イタリアにおける中国人移民の話はもう2007年の拙ブログでしたことがある。当時から中国人移民によるイタリア産業進出により地元産業との間でかなりの摩擦が生じているという話はしたが、正直な話、私は中国人がイタリア人より勤勉なだけだろうといった甘い分析をしていた。中国人がイタリアで特にイタリアの特産である革製品やアパレル産業で成功している裏にはもっと複雑なからくりがあり、個人が勤勉に商売をして成功しているなどという甘いものではなかったのだ。

2007年頃のイタリアに合法に移住していた中国人の数は全体人口の割合から言って1%にも満たず問題になるような数ではないと思われた。しかし地域的には合法の中国人に加え違法中国人がその四倍はいるという話であり、当時からすでに問題になっていた。

しかし中国人の数が多いということよりも、中国人の商売のやり方が問題だった。何故か中国人の企業はイタリア企業に比べてコストが低く、イタリア製品のまがい物や粗悪品がどんどん格安な値段で売られるようになり、何も知らない観光客が地元製品を買わなくなっていったからである。

近年イタリアには中国の金持ちが観光客としてたくさんやってくるようになった。彼らは高価な商品を爆買いすることで有名なので、イタリア政府は中国人観光客を歓迎している。しかし中国人観光客がわざわざイタリアに来てメイドインチャイナの安物を買って喜ぶはずがない。せっかくイタリアに来たのだからイタリア製を買いたいのは当然。

また中国内でもイタリア製品は人気があり、かなりのイタリア製品が中国に輸出されているという。無論中国には偽物が出回っていることは中国人も十分承知しているので、商品はイタリア製でなければ意味がない。

ところがこの「イタリア製」というのが曲者なのだ。

私が最初の記事を書いた2007年、ドルチェ&ガバナ、グッチ、そしてプラダといった有名ブランドの下請け工場における労働環境の劣悪さが問題視された。確かにイタリア国内で仕立てられてはいるが、実際に作っているのは中国からの移民。しかもそのほとんどが違法移民であることから正規の賃金ももらわず、危険な環境で長時間の就労をさせられていることが暴露されたのだ。「贅沢品を支える奴隷労働」ということでロサンゼルスタイムスや地元のテレビ番組などでも告発された。

もともと中国の温州では外国ブランドの下請け工場がいくつもあった。ただヨーロッパユニオンの規定で最後の仕上げが行われた国の国名が記されることになったため、ネームブランドは国内の工場を使うようになった。しかし、そこで働いているのは中国人移民たち。しかもその移民たちがどこから来たかと言えば、そう、その通り、温州! なんのことはない、工場をイタリアに移しただけで作ってるのは同じひとたち。これがイタリア製だっていうんだから笑っちゃう。

さて、それが10年以上も前の話だが、状況は全く変わっていない。いや、よくなるどころかかえって悪くなっている。確かに大手ブランドは労働法に触れないように色々対策を取っているようだが、イタリア国内の中国企業による革製品や洋服は未だに低賃金中国人労働者によって作られているのだ。

いまやイタリアのプラトには中国系工場がたちならび、完全に中華街になっている。2016年プラトの中国人人口は6.5%と言われていたが、違法移民を合わせるとその四倍はいると言われている。そうだとすれば、プラトの人口の1/4を中国人が占めることになる。しかも彼らは地元政治家に賄賂を渡してかなり悪質な脱税をしているという話だ。イタリア財政省の調べによると中国銀行のミラノ支店から5億ドルという怪しげな送金が中国にされていたことが明らかになっている。

こうした工場では中国から安い記事を輸入して仕立てだけをイタリアでしてイタリア製として売っているのだ。素材や人材や建物などで経費を最低限に抑えているので、一般イタリア産業が競争できない状況にあるわけである。

はっきり言ってイタリアのおける中国進出はこれからも速度を落としそうにない。それというのも中国の「一帯一路」政策により、米国やヨーロッパユニオンの反対を押し切ってイタリアは中国と新シルクロード協定を結んだのである。そして今年(2019年)の11月には中国の警察がイタリア警察と合同パトロール演習まで行った。

このままではイタリアへの中国侵略は歯止めが利かなくなる。今後イタリアはどうなってしまうのだろうか?

参考記事:

What Really Goes into “Made in Italy” Fashion?

Defying Allies, Italy Signs On to New Silk Road With China

Chinese police officers join Italian police for joint patrol

Italy’s China City: Sweatshops to Wedding Shops


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