先日 「アメリカ・フロリダ州の高校で昨年あった銃乱射事件に遭遇し、アメリカの名門ハーヴァード大学に合格したカイル・カシャヴ氏(18)が17日、過去の人種差別発言が原因で合格を取り消されたとツイッターで訴え、議論を呼んでいる。」という記事がツイッターを騒がせていた。

記事によるとカイル君が16歳の頃、乱射事件が起きる数か月前、友達同士のプライベートなやり取りでお互い一番衝撃的な発言をするのは誰かというような男の子ならだれでもするような馬鹿げたお遊びをしていたのを、元友達の誰かがスクリーンショットで撮ったものをハーバード大学に送り付けたらしい。

本人は若気の至りだったとしてすぐに謝罪。いまの自分は十分に反省しているし、当時の自分と今の自分は違うと釈明している。 事実、事件直後からカイル君が公共の場で見せて来たふるまいに人種差別的な要素は全くない。それを16歳の時に友達の間で悪ふざけしていたくらいで、誰を傷つけたわけでもないのに、入学を取り消されるなんて信じられないと誰でも思うだろう。だが実は、カイル君の入学取り消の本当の理由は過去の差別的な言論などにあるのではなく彼の政治的な姿勢にあるのだ。

カイル君は銃規制強化を訴えるデイビッド・ホグ君と同じ高校の出身で、パークランド乱射事件の生存者である。学歴が全く届かず他の大学をすべて不合格になったのに何故かハーバードに受け入れられたデイビッド君と違って、カイル君は頭脳明晰成績優秀。大学入試のための全国学力テストで1600点中1550点という成績を収めており、多くの一流大学から奨学金付きで合格したが、ハーバードを合格したので他の大学はすべて蹴っていた。

デイビッド君と同様、カイル君もまた乱射事件後、学校内での安全を求める運動を公の場で行ってきた。しかしこの二人には決定的な違いがある。それは、デイビッド君は銃砲取締法強化を訴えているに対し、カイル君は銃砲所持権利の拡大を訴えて来た。二人とも学校内での安全を保持するという点で目的は同じだったが、そのやり方が全く違っていたのだ。

ここで理解しなければいけないのは、銃砲を持つ権利に関する政治的な見解は、右翼保守か左翼リベラルかで真っ二つに分かれるということだ。右翼保守(主に共和党)は憲法補正案第二条で保障されている市民が銃砲を所持する権利を全面的に支持しているが、左翼リベラル(主に民主党)は市民の銃所持を全面的に反対している。

そして最近の一流大学はどこもかしこも左翼よりで、保守派に対する嫌悪感を表にしている。ハーバードにとって16歳の学生の馬鹿げたテキストなど問題であるはずがない。もし同じことをデイビッド君がやっていたら、大学側は一笑に付していただろう。いやそれを言うなら、カイル君が特にとりたてて公共の目に触れるような運動をしていなかったなら、保守派運動家として世間に認められるような活動をしていなかったなら、彼の過去のテキストなど何の問題にもならなかっただろう。同大学にとって問題だったのは左翼リベラルの同大学が保守派運動家として著名なカイル君を受け入れることにあったのだ。

カイル君が同大学に合格したのが何時だったのかわからないが、その当時は多分、彼が保守派活動家として有名になっていなかったのではないかと思われる。それで同大学としても、彼の入学が問題になるという意識はなかったのであろう。それがカイル君が有名になればなるほど、同大学としては彼を不合格にする口実を探していたのかもしれない。

それにしても、「友達」だったはずの同級生たちが、カイル君の政治的見解をもとに彼の将来を台無しにしてやろうとする、そのせこい考えには腹が立つ。『 カシャヴ氏の書き込みのスクリーンショットを公開した同級生のアリアナ・アリさんは、ニューヨーカーに対して、「彼が目立てば目立つほど、その偽善が不愉快だった」と話した。』当時は自分だって一緒になって笑っていたくせに、何が偽善だ。アリアナちゃんは「カイル君、そんなこと言うもんじゃないよ、それは差別だよ」と注意したのか?かなり疑問だね。これは私の憶測だが、もしカイル君の活動が左翼リベラル政策を促進するものだったら、アリアナちゃんはカイル君がどれだけ有名になろうとこんな過去を暴露するなんてことはしなかっただろう。

今回のことで現在一流大学をめざ目指す高校生たちが学んだ教訓とは何であろうか?

それは自分が政治的に右寄りな人間は絶対に公な政治活動に参加しないこと。自分の政治見解はよっぽど信頼できる友達以外には心を割って話さないこと。保守派の人間は友達と政治に関する議論を記録に残るネットやスマホなどのチャットでしないこと。

若者に広い知識を得、あたらしい分野に目を開かせる手伝いをするはずの大学が、固まった考え以外を持つ人間を沈黙させるという、いまやハーバードも落ちたものである。


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