ロスアンジェルスタイムスに独立記者アンディー・ノー著の「アンマスク(剝がされた仮面)」の批評が載っている。著者はアレキサンダー・ナザリアンという自称ジャーナリスト。

アンディー・ノーの著書を読んだわけではないが、私は彼の記事や議会公聴会での証言などをここ2~3年ずっと追っているので、この著書にどのようなことが書かれているかは想像がつく。そのうえでこの批評を読んでみると、ファクトチェックと言いながら事実をまるでプレッツェルのように捻じ曲げたナザリアンの屁理屈が目につく。そのあまりのひどさに呆れるというか馬鹿馬鹿しくて笑いすら出る。

「どうやら別次元の世界が存在するようだ」という文章から始まるこの批評。ナザリアンはアンディー・ノーが「アンマスク」で書いているような別次元の世界については考える必要もなければ、ましてやこの本を読む必要はないと断言する。「もしそんな世界を見つけたら、道順を送ってくれ」というナザリアン。

もうこれだけでナザリアンが極左翼の、ジャーナリストとは名ばかりの左翼活動家であることが察せられる。

ナザリアンが言うように、「アンティファは危険なテロリスト集団ではなく、単なる概念に過ぎないと」いう別次元は存在する。だが、それは左翼の想像の世界であって現実の世界とは全く無関係だ。彼の別次元社会では、全国で何十人という死者と数百人の重症者を出し20億ドルの損害を生んだANTIFA・BLMの何百回という暴動よりも、1月6日にほんの数時間で鎮圧された議事堂乱入の方が凶悪な暴動ということになる。

議事堂乱入者は武器も持っておらず警官を殺したわけでも議事堂内にいた議員達に怪我をさせたわけでもない。死者はすべて乱入者から出ており、しかも一人の女性は非武装で無抵抗だったのに警官に射殺された。死亡した二人の警官も直接暴徒らに殺されたのではなく、心臓麻痺や自殺が原因だった。事件はほんの2~3時間で鎮圧され、ほとんどの参加者は抵抗せずに帰路についた。

それに比べてアンティファの暴動は今もポートランドやシアトルやタコマで続いている。

この最初の一節を読んだだけで、それこそこんな記事最後まで読む価値がないことは解るのだが、それでも左翼によるファクトチェックなどというものがどれほど意味のないものかを証明すると言う意味では読む価値はあるかなと思う。

まずナザリアンはアンディが2019年の6月にアンティファ暴徒に襲われた事件について、あたかもアンディーが被害妄想であるかのように書く。アンディーが脳内出血で入院し未だに後遺症に悩まされている重症を負わされたことにも「本人曰く」として事実でないかのように書き、事件そのものを極度に過小評価している。

ノーの名声は、大したものではないが、2019年6月にポートランドでアンティファ活動家にミルクシェイクを投げつけられたことから始まる。ノーはミルクシェイクのなかにコンクリートが含まれていたというが、多分ビーガンブレンドのキャシューナッツバターと言った方が正しいだろう。

Horst and Otto c. 1942 from Philippe Sands' "THE RATLINE: The Exalted Life and Mysterious Death of a Nazi War Criminal on the Run." Horst von Wachter, whose prominent father Otto von Wachter disappeared after the war and was largely forgotten. Horst, now in his 80s, is a fascinating character, willing to explore his father's ugly history in great detail without letting go of the belief that he must have been a "good" Nazi.

私は当時のビデオを見たが、アンディーは頭から血を出しまっすぐ歩けないほどの重症を負っていた。ナザリアンはミルクシェイクの中に何が入っていたか知っているのか?

アンディーは後の議会公聴会でも証言しているが、アンティファは一見無害なものを投げつけているようにふるまうが、実際はカチンカチンに凍らせたペットボトルとか個体の入ったミルクシェイクなどを投げつけ、それにあたった人間にかなりの怪我を負わせるのが常套手段だ。また、尿や便の入った液体を投げつけられた記者や警官はいくらでもいる。もしナザリアンがその事実を知らずに、たかがミルクシェイクと考えているならジャーナリストとして怠慢過ぎる。アンディーが脳内出血を起こしたことを疑っているなら、当時の入院記録を入手するくらいの取材をしたらどうなのだ?多分アンディー自身が進んで書類を見せてくれるだろう。

ナザリアンは暴力は良くないとしながらも、アンディーにも少なからず責任があると主張する。ナザリアンは本人は否定しているとしながらも、アンディーは白人至上主義の団体と行動を共にしていた疑いがあると書く。つまり右翼と行動を共にしていたのだからアンティファに殴る蹴るの暴行を受けても自業自得だとでもいいたいようだ。だが、ナザリアンはアンディーが否定してることも、そんな証拠がないことも認めている。だったらジャーナリストとして証明できない嫌疑を持ち出すのは無責任すぎはしないか?

さて、ナザリアンがアンディー・ノーが解説するアンティファの本質について間違っているする根拠としてワシントンポストに載ったこの記事を引用して、ここにこそアンティファに関する真実が述べられているというのだ。それで私もそちらのリンクへ飛んで読んでみたが、全部読まなくてもまったく意味のない記事であることはその目次を見れば一目瞭然である。この記事は左翼の大好きなファクトチェックと称する藁人形論評だ。すべて右翼による神話を打開するという姿勢で行われている。この記事によると下記はすべて神話だそうだ。

  1. アンティファは単独の団体である
  2. アンティファがBLM暴動の首謀者である
  3. アンティファは民主党と結託している
  4. アンティファはジョージ・ソロスのようなリベラル資産家によって資金援助されている
  5. アンティファこそが真のファシストである

ワシントンポストの記事を読まなくても、1から4までの「神話」はどうせ重箱の隅をつつくような言葉使いで嘘を暴露したと勝ち誇ること間違いなし。4番目は「アンティファは反ファシストという意味だ」程度の議論だろう。こんな私でも目をつむったままかけそうな意味のない記事を持ち出して、実際に現場で何年も取材して醸し出されたアンディーの結論にナザリアンは興味がない。

ナザリアンの偏見があからさまなのは白人至上主義者に殺された左翼活動家の話をしたこの部分。

ノーが一線を超えて全く持って悪質な領域に入っていくのが、シャーロッツビルで白人国粋主義者に殺されたヘザー・へイヤーや自警団員ジョージ・ズィマーマンに殺された黒人少年トレボーン・マーティンの死を過小評価する一方で、アンティファによる暴力はヨセフ・ゲッブルスでも自慢に思うほど、すべて詳細にわたって説明していることだ。

ヨセフ・ゲッブルスとはナチス党でヒットラーの右腕となりプロパガンダを広めた男。左翼が右翼の暴力について語る時に必ず持ち出すのがこの事件。というよりアンティファによる殺人事件は無数にあるが、右翼の暴力の例として持ち出せるのはこの一件しかないのだ。しかも、それにしたところで白人国粋主義者のデモに最初に襲い掛かってきたのはアンティファの方であり、互いの小競り合いの中でアンティファメンバーが殺されたのであって、本当に平和に行進していたトランプ支持者や自分の店を暴徒から守ろうとした人々に対するアンティファの攻撃とはまるで違うレベルの話だ。トレボーン・マーティンに至っては法廷でもズィマーマンの行動は正当防衛として認められた。

ナザリアンは過激派右翼がナチスのやり方を使っており、プラウドボーイズやペイトリオットプレーヤーのような右翼団体の方がアンティファよりもよっぽども危険だと言い切る。

去年の夏から秋にかけて何十人という一般市民や警官を殺し20億ドルの損害を出す暴動をやった(今もやってる)のは右翼団体ではなくBLM/ANTIFAの連中だ。プラウドボーイズやペイトリオットプレーヤーが一人でも人を殺したか?一軒でも商店を略奪したり放火したりしたか?冗談も休み休み言ってほしい。まったく異次元の世界だ。

"Unmasked," by Andy Ngo.

さてここでナザリアンは右翼は常に「事実は感情など気にしない」と言っているので、ここで事実を述べさせてもらおうと大見栄を切る。左翼が「事実」だのファクトチェックだの言い出したら、嘘八百が待っていることは間違いない。

アンディーは過激派右翼の暴力はメディアによって誇大に報道されているが、アンティファの方が民主主義にとって、よほども危険を及ぼすとするが、去年の夏に起きた反人種差別運動の93%は平和的だった。アンティファはこれらの暴動では非常に小さな存在であり、ほとんどの暴力は地域の個別の個人によるものだったとする。だがナザリアンはこの「事実」に関する証拠を何も提示していない。

それに、もしこの理屈が通るのであれば、何百回と行われ、それぞれ何万という支持者を集めたにもかかわらず暴力が起きたのは最後の議事堂乱入のみだったトランプラリーのほうがよっぽども「概ね平和的」だったと言えるのではないか?少なく見積もってトランプラリーが百回だったとしても、暴動は一回しか起きていない。つまり99%のラリーは平和的だった。それに六日のラリーに参加したほとんどの人が議事堂乱入に参加していなかったし、その事実すら知らなかった。しかもあの事件はたった数時間で収束し、破損されたのも窓ガラスや机程度で犠牲者も五人中四人がトランプ支持者。一人亡くなった警官も催涙弾やペパースプレーを吸い込んで事件の数時間後に亡くなったということで、トランプ支持者に殺されたわけではない。だがナザリアンはトランプ大統領が心配していたアンティファの暴力を「想像」だと言い、全く起きていない右翼暴力の方が危険だと言い張る。いったいこの文章のどこに「事実」が含まれているのだ?

ナザリアンは左翼プロパガンダ論者の典型で、相手の言ったことの何がどのように正しくないのかという議論など絶対にしない。事実は違うと言いながらその根拠を示さない。もともと左翼で無知でありたい人間がアンディーの本を読むわけはないので、はっきり言ってこの批評はまるで価値はない。だが、左翼がどのように卑怯な議論を交わすか、その典型という意味では多少目を通す価値はあったかもしれない。

しかし聡明な読者諸氏のお時間を煩わせる価値は全くないので、拙ブログエントリーをお読みいただければそれで充分である。


2 responses to アンディー・ノーのアンティファ暴露本のLAタイムス批評

かんぱち3 years ago

Andy Ngô (アンディ・ノー) 氏はベトナム系の方ですね。ファミリーネームの 「Ngô」 は、漢字で書くと 「呉」 で、日本語で表記するなら 「ゴー」 になるんですが、英語圏では 「ノー」 と呼ばれているんでしょうか? ちなみに↓本来のベトナム語の発音はこんな感じです。

Ngô の発音:Ngô のベトナム語の発音
https://ja.forvo.com/word/ng%C3%B4/

左翼は 「トランプ支持者は極右の白人至上主義者だ」 と言うくせに、その中にAndy Ngô氏のような有色人種 (しかもベトナム系) がいることは、見事にスルーしますよね。

ベトナム系の人なら、ベトナム戦争の話を持ち出してアメリカを貶めることもできるのに、そういう活動をしているベトナム系の話って、聞かないですね。歴史を政治利用する人間があまりにも多い中で、政治利用も被害者コスプレもしないところは立派だと思います。

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    苺畑カカシ3 years ago

    実は私の知り合いにもNgoさんて人が居るんですが、彼女は「ンゴー」って感じで発音してますね。アンディーはジャーナリストなので、やはり多くの人が発音しやすいように「ノー」と発音してるんだと思います。でも漢字が 「呉」 だとは知りませんでした。アンディーの両親は難民としてアメリカに移住してきた人たちですから、共産主義の恐ろしさを身に染みて解ってるわけです。そのアメリカでアンティファのような共産主義者が幅を利かし、アンディーは今や再び難民としてイギリスに避難しなければならなくなるという皮肉な状況です。

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