ここ数日ネットでは女性が電車で痴漢から身を守るために安全ピンで護身するのは正当な自衛かどうかという話題で盛り上がっていた。私は無論このやり方には賛成だが、絶対にダメだと言う人が結構いて非常に驚いた。

ピンなどつかわずとも大声をあげて回りに助けを求めたり、警察に通報すればいいじゃないか、という意見が殺到していたが、そういうことを言う人は痴漢の被害にあったことがないのだろうと察しは付く。

実は何を隠そう格いう苺畑カカシは1970年代から80年代にかけて中高その他合わせて6年間くらい電車通学をしたが、その際痴漢被害には数えきれないほど遭遇した。最初は父親に相談して父が警察に届け出をだしてくれたりしたが、ほとんど効果はなく、次に「この人痴漢です!」と大声をあげてみたが回りからは完全無視された。この回りから完全無視されたという体験は多くの女性がしているので、声をあげればいいなんて助言をするのは無責任にもほどがある。

その後も万年筆(当時そういうものがあった)で痴漢のワイシャツにバッテンマークをつけてみたり傘で叩いてみたり、まあ色々やったが、結局最終的にはハットピンという安全ピンよりは多少長いピンを持ち歩くようになり、痴漢されたら自分に触っている手をピンで突き刺すという応戦を始めたら痴漢はすぐに手を引っ込めた。大抵の場合はそれで済んだし、そのうちあまり痴漢には合わなくなっていったので、それほど何回も使うことはなかった。

何十年もミスター苺以外の人にこの話をしたことはなかった。悪い奴でも誰かを傷つけたという話はあまりおおっぴらにするものではないから。しかしネットでそういう自衛をしているという人が今でも結構いると知り、しかも私と同年代やもっと前の世代のご婦人たちも同じように自衛をしていたという話を聞いて、安心するのと同時に日本の痴漢対策はいまだに、まだまだ女性を守り切れていないのだなと実感した。

しかしそんな話を何気なくツイートしたら、「ピンで刺すなんて過剰防衛だ、傷害罪でつかまるぞ」などという返答が沢山帰って来た。「痴漢行為は一種の暴行だ、それを止めさせるためにピンで応戦するくらい正当防衛だろうが、そんな権利も女性にはないのか」という問に対して「あるわけないだろ!」という答えが殺到した。それで「そんな権利もないのなら日本の法律はどうかしてる」というと「嫌なら出てけ!」という定番の答えが返って来た。

強盗をナイフで脅して傷害罪に問われるようなイギリスならまだしも、いくら何でも日本で女性が痴漢追撃のためにたかが安全ピンを使うことも許されないとは信じがたいと思っていたら、とある弁護士のこんなツイートを見つけた。

法律家だらけの俺のTLで過剰防衛(過剰防衛の可能性ではなく)と言ってる法律家を見たことないのはさておき、通常は過剰防衛にもあたらないだろう(よほど強く刺すような場合は過剰)。安全ピンで軽く刺す程度で過剰というのは痴漢の法益侵害性を軽視しているから過剰に感じるという告白に過ぎない。

@lawkus

やっぱりねえ。そんなことだろうと思った。法律を知りもしない人達が過剰防衛だの傷害罪だのという言葉を振り回して、安全ピンで自衛をしようとしてる人たちを脅かしていたに過ぎなかったのだ。それにしてもたかだか安全ピンの自衛をこんなにも躍起になって否定したがる人々の神経とはいったいどういうものなのだろうか?この人たちはそんなにも女性を無力のままで居させたいのか?

答えはイエス。その通り。これは完全なる男尊女卑の思想なのだ。クリスチャンさんのツイートで昔とある小学校で起きたいじめの例が挙げられていた。ずっといじめられていた子供が遂に反撃したらいじめがピタッととまったという。ところがいじめが起きていた時は何もしなかった学校側はこの反撃には強く反応したというのだ。

「殴る奴は殴る/殴られる子は殴られる」が常態。なのに「反撃」が起きたとたん騒ぎ。なぜ?ここからは僕の推測だけど、おそらく先生方は見過ごしつつも 「自分たちは精一杯いい管理をしている」と思いたかったんだろう。しかし「反撃」の発生は、今まで否認してた問題がそこに存在してることを提示し管理の失敗が露呈する。でも先生方は「間違った状態」を無意識のうちに「通常」へと定義してしまったので、そこを覆され不快だったのかも知れん 。

@Christian_Japan

女性が痴漢にあうのは「常態」。だが女性が反撃するのは異常事態。女性が反撃しなければならないという事実を認めれば、痴漢を容認している日本社会の恥を認めることになる。

それに女性の反撃を認めれば、男尊女卑思想の男たちは女性を弱者の立ち場においておくことが出来なくなる。それが嫌だから執拗にその邪魔をするのだ。こういう男たちからよく聞いたセリフが「間違って無実の男が刺されたらどうする?」というもの。被害者は自分に触ってる手を刺すのだから人違いで刺すなんてことは先ずあり得ないと言っても、例え僅かでもその可能性がある限り危険だと帰って来た。しかしこれについてとあるフェミニストがこんなことを言っていた。

女性は毎日痴漢という暴行を受けるかもしれないという恐怖を抱いて電車に乗っている。それを考えたら男が「今日は間違って刺されるかもしれない」程度の恐怖くらい味わっても同情など出来ないと。まさしくその通りだな。

最後に昔痴漢から身を守るためと言って道場に来ていた小柄な女性に剣術を教えたという剣道の先生のツイートで締めくくろう。

結局、こういう世の中だから、私がやってたようなヤロウばかりのむさ苦しい道場に、か弱い女性が人殺しの練習に来るわけで、安全ピンが違法だの傷害罪だのと重箱の隅をつつくヒマがあったら、優しい言葉の1つでもかけてあげるのが人情というものだろうし、今の日本に決定的に欠けているのはそれだろう。

@bci_

6 responses to 女性が身を守ることを徹底的に邪魔する男尊女卑思想

苺畑カカシ5 years ago

こんなサイトを紹介されたので貼っておこう。一部引用。https://www.bengo4.com/c_1009/n_9680/
「「他人を安全ピンで刺すことによって刺し傷ができれば、傷害罪が成立します。仮に傷ができない場合であっても暴行罪は成立します。しかしながら、この行為が自らに降りかかっている『痴漢』という不正な行為から身を守るため、やむを得ずしたものと評価されれば、正当防衛となり違法ではなくなります。(略)通常は痴漢という重大な身の危険に対して若干の出血を伴う程度の安全ピンの攻撃であれば、正当防衛が成立する可能性は高いと思われます。『何かあった場合』に備えて安全ピンを常に携帯していることは、正当防衛の成否に通常は影響しません。」

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よもぎねこ5 years ago

「間違って無実の男が刺されたらどうする?」

 間違って刺しても所詮安全ピンですから、「痛い!!」で終わりでしょう?

 逆に間違って無実の人を「痴漢」として通報したら、大変な事になります。 痴漢の場合、証拠の確定が殆ど不可能なので、冤罪を晴らすのが非常に難しいのです。

 そして一旦痴漢として逮捕されたら、それだけで職も家族も喪う場合があります。

 間違って安全ピンで刺されるぐらいなら冗談で済むけれど、間違って痴漢で通報されたら、人生を喪ってしまいます。
 安全ピンの方が余程、男性を思いやる対応でしょう?

 後関係ありませんが、トランプ大統領の相撲見学、両国国技館の観衆は大変な歓迎でした。
 アメリカのマスコミは随分否定的に報道しているようですが、これが日本の一般世論です。

 https://www.youtube.com/watch?v=bEC6DLIwJBM

 

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    苺畑カカシ5 years ago

    よもぎねこさん、まさしくその通りなんですよ。「針で刺すより警察に届けろ」とか言ってる人は冤罪の恐ろしさが解ってない。間違えて刺されるかもとか言う人は、そのくらいで済んでよかったと感謝すべきなんです。それに自分が刺されたということは近くに痴漢が居て女の子が今犠牲になってるということにもきづくべきです。 

    繰り返しますけど自分を触ってる手を刺すのですから間違いなんて起こりようがないのです。もう40年も前の話ですけど断言できます。

    はっきり言って冤罪で訴えられることの恐ろしさを考えたら、チクリと刺されるくらいどうってことないはずですよ。私も色々冤罪を掛けられた男性の体験談を読んで本当に恐ろしいなと思ってます。

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Shima55555 years ago

苺畑さん
私は小さい頃に「ソーイングセットを持ち歩くのは乙女のたしなみ」と聞かされましたが、それでも安全ピンに危機感を感じる人の気持ちは理解出来ます。

電車が常に正常に走っているなら良いですが、いつ何時地震が起きたり、何かの事故で急ブレーキを踏むか分かりません。都内のラッシュの時間帯では車内で身動きの取れなくなった人が苦しんでいたり、降車した拍子に勢いよく倒れそうになるのをよく見ます。
そんな中でうっかり安全ピンの針が違う方向に刺さったらどうなるでしょうか?何かの事情で電車が急に止まったら?その時偶然持っていたピンが倒れた誰かの顔に向かっていったら?

自衛することには賛成ですし、せめて「痴漢撃退だけに使える特別な何か」があればなぁと思います。

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    苺畑カカシ5 years ago

    shimaさん、

    安全ピンで他人を間違って刺してしまう危険が全くないとはいえませんが、誰かのベルトのバックルとかブリーフケースの金具とかブローチの針とか、みんななにかしらとがったものを持ってますから、電車の揺れで誤ったそういったもので引っかかれるとか刺されるということはあるように思います。私はものすごい満員電車で押されて手すりに脚を強く押し付けられて怪我をしたことがあるので、満員電車というのは何かと危険が伴うものなのでしょう。安全ピンの場合は電車が揺れた場合怪我をするのは持ってる本人である確率が高いですね。少なくとも私は手のなかに隠れるようにピンを持っていたので。

    ツイッターでも何度も言ったのですが、この自衛法はもう80年以上もの歴史があるので、間違って刺された人は居たかもしれませんが、それが問題になっていないということは、そういうことは珍しいと言えるのではないでしょうか。

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苺畑カカシ5 years ago

よもぎねこさんが同意してくれました。うれしいです。
http://yomouni.blog.fc2.com/blog-entry-6630.html#comment60692

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