先日、ハリウッドのミートゥー運動を率先していた女優/監督のアジア・アージェントが実は数年前に当時17歳だった未成年の俳優に無理やり性交を強制したという記事がこともあろうにニューヨークタイムスに掲載された。私は最初から彼女が悪名高いハリウッドプロデューサーに「強姦」されたという話は胡散臭いと思っていた。何故かと言うと彼女はその後、自分を「強姦」したとするワインスタインと数年にも渡り関係を続けており、アメリカにおける彼女の映画監督としてのキャリアにワインスタインは少なからず貢献していたからである。これはセクハラではなく単なる枕営業なのではないか、と私は思ったわけ。そんな彼女が犠牲者ぶってミートゥー運動の率先者的活動をしていたことを胡散臭く思っていたのは私だけではない。

今回の事件が公になる二か月ほど前に、実は全く別の事件によってアージェントの人柄を批判する記事をリア・マックスィーニーという人が書いていた。題して“Can We Talk About Toxic Femininity?”(毒ある女について話してもいい?)というもの。

皆さんはアンソニー・ボーデインという料理評論家をご存知だろうか?彼は二か月前まで人気テレビ旅番組の司会をしていた。この番組はボーデインが世界各国を旅してまわり、その土地の地元料理を色々紹介するというもので非常に人気があった。その彼が二か月前、番組制作中のロケ地のホテルで自殺しているのが発見された。彼の突然の死にアメリカのファンたちは非常なショックを受けた。元々彼は薬物依存症だった過去もあり鬱(うつ)病に悩んでいたという話もあるので、ストレスがたまっていたのかもしれないという憶測は色々されたが、直接の原因が何だったのかは想像の域を出ない。しかし、彼の死はその当時彼が付き合っていた女性とその友達と深くかかわりがあるとマックスィーニーは言う。

実はこの時ボーデインが付き合っていた女性というのが誰あろうアジア・アージェントで、その親友というのがローズ・マックガワン。二人とも去年10月にニューヨーカーで掲載されたハリウッド大物プロデューサー、ハービー・ワインスタインのセクハラや強姦の犠牲者になった13人の中に名前が連なって記されていた。その後二人はミートゥー運動の筆頭者として活発に活動していた。ボーデインの死後、メディアは何故彼が自殺したのかという話よりも、彼の恋人とその友達のアージェントとマクガワンがいかにしてフェミニストの代表者になったのかという話に焦点を当てるようになっていった。それはボーデインをさんざん利用した挙句に裏切り、今も彼の死を利用し続けている二人の毒女たちにはふさわしくない扱いだとスィーニーは言う。

アージェントはイタリアはローマで生まれ、イタリアでも指折りの芸術家族の中で育った。父は有名な映画監督で脚本家のダリオ・アージェント。母は有名な女優ダリア・ニコローディ。そのほかにも有名な歌手や作曲家が親戚にいくらも居る。

ニューヨーカーに載った彼女のワインスタインとの体験談にしても、アージェントは自分が制作する映画についてワインスタインに相談に行った時に、ワインスタインからオーラルセックスを受けたというもの。しかも彼女は早く終わってほしいと思ってオルガズムを演じたという。彼女自身も認めているように、彼女は別に脅迫されたわけでも暴力で強制されたわけでもない。しかもその後数年間何度もワインスタインとデートを重ねている。いくらなんでもこれを「強姦」と言うのはおかしいだろう。彼女が20年間沈黙を守った理由は、その話をすれば自分はワインスタインに潰されると思ったからだと語っているが、もともと彼女はイタリアで活躍しており、有名監督の娘でもあり、コネはいくらでもあっただろう。いくらワインスタインが力のあるプロデューサーでもそう簡単につぶせるような立場の女性ではない。彼女が20年間沈黙していたのは、ワインスタインにはまだまだ利用価値があると思ったからだろう。

それが20年後の今日、自分を犠牲者とすることで、サバイバー(生存者)として颯爽と脚光を浴びるに至ったのだ。

ボーデインとアージェントが出会ったのは2年前、ボーデインの番組にアージェントがゲスト出演した時だ。長年連れ添って娘も居た妻と別居中だったボーデインは即座にアージェントに恋をした。自分のSNSには何枚も彼女の写真が愛のこもったコメントと共に掲載されていたそうで、ボーデインがアージェントにぞっこんだったことは誰の目にもあきらかだった。

ボーデインは人気司会者というだけでなく芸能界ではかなり影響力のある人だったようで、アージェントのキャリアにも積極的に応援し、彼女がテレビ歌謡コンテストの審査員の座を得るのを援助したり、自分の番組のエピソードを監督させたりしていた。また彼女とマックガワンのミートゥー運動も大いに力を貸していた。

しかし、ボーデインが自殺する数日前、40代のアージェントが28歳というずっと年下の若い男といちゃついている写真がゴシップ誌に掲載されてしまったのだ。アージェントは必至にこの写真を取り消させようとしたが無駄だった。その直後、アージェントはシッド・ビシャスの絵のついたTシャツを着て写真を撮り、”Fuck Everyone”(みんな死んじまえ、のような意味)「誰のことかわかるでしょ!」と添えて自分のインスタグラムにアップした。その数時間後ボーデインは首を吊った。アージェントはすぐに写真を削除した。

ボーデインの自殺がアージェントに裏切られたことによるものだとするのは言い過ぎだろう。失恋ごときで大の大人が自殺などすべきではない。だが、もともと鬱で悩んでいたボーデインがこの裏切りによって落ち込んだことは間違いないわけで、それが最後の一藁だった可能性は否めない。

ボーデインの死が確認された数時間後、アージェントは恋人を失った悲劇のヒロインよろしく自分のSNSにボーデインについて書き連ねた。これがアメリカメディアにも大々的に取り上げられた。何故、たった一年ちょっとしか付き合っていない彼女にばかり同情が集まり、別居していたとはいえ11歳の娘までいる未亡人は無視されるのか。アージェントはボーデインの死の話を恋人を失った自分の話へとすり替えようとしていた。自分の名声のために彼の死まで悪用していたのだ。

この記事を書いたマックスィーニーは「犠牲者を責めている!」「セカンドレイプだ!」などとかなりの批判を受けた。しかし実際にアージェントがどんな毒女だったかは、その二か月後の今日、被害者気取りのアージェントこそが加害者だったという事実の発覚によって明らかになったのだ。

アージェントは数年前に未成年の俳優に強制的に性行為を施し、口止め料を払っていたことが暴露された。これにたいするアージェントの行動というのがまたまた卑怯なのだ。アージェントは自分と青年との間に性関係はない、だがスキャンダルを恐れたボーデインが自分のために青年に支援金という形でお金を払っただけだと、死んで言い訳の出来ないボーデインにすべての罪を擦り付けようとしている。

こんな女が代表面していたミートゥー運動なんて、もう誰も注意を払わなくなるだろう。そろそろみんな疲れて来たしね。ハリウッドてのは本当に偽善者の集まりだ。

 

 

 


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