去年の9月ごろだったかUCLAのお偉い学者さんたちが、マサチューセッツ州の公衆トイレにおけるトランス許容方針を起用した各地域で施行前と後とで性犯罪は特に増えなかったという論文を発表した。私はそれを最初に読んだときに、なんかうさんくさい調査だなと思っており、時間があるときにちゃんと読んで分析しようと思っていた。そんなことを考えているうちに、六帖のかたすみさんが一部二部に分けて丁寧に分析してくだすったので、怠慢人全般に成り代わって私からお礼を言いたい。六帖さん、ありがとう。

詳しいことは六帖さんのブログを読んでいただくとして、六帖さんがこの論文は信用ならないとする理由として、先ず第一に調査者たちがバリバリのLGBT推進者であることを指摘している。新法律は何の悪影響を与えないという偏見から始めた調査なので、その結果も自分らの都合のいいようになっている可能性は高い。

その他、六帖さんは、調査となったサンプルの範囲が狭すぎることや、人口数や文化の近い都市との比較も、かなりいい加減なものがあると指摘している。

そして、何よりも大事なのは、アメリカの小さな地域での調査が日本でも当てはまるのかどうかということだ。

日本とアメリカでは公衆トイレの施設そのものに違いがあると六帖さんは指摘する。このことに関してはアメリカ住まいである私の方がその違いを説明できるかもしれない。

日本のトイレは昔の和式トイレの名残からなのか個室はかなりの密室となっているが、アメリカの公衆トイレは扉の上や下にかなりの隙間があるだけでなく、扉と横壁にもかなりの隙間があるので、中に誰かが居るというのは外から容易に察することが出来る。洋式トイレはよしんば誰かがドアを開けても臀部が丸見えになるわけではないので、このくらいでも女性たちは特に気にしない。

六帖さんも指摘しているように、アメリカの場合、公園などで公衆トイレがあるところというのは、だいたい治安のいいところであり、そうでない場所ではレストランや映画館やデパートの中にあり、割合管理も厳しい。確かにそういわれてみればそうかもしれない。

それとこれは六帖さんも指摘していることであるが、この調査は地域の人が犯罪が起きたとして被害届を出した数のみを対象としているので、嫌な目にあっても泣き寝入りした人たちの体験談は含まれていない。

この法律が通る以前には男子が女子トイレに入ること自体が犯罪だったわけだが、法律後はあからさまな男子が女子トイレに入ってきて女子たちが嫌な思いをしたとしても、それは犯罪としてみなされない。ということは、法律規定後はかえって犯罪率が下がるなんてこともあり得る。

以前に似たような法律を通したワシントン州のシアトルの更衣室で男性が女子更衣室に居座っても管理人が警察を呼べなかったという事件が起きている。

こういうふうに女性が嫌な思いをしても、それが違法ではないから犯罪とみなされないというだけで、この法律による悪影響は起きていないと言い切るのには無理がある。

ところで、拙ブログでもすでに何度か取り上げてきたアメリカの大型小売店ターゲットにおける試着室での問題をもう一度振り返ってみよう。ターゲットは2016年から性自認に一致する方のトイレや試着室の使用を許容しているが、女子試着室で男性が女性の裸を隠し撮りする事件が後を絶たない。

日本でこのような方針を決行しようというなら、マサチューセッツの一部の地域だけの限られた調査だけでなく、こうした方針を取り入れた欧米のあちこちの例をすべて調査したうえで、そのようなことを日本でやることの悪影響について十分な吟味をする必要がある。そして、そんな悪影響を無視してまで強行する必要があるというきちんとした理由も提供してもらいたいものだ。


Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *