今年(2019年)2月に公開された 魔夜峰央(まやみねお)原作の「翔んで埼玉」を日本からアメリカに帰る飛行機の中でみた。私がこの映画に興味があったのは私が好きな俳優の加藤諒が出ていたからだ。彼はやはり私が好きな「パテリコ」にも舞台と映画で主演していたことから知った俳優。偶然でもないが「パテリコ」も「翔んで埼玉 」も同じ魔夜峰央の原作。これは二つを見比べれば一目瞭然だが。

ちょうどカカシは先週日本に里帰りしており、その時に久々に一緒に食事をした女友達が埼玉県に在住であるという話から、この映画のことが話題に上った。隣県の千葉県人(だった)私に対し、現埼玉県人の彼女は「最近の埼玉はすごいのよ」とこの映画の話をしてくれたのだ。

物語は完全なるファンタジーの世界だが、現代日本が未だに徳川時代のような封建社会にあり、東京が中心となり埼玉や千葉は何かと蔑まれており、これらの県民が東京都に入るためには通行手形が必要。東京都民は選民として特権階級であり、埼玉や千葉県民は下層階級。そんな埼玉県民がライバル県民の千葉県と戦いながらも東京都に盾をつくといった内容。

「パテリコ」がそうであったように、「翔んで埼玉」も普通にBLの世界なので、それを主流俳優たちが平気でやってのけるというのが日本のすごいところだな。主役の男性二人壇ノ浦百美(二階堂ふみ) と麻実麗(GACKT) は明らかに恋愛関係にあるし、千葉解放戦線の 阿久津翔(伊勢谷友介)による麗への拷問シーンや麗の配下の男性たち同士の間でもなんか不思議なムードが漂う。

はっきり言って原作者の魔夜峰央と言う人は色々なところでインジョークを混ぜている。「パテリコ」でも萩尾望都の「11月のギムナジウム」で出て来たセリフ「誰が殺したクックロビン」 が突如としてパテリコの口を横切ったりしていたが、今回も作者の宝塚ファン度や腐女子特有ジョークが多々で観られた。(摩耶自身は男性らしけど)

それから作家の宝塚ファン度も大したもの。だいたい麻美麗からして往年の宝塚女優の芸名だ。映画の冒頭でアメリカ帰りの麻美麗を紹介する学校の先生の声がしてくるが、それがいかにも宝塚男役風のセリフ回し。するとその声の主は宝塚男役風化粧した男装の麗人。麗を取り巻く女性たちの話方は完全に宝塚女役風。

もっとも腐女子度や塚ファン度のみならず、関東地方の人にしかわからないインジョークも満載だ。千葉県の常磐線電車のアナウンスとか、そのあまりの完璧さに私はのけぞって笑いそうになった。その他千葉県や埼玉県の地名や特産物(ピーナッツ!)などの話題もバカバカしくておかしくて大笑いした。

真面目な話、初めて男役に挑戦したという二階堂ふみの演技は素晴らしかった。こういうギャグ映画では俳優は真面目に演技をしないと観客はしらける。どれだけハチャメチャな状況にあろうと、どれだけ奇想天外な役柄であろうと、登場人物そのものは真剣に取り組んでいる。だから決してカメラを意識した登場人物を馬鹿にした演技をしてはいけないのだ。その点二階堂は偏見に満ちた特権階級の御曹司でありながら、その偏見を乗り越えていく百美の役を誠実に描いており好感が持てた。

二階堂だけでなく、この傾向はすべての俳優に言えることで、これだけのギャグ映画に真剣に取り組んでくれたということに感謝の意を表したい。

ともかく大笑いした映画なのでお薦め!


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