欧米社会でここ二十年近く重宝されてきた観念として、英語でいう”multiculturalism” (多文化主義)という言葉があるが、これは一体どういうものを指すのであろうか。これについて「多文化主義は機能しない」と主張しているカナダの保守派ジャーナリストのローレン・サザンは訪問中のオーストラリアのテレビ番組でこの質問に答えていた。

アメリカやオーストラリアのように移民によって成り立ってきた国からしてみれば、多文化主義はきちんと機能していると言いたくなるのは当然。米国も豪州も元々は先住民の他にイギリスからの移民で始まり、その後はヨーロッパやアジア及びアフリカ諸国から様々な移民を取り入れて成功した社会である。

しかしサザン曰く、それぞれの文化を持つ多々の民族が集まっても移住国が持つ一つの文化を尊重してまとまるのであればそれは多文化主義ではない。多文化主義とはそれぞれの移民が自分らの文化をそのまま移住国へ持ち込んで固持することにある。同じ空間に共存している多々の民族がそれぞれの文化を主張するため、移民が極少数であるうちは元々の社会は許容することは可能でも、その数が増えてくると元の社会秩序が乱れてくる。そして相いれない文化を持つ民族の数が増えれば増えるほど、元の文化が破壊されていくというわけだ。

彼女の説が正しいことは西欧で起きている現状を見れば一目瞭然だろう。米国や豪州で比較的問題が起きていないのは両国とも移民に関してかなりの規制をしているからである。特に豪州はアフリカからの「難民」を無制限に受け入れていない。それでもすでにアフリカ人暴力団による犯罪の激化やモスレムによる暴動などは問題になっている。(拙ブログでも2005年に起きたカヌラビーチでの暴動について紹介したことがある。)

サザンの住むカナダのバンクーバーでは中国人移民の数が増え続けており、彼らは地元文化と全く融和せずに町中が中華街になりつつあるという。中国人は選挙権を得るとどんどん地元の政治にも影響力を持つようになり、バンクーバーの公用語が中国語になる日も近いとサザンは憂う。

サザンが「機能しない」と言っているのは、融合不可能な多文化の共存は社会として成り立たないという意味。無理やり共存させようとすれば、それぞれの共同体がそれぞれの領土を隔離する状況が起き、その領土をめぐって勢力争いが起きることは必定。そうなれば数が多くより暴力的な部族が勝つことになる。

侵略者に戦わずして地元文化を乗っ取られることが多文化主義というなら、私は断固お断りしたいね。


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