前回の晩年だけを描いたジュディ・ガーランド伝記映画とは正反対に、幼児期から現在に至るまでのエルトン・ジョンの半世紀を描いたロケットマンはとってもよかった。映画の売り上げはクィーンのフレディ・マーキュリーを描いたボヘミアンラプソディほどよくなかったようだが、映画としてこちらの方がよく仕上がっていると思う。

先ずなんといってもいいのが、映画が完全にミュージカル仕立てになっていること。歌手の伝記だから時々彼のうたう場面があるというのではなく、実際に登場人物が会話の途中で歌い出し、周りの人達が踊り出すという正真正銘の恥じないミュージカルなのだ。 タロン・エジャトンがエルトン・ジョンを演じ全曲みごとに歌いこなす。

エルトン・ジョンといえば奇抜な恰好でピアノを弾きながらワイルドな歌を歌うことで有名だ。映画の冒頭ではジョンが悪魔のようなギラギラ衣装でスポットライトを浴びながら廊下を歩いてくる。扉が開き満場のスタジアムが繰り広げられるのかと思いきや、なんとそこは薬物依存症回復病院のオリエンテーション室。他の依存症患者たちに交じって、ジョンは折り畳みのパイプ椅子に座り、「僕はエルトンジョン。アル中、薬物依存症、セックス依存症です。」と言って自分の生い立ちを話はじめる。ここで「ビッチイズバック」をジョンが歌い出し、回想シーンが始まる。この出だしのミュージックナンバーがこの映画のトーンを決める。

ジョンは1950年代のイギリスでレジョナル・ドワイト(子役マシュー・イレズリー)として生まれ育つ。子供の頃からピアノの才能があり、ピアノ教師の勧めで王立音楽学校( The Royal Academy of Music )へ奨学金で入学。しかし両親の仲は悪く、父親のスタンリー(スティーブ・マッキントッシュ)は幼いレジーに全く愛情を示さない。結局父親は母親(ブライス・ダラス・ハワード)の浮気が原因で母子を捨てて出ていく、子供のレジーにさよならも言わず。この頃からジョンは愛情に飢えていた。

十代のジョンはイギリスツアー中のアメリカのソールバンドの伴奏バンドの一員となる。バンドメンバーの勧めで作曲も手掛けるようになり、名前もエルトン・ジョンと改名。 ディック・ジェイムス(ステファン・グラハム)のDJMレコードと契約し、レイ・ウィリアムス(チャーリー・ロウ)をマネージャーとして本格的なミュージック活動を始める。ここでウィリアムスの紹介で生涯の大親友そしてビジネスパートナーとなる作詞家のバーニー・トーピン(ジェイミー・ベル)と出会う。

トーピンの詩に曲を付けながら歌う「ユアソング」のシーンは感動的だ。これでジョンとタウピンの作詞作曲コンビがどれだけ素晴らしいものであるかがはっきりする。

エルトン・ジョンが同性愛者であることは周知の事実だが、私はてっきりジョンとトーピンは恋人同士なのだと思っていた。しかし映画によれば、彼らの関係は兄弟のような大親友であり愛人関係にはなかった。トーピンは異性愛者でジョンのアメリカ遠征などにもずっと付き添っていたが、パーティーで出会う様々な女性たちと楽しんでいた。

そんなアメリカでのパーティーで、トーピンが美女と消えた後、一人残されたジョンの傍に近づいてきたのがジョン・リード(リチャード・マデン)。ジョンはリードのエキゾチックな魅力に一目ぼれ、二人は一夜を共にする。これがジョンの後の自堕落な暮らしのきっかけとなる。

ジョンのキャリアはロケットのようにうなぎのぼりに成功していく。数々のヒットを飛ばし1970年代最高のアーティストとなっていく。この頃からジョンは奇抜な衣装を着て、そのステージもかなりワイルドなものとなっていった。しかしその反面、マネージャーとなったリードによる悪影響で酒や麻薬におぼれるようになるジョン。リードからの虐待や裏切りが続き、薬物やセックス依存がひどくなり、大親友のトーピンまでも遠ざけてしまい、遂には自殺未遂、、、

その後どうなるかは映画を観てもらうとしても、ジョンはいまでも元気に生存しているし、男性と結婚して子育てに励んでいるくらいなので、ハッピーエンドであることは間違いない。ジョンのヒット曲がその場その場に合わせてミュージカルのナンバーとしてちりばめられている。

個人的にジョンの最初のマネージャーを演じたチャーリー・ロウとトーピンを演じたジェイミー・ベルが光ってると思う。ミュージカル好きでジョンのファンにはたまらない映画。是非お勧め。

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