アメリカに東洋人だけのザ・スランツ(釣り目)というロックバンド(ミュージックビデオ)がある。彼らがこの名前をバンド名にすべくトレードマーク商標申請をしたところ、スランツというのは東洋人に対する侮蔑語であるため認可しないという判定が出た(バンドリーダー、サイモン・タムのインタビュービデオ)。それを不服としたバンドは政府相手に訴訟を起こしていたのだが、先日最高裁はトレードマークにはヘイトスピーチを例外とすることはできないという判定を下した。つまり、侮蔑語であろうがなんであろうがトレードマークに出来るということである。これは小さなことのようで非常に重要な判決だ。
実はアメリカでは言われた本人は何とも思ってないのに、なぜか周りの後退派左翼が「それは侮蔑語だ」と言い張る傾向がある。このザ・スランツのリーダーのサイモン・ダムも、「東洋人への侮蔑って、、特許庁は俺たちが東洋人だけのバンドだってこと知らないのかね?」と不思議に思ったと言っている。
例えば、なぜかアメリカでは東洋人を意味する「オリエンタル」という言葉が侮蔑語だと主張する人がおり、アジア人という意味の「エージャン」と呼ぶべきとよく注意される。私が何かと「オリエンタル」という言葉を使うので白人の同僚や友達からしょっちゅう注意されている。私から言わせるとエージャンて風疹の一種みたいに聞こえるんだけどね。ちなみにイギリスではオリエンタルは侮蔑語ではない。あちゃらではアジア人というと中東から来たアラブ人を指す。中国人や韓国人や日本人のことはオリエンタルでいいらしい。同じ英語でも非常に難しいところだな。
さて、アメリカのフットボールとか野球の球団名にはアメリカインディアンの部族の名前が使われていることが多いのだが、アメフトのチームにレッドスキンズというチームがある。レッドスキンというのはインディアンの肌が白人に比べて赤いということから大昔にインディアンを侮蔑する意味でつかわれた言葉だ。しかし当のインディアンたちはこれを誇りとし、自分らをレッドスキンと呼ぶようになった。だからチーム名もインディアンの勇敢さを称える意味こそあれ、侮蔑の意味はまるでないのだ。
ところがこれもインディアンではなく左翼の白人どもから名前は侮蔑的だというクレームがついた。インディアンたちの大多数がこの名前を好んでいるにも関わらずである。しかしザ・スランツが認められるならレッドスキンズも同じ理論だ。こちらも最高裁へ行くことになっているから同じ結果が出るものと思われる。
こういうことが起きてつくづくアメリカってのはいい国だなとカカシは思う。アメリカ憲法を作った創設の父たちの聡明さに感心する。
アメリカには本当の意味での言論の自由が保証されている。日本も含め欧州では、たとえそれが憲法に書かれていても、その内容をどう解釈するかは時代の政治家たちによって変更させられてしまう。だが、アメリカでは言論の自由を保証する憲法補正案第一条を揺るがすことはできないのである。
私は日本で人権擁護法だのヘイトスピーチ法だのが通ったことは非常に嘆かわしいことだと思っている。これを理由に言論弾圧が起きるのは火を見るよりも明らかだからだ。