってきめられているのだと。

フリードマンがAPの特派員だった頃、イスラエルにはなんと40人のスタッフが居た。これは中国、ロシア、インド他50を超すアフリカ諸国に居たスタッフの合計数よりも多い数だった。アラブスプリングの報道で新規採用された数を合わせてもイスラエル報道陣の方が多かったのだ。例えば、紛争が起きる以前のシリアではAP記者は地元の情報提供者が一人いただけだ。

国際記者団の記者たちはイスラエルとパレスチナ紛争で大事なのはイスラエルだとすぐに悟る。主流メディアの報道を読んでいれば、パレスチナ社会に関する記事はほとんどないことに気付く。確かにそうだ。我々のどれだけがパレスチナ民の資金源は何なのか、パレスチナの政権を握っているのは誰なのか知っているだろうか?西側諸国はパレスチナは独立国となりたいに違いないと勝手に思っているが、地元の状況を知っているひとならば、ことはもっと複雑でパレスチナ民が単なる受動的な犠牲者ではないことを知っている。

パレスチナの政権を握るパレスチナオーソリティー(PA)による腐敗は重大問題なのだが、当時フリードマンがその話を特集したいと提案したところ、編集長から「それはストーリーじゃない」と言われて却下されたという。

イスラエルのやることはことごとく分析され批判され、イスラエル社会における落ち度はどんな小さなことでも大きく取り上げられる。しかしハマスの公式文書にはイスラエル打倒が示されているだけでなくユダヤ人皆殺しをうたっていることや、フランスやロシアの革命までユダヤ人のせいにしていることは、ほとんどの人が知らない。

例えばハマスがパレスチナの選挙で多数議席を握った際に、ハマスが軍事インフラをガザの民間人居住区に建設したことなどは報道価値があるはずだ。少なくとも次に紛争があった際に民間人の犠牲者が増えるであろうことは十分に予期できることである。しかしハマスの軍事インフラは重要ではないと判断され無視された。

フリードマンの記事は2014年の書かれたものだが、今回の紛争でもイスラエルの迎撃ミサイルがガザ市街地に打ち込まれ多くの民間人犠牲者を出した。もし数年前からAPハマスの行動について正しい報道をしていれば、なぜガザでこれだけの民間人犠牲者が出ているのか世界の視聴者にも容易に理解できたはずである。

ハマスによる記者たちへの脅迫も実在する。フリードマンがイスラエル駐在していた2008年から2009年ごろ、ハマスが民間人に扮して戦い死亡した場合民間人として数えられていた事実を、ガザにいるAP記者の身を案じて報道できなかった。検閲がイスラエル政府からの物でない限り、その事実を報道することは出来なかった。

とはいうものの、記者たちがハマスの悪行を報道したくてしょうがないのに、脅迫されて出来ないというわけでもない。もし記者たちが本気で報道したければいくらでもその方法はある。だが記者団にとってハマスの行動など本当はどうでもよかったのだ。重要なのはイスラエルによってどれだけのパレスチナ民間人が犠牲になったかという記事だからである。

それでも時々ハマスの悪行が我々に伝わってくるのは、大手メディアに所属していないフィンランドやインドのフリーランスの記者たちが真実を報道していたからだ。

馬鹿な奴らだ、メモを受け取らなかったんだな。

とフリードマンは皮肉たっぷりに言う。

APが報道に値しないと思うのはハマスのことだけではない。イスラエルに関してはどんな小さなことでも報道していたにもかかわらず、イスラエルがパレスチナに対して行った譲歩に関してはほとんど報道されなかった。

例えば2009年初期、当時の首相エクッド・オルメルトがPAに対して寛大な和平提案を出していたことをAP記者団は学んだ。無論それはパレスチナによって十分ではないとして拒否されていたのだが、普通ならこれは大きなニュースとして取り上げられるべきものだったはず。しかし編集部はその話をもみ消した。報道には値しないという判断である。

APが伝えたいのはパレスチナは穏健な犠牲者でイスラエルが加害者なのだというイメージだ。イスラエルが和平提案をしてパレスチナが拒否したとなれば、そのイメージが崩れてしまう。というわけでこの話は日の目を見なかった。

主流メディアがイスラエルを語る時、国際社会は二つの国を共存させることが最終目的だという視線で語る。アラブ世界においてイスラエルが多数派なのは経ったの0.2%の土地である。にもかかわらずイスラエルは強者とされ、パレスチナとの紛争さえ収まれば中東に平和が来るとされている。

しかしフリードマンはハマスのゴールはパレスチナ独立などではないと断言する。中東の問題はイスラエル対パレスチナなのではなく、イスラム過激派対自由社会だ。イスラエルとパレスチナはその中心地にいると言うだけの話。だからこそハマスはイスラエルからどれだけ和平案を提案されようと拒否し続けているのだ。

再び台頭する反ユダヤ思想

何世紀にもわたって国のないユダヤ人は人々の嫌悪の対象となって生きてきた。ユダヤ人は強欲だ、ユダヤ人は臆病者だ、ユダヤ人は金の亡者だと言われて、行く先々で虐待された。しかし、近年の西洋社会に育ったユダヤ系は、第二次世界大戦前のユダヤ人差別についてあまり知らない。ナチスドイツのホロコーストすら、もう祖父母や曾祖父母の時代の話で自分たちには無関係だと思うようになっていた。しかし、今の西洋社会を見ていると、それはうわべだけで、実は反ユダヤの人種差別思想は欧米に根強く残っていると感じる。特に昨今欧州ではアラブやアフリカ諸国のモスレム移民を大量に受け入れたことも影響して、ユダヤ人に対する差別行為があからさまに行われるようになってきた。

自らもユダヤ系アメリカ人のフリードマンは、ユダヤ人への偏見は昔のことだと無視して生きてきた。しかしそんな彼ですら、世界でもっとも平和的な民族であるイスラエルこそが新しい植民地政策を取る軍事大国だと報道することに疑問を感じざる負えなかった。ユダヤ人への差別などもうないと思っていた自分は馬鹿だったと思うようになった。

2021年5月現在のアメリカ国内でもニューヨークやロサンゼルスといったユダヤ系アメリカ人の多い地区でパレスチナ支持の移民やアンティファやBLMといった左翼過激派によるユダヤ人攻撃が頻発している。NYやLAにはオーソドックスのユダヤ教徒が多く、衣服や髪型でユダヤ人と一目でわかる場合が多いので狙われるのだ。

欧米メディアがイスラエルを報道するとき、悪いものは常にイスラエル。たとえイスラエルには軍事的に反撃する正当な理由があったとしてもそれは報道されない。なぜならイスラエルは伝統的な悪者であるユダヤ人の国だからだ。

世界中を植民地にして少数民族を虐殺してきたイギリスやフランスやロシアなどがイスラエルの過激な政策を批判する。そしてジェノサイドなどという言葉を振り回す。

多くの西洋人が中東問題はすべてユダヤ人の失態でありユダヤ人の責任だと、昔ながらの優越感に浸っているのは気分がいいかもしれない。だが現実はそんな妄想で片付けることは出来ないのだ。それを真実を報道すべきジャーナリストたちがその妄想にふけって真実を報道しなければ、いずれ現実が我々に襲い掛かってくるだろう。

イスラエルとパレスチナの問題はそこだけの問題ではない。もっと大きな問題の一つの現象にしか過ぎない。それをイスラエルだけを悪者にして、二つが停戦を結んだからめでたしめでたしなどとやっていたら、今後起こりうるもっと恐ろしい現実を予測することは難しい。

トランプ大統領はそれを見越してパレスチナ以外のイスラム圏諸国とイスラエルとの和平を結ぶことに努力したのだ。その功績が理解できないイスラム学者どもなどまるで価値がないと言わせていただく。

Matti Friedman is the author, most recently, of Spies of No Country: Secret Lives at the Birth of Israeland is a New York Times op-ed contributor.

A Former AP Correspondent Explains How and Why His Colleagues Get Israel So Wrong – Tablet Magazine


7 responses to 元AP記者が語る、イスラエルに関する偏向報道の現実

かんぱち5 months ago

パレスチナで衝突が起きるたびに、西側メディアは 「イスラエルが〇〇したことにパレスチナの人々が怒って・・・」 というふうに報道するけど、これがもう間違ってると思います。アラブ人の反イスラエル感情は、韓国人の反日感情と同じで、彼らの民族性こそが本当の原因でしょう。その証拠に、アラブ人同士でも争い事が絶えませんからね。ここ数年だけでも、カタールがサウジ・UAE・エジプトと断交したり、サウジの油田をイエメンの武装勢力が攻撃したり・・・。

そもそも遊牧民族であるアラブ人に、農耕民族のような土地への執着があるのかも疑問です。韓国人には先に反日感情があって、後から 「旭日旗」 などの理由を適当に考えます。アラブ人の反イスラエル感情も、理由は全て後づけなんじゃないかと思いますね。

また、歴史や先住権を理由にイスラエルを非難するのは、ブーメランになって返ってきます。自分達だって北アフリカを征服して、アラブ化したわけですから。それに、これはオーストラリアの先住民族アボリジニの活動家や、日本のアイヌ活動家にも言える事だけど、「イスラエルができる前の状態や、白人や和人が来る前の状態に戻せというなら、文明を放棄して未開な生活に戻るんですね?」 と訊いてみたいですね。

パレスチナ人の多くは 「将来、パレスチナ人の国家が樹立されても、イスラエル国籍を持ち続けていたい。」 と考えているそうです。つまり、イスラエルが良い国であることも、自分達にはイスラエルより良い国は作れないことも、本当はわかってるんですよね。パレスチナ人の若者が 「アラブ人に国家運営は無理。」 と言ってる動画も見たことがあります。

まあ、現実を正しく認識できる人なら、そう考えますよね。「アラブの春」 といわれた民主化運動は失敗したし、そのためにシリアで難民が大量発生しても、金持ちの産油国でさえ同胞を助けようとしなかった。でもそれ以前に、パレスチナ人がアラブの産油国へ出稼ぎに行くと、同胞であるはずの人達から酷い差別を受けるそうです。

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    苺畑カカシ5 months ago

    >そもそも遊牧民族であるアラブ人に、農耕民族のような土地への執着があるのかも疑問です。

    アラブ人が住んでた地域は、オトマン帝国が支配していた頃からアラブ人に土地の使用権は認めていたものの、所有権を認めたいたわけではないんですよね。日本でもよくあるパターンで地主とその土地に立っている住民や建物の持主が違うということが普通だったようです。

    それでその土地をユダヤ人が買い取った後、アラブ人たちはユダヤ人の地主に家賃なんか払えるかってことで何十年も滞納。三世代くらいがそのまま住み着いてイスラエルから立ち退きを要求されているという具合。

    今更出ていけと言われても行くところはない、ということらしいです。

    確かにこの人たちは気の毒だとは思いますが、もしイスラエルが戦争で負けていたらイスラエルの民はどうなっていたか、そんなことは考えなくても解る事。

    これは戦争ですから、勝った方が出ていけという権利はあると思います。戦争を仕掛けたのはパレスチナの方ですからね。そういう歴史的背景を全く説明せずにイスラエルだけが悪いという報道には本当に苛立ちます。

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苺畑カカシ5 months ago

バイデン政権のパレスチナへの給付金はハマスの武器購入に使われていた可能性ありと、バイデン政権は認める。
https://www.foxnews.com/politics/state-dept-no-guarantees-palestinian-aid-fund-hamas-arsenal

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アクトザク5 months ago

  ここ数日のお話を拝見していて、今から恐らく四十年以上前に読んだ山本七平氏の文章を思い出しました。

  それはユダヤ人とパレスチナ人の争いの元のある物について、イスラエル在住のユダヤ人の方から聞いた話という事だったと思います。また、イスラエルの建国以前の事としていたかもしれません。

  それに依ると、ユダヤ人がパレスチナ人から土地を買い、それを懸命に開墾して農地とし、そこから収穫を上げ始める。すると、パレスチナ人がやって来て、「ユダヤ人に欺された、土地を返せ」と騒ぎ出すというものでした。

  週刊文春誌上に山本夏彦氏と交代で載せていたエッセイだったかもしれません。更に思えば、民主党政権の誕生の少し前辺りから、同誌の様子が変わってきたので目も通さなくなりました。共に今昔の感に堪えません。

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    苺畑カカシ5 months ago

    なるほど、そんな文章があったのですか。あのあたりの土地問題は非常に複雑なので、誰の立場で話をきくかによってどちらに理があるのか分かりません。ともかく平和的に解決できるとはとても思えないんですよね、どっちかが妥協しない限り。

    そういえば週刊文春は父がとっていたので私も読んでました。私は40年前に日本を去ってしまったのでそれ以後は読んでませんが。

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アクトザク5 months ago

  済みませんでした。ブログ主が米国在住の方だというのを忘れて勝手に思い出に耽ってしまいました。序でに申し上げておきますと、これが昂じて現在の週刊文春は「パヨク」の別働隊化して来ています。

  また、新しい記事が増えたようですので拝見させて頂きます。

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    苺畑カカシ5 months ago

    全く構いませんよ。私の父が文春を読んでいたので、私も読んでました。確か小説のコンクールとかで優勝者の作品が掲載されたりしていたのを覚えています。文春が左傾化したことは知りませんでした。これからもよろしく。

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