先日左翼系作家やジャーナリストや知識人150人余りがキャンセルカルチャーに抗議する声明文をハーパー紙に発表したことに関し、親キャンセルカルチャーの極左翼150人からの返答が公開された。 

この手紙は先ず、反キャンセルカルチャーの声明文に署名した人々は著名で多大なる講壇を持つ白人エリート層の人ばかりで、若干何名か黒人知識人が含まれているとはいうものの、これまで少数派として虐げられていた人々の意見については語られていないというもの。

これは確かにその通りなのだが、著名人であるからこそ最初の声明文には意義がある。零細な売れない作家や記者らが自分らの作品が出版されないなどと文句を言ってみても、それはお前らに才能がないからだ、で済まされてしまう。しかし著名で成功している人々ですらも、政治的に正しくないとされる意見を言った途端に業界や社会から締め出されるという事実があるからこそ、この文化の危険性がわかるのである。

だが親キャンセル文化の連中の言い分は、白人エリートが冷遇されてきた少数派をよそに、自分らだけで成功を楽しんで来たのだから、多少批判されて出版の機会を失うくらいのことで文句いうな、そのぐらいはキャンセル文化などと言えるようなものではないということらしい。だいたいハーパー紙のような立派なプラットフォームで声明文を出せるぐらいなのだから、彼らがキャンセルなどされていないことの証拠だというのである。

しかし、この声明文はキャンセル文化など存在しないと言ってるそばから、最初の声明文で挙げられたキャンセルの例に関する反論において、如何にキャンセル文化が必要であるかを説いている。

ニューヨークタイムスの編集員が辞任に追い込まれた件

NYTのジェイムス・ベネットという編集員がBLM暴徒に対して軍隊を出動させるべきだという意見を書いたトム・コットン共和党議員の意見をop-ed欄に掲載したとして、同社の極左翼若者社員から抗議が出、同社の上層部がそれに迎合したことによりベネット氏は平謝りした挙句に辞任した。op-edとはその名の通り同紙の意見の「反対意見」であり同紙の意見を示す社説ではない。op-edに反対意見を載せなければどこに載せられるというのか?

しかし親キャンセル文化派は、BLMやアンティファの暴動を「言論の自由を行使しているだけ」のアメリカ市民と表現し、その平和的な市民に軍隊を出動させるべきなどという意見は掲載されるべきではなかったとベネット氏を批判。これは権力のある人が自分のプラットフォームを悪用した例であると主張。だがそれならなぜベネット氏が辞任しなければならなかったのか。

こういう場合、コットン議員の意見に関する反対意見をあとで載せればいいのであって、意見を掲載した人を辞任に追い込む必要はない。これはコットン議員の意見へのバックラッシュではなく、コットン議員に発言の場(プラットフォーム)を与えた編集者への制裁だ。

著者の人種が本物ではないという理由で出版が取り下げられた件

 ジェニー・カミングスがメキシコについて書いた本で、著者がメキシコ人ではないプエルトリコ系白人であったことから批難され出版を取り下げられた。黒人やラテン系の著者が同じような本を出版しようとしてもカミングスが得たような報酬は望めない。だから白人の著書が本物の体験によるものでもないのに出版されなくて当然だという理屈。カミングスが白人だろうと火星人だろうとメキシコに関する本を書いてはいけないという理屈はおかしい。彼女が当初契約を得られたのは彼女の才能にあるのであり、彼女が白人だったからではあるまい。(ミスター苺は白人作家だが全然売れてないぞ!)これも彼女の著書に関する批判ではなく、彼女の本が出版されたことそのものが正しかったとする意見に問題がある。

このほかにも色々前者の挙げた例について、それはキャンセル文化とは関係ないという理屈をこねてはいるものの、例えそうだったとしても当然の成り行きなので問題はないという意見。

親キャンセル派の意見は、反キャンセル派の人々は自分らが好きに使ってきた権力が使えなくなったことに文句を言っているだけで、本当の意味での言論の自由など興味がない、そんなのはただの言い訳だと言いたいらしい。たしかに私たち右翼保守から言わせてもらえば、両者とも同じ穴のムジナと言えないこともないが、それでも左翼側からこういう意見の違いが出てきたことは好ましいことだと思う。無論声明文などいくら書いても極左翼には通じない。

もしリベラル派が極左翼と対抗したいなら、右翼保守とは絶対に手を結べないなどと言ってないで言論の自由のために戦わなければならない。彼らにその覚悟はできているのだろうか?


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