本日も続けてキャンセルカルチャーについて書きたいと思う。先日よもぎねこさんからご指摘があったように、キャンセルカルチャーは以前2016年に拙ブログで紹介したノープラットフォームの延長線にある。

ノープラットフォームは充分に左翼(今でいうウォーク)ではないと認定された教授や知識人が大学キャンパスで講演を拒まれるといった主にイギリスではじまった動きである。アメリカでは当初、右翼保守の知識人が大学での講演を拒まれるという形で始まった。数年前、極右翼のマイロ・ヤノポリスのカリフォルニア州バークレー大学での講演に反対する左翼による暴動につながったのがそのいい例だ。

しかしこのノープラットフォームは大学構内を超えSNSの世界にも広がった。フェイスブックやツイッターそしてユーチューブなどが保守派の口座を次々に凍結するようになった。しかし攻撃の対象は右翼だけでは収まらなかった。

いまやキャンセルカルチャーとなったノープラットフォームは、どれだけ敬虔な左翼であろうと容赦しない。ニューヨークタイムスの編集者が同紙に共和党議員の意見を載せたというだけで同社の若いウォーク社員からの圧力で辞任を余儀なくされたり、大学の教授が授業中に読んだマーティン・ルーサー・キング牧師の獄中での手紙のなかに、黒人への侮蔑語が含まれていたというだけで人種差別者扱いされるという極端な状況になっている。よもぎねこさん曰く、

それで今の状況を見ていると、彼等は保守派を黙らせたので、次に矛先を自分達の仲間内へと向けるようになったのではないですか?

 これってロシア革命の時に、皇帝一家始め帝政時代の政治家や貴族を殺戮し終えた共産主義者が次に自分達の仲間内で粛清を始めたのとまったく同じメカニズムでしょう?

現に、このキャンセルカルチャーに抗議する声明文を書いた100人あまりの左翼リベラル系作家やジャーナリストたちがすでに激しいい攻撃の対象となっている。先日ハーパー紙に掲載されたキャンセルカルチャーに関する声明文は、過激派左翼から「キャンセルカルチャーなど存在しない!」という不誠実な猛攻撃を受けている。

しかしこれらの左翼リベラル知識人が本気でキャンセルカルチャーを辞めさせたいなら声明文など書いていても無駄である。極左翼にいくら嘆願しても相手は聞き入れてなどくれない。彼らとの妥協も交渉も不可能である。

ではいったい我々はどうすればこのキャンセルカルチャーに立ち向かえばいいのだろうか?

極左翼の要求が通るのは、我々非極左翼の人間が応えてしまうからだ。一般の雇用主にしろ出版社にしろ大学やもろもろの組織が、従業員やメンバーへの理不尽な攻撃に勇み足で極端に反応するのをやめて、もう少し落ち着いて状況を判断することから始めるべきだ。ネットのアラシ連中の集中力などハエほどもない。調査中ですと言って時間稼ぎをしていれば、自然と忘れて次の標的を探すようになるだろう。

多くの組織は人種差別者の汚名を着るのを極度に怖がる。調べれば根拠のないいいがかりだとわかったとしても、そういう説明をいちいちしているうちに風評が広がってしまうのを恐れているのだろう。だからこういう企業に「ちょっとまって、少し落ち着いて」と言ってみても無駄かもしれない。

だとしたら、企業/組織の痛いところをつくしかない。もとはと言えば不特定多数の苦情メールが組織に殺到したことから始まったのだから、そうやって従業員を解雇した企業に同じように「そんな理不尽な理由で従業員を解雇するな」という苦情メールをおくってはどうか? そして不条理に解雇された人は募金活動などして企業相手に訴訟を起こすという手もある。企業はもともと面倒くさいことがきらいだから解雇に踏み切ったわけだし、解雇すればもっと面倒くさいことになるとなれば、そう簡単に解雇は出来なくなる。

そして理不尽な噂を流した人々の責任を徹底的に追及することだ。文脈なしのつぎはぎのビデオをアップしてあたかも人種差別があったかのように解説を付けた人間は法律上でも社会的にも罰せられるべき。

自称ジャーナリストの攻撃記事には、攻撃対象となった人はもとより、その攻撃は理不尽だと思った人々が結託して元記事を書いたジャーナリストに反撃すべき。黙っていては本当だと思われてしまうからだ。

キャンセルカルチャーが機能するのは、権力のある組織がキャンセルに応じてしまうことからはじまる。組織や社会がその理不尽な要求に応じ無くなれば、しぜんとそんな文化は廃れてしまうのだ。しかしそれには、私も含め、すべての人々にもう少し勇気が必要だ。


1 response to キャンセルカルチャーを止める力は我々にある

苺畑カカシ4 years ago

アメリカのラテン系食品会社の社長がトランプ大統領のホワイトハウスに招かれ、大統領に好意的なスピーチをしたことで、左翼連中がGOYA社の商品をボイコットしようという動きを始めた。

しかしGOYAの社長は態度を変えず、かえってGOYAファンのおかげで商品はバカ売れ!

キャンセル文化はこうやって対応すべきなのだ。

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