私が尊敬する旧フェミニストの大御所クリスティーナ・ホフ・ソマーズ女史の最近のコラム「フェミニズムを再び偉大にする方法(How to make feminism great again)」という話をちょっと読んでみたい。
ヒラリー・クリントンが大統領選で大敗してからというもの、過激派フェミニストたちの振り乱しようは見苦しいばかりである。人気テレビ番組「ガールス」スターのリナ・ダナムは蕁麻疹が出て療養中だとか、人気歌手のケイティー・ペリーなどツイッターで「革命来る!」と叫び、現代フェミニストのリーダーロビン・モーガンなどは「病める父系社会は女と死闘中だ。」とまで書いている。
しかし多少良識あるフェミニストたちの間では、最近のフェミニズムはエリート過ぎるのではないかという反省もみられる。しかしソマーズ女史はそのもっと上を行き、現代フェミニズムはアメリカ社会から離れてしまったというより、現実社会から完全に離れたものになっていると語る。この現実離れしたフェミニズムを再び地球に連れ戻すためには一体なにをしたらいいのか、ソマーズ女史には提案がある。

第一に、合衆国を父系社会と呼ぶのはやめること!

父系社会というのは男性だけが権力を持ち女性には何の権限もない社会をさすが、女性が国務長官になったり連邦裁判官になったり主流政党の大統領候補にまでなれる社会を父系社会と呼ぶのは正しくない。にも関わらず、なぜフェミニストたちは女性は未だに虐げられた存在だという嘘を触れ回るのか。
アメリカの女性の給料は男性の2/3だとか、四人に一人の女子大生が強姦の犠牲になっているとか、女性はネット上で激しいセクハラや暴力にあっているとか、虚偽の女性虐待説がまかり通っている。こうした虚偽の訴えは本当の問題解決から資源を取り上げることになり、害あって益なしである。

今日の女性運動は男性も女性と同じように葛藤していることを認めるべき

現代社会で生きている以上、苦労をしているのは女性だけではない。男性もそれなりに苦労しながら生きている。確かひ大会社の社長とか科学者とか国会議員とかはは、まだまだ女性の数は少ないかもしれない。しかし労働者全体を見た場合、男性の方が圧倒的に重労働で危険な仕事についている。職場で怪我をしたり死んだりするのは男性(特に労働階級)が女性より圧倒的に多いのだ。
また教養の面でもラテン系や原住民の女性は白人男性よりも高い率で大学に進学している。無教養な男性が増え社会の経済を支えられなくなって困るのは男性だけでなく女性も同じである。
過去の女性運動は女性の平等な権限を勝ち取ることにあり、その功績はすばらしいものがある。しかし現代のフェミニズムは一部の人々の権力争いにと成り果てている。「どうも彼女達は金星と火星の間ではゼロサムゲームしかないと考えているようだ。」とソマーズ女史。これは昔恋愛学のジョン・グレイ著の「男は火星、女は金星からからやって来た」という本の題名から来るもの。ゼロサムゲームというのは戦いでどちらかが勝てはどちらかが負けるという意味。
しかしほとんどの女性は男女の間で戦争が起きているなどとは考えていない。普通の女性にとって男子は敵ではない。彼らは兄弟であり息子であり夫であり友達なのだ。普通の女性はフェミニストが考えるような理想の女性像を求めていない。2013年に行なわれたピューリサーチ調査によれば、アメリカのお母さんたちに、どのような役割分担が理想かというアンケート調査を行なったところ、61%のお母さんたちがパートか専業主婦が理想だと応えたという。ロンドン経済学校の社会学者キャサリーン・ハーキム女史も西欧州においても同じような結果が出ていると語る。
フェミストらは自分らが理想に描く女性像を支持しない女性たちを自らを嫌う男尊女卑主義者として軽蔑するが、いまは2016年、1960年代とは違うのだ、女性の自由な意思を尊重すべきなのでは、とソマーズ女史は問いかける。
フェミニストたちが男女には全く何の違いもないと主張することによって女性全般を傷つけている。医学的な男女の差は議論の余地がない。だが、だからといってそれを理由に女性蔑視をすべきだなどとは誰も言っていない。
本当の男女平等社会というのは、女性だから男性だからといってその役割を限定するのではなく、個人の自由な選択と個々の才能によって判断されるべきなのである。女性の大半が専業主婦を求めるならその選択は尊重されるべきだ。しかし女性でも科学者や兵士や工学士を求める人が居るなら、男子と平等に機会を与えられるべきで、同じように保育士や看護士になりたい男性にも同じように雇用の機会が与えられるべきなのだ。
そうやって個人の自由な選択を可能にさえしておけば、たとえ結果的にある職種に男子が多かろうと女子が多かろうと、それは差別ではないのである。フェミニズムの一番の問題は女性をひとつの集団として判断し個人としての才能を無視していることにある。そうやって一番傷つくのは、やはり女性なのに。


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